1級山岳オロパの麓でパンク、落車したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が、残り4.3km地点でアタック。後続を引き離し、ジロ・デ・イタリア第2ステージの勝者に輝くと共にマリアローザを着用した。



パンターニの伝説残る、1級山岳オロパの頂上を目指すジロ第2ステージ photo:RCS Sport

前日に勝利し、マリアローザを着るジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) photo:RCS Sport
ジロ・デ・イタリア2024第2ステージ コースプロフィール image:RCS Sport


劇的な三つ巴スプリントの末、ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)が自身2度目の区間優勝と共にマリアローザを得た第1ステージ。それから一夜明けたジロ・デ・イタリア2日目に、早くも山頂フィニッシュがやってきた。

サンフランチェスコ・アル・カンポのヴェロドロームを出発後は90kmほど平坦路が続き、背の低い2つの丘をクリア。その後は2つ連なる3級山岳を越え、最後に駆け上がるのは1級山岳サンチュアリオ・ディ・オロパ(距離11.8km/平均6.2%)。1999年大会に麓でメカトラに見舞われたマルコ・パンターニが49人をごぼう抜きしたことで知られ、ユネスコ世界遺産でもある巡礼地だ。

マリアチクラミーノを着るフィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)ら5名が逃げた photo:CorVos

アクチュアルスタートの旗が降られた直後から、繰り下げでマリアチクラミーノ(ポイント賞ジャージ)を着るフィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)がアタックする。その動きは逃げに繋がり、チームメイトであるマルティン・マルチェルージ(イタリア)らと共に5名の逃げグループを形成した。

第2ステージで逃げた5名
クリスティアン・スカローニ(イタリア、アスタナ・カザクスタン)
アンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)
ダヴィデ・バイス(イタリア、ポルティ・コメタ)
マルティン・マルチェルージ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)
フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ)

メイン集団はヘルメットやグローブ、アイウェアまでピンクに染めたナルバエスのイネオス・グレナディアーズがコントロール。その先頭では元イギリス王者を表すユニオンジャックが両袖口に入るコナー・スウィフト(イネオス・グレナディアーズ)が、逃げとのタイムギャップを4分差まで許す。そしてそのプロトン前方では前日に勝利を逃したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が、元チームメイトであるフェルナンド・ガビリア(コロンビア、モビスター)と談笑するシーンなども中継映像に映された。

プロトンはイネオス・グレナディアーズが中心となりコントロールした photo:RCS Sport

プロトンと逃げは順調に距離を消化していき、いよいよ平坦路の終わりを告げる残り67.1kmの中間スプリントを迎える。そこではフィオレッリが先着し、ポイント賞ランキングで暫定トップに立つ。そして2分半遅れでやってきたプロトンの先頭は、オラフ・コーイ(オランダ、ヴィスマ・リースアバイク)を退けたカーデン・グローブス(オーストリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が先着(6位通過)して3ポイントを手に入れた。

その直後のラウンドアバウトではコーイや前日5位のニコラ・コンチ(イタリア、アルペシン・ドゥクーニンク)ら4名が落車する。しかし皆大きな怪我はなく、続くインテルジロ(スプリントポイントとボーナスタイムが付与される地点)もフィオレッリが先着。そして残り52km地点、一つ目の3級山岳を前にピッコロが逃げ集団から飛び出した。

逃げから飛び出し、単独先頭に立ったアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:EF Education - EasyPost

マリアローザと混同するためピンク色ではなく、黒いスペシャルジャージを纏ったピッコロは逃げ集団に1分13秒、プロトンに2分の差をつけ最初の3級山岳を通過する。そしてピッコロはその勢いのまま2つ目の3級山岳もトップで越え、イタリア人としては一層特別感のあるであろう1級山岳サンチュアリオ・ディ・オロパ(距離11.8km/平均6.2%)に足を踏み入れた。

ピッコロ以外の逃げを捕らえ、先頭を1分半差で追うメイン集団では1級山岳の手前でポガチャルの前輪がパンクする。そのままコーナーを曲がろうとしたポガチャルは落車したものの、既にスピードを緩めていたためダメージはなく、素早いバイク交換とチームメイトの助けにより集団に復帰。一方、プロトンの前方ではボーナスタイムが与えられる中間スプリントでゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が2位通過し、-2秒を得た。

