中根英登らがU23選手を対象に、愛知県東三河地域で「中根英登サイクリングアカデミー2024トレーニングキャンプin東三河」を実施した。トレーニングキャンプの模様を主催者のレポートで紹介しよう。



愛知県東三河地域で「中根英登サイクリングアカデミー2024トレーニングキャンプin東三河」を実施 (c)Keita YAMAUCHI

豊かな自然を生かし、市町村及び観光関係団体と一体となってオールシーズン・オールエリアでスポーツが楽しめる地域として「東三河スポーツツーリズム」を推進している東三河地域※。

この取組の一環として、サイクリングの練習環境に恵まれた東三河地域の魅力をPRするため、自転車ロードレースのトレーニングに励む次代を担うU23ライダーを対象としたトレーニングキャンプを、9月5日~8日に実施。

中根英登が走り方をアドバイス (c)Keita YAMAUCHI

竹之内悠も講師を務める (c)Keita YAMAUCHI

具体的には、2026年のアジア競技大会における自転車ロードレースの開催候補地である新城市や、トレーニング環境に優れた北設楽郡一帯で、愛三工業レーシングチーム専任アドバイザーを務める中根英登を筆頭に、選手や監督、コーチとしての経験を多く持つ柿木孝之と竹之内悠が講師を務め、実践練習や座学講習を行った。

※東三河地域:豊橋市、豊川市、蒲郡市、新城市、田原市、設楽町、東栄町及び豊根村の8市町村

以下で、トレーニングキャンプの模様を振り返る。

■参加者

中島歩(立教大4年)、高本亮太(立命館大4年)、松井丈治(立命館大3年)、小森継心(明星大3年)、田中遥翔(明星大2年)、新宮颯太(日本大2年)、綿貫遙人(大阪大1年)、遠藤大樹(明星大1年)、中山竜一(EQADS)以上9名

合宿1日目(9月5日)

北設楽郡の山々や田園地域を駆け抜ける (c)Keita YAMAUCHI


合宿の拠点となる「山びこの丘」(愛知県新城市)に、正午過ぎに選手らが集合し、開会式にて講師らの紹介や選手同士の顔合わせが行われた。開会式終了後には、早速練習へ。

この日は、北設楽郡の山々や田園地域、さらには新城市の名所の一つでもある「四谷千枚田」などを巡る、90kmのコースレイアウト。2グループに分かれて走行し、ペース走やインターバル走、ローテーションなどのトレーニングメニューも実施した。中根と竹之内がそれぞれのグループで一緒に走行し、選手らは走りのポイントや安全管理について適宜アドバイスを受けながら練習をこなしていった。

参加した小森は、「自分の体力的にきつい部分もあったが、合宿初日からものすごく勉強になった。他の選手からも早速いい刺激をもらって今後のモチベーションに繋がった」と練習を振り返った。

合宿2日目(9月6日)

この日の午前は、9月8日に開催される「新城モブ」および「JBCF第1回新城ロードレース」のメイン会場である桜淵公園を起点に、約1300年の歴史を持つ「鳳来寺山」の上り坂を含む起伏に富んだ地域を100㎞走行するコースレイアウト。練習出発前には、竹之内によるバイクコントロールに関する実践講習も行われ、選手らにとっては技術面を見直す良い機会となった。

午後は、柿木を筆頭とした座学講習を実施。トレーニングの原理原則や具体的な方法、さらにはアンチドーピングに関して、長年世界で活躍してきた講師らの経験則や最新の情報を基に、選手らにレクチャーを行った。

講師らのリアルな体験談や普段なかなか知りえない専門的な話に対し、選手らは終始くぎ付けで、ノートをとったり質問をしたりと、盛り上がりを見せた。

トレーニングの原理原則やアンチドーピングに関する座学講習を実施 (c)Keita YAMAUCHI

合宿3日目(9月7日)

この日は主に、リカバリーに努めるスケジュールとなった。午前は、新城市の有名観光地でもある「乳岩峡」に向けのんびりとライド。透き通った冷たい川に入るなどし、連日続いた疲れや暑さを吹き飛ばした。

