「大怪我を負った3ヶ月前ならば考えられなかった勝利だ」と、復活勝利を飾ったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)は涙ながらに喜んだ。敗れたポガチャルやエヴェネプールなど、ツール第11ステージを選手たちの言葉で振り返ります。



ステージ優勝&総合3位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク)

ポガチャルとのスプリントを制し、雄叫びを上げるヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

レース直後インタビュー

もちろんこれは感情の動かされる勝利だ。落車の大怪我から復帰し…この勝利が意味するものは大きい。ここ数ヶ月の出来事が頭をよぎり、家族がいなければ不可能な結果だ。この場に戻ってこれただけで嬉しかったのに、僕を常に支えてくれた家族のために勝つことができた。

タデイのアタックは強烈で、ついていくことができなかった。追いつくことはできないと思っていたが、懸命に踏み続けたら追いついた。その後は彼と協力しながら走り、スプリントで勝てて驚いたよ。今日の勝利は本当に嬉しく、こんな結果は(怪我をした)3ヶ月前に想像すらしていなかった。

―今日は心理的な戦いで勝てたのだと思っているか?

それは全く考えていなかった。今日は自分のペースを守ることだけに集中し、直前までスプリントのことは考えていなかった。

4月の大怪我からの復活勝利を挙げたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

表彰式後インタビュー

今日立てた作戦はポガチャルのアタックについていくこと。でも彼の力強いアタックについていくことができず、それ以降はタイムトライアル状態だった。下りではプリモシュ(ログリッチ)の力を借り、登り返しは再びタイムトライアルとなった。正直、追いつけると思っていなかった。自分の走りに満足しており、勝利できたなんて信じられない。

あの落車を考えれば、このレベルで戦えるようになったなんて信じられない。大会までの準備期間は1ヶ月半しかなく、開幕を良いコンディションで迎えたものの、ここまでとは思わなかった。スプリントでポガチャルに勝ったことは今後の自信に繋がる。なぜなら今日はタイムを失うのではないかと恐れていたステージだったから。ステージ勝利はしたが、タイム差を1秒縮められたことは勝利に等しい結果だよ。

ステージ2位&マイヨジョーヌ&マイヨアポワ タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

ポガチャルに追いついたヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:A.S.O.

チームは良い走りをしてくれた。(1級山岳)ピュイ・マリーでは感覚が良くアタックしたのだが、ヨナス(ヴィンゲゴー)が最後から2つ目の山岳で追いついてきた。その後は2人でフィニッシュまで走った。彼がトップコンディションに戻ってきたことは明らかなので、これからはフェアな戦いになる。

タフなステージの最後にしてはかなり良いスプリントができたのだが、それでも負けてしまった。とてもタフな日だったが、美しい景色のなか楽しいレースだったよ。この後のツールもこういう戦いを続くといいね。

敗れながらもマイヨジョーヌのリードを拡大したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:A.S.O.

コーナーギリギリまで行ってしまった1コーナーを除き、下りでは良い感覚だった。しかし最後から2つ目の登りまでに力を使いすぎてしまったようだ。だからヨナスを待ち、ボーナスタイム獲得に専念した。その後はスプリントに備えたのだが、本当に彼は強かった。

―今日は心理的な戦いに負けたと思うか?

そうは思わない。1級山岳で僕が仕掛け、次の山岳で追いつかれただけ。今後はこのタイム差を保ちながらピレネー山脈に入りたい。今日はロングショットを試みたが、ピレネーでは違うスタイルのレースが求められる。その攻め方のほうが練習を積んでいるので、準備はできている。

ステージ3位&マイヨブラン レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)

先頭を追いかけるプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)とレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

ヨナスとタデイの走り方を見れば、彼らが違うリーグ、違うレベルにいることは明らかだ。絶好調ではなかったためタデイのアタックに反応できず、最後から2番目の登りでも遅れたものの、自分の走りには満足している。自分を信じて踏み続け、かなり近いタイム差でフィニッシュできた。またプリモシュ(ログリッチ)と協力できたのは大きかった。不幸にも落車してしまった彼が無事であることを祈っている。

アダム・イェーツの牽引からタデイがアタックした時、無理についていっていればこのタイム差では済まなかっただろう。だからこそ自分のリズムで登ったことは良い判断だった。25秒差は悪い結果じゃない。

落車したプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、レッドブル・ボーラ・ハンスグローエ)について語るエンリコ・ガスパロット監督

プリモシュの落車の影響は大きくないだろう。無事チームバスに戻ってきた彼の姿を見ることができ、僕たちは安心したよ。また彼は大丈夫に見え、それが今日のような日は最も重要なことだ。

ヴィスマ・リースアバイクのグリシャ・ニールマン監督

勝利したものの、総合タイムは1秒しか縮めることができなかったヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ヴィスマ・リースアバイク) photo:CorVos

タデイ・ポガチャルを相手にスプリントで勝つことは珍しいので、ヨナスにとって嬉しい勝利となっただろう。また今日はチャンピオンの走りを見せ、勝者に相応しかった。最後から2つ目か3つ目でポガチャルがアタックすることは分かっていた。それにヨナスはついていけず、背後につくことを狙っていたので想定外の展開だった。しかしもしあのまま背後についていれば、スプリントで勝てなかったかもしれない。

レースの最後の1時間は全員がオールアウトで踏み続けなければならない。だから最後から2つ目の登りで、ヨナスが見せた走りは本当にすごかった。麓であった35秒差を、自分を信じて徐々に縮めていったのだからね。総合でまだ1分14秒差はあるが、先は長い。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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