世界最大規模の自転車総合ブランド、ジャイアントが実に4年ぶりとなる展示会を開催した。新型DEFYやAVAILをはじめ、カデックスがリリースしたリムブレーキのハイエンドホイールCADEX 36などを紹介しよう。



様々なグレードで展開される新型DEFY

ジャイアントのプロショップ向け展示会は決まって横浜の大さん橋ホールで開催されており、崎陽軒のシウマイ弁当を食べてから会場に向かうのが毎年の恒例行事だった。しかし、ご存知の通り新型コロナウイルスの感染拡大によってリアルイベントが2020年から一気に途絶えてしまい、全てのショップ向け展示会も同様に開催が見送られてきた。

直近の1、2年は様子を見ながら各社対応してきたものの、ジャイアントは今年に至るまで展示会を開く機会はなく、今年開催するまで実に4年もの期間が空いてしまった。そんなジャイアントがついに展示会を復活させ、全国のショップに実際のプロダクトを披露した。

LivのAVAILもモデルチェンジを果たした

今年の注目トピックはエンデュランスロードのDEFY、Livのエンデュランスロード"AVAIL”のフルモデルチェンジ。基本コンセプトは変更せずフレーム、コックピット、シートポストなどを洗練させることで、DEFYとAVAILの持つポテンシャルを広げている。

フレームは現代のトレンドでもあるエアロテイストを取り入れたような直線的でシンプルな造形が採用される。一方でヘッドチューブ周りのシャープにエッジのたったデザインで、スピード感のある雰囲気を演出している。

扁平したシートステーによって快適性を確保する
マッシブなフロントフォークも徹底的に開発されている



チューブ形状によって反応性とコンフォート性能のバランスを整えているDEFYの設計は先代同様。特に大胆に扁平したダウンチューブや非常に細いシートステーはこのバイクの象徴的な作りと言っても過言ではない。

タイヤクリアランスは最大38mmまで拡幅された。グラベルタイヤの装着まで視野に入るタイヤクリアランスながら、DEFYが目指すのはオンロードを速く、快適に走るサイクリング。近年進化が著しい幅広タイヤを装着することで、軽快な走りを犠牲にせず、安定感のある走りでライドを楽しめる1台に仕上げられている。

上部がくびれるD-Fuseシートポストが登場した

専用のカーボンボトルケージが付属する

新型ではD型断面で快適性を高めたD-Fuseシートポストが大幅に刷新される。ヤグラ下部を絞り込み、衝撃を受けた時の"しなり”をさらに大きくすることで快適性を向上。加えてカーボンレイアップを見直すことで先代よりも大幅な軽量化していることも大きなポイントだ。

D-Fuseテクノロジーを採用したハンドルバーも一新。D型断面のフラット部分を再設計し、握り込みやすい形状とすることでフィット感向上に伴う疲労低減、痺れの発生を防ぐ性能を獲得している。またドロップ部を8°フレアさせる設計や、カーボンレイアップ見直しによる軽量化も進化したポイントだ。

2024モデルの最注目はエンデュランスロードのDEFYだ

新型ではケーブルの内装方式も変更となり、Advanced SL、Advanced ProグレードではPropelに用いられたD型コラムを使い、フォーク前方からフレーム内側へとケーブルを導き入れるようになった。この方式は内装用の追加部品が不要となるため軽量性を犠牲にしないことが魅力。またハンドルからフォークまではステム下側に沿わせるため、メンテナンス性も確保されている。

これらの進化を手に入れた新型DEFYは、Advanced SL、Advanced PRO、Advancedの3グレード5モデルの完成車が用意される。AVAILはAdvanced Pro、Advancedの2グレード3モデルの完成車。

TCR ADVANCED 2 KOMはリムブレーキ仕様のカーボンバイクとして入門機にピッタリだ

ロードバイクカテゴリーの新モデルは以上となるが、2024年モデルで特筆したいのはオールラウンドモデルTCRのラインアップが充実していること。ジェイコ・アウルラーが使用するトップエンドからエントリーグレードまで総勢10種類の完成車が用意されており、ユーザーのニーズに応えられる幅広い展開となっている。

特にAdvanced 2 KOMという完成車はシマノ105(11速)をコンポーネントに採用したリムブレーキ仕様のカーボンモデルで、価格は242,000円(税込)に設定されている。自転車の価格が高くなる近年の状況において、カーボンエントリーとして勧めやすい1台と言えるだろう。

PROPEL ADVANCED 2のピュアレッドも存在感が際立つカラーだ

PROPELのブルードラゴンフライの繊細なグラフィック

また2024年モデルではフレームのカラーリングにも凝っているので、実際にプロショップでチェックしてもらいたい。特にPROPEL ADVENCED SL(フレームセット)のブルードラゴンフライや、ADVANCED 2のピュアレッドには注目だ。

Livはカラーコンセプトを設定し、テーマに合わせた色味が採用されている。ヒーリングネイチャーと名付けられたローカーボン、ケルプフォレスト、サングリアといった深い色味のコレクションであったり、デジタルグラム(デジタルブラープル、ゴールデンヘイズ、ショアライン、マルベリーグリッター)という目立つカラーで彩られており、華やかなバイクに仕立てられている。

