ロンバルディアに向けて緊張を高める欧州ロード界。強豪選手が集結した最終前哨戦「トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ」でイラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が独走勝利を挙げ、存続の危機に瀕するチームに大きな一勝を捧げた。



ジュリアン・アラフィリップ(フランス)がスタートラインへ photo:CorVos
カラパスやチャベスら、強豪を揃えたEFエデュケーション・イージーポスト photo:CorVos


スタートに並ぶプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

「トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ(UCI1.Pro)」は、初開催1919年、今年で実に開催102回目を迎えた歴史と伝統あるクラシックレース。連続開催された「コッパ・アゴストーニ」、「コッパ・ベルノッキ」と共に今週末に迫ったイル・ロンバルディアの前哨戦に数えられ、この3つのレースで総合順位を争う「トリッティコ・ロンバルド」の最終戦でもある。

昨年はタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が優勝し、そのままロンバルディア優勝に弾みをつけたこのレース。そのためスタートリストにはグランツール顔負けの名だたる強豪選手が集った。

ロンバルディア連覇を狙うポガチャルは屈強なメンバーを従えてゼッケン1。ユンボ・ヴィスマはプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)をエースに据え、渦中のスーダル・クイックステップはジュリアン・アラフィリップ(フランス)を、リドル・トレックはバウケ・モレマ(オランダ)とジュリオ・チッコーネ(イタリア)を、ボーラ・ハンスグローエはジャイ・ヒンドレー(オーストラリア)を、グルパマFDJはティボー・ピノ(フランス)を、ジェイコ・アルウラーはサイモン・イェーツ(イギリス)をラインナップ。EFエデュケーション・イージーポストもリチャル・カラパス(エクアドル)とエステバン・チャベス、さらにリゴベルト・ウラン(コロンビア)を揃えるなど、文字通りシーズン最後の大一番に向けた前哨戦となった。

アップダウンを含む小周回を8周、小周回の一部コースを使う大周回を2周回する合計196.5kmレースでは、長いアタック合戦を経て元U23世界王者サムエーレ・バッティステッラ(イタリア、アスタナ・カザフスタン)を含む9名がエスケープ。UAEチームエミレーツが集団を率いる形でヴァレーゼの周回コースを駆け抜けた。

敗れたものの、アタックで好調ぶりをアピールしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

レースは70km以上を残して動いた。メイン集団が登坂区間で活性化し、ジャパンカップ参戦予定のアンドレア・ピッコロ(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)やアラフィリップらのアタックで集団が分裂。アタックを続けたアラフィリップとパヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ)、そしてアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)が抜け出す展開に。

ログリッチの盟友であるヤン・トラトニク(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が3名を引き戻したのも束の間、継続されるアタック合戦の最中にはチッコーネやヨン・イサギレ(スペイン、コフィディス)らが落車に巻き込まれてしまう。激しく落車したチッコーネはすぐさま病院に運ばれて骨折なしの診断を受けたものの、チームによれば重度の打撲。ロンバルディア出場可否は経過観察ののちアナウンスされるという。

結局決定的なアタックは決まらないまま、人数を減らしたメイン集団が当初からの逃げグループを吸収。ポガチャルやカラパスたちも攻撃を仕掛ける中、リードを築いたウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)とワレン・バルギル(フランス、アルケア・サムシック)も終盤の登坂で捕まえられた。

ウラソフがペースを上げ、それを引き継いだポガチャルのペースメイクで集団は木っ端微塵。結果的にポガチャル、ログリッチ、ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)、エンリク・マス(スペイン、モビスター)、カラパス、イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ)、フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)、そしてマイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)という超強力メンバーが抜け出し、ペースが緩んでもなお一人踏み続けたファンウィルデルが独走体制に持ち込むこととなる。

「先週土曜日のエミリアでは調子が悪かったけど、上向きになったのでアタックしたかった。テンポで登っている時にふと差が出来ていたので全力で踏み込んだんだ」と言うファンウィルデルは強豪グループを尻目にリードを拡大。思うようにペースを上げられない後続に対して最後まで15秒差を維持しきった。

9.5kmの独走を成功させたイラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

2位でフィニッシュするリチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) photo:CorVos

DSMから2021シーズン途中に移籍し、今年ドイッチュラント・ツアーを制するなど頭角を現す23歳ファンウィルデルが、9.5kmのロングアタックを成功させてヴァレーゼのフィニッシュラインに到達。1968年のエディ・メルクス以来となるベルギー人勝者になると共に、「難しい時間を過ごしているチームメイトやスタッフに捧げるエモーショナルな勝利になった。僕らが今このクソみたいな状況に納得していないことを示すために。僕らはこのままチームを継続したいと思っている」と、消滅の危機に瀕しているチームに大きな勝利を届けることとなった。

カラパスが一人16秒遅れの2位に入り、3位争いを制したのはウラソフ。ログリッチやポガチャル、カラパス、ウッズといったエース級選手が上々の仕上がりぶりを発揮し、途中逃げたアラフィリップは最終完走者(82位)となっている。

強豪を相手に勝ちきったイラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos
トレ・ヴァッリ・ヴァレジーネ2023結果
1位 イラン・ファンウィルデル(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 4:36:11
2位 リチャル・カラパス(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト) +0:16
3位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:18
4位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
5位 タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)
6位 マイケル・ウッズ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
7位 フィリッポ・ザナ(イタリア、ジェイコ・アルウラー)
8位 ヨン・イサギレ(スペイン、コフィディス)
9位 カルロス・ロドリゲス(スペイン、イネオス・グレナディアーズ)
10位 ベン・オコーナー(オーストラリア、AG2Rシトロエン)
text:So.Isobe
photo:CorVos

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