フックレスのチューブレスホイールを用意するエンヴィや、新型シーラントをリリースしたマックオフを取り扱うダイアテック。定着した感のあるチューブレスタイヤのメリットや扱い方、安定した運用を実現するSESシリーズなどの特徴を展示会で改めてレクチャーした。



エンヴィのSESホイールはUAEチームエミレーツが使い性能は折り紙付き

プロレースの現場でもメインとなり、ロードバイクの標準的な装備として認知されたチューブレス仕様のタイヤとホイールシステム。ツール・ド・フランス覇者のタデイ・ポガチャルもチューブレスに移行し、エンヴィSES 4.5もしくは6.7ホイールを使い分けながら、Granprix 5000の30Cタイヤを55〜62psi(約3.8Bar〜約4.2Bar)で運用した。

エンヴィを取り扱うダイアテックの製品説明会では、ポガチャルは安定性から生まれるハイスピードダウンヒルを意識し、太めのチューブレスレディタイヤを使用していると明かされた。チューブレスタイヤは転がり抵抗が低い恩恵だけではなく、空気圧を下げられることによるメリットをポガチャルは活用していると言えそうだ。

エンヴィのフックレスリムはウォールを厚く、リムベッドにはタイヤ脱落を防ぐ形状が採用されている

エンヴィのリムは整形前にニップルホールを開けるため強度を保てる

今回の展示会ではそんなSESシリーズをはじめ、エンヴィのチューブレスレディシステムについて改めて説明が行われた。エンヴィのロードとオフロード用ホイールはどちらもフックレスを採用しており、安定した製造品質、軽量性、タイヤの安定性をサイクリストに提供しているという。

フックレスリムで気になるのは、今までのクリンチャーではタイヤを保持していたフックがない事によるタイヤの脱落だろう。そこに対してエンヴィはまず2022年に改定されたETRTO規格に適合する設計を行い、ISO規格よりも厳しいテストで信頼性を確認しているという。

エンヴィはアメリカで設計と製造を行うため、開発スピードが早いと説明をする

具体的にはフックレスリムに課される最大空気圧よりも10%高いエアプレッシャーで5分間に耐えるというISO規格に対して、エンヴィは最大空気圧の165%のエアプレッシャーで5分間耐えるテストを実施。これによってタイヤがリムの外側に外れてしまう心配を減らしている。

そして急な減圧などが起こり、ビードがリム中央部に向かって落ちてしまうリスクを低減するために、エンヴィはRim Bead Lockという小さな山をリムベッドに採用。わずかな段差だが、これによってタイヤのホールド力を獲得している。なお専用のチューブレステープを一重に巻く必要があり、アンモニアが含まれるシーラントは不可という使用上の注意があるのは気をつけたい。

またチューブレスタイヤのシステムに着目した今回の説明会では、ケミカルブランドのマックオフによるシーラントの詳しいレクチャーも行われた。マックオフがシーラントを開発するにあたってコンセプトとしたのはライダーの命を守ること。これはパンクが発生した際に素早く修復を行うことや、チューブレスレディタイヤの安定性を高めることで、タイヤが脱落してしまう心配などを減らそうというもの。

元々レスポを担当していた近藤さんがマックオフを説明する

特にタイヤ空気圧が高く、エアボリュームが小さいロードにおいて、瞬時に空気漏れを止めることは安全性にも寄与する。マックオフはロードやグラベルなどに向けたシーラントを新たに開発。これまでのNO PUNCTURE HASSLEシリーズに加わった。

ロードタイヤの50psi以上の空気圧と40cc以下という低容量という条件下で、瞬く間にエア漏れを止めるためにマックオフは粘度が低めの配合を採用。タイヤに穴が空いてしまったらサラッとしたシーラントが届き、バンブーチップと共に最大6mmの穴を塞いでくれるという。また低粘度ながらタイヤ表面などへの定着性に優れることも特徴で、パンクした際の初動で防ぎ切ることもできそうだ。

マックオフはロードやグラベルに適したNO PUNCTURE HASSLEの新型シーラントが登場する

またチューブレスタイヤ運用のTipsも惜しみなく教えてくれた。まず、新品タイヤは付着している離型剤がシーラントを弾いてしまう可能性があるため、しっかりと落とすことでシーラントの機能を発揮させられるようになるという。離型剤を落としつつタイヤのゴム成分を痛めないように作業することが必要で、マックオフのDiscbrake CleanerとGlue Remover、Nano bike cleanerなどは安心して使用できるのだという。

そしてインストール前にシーラントをタイヤに刷毛で塗っておくと作業性が上がるとも。ビード部分に塗布すればエア漏れの可能性を低減することができ、タイヤケーシング部分に塗っておけばシーラントを全体に確実に行き渡らせられ、ビードを上げた後にシーラントを充填する量を減らせるという。チューブレスタイヤを運用している方は試してみても良さそうだ。

オイルゲージのようなシーラントチェッカーが登場する

HEY DIPSTICKというシーラント残量チェッカーが登場

シーラントをタイヤの中に充填しているとどの程度で乾燥してしまうかが気になるポイント。これは季節によって変動するそうで、夏場はどうしても乾燥が早くなってしまい、冬場は熱的な負荷がかからないのでタイヤ内に残ることが多くなるという。それらも2ヶ月目くらいから、もしくは走行距離1000kmで確認もしくはシーラントの注ぎ足しが好ましいのだとか。

確認方法ついてはシーラントを充填後のホイール/タイヤシステム重量を計測しておき、使用後の減量分をチェックすると変化量に気がつけるという。もちろんタイヤの摩耗も影響しているので目安程度となることには気をつけたい。

それだけではなくマックオフはHEY DIPSTICKというシーラント残量チェッカーを用意。これはバルブから差し込む金属の棒で、先端にメモリが刻まれているというもの。言うなれば自動車のエンジンオイルのレベルゲージと同じ要領のもの。これを充填直後とタイヤ使用後に使うことで、メモリの変化量を確認することができる。

手動バルブを備えたBIG BORE TUBELESS VALVESが登場

水道のような仕組みで栓を開閉する

またマックオフはバルブも新開発。BIG BORE VALVESという新製品は仏式のようなバルブコアは存在せず、配水管のような手動バルブを搭載していることが特徴。バルブコアによって空気の流れが妨げられないため、仏式対応モデルのBIG BORE VALVE LIGHTでは230%の流量向上を実現。根本は仏式サイズで、口部分が米式対応モデルのBIG BORE VALVE HYBRIDでは流量254%アップを達成している。これによってポンプから押し出された空気が効率的にタイヤ内に入り込むため、チューブレスタイヤのビードが上げやすくなっている。

このようにチューブレスタイヤにまつわる開発はタイヤのみならず、ホイールや周辺機材も日進月歩で進化を続けており、ロードのチューブレスタイヤは今まで以上に使いやすくなっている。ダイアテックの説明会に参加したショップスタッフさん達も最新の情報を持っているため、ショップでチューブレスの相談をしてみると良さそうだ。

フィドロック定番のTWISTシリーズ

TWISTシリーズにはベルトオンのマウントも用意されている
フィドロックの定番TWISTはおすすめだ



今回はチューブレスを特集した説明会だったが、それと同時に新規取扱ブランドのフィドロックがお披露目となった。フィドロックはヘルメットなどに採用されるマグネット+メカニカルバックルでお馴染みで、確実な固定力と瞬時の着脱を実現しているブランドだ。

これまでも日本ではTWISTシリーズが展開されていたが、今回のダイアテック展示会では新たなシステムを使ったスマホ固定システムのVACUUMと、GoProやサドルバッグ用のPINCLIPシステムが目を引いた。

VACUUMのマウントは非常に薄いのが魅力

VACUUMのスマホカバーは非常に使い勝手が良さそうだ

VACUUMはスマホ(もしくはカバー)に貼るタイプのマウントで、その薄さは驚異的。iPhoneの張り出したカメラレンズよりも背が低く、普段使いを妨げない。それに加えマグネットと吸盤による固定力で、スマホを落とす心配も全くない。

PINCLIPは先述したように自転車にアクセサリーをマウントするために最適なシステムだ。ワンステップでアクションカメラやバッグを取り外すことができる。着脱が容易なことで、これまで諦めざるを得なかった動画収録なども可能となっている。フィドロックは様々な物の使い勝手を高めてくれるので、ぜひ店頭でその魅力を体感してほしい。

GoProやサドルバッグ用のPINCLIPシステム

ワンタッチで着脱できるのはありがたい
PINCLIPのマウントは非常に小ぶりだ



また今回の説明会には元プロロードレーサーの佐野淳哉さんも来場しており、現在使用しているエンヴィのホイールとタイヤについてインプレッションを伺った。

佐野さん「SESシリーズは高速域での安定性と巡航性が非常に優れていて、スムーズに進むという印象を受けました。エアロ性能も高いようです。ホイールによってここまで走りが変わるとは思っていなかったので、驚きました。

タイヤについては、グリップ力が確保されており、レースにも問題なく使用できるレベルだと感じました。また、雨の日のパフォーマンスも悪くなかったですね。ロードインフォメーションも伝わりやすく、タイヤの挙動が分かりやすいという点も良かったです。地元の道路は工事などによるでこぼこが多いんですが、このタイヤはそういった突き上げもよく吸収してくれました。走りのいなしという点でも優秀だと思います。

佐野淳哉さんもSESホイールとタイヤには満足しているとのこと

タイヤのサイズについては、最近のレースではワイドタイヤが主流になってきていますが、このホイールなら31mmが適切だと感じました。最初は31mmはやり過ぎかなと思ったんですが、実際に走ってみるとベストなチョイスだと実感しましたね。

総じて、テストしたホイールとタイヤの性能には大変満足しています。高速走行時の安定性、グリップ力、路面からの情報伝達、突き上げの吸収など、どの点をとっても文句のつけようがありません。これなら他のライダーにも自信を持っておすすめできますね。」

チューブレスシステムにフォーカスを置いた今回の展示会。これからもTL系プロダクトは数多く登場することになる現時点で非常に身になるものだった。ショップスタッフ向けの説明会も開催されていたということなので、マックオフやエンヴィ取扱店でチューブレスのことを聞くことができそうだ。ぜひ気になる方はショップに足を運んでもらいたい。


Report:Gakuto Fujiwara
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