Liv LANGMAのマルベリーグリッターはラメが輝くデザインだ

Liv ENVILIVのサングリアは深みのある赤色で彩られる

バイクラインアップに追加されたバイクの中からピックアップしたいモデルは、マウンテンバイクのSTANCE(スタンス)だ。現代のスラックなジオメトリー、フロント140mm、リア125mmトラベルのサスペンション構成を採用したアルミ製のトレイルバイクで、これからパーク等でマウンテンバイクを楽しみたいという方にぴったりな1台。

リアセクションはシングルピボットとし、コンポーネントにシマノCUESを採用することで、上級グレードよりも抑えられた価格を実現。ラインアップには29インチ、27.5インチの2モデルが用意されており、いずれも286,000円(税込)とされている。近年マウンテンバイクのコースが増えているため、こういうバイクからMTBに入門しても良いだろう。

MTBパークデビューにぴったりな下り系バイクのSTANCE

シングルピボット仕様とされたSTANCE
シマノCUESコンポーネントが採用されている


フルモデルチェンジを果たしたジャイアント定番のクロスバイクESCAPE R4

またジャイアントが誇るクロスバイクESCAPE Rがモデルチェンジを遂げる。誕生から19年目となる2024モデルは近年のトレンドに合わせてフレームワークをシンプルな形状とし、スポーツウェアだけではなく普段着により合わせやすいデザインとされた。

今作ではタイヤ幅が32Cへと変更されており、幅広タイヤによるさらなる安定性を手に入れている。部品の選定もブラッシュアップさせ、新たに登場したESCAPE R4の価格は59,400円(税込)と価格を5万円台に設定した。

リムブレーキのハイエンドホイールCADEX 36は注目の存在だ

リムブレーキながらフックレス仕様とされている

ジャイアントは車体だけではなくパーツやアクセサリーなどの開発にも定評がある。特にプレミアムパーツブランドとして展開されるカデックスは、レースで勝利を掴むために研究開発しており、最先端のテクノロジーの結晶とも言える製品を揃えている。

そんなラインアップに追加したのはリムブレーキのハイエンドホイールCADEX 36だった。ディスクブレーキが主流となり、各ホイールブランドもディスクブレーキ対応ホイールをメインに据えており、市場からハイスペックな最新ホイールの姿が少なくなってきていた。そんな状況の中でカデックスの新しいホイールはリムブレーキバイクに乗るライダーにとって有難い存在になるはずだ。

CADEX 36のリムハイトは36mmで、フックレスチューブレス仕様。重量は1,254gと非常に軽量に仕上げられている。ブレーキキャリパーが対応するタイヤ幅の限界を攻めた設計で、ワイドタイヤのアドバンテージを活かすことのできるホイールとなっている。

カーボンモノコック仕様のVARIANT SLRシートポスト(右)はアップグレードに最適だ
クリスティアン・ブルメンフェルトも使用するCONTACT TRIサドル


マウンテンバイクヘルメットのRAIL MIPSがデビュー
ソフトバイザー付きのRELAY MIPSは普段使いにピッタリだ



ジャイアントブランドで注目してもらいたいのは、TCRやLANGMA用のシートポスト「VARIANT SLR」だ。シートポストをカーボンモノコックとすることで、純正品よりも54gも軽量となっており、軽量オールラウンダーのTCR/LANGMAの魅力をさらに引き出すことが可能となる。価格は27,500円(税込)。

他にもトライアスロンで圧倒的な記録を保持するクリスティアン・ブルメンフェルトも使用するCONTACT TRIサドルや、マウンテンバイク向けのバイザー付きハーフシェルヘルメットの RAIL MIPSなどもラインアップに登場。ジャイアントはPATH MIPSやRELAY MIPSなどバイザー付きヘルメットが充実しているため、肩の力を抜いた装備を探している方はぜひチェックしてもらいたい。

アパレルではGELID WINTER JACKETとBIB TIGHTがこれからの季節におすすめ。ジェイコ・アルウラーにウェアを供給するイタリアンブランドのアレとのコラボモデルで、ジャケットは防風撥水性を備えたシェルと前身頃のインナーレイヤーの2層構造が特徴の1着。この優れたプロテクション性能によって2〜14℃という冬場で重宝できる性能を備えている。ビブタイツはさらに寒い-6〜3℃に対応する防寒性を実現しており、足や腹部周りを冷やしてしまう心配も少ないため、冬場も走り込む方はチェックしてもらいたい。

新しいフロアポンプCONTROL TOWER ELITE TOP MOUNTにも注目だ

チューブレスタイヤ修理キットがハンドルに収納されている

またジャイアントが世界最大規模のブランドとして知られているのは、スポーツバイク関連の製品を網羅しているため。フロアポンプまで使い勝手に配慮した設計が行き届いており、新型のCONTROL TOWER ELITE TOP MOUNTもその一つ。

握りやすいハンドルやシリンダー上部に備えられた3.5インチのゲージといった設計に加え、タイヤのワイド化に合わせて1ストロークで379ccの空気を充填できるハイボリューム仕様へと進化を遂げている。また、ハンドルの内部にチューブレスタイヤ修理キット(タイヤプラグ&ニードル)が備えられていることもポイントだ。

バイクから周辺製品、アパレルまで非常に多くの製品を開発しているジャイアント。ここでは書き切れないほどのラインアップを抱えているため、製品の詳細などはショップでチェックしてもらいたい。