午後は、新城ロードレースのコース試走をメインに、新城市内で40㎞程のリカバリーライド。選手らは、講師らとも適宜意見交換をしながら、コースの様子や注意カ所、路面状況などをしっかり下見し、翌日のレースに向け身体の調子を整えた。

夕食後には、数々のUCIレースで勝利をあげ、トラック競技でアジア大会日本代表経験のある西谷泰治が特別ゲストとして合流。レースへの取り組み方やゴールスプリントに向けたノウハウなどを選手らと共有した。また、ここまでの合宿の振り返りを含めた座談会や、翌日に控えるレースの作戦会議なども行い、選手・講師ともに、今回の合宿やレースに向けた想いなどを改めて共有し合い、チームとして士気を高めた。

合宿4日目(9月8日)

この日に行われる「新城モブ」のメインイベントである「JBCF第1回新城ロードレース」。合宿に参加した選手らは、「U23大会選抜チーム」の出走選手あるいはサポートメンバーとして、国内トップカテゴリーのレースに挑んだ。(オープン参加)

レースは、前半から激しい展開が続く中、中盤の登り区間で中島を含む10名程の有力な逃げが形成された。中島もしっかりローテーションに加わり、メイン集団とのタイム差をみるみる広げていった。レース最終盤で、自身のトラブルにより中島は先頭集団から遅れをとったが、最後まで粘り全体の11着(オープン参加のため順位無し)でフィニッシュ。U23年代で最も活躍した選手に贈られる「U23特別賞」を見事獲得した。メイン集団に残る形となった選手らも、終始集団の前方で積極的な目立つ動きを見せた。

国内トップのレベルに圧倒されながらも、参加メンバー全員がそれぞれの立場で健闘。講師陣も彼らの頑張りを高評価し、良かった点も悪かった点も各々の今後の活動に是非活かして欲しいと語った。

鳳来寺山の上り坂を含む起伏に富んだ地域を100㎞走行する (c)Keita YAMAUCHI

■レース後の中島のコメント

「最後の展開に絡むことはできなかったが、作戦通りレース中盤で10人ほどの勝ち逃げに乗ることができた。この日本のトップカテゴリーの舞台で自ら足を使って勝負できたのは良かったと思う。今回の合宿やレースを通して、この地域の練習環境の素晴らしさや住民の方々の温かさを感じたので、今後もこのような環境が発展していくのがすごく楽しみ。」

■合宿全体を通しての中根のコメント

愛三工業レーシングチーム専任アドバイザーである中根英登 (c)Keita YAMAUCHI

「昨年はジュニア世代を中心に、今年は最終日にレースカリキュラムを準備した事もありU23を対象に実施しました。もしかしたら2年後の愛知名古屋アジア競技大会に出場する可能性だってある世代。またこれからの人生を選択していかなければいけない年齢でもある世代。そんな選手たちを対象に、日本代表コーチを長年務められてた柿木さんと、現在のジュニア日本代表チームの遠征帯同もされており海外での選手経験が豊富な竹之内さんという豪華なスタッフ陣と共に、自転車のトレーニング環境が優れている東三河地域でのトレーニングキャンプと座学講習会を実施しました。

起伏に富み雄大な自然の中に歴史の跡が残る東三河地域は、「トレーニング」として自転車で走るのも、「歴史巡り」などでゆったりサイクリングするのにも気持ちの良い場所です。また車道にはブルーラインが引かれており、車道における自転車と車、モータバイクとの共存が感じられる地域でもあります。愛三工業レーシングチームもファン交流会や選手のトレーニングコースの一部で利用しており、プロレベルの選手たちにとっても良い環境です。

今回は、四谷千枚田や鳳来寺山などの上り坂を活用してしっかりトレーニングメニューをこなしたり、観光地としてもチルスポットとしても人気の高い乳岩峡で大自然を感じながらのリカバリータイムを設けたりと、選手たちも東三河を堪能しながらオンとオフの切り替えを学べたかと思います。大学やチームの垣根を越えた交流はとても良い刺激となったかと思いますし、本事業後でもレース会場で言葉を交わせる関係構築の場となってくれたのであれば嬉しく思います。この場を提供してくださった東三河県庁の方々にお礼申し上げます。」
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