総合首位セップ・クスを筆頭に、ログリッチが総合6位、ヴィンゲゴーが総合7位と理想的な状況でブエルタ第1休息日を迎えたユンボ・ヴィスマ。グリシャ・ニールマン監督がインタビューでトリプルエース体制やクスの総合優勝の可能性について話した。



第6ステージを制し、翌々日に総合首位に浮上したセップ・クス(アメリカ) photo:CorVos

カタルーニャ州バルセロナでの開幕から9日間を終え、スペイン北西部バリャドリッドで第1休息日を迎えた第78回ブエルタ・ア・エスパーニャ。現在マイヨロホを着るセップ・クス(アメリカ)をはじめ総合トップ10に3名を入れるユンボ・ヴィスマが、チームを率いるグリシャ・ニールマン監督のインタビュー動画を公開した。

「我々はいま良い位置にある。第1週目はセップとプリモシュ(ログリッチ)が区間優勝を飾り、マイヨロホを獲得した。さらにプリモシュとヨナス(ヴィンゲゴー)も総合で良い順位につけている。悪天候による落車など混沌とした1週間だったが、ここまでは思い描いた通りの結果とまっている」。今年のツール・ド・フランスでヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク)の大会連覇にも尽力したニールマン氏は、そう第1週目を振り返った。

ヴィンゲゴーのパンクによってタイムを失ったユンボ・ヴィスマ photo:Unipublic

第8ステージで勝利を飾ったプリモシュ・ログリッチ(スロベニア) photo:CorVos

大会初日のチームタイムトライアルで、ユンボはトップのDSM・フィルメニッヒから32秒差の11位でフィニッシュ。優勝候補の筆頭に挙げられながらも、ヴィンゲゴーのパンクという不運に加え、落車が続出する濡れた路面で安全確保を最優先にした結果だった。

最初の山岳ステージかつ山頂フィニッシュとなった第3ステージこそレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)に勝利を奪われたが、第6ステージではクスが逃げに乗り、総合上位勢に約3分差をつけて区間優勝。第8ステージではログリッチが区間優勝を挙げると共にクスが総合首位に立った。

ログリッチとヴィンゲゴーのダブルエース体制から、クスと含めたトリプルエース体制に移行したユンボ・ヴィスマ。「エースが3人いると昨日のような横風分断の時は苦労するよ。守るべき対象が1人から3人になるからね。だが同時に絶好の機会だとも思っているし、既にこの大会にヨナスとプリモシュの2人で挑むことは昨年の冬から決まっていたことだ」と、あくまでも”計画通り”だと強調した。

総合6位のログリッチと7位につけるヴィンゲゴー photo:CorVos

第9ステージ終了時点でクスとエヴェネプールの差は2分22秒。その7秒差でログリッチ、11秒差でヴィンゲゴーが迫る中、第2週目の初日は25.8kmの個人タイムトライアルで幕を開ける。

注目されるのはステージ優勝の行方はもちろん、TTスペシャリストに対してクスがどこまで食らいつけるか。ニールマン氏は「(クスがTTでどんな走りをするのかは)僕にも分からない。彼が明日、失うであろうタイムは計算している。しかし彼は既にジロとツールを走っているんだ。(大会の)途中でエネルギーが切れてしまう可能性だってある。そういう意味でも不明だ」と語る。また「我々には3名の総合リーダーにも対応できる戦術がある。それは単純に敵にとって脅威となること。セップがタイムを失わない限り、このままの体制でいくつもりだ」と自信を覗かせた。

全グランツールを同一チームが同年に総合優勝するという、史上初の快挙に向け順調に駒を進めるユンボ・ヴィスマ。「我々だけではなくUAEにも3名(ソレル、アユソ、アルメイダ)の総合リーダーがいる。そこにマスとエヴェネプールという8名の選手が総合優勝を争っている。明日はエヴェネプールがタイムを奪うことが考えられるが、我々のチームにも良いTTの強い選手がいる」とニールマン氏はインタビューを締めくくった。


text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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