ショッキングピンクでお馴染みのマックオフが、世界最速チェーンルブ「LUDICROUS AF」をさらに高いレベルで使うための超音波施工プログラムをスタート。それに伴い開催されたメディア向け発表会と、本国スタッフへのインタビューを通して紹介していきたい。



マックオフ LUDICROUS AF

自転車は最もエネルギー効率の良い乗り物だと言われている。クルマよりもバイクよりも手軽で、かつ最も少ないエネルギーで遠くまで走れるし、純粋に速さを追い求めるロードバイクであればなおさら。シンプルであることを極めた乗り物だからこそ、全てのバイク/パーツメーカー、そしてサイクリスト個々に至るまで、空気、路面、そして摺動部の「抵抗」を減らすことが大きなモチベーションになってきた。

中でも目に見えて分かりやすいのがチェーンが生む摩擦抵抗だろう。抵抗を減らすために作られたチェーンルブ(潤滑剤)は世界各国多種多様。オイルベースのもの、グリスベースのもの、さらにここ近年増えるワックスやパラフィン、フッ素樹脂(PTFE)を配合したもの...。そんな中でもイギリス発の高品質ケミカルブランド、マックオフが「世界最速ルブ」と胸を張るのが、それまでハイエンドだった「HYDRODYNAMIC LUBE(ハイドロダイナミックルブ)」を置き換える形でデビューさせた「LUDICROUS AF(ルディキュラス AF)」だ。

スピードと耐久性、信頼性、環境に配慮した成分、静粛性、さらに使用条件の幅広さという、ありとあらゆる性能を3年間を要して煮詰めたLUDICROUS AFが、フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)によるアワーレコード更新の際に使われたのは有名な話。ルブの詳細は登場時のレビュー記事を確認してほしいが、マックオフはルブ同様、その効果を最大限引き出す上で最良の施工方法を模索してきたという。

東京のダイアテックショールームで行われた発表会。本国からはセールスマネージャーのティム・バイリー氏が来日した photo:So Isobe

今回マックオフが一般ユーザー向けにアナウンスしたのが、超音波機器を使った洗浄とルブ施工を行うシリアスユーザー向けプログラム。これまでチェーンコーティングといえば「煮込み」が必要なワックス系も含めてユーザー自ら施工するものだったが、これは数あるルブブランドの中でも唯一となるショップ施工メニュー。マックオフがイネオス・グレナディアーズやEFエデュケーション・イージーポストといったプロチーム向けに施工しているものと同じ内容といい、最も抵抗を生むチェーンピン内部に入り込んだ汚れを除去し、ルブを浸透させるという従来から飛躍したものとなる。

プログラムは2つの超音波洗浄機を使い、1.洗浄→2.ブラシでの手洗浄→3.2度目の洗浄→4.お湯ですすぐ→5,ウエスで拭き取ったのちに乾燥→6.ディグリーザーで完全脱脂→7.ルブ施工→8.2度目のルブ施工、という工程を経る。超音波機器そのものもスプロケットやチェーンを痛めない周波数や温度、さらには最も効率良いバスケットの深さ・容積を探り続けたというこだわりようだ。

洗浄されてゆく筆者のチェーン。ある程度綺麗にしたはずだったが...汚れがモワワ... photo:So Isobe
超音波洗浄をかけた後はブラシで手洗い。もう一度超音波洗浄を行う photo:So Isobe


2度目の洗浄が終わったチェーン。この時点でピカピカに photo:So Isobe
お湯ですすいだ後はブロワとウエスで乾燥。このマックオフのウエスも一見普通だが、毛が抜けないよう配慮された専用開発品だという photo:So Isobe


いよいよLUDICROUS AFの施工工程。ルブに付けて10分間x2セット photo:So Isobe

メディア向けに説明とPRを行なったマックオフのセールスマネージャー、ティム・バイリー氏によれば、超音波洗浄機を使わずしてチェーンのコマ内部に入り込んだ汚れを取り除くのは不可能。「普通に洗っただけでは外見が綺麗になるだけ。僕らは内部にまで洗い上げるこの方式を、自負も込めて"サージカル・クリーン"と呼んでいます。今まで見過ごされてきたこの部分を改善することは、マージナル・ゲインを掲げるイネオスや、パートナーシップを組むイギリス車連からの要請でもあったんです」とも。

ファーストインプレ:変速時のスムーズさに驚く。脚でも感じるクッション性能

発表会では筆者も含めて参加メディアが持ち込んだチェーンそれぞれに超音波施工をしてもらったのだが、やはり専用器具を使い、その道のプロに作業を任せられるのは、まず一つ大きな安心材料。およそ1時間半の施工時間を要するため、ショップには事前予約をしておく、もしくはレース前などに余裕を持って預けておくのがベターだろう。

ピン内部までルブが染み込んだチェーンが完成 photo:So Isobe

超ピカピカ、超しみしみの最上級チェーンが完成。所要時間はショップ施工で1.5時間ほど photo:So Isobe

50ml入りで9,900円(税込)とちょっと引いてしまうほど高価なLUDICROUS AFをたっぷりと染み込ませたチェーンをいざ使ってみると、ピン内部までルブが染みていることもあってか、パラフィン系ルブとは異なる「オイル感」を感じる踏み心地。ある程度距離を走り、何度もチェーンオイルを差してきた中古チェーンだが、自分で洗浄・注油をしたときとはだいぶ異なるいい感じだ。中でも一番体感できたのはチェーンをタスキがけ(インナーxトップ、もしくはアウターxロー)にした時の軽さだった。

今まで使っていたのと同じチェーンなのに確実に横方向のフリクションが軽く、一番負担が掛かると言われるタスキがけ状態の動きがスムーズだ。変速動作中のチェーンの動きも軽く、ガチャつくストレスなくチェーンがストンと所定の位置に収まる。

ダイアテックの担当スタッフに話をしたところ、真っ先に感じた「オイル感」もLUDICROUS AFの特殊ポリマー成分がもたらすクッション性能(金属同士の強い接触を防ぎ摩耗を遅らせる)によるものだといい、マックオフの研究データによればチェーンは2000〜3000kmもの長寿命化が望めるほか、馴染みが出た最も良い状態(=抵抗減の状態)を1500km〜最大3000kmまで維持できるという。非常に高価なLUDICROUS AFだが、優れた耐久性ゆえに距離あたりの単価に換算すると他製品との価格差は小さくなる、とも。

施工チェーンで200〜300kmほど走ってもオイル切れは一切感じないし、メンテナンスもさっと汚れを拭き取っただけ(汚れは少し拾いやすいように感じる)。マックオフによれば1000km毎に超音波施工を行い、その間は汚れの拭き取りと、必要であればLUDICROUS AFの差し直しをすれば完璧という。

全国19店舗で施工プログラムがスタート。2024年3月31日まではキャンペーンプライスで頼める photo:So Isobe

気になる施工価格はLUDICROUS AFの場合で税込4,980円で、HYDRODYNAMIC LUBEの場合は4,480円(使用中チェーンの場合は別途クリーニング費用が必要)。ただし2024年3月31日まではキャンペーンプライスとしてそれぞれ500円引きの4,480円と3,980円で施工してもらえるとのこと。どちらもオン/オフ問わず使える超高性能ルブであり、ここ一発のレースやイベントで使いたいユーザーにとっては、最も安価に愛車の性能アップを叶えられるサービスとなりそうだ。施工店舗はこの記事下部、もしくはマックオフの特設ページ下部のショップリストを確認した上で連絡してほしい。

以下にマックオフのバイリー氏へのQ&Aを紹介して記事を締めくくりたい。ヨーロッパとアジアパシフィックのセールス部長として飛び回る彼に、LUDICROUS AFのこと、知られざるチェーンの走行抵抗やメンテナンスなどについてショートインタビューを行なった。



マックオフ本国スタッフインタビュー:「完璧な最速チェーンの乗り味を一般ユーザーに届けたい」

ヨーロッパとアジアパシフィックのセールス部長、ティム・バイリー氏。BMXとMTBをルーツに持つオフロード野郎(自称)だ photo:So Isobe

CW:LUDICROUS AF、そしてHYDRODYNAMIC LUBEをより良い状態で使うための超音波プログラムですが、そもそもどういうきっかけで開発、そして発売を?

マックオフの掲げるモットー「クリーン、プロテクト、ルブ(洗浄、保護、注油)」の第一項目がクリーン、つまり綺麗な状態にメカを保つことだからです。ルブに至るこの一連の流れを完璧なものにしたいという思いがあるし、だからこそ我々が自社ラボで開発し運用していた工程を、一般ユーザーにも味わってもらいたかった。

僕たちは業界のリーダーであり、フォロワーでいたくないと思っている。だから業界をリードし、シェアし、一般ユーザーが広く使う事のできるようにしたかったのです。例えば今の流れで言えば(ホイールブランドの)ZIPPはリーダーでしょう。彼らのNSWホイールは業界に衝撃を与えたし、今や自動車の開発でも目をつけられています。

CW:チェーンルブプログラムを一般ユーザー向けサービスとして運用するのはおそらく世界初ではないかと思うのですが...?

僕らの研究開発部のトップは機械工学で修士号を持っている人物です。彼は15年前にチェーン抵抗を計測する機器をイチから設計し、今に至るまでそこから得たノウハウを社内でシェアしてきました。15年前まではチェーンを綺麗にするプロセスが分かっておらず、単純に綺麗にすれば速いチェーンになると思っていたけれど、ルブを差すだけではなく、その前までの準備が重要であることが分かりました。どんなルブを使えば、そしてどのように洗浄すれば速くなるのか、あるいは遅くなるのかを、細部に至るまで知り、答えを導き出しました。この超音波プログラムはひとまずの集大成と言えるでしょう。

CW:プレゼンテーションでは、最も抵抗の少ないチェーンはある程度距離を走ったものというのが意外でしたが、もう少し詳しく教えてもらえますか?

よく言われるチェーンの伸びは、金属が伸びるのではなく、チェーン内部のピンが摩耗して遊びが増えることで生まれます。しかし新品状態では馴染みが出ていないので抵抗が大きい。「新しいチェーンだから速い!」と思いこむのは間違いで、実際それはまだ遅いチェーンなのです。

チェーンはLUDICROUS AFなど高性能ルブを差しながら使うことで適度な摩耗(=馴染み)が出て少しずつ抵抗は減っていきます。走り方にもよりますが、最も抵抗が低くなるのが3000kmくらい走った時で、その後はチェーン伸びによって抵抗が大きくなる。だからマックオフがサポートするプロ選手は重要なレースの前には超音波施工を施した中古チェーンを使っています。

気合の入ったマックオフのメッセージ photo:So Isobe

CW:レースに向けて最速のチェーンを育てるためにはどうすればいいのでしょうか?

新品チェーンを用意する必要はなく、まだ耐用距離内であれば中古で大丈夫。しっかり洗浄して超音波施工をすることですね。新品の場合は純正の重たいグリスを落とし、最低でも3〜4時間は乗って馴染みを出しておくこと。洗浄とルブを繰り返せば繰り返すほど、そのチェーンは速くなるのです。それは我々の実験が証明していることです。

とにかく、日本での超音波プログラムはリーズナブルな価格でスタートすると聞いていますし、速くなりたい方にはまず試してもらいたいメニューです。5,000円以内でのチューンナップとしては、非常に効果的だと自負していますから。

マックオフ 超音波チェーンコーティング施工店舗
店舗名 郵便番号 住所 電話番号
オンザロードつくば店 305-0051 茨城県つくば市二の宮3-16-2 029-875-8677
サイクルショップ タジマ 376-0002 群馬県桐生市境野町2-657-1 0277-44-5170
BIKE SHOP SNEL 144-0056 東京都大田区西六郷1-32-6-1F 03-6906-7024
Go Ahead→HAPPY TRIATHLON 180-0004 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-28-7メゾンMEG 1F 0422-20-7566
TRYCLE 206-0812 東京都稲城市矢野口853-1 ハイブリッジ102 042-379-8041
クラウンギアーズ 151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷3-12-15佐野ビル1F 03-5770-8022
Y’s Road 川崎 210-0006 神奈川県川崎市川崎区砂子2-10-2カワサキ・ミッドマークタワー1F・2F 044-221-1531
カトーサイクル 457-0007 名古屋市南区駈上2-8-26 052-811-3741
スペシャライズド京都 615-0874 京都府京都市右京区西京極新田町21 075-925-6454
Jam cycle 617-0826 京都府長岡京市開田4丁目1-7 KSビル1F 075-748-9772
ウエムラサイクルパーツ梅田店 530-0057 大阪府大阪市北区曽根崎2-2-15 KDX東梅田1F 06-7711-4402
一条アルチメイトファクトリー箕面 562-0012 大阪府箕面市白島3丁目7番7号 072-735-7710
Cycle Flower 573-0075 大阪府枚方市東香里1丁目23-22 072-807-3864
THE EARTH BIKES 661-0047 兵庫県尼崎市西昆陽2-2-32 06-7509-3306
Grumpy 733-0822 広島県広島市西区庚午中1-18-32ドルミ庚午101 082-208-2535
サイクリングサロン ヒロシゲ 742-0005 山口県柳井市天神14-22 0820-22-0645
SUGIRIN 790-0811 愛媛県松山市本町5-6-2 089-925-4679
CLICK八幡 806-0047 福岡県北九州市八幡西区鷹の巣1-15-1メゾンモンブランII 1F 093-883-8484
スペシャライズド福岡 819-0006 福岡県福岡市西区姪浜駅南2−11−22 092-836-9366
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