ツアー・オブ・ジャパン第4ステージは、序盤に形成された先頭集団に乗ったジョシュア・ラドマン(セント・パイラン)と山本哲央(日本ナショナルチーム)の2名が逃げ切り、ラドマンが優勝した。山岳賞は中井唯晶(シマノレーシング)が維持。寺田吉騎(シマノレーシング)がポイント賞を獲得した。



「うだつの上がる町並み」に選手達が揃った photo:Satoru Kato

園児達の花神輿が練り歩く photo:Satoru Kato
平日朝から多くの観客がスタート地点に集まった photo:Satoru Kato


ツアー・オブ・ジャパン4日目は、岐阜県美濃市でのステージ。国の伝統的建造物群保存地区に指定され、「うだつの上がる町並み」として知られる旧今井家住宅前をスタートし、4kmのパレードののちリアルスタート。長良川沿いに走る1周21kmの周回コースを6周し、美濃和紙の里会館前にフィニッシュする137.3kmのレースだ。途中、周回のコントロールラインで計2回のスプリント賞、コース終盤の16km過ぎの登りに2級山岳が2回設定される。登りは2級山岳への1ヶ所のみ。平坦基調なコースは例年集団でのスプリント勝負となる。

第4ステージのスタートラインに揃った4賞ジャージ photo:Satoru Kato

古い街並みを集団が駆け抜けていく photo:Satoru Kato

個人総合優勝を狙う選手とチームにとっては、ボーナスタイム以上の差が付きにくいため動きを取りにくいステージ。一方で、山岳賞やポイント賞争いは、翌日の信州飯田ステージのコースの厳しさを見据えてここでポイントを稼ぐための動きが出るステージでもある。

雲多めながらも晴れ間から強い陽射しの1日 長良川沿いを集団が進む photo:Satoru Kato

雲多めながらも陽射しに暑さを感じる中スタートしたレースは、周回コースに入ると動きを見せる。1周完了時に設定された1回目のスプリント賞を寺田吉騎(シマノレーシング)が先頭通過。この動きをきっかけに山岳賞ジャージを着る中井唯晶(シマノレーシング)、山本哲央(日本ナショナルチーム)、ジョシュア・ラドマン(セント・パイラン)、モハマ ド・ヌル・アイマン・モフド・ザリフ(トレンガヌ・サイクリングチーム)の4名が先行。後続集団との差は一気に1分以上まで開く。

1回目の山岳賞は中井唯晶(シマノレーシング)を先頭に通過 photo:Satoru Kato

4名を送り出した集団はJCLチーム右京がコントロール photo:Satoru Kato

2周目と5周目にされた山岳賞は中井が先頭通過し、山岳賞ジャージ維持をほぼ確実にする。この間に後続集団とのタイム差は2分以上まで開き、中井がバーチャルリーダーとなる。しかし中井は5周目の山岳賞のあと先頭集団を離脱。その後ザリフも遅れ、先頭集団は山本とラドマンの2名となる。

5周目、中井唯晶が遅れて3名になった先頭集団 photo:Satoru Kato

5周目、メイン集団はJCLチーム右京が牽引して徐々に差を縮める photo:Satoru Kato

最終周回に入り、先行する2名とJCLチーム右京がコントロールする集団との差は1分30秒まで縮まる。しかし周回後半に入ってもそれ以上差は縮まらず、2名の逃げ切りが確定的となる。

ジョシュア・ラドマン(セント・パイラン)が山本哲央(日本ナショナルチーム)を下してステージ優勝 photo:Satoru Kato


残り1km、後方に集団が迫るが追いつく距離ではなく、2人のスプリント勝負へ。残り100m、背後からラドマンが仕掛けると山本に追える力はなく、ラドマンがUCIレース初勝利を挙げた。

集団の先頭は窪木一茂(日本ナショナルチーム)、その後方に寺田吉騎(シマノレーシング) photo:Satoru Kato
ステージ優勝を逃したものの、逃げ続けた山本哲央を窪木一茂が労う(日本ナショナルチーム) photo:Satoru Kato


第4ステージ優勝 ジョシュア・ラドマン(セント・パイラン) photo:Satoru Kato

第4ステージ優勝 ジョシュア・ラドマン コメント
「集団が追ってきていたが、ペースが抑えられているようだったのでチャンスがあると思っていた。途中メカトラがあったけれど、このコースは自分に合っていると感じていた。最後に2人になった時、日本人選手(=山本哲央)はスプリントが強そうだったので少しナーバスになった。残り20mで差が広がったのを見て勝ったと思った。

UCIレースは昨年ニュージーランドサイクルクラシックに出場して、このツアー・オブ・ジャパンが二つめになるが、ステージ優勝は初めてなので嬉しい。後半は明日の飯田と富士山が厳しいレースになりそうだけれど、チームメイトのサポートをするつもり。相模原はそこまで登りが厳しくないのでチャンスがあると思っている」

1ポイント差でポイント賞ジャージを獲得した寺田吉騎(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

ポイント賞 寺田吉騎 コメント
「1位と13ポイント差、2位と5ポイント差だったので、中間スプリントを獲ってマルチェッリ選手よりも前でフィニッシュすればポイント賞を獲得できるとわかっていた。1周目に4人の逃げが出来そうなところで入部(正太朗)さんが詰めて集団に繋げてくれた。そこから入部さんがまた引いてくれて、ポイント賞を1位通過することが出来た。最後のスプリントはマルチェリ選手が後ろについていたが、前でフィニッシュ出来て全てが計画通りに進んだ。

明日の飯田は厳しいコースになるが、出来るだけ残って少しでもポイントを稼いでいきたい」

山岳賞を維持した中井唯晶(シマノレーシング) photo:Satoru Kato

山岳賞 中井唯晶 コメント
「寺田選手がスプリントポイントを獲った直後、集団が伸び切っていたところで飛び出した。4人の逃げが決まって、山岳賞ジャージを欲しい選手が他にいなかったので、2回ともに争うことなく山岳賞を1位通過することが出来た。バーチャルリーダーになっていたので、集団に戻らずにそのまま逃げ切っていれば本当のレースリーダーになれたかもしれない。けれど、僕が集団に戻ったから総合首位勢があれ以上差を縮めなかった。だから逃げ切った、と思うようにしている。

明日の飯田は間違いなく厳しいレースになると思う。1級山岳を1回でも1位通過すれば7ポイント取れれるので、あとは耐えて完走すれば可能性が見えてくると思う」

個人総合首位はジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京) photo:Satoru Kato
新人賞 ザッカリー・マリッジ(チームブリッジレーン) photo:Satoru Kato


ツアー・オブ・ジャパン 第4ステージ 美濃 結果(137.3km)
1位 ジョシュア・ラドマン(セント・パイラン、オーストラリア) 3時間6分21秒
2位 山本哲央(日本ナショナルチーム)
3位 窪木一茂(日本ナショナルチーム)
4位 リース・ブリットン(セントパイラン、イギリス)
5位 寺田吉騎(シマノレーシング)
6位 マッテオ・マルチェッリ(JCLチーム右京、イタリア)
7位 レイモンド・クレダー(キナンレーシングチーム、オランダ)
8位 橋本英也(日本ナショナルチーム)
9位 今村駿介(日本ナショナルチーム)
10位 モハンマド・ヌル・アイマン・ロスリ(トレンガヌ・サイクリングチーム、マレーシア)
個人総合成績 第4ステージ終了時
1位 ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京、イタリア) 9時間1分59秒
2位 アナトリー・ブディアク(トレンガヌ・サイクリングチーム、ウクライナ) +15秒
3位 カーター・ベトルス(ルージャイ・インシュランス、オーストラリア) +18秒
4位 ドリュー・モレ(キナンレーシングチーム、オーストラリア) +19秒
5位 ザッカリー・マリッジ(チームブリッジレーン、オーストラリア) +41秒
6位 マックス・ウォーカー(アスタナ・カザクスタン・ディベロップメントチーム、イギリス) +1分37秒
ポイント賞 第4ステージ終了時
1位 寺田吉騎(シマノレーシング) 45p
2位 ジョバンニ・カルボーニ(JCLチーム右京、イタリア) 44p
3位 モハマド・ヌル・アイマン・モフド・ザリフ(JCLチーム右京、マレーシア) 43p
山岳賞 第4ステージ終了時
1位 中井唯晶(シマノレーシング) 25p
2位 ライアン・カバナ(キナンレーシングチーム、オーストラリア) 6p
3位 ドリュー・モレ(キナンレーシングチーム、オーストラリア) 5p
チーム総合成績 第4ステージ終了時
1位 JCLチーム右京 27時間9分47秒
2位 キナンレーシングチーム +8秒
3位 ルージャイ・インシュランス +38秒
明日の第5ステージは長野県飯田市。1級山岳が設定されるハードコースで総合優勝争いを含む各賞争いが加熱しそうだ。今年のツアー・オブ・ジャパンの行方が見えてくることになるか?

text&photo:Satoru Kato

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