ポガチャルによるオロパの麓でパンクは、パンターニの伝説的な走りを想起させたものの、実際は多くがレース前に予想した通りの展開となった。

マルコ・パンターニが1999年に伝説を作った1級山岳サンチュアリオ・ディ・オロパ photo:RCS Sport

残り4.3km地点でアタックし、単独先頭に立ったタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

ポガチャルが戻ってきたプロトンはUAEチームエミレーツが牽引を始め、集団の人数を絞りながら残り6.5km地点でピッコロを吸収する。そしてラファウ・マイカ(ポーランド、UAEチームエミレーツ)がペースを一気に上げると、残り4.5kmからポガチャルがアタック。それにベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)とゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が食らいついた。

しかしすぐにトーマスはマイペース走法に切り替え、ポガチャルはオコーナーを引き離す。そしてバイク交換で手元のサイクルコンピュータがないポガチャルはハイケイデンスで脚を回し、後続との差を徐々に拡げていった。

パンターニの登坂記録(残り6.59km地点から)には24秒届かなかったものの、オロパを17分28秒で駆け上がったポガチャルがフィニッシュに到達。初出場のジロ・デ・イタリアで前日に逃した区間優勝と共に、念願のマリアローザを手に入れた。

独走を決め、ジロ初勝利を掴んだタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

自身初となるマリアローザに袖を通したタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

「夢が叶った。ジロで初勝利と初めてのマリアローザだ。チームによる作戦が完璧にハマり、総合でも良いタイム差で首位に浮上した。だからこそ今後のステージを楽しみながら走ることができる。(最終山岳の)麓では路面の穴でパンクしてしまったが、その後も焦ることはなかった」とポガチャル。これでツール・ド・フランスとブエルタ・ア・エスパーニャに続く、グランツール全てでの区間優勝を手に入れた。

後続ではアシストの力を借り、タイム差を最小限に抑えたダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)が27秒差で2位。3位には終始一定のペースで登ったトーマスが入る一方で、「ポガチャルのペースに付き合い過ぎてしまった」と後悔を語るオコーナーは1分遅れ(区間13位)と総合タイムを失った。

27秒遅れでやってきた2位はダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)が ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)を退けた photo:CorVos

ジロ・デ・イタリア2024第2ステージ結果
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 3:54:20
2位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:27
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)
4位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、アスタナ・カザクスタン)
5位 フロリアン・リポヴィッツ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
6位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、チューダー・プロサイクリング) +0:30
7位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク)
8位 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター)
9位 フアン・ロペス(スペイン、リドル・トレック) +0:35
10位 ヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ) +0:37
マリアローザ 個人総合成績
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 7:08:29
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:45
3位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) +0:54
5位 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター)
6位 ロレンツォ・フォルトゥナート(イタリア、アスタナ・カザクスタン) +1:05
7位 フアン・ロペス(スペイン、リドル・トレック) +1:09
8位 ヤン・ヒルト(チェコ、スーダル・クイックステップ) +1:11
9位 エステバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト) +1:24
10位 ベン・オコーナー(オーストラリア、デカトロンAG2Rラモンディアル)
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 フィリッポ・フィオレッリ(イタリア、VFグループ・バルディアーニCSF・ファイザネ) 42pts
2位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 27pts
3位 ジョナタン・ナルバエス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ) 25pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) 51pts
2位 ダニエル・マルティネス(コロンビア、ボーラ・ハンスグローエ) 26pts
3位 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、アンテルマルシェ・ワンティ) 20pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ヴィスマ・リースアバイク) 7:09:23
2位 アレックス・ボーダン(フランス、デカトロンAG2Rラモンディアル) +0:44
3位 マウリ・ファンセヴェナント(ベルギー、スーダル・クイックステップ) +0:48
チーム総合成績
1位 ボーラ・ハンスグローエ 21:29:51
2位 イネオス・グレナディアーズ +0:32
3位 アスタナ・カザクスタン +0:46
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos