UCI(国際自転車競技連合)が2024年のレース中に発生した497件のインシデントを分析した結果を報告。また23種類の違反行為を犯した選手などに課されるイエローカード制度も改めて解説し、将来的にギヤ比制限や選手用エアバッグ導入の可能性にも言及した。



ツアー・ダウンアンダーに現れたマーク・カヴェンディッシュとダヴィ・ラパルティアンUCI会長 photo:CorVos

今回発表されたデータは、ベルギーのヘント大学と協力して2024年シーズンに男子と女子のワールドツアーとプロレースで行った497件の落車などのインシデントを調査したもの。その中で35%は選手の故意ではないミスによるものであり、13%が登りや石畳、スプリントなど戦術的に重要なシーンに差し掛かったことで発生した緊張状態の中、また11%が濡れていたり、滑りやすくなった路面が主な要因だった。

その他は道路インフラによるものが9%、(上記以外の)路面コンディションの悪さが4%、車両の挙動によるものが1%だったと伝えている。

調査された497件のインシデント photo:CorVos

今回のデータを収集し、分析したのは2023年に立ち上がった「SafeR」。これはUCIが設立した男女のロードレースの安全性向上を目指す組織で、監督委員会、専門委員会、ケースマネジメント委員会の3つの機関から構成され、選手とチーム、レース主催者、UCIの代表者が参加している。

SafeRによるプロジェクトは2024年シーズン後半にスタートし、イエローカード制度の導入や集団スプリントステージにおける救済処置の距離延長などの施策が、安全性の向上に繋がったのだという。

3kmルールが延長可能に

今シーズンは5kmルールが多く適応されるか photo:CorVos

ステージレースで集団スプリントが予想されるステージのフィニッシュ3km以内で落車や機材トラブルが発生した場合において、先頭でフィニッシュした選手と同タイム扱いとなるいわゆる「3kmルール」。それが2024年シーズンの後半から5kmまで延長できるルールが試験的に導入され、この度主催者の要請とUCIによる承認があれば最長5kmまで延長することが認められた。

また同タイムフィニッシュとなる基準が、いままではフィニッシュした選手とその次にフィニッシュした選手のタイム差が1秒以内だったものが、3秒以内となる。そのためスプリントに関与しない選手は救済措置が適応される地点で脚を緩めやすくなり、集団スプリントに参加する選手が減り、落車などのリスク軽減が期待される。

イエローカード制度の継続

昨年より導入され、66レースで31枚が発行されたイエローカードの制度も、2025年シーズンも引き続き実施される。これは23種類の違反に対して与えられるもので、2枚のイエローカードならば2枚目発行から7日間の出場停止。30日間に3枚ならば14日間、1年間で6枚ならば30日間の出場停止となる。

これは選手だけでなく、チームスタッフやメディア車両の運転手にも発せられ、ワールドツアーだけでなくプロシリーズやロード世界選手権、各大陸選手権にも適応される。

主催者は30〜40km毎に補給ゾーンを設置

チームカーからボトルを受け取るシーンが観られなくなるかもしれない (c)CorVos

SafeRは2025年シーズンから、レース主催者は約30-40km毎に補給ゾーンをごみ捨てゾーンと併設して設置することが義務付けられる。この変更は、コロナ禍で特別措置として導入されていたコース全域での補給を認める規定を廃止するもので、固定の補給ゾーンに戻すことでチーム間の公平性を確保し、レースの安全性を高めることを目的としている。

また今後は選手用エアバッグの使用、ホイールのリムの高さやハンドルバーの幅に関する規制、最高速度を下げるためのギア規制などが、分析と共に検討される。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos