今大会最初の集団スプリントが争われたブエルタ・ア・エスパーニャ第4ステージ。優勝候補のコカールらが落車したレースで、カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)が2年連続の区間優勝を手に入れた。



8月29日(火)第4ステージ 
アンドラ・ラ・ベリャ〜タラゴナ 184.6km(丘陵)


前日の落車シーンを再現するエヴェネプール photo:CorVos
スタート地点に姿を見せた新城幸也 photo:CorVos


アンドラの首都アンドラ・ラ・ベリャで行われたチームプレゼンテーション photo:CorVos

8月29日(火)第4ステージ アンドラ・ラ・ベリャ〜タラゴナ 184.6km image:A.S.O.


第78回ブエルタ・ア・エスパーニャは大会4日目にしてようやくスプリンターに出番が回ってきた。アンドラの首都アンドラ・ラ・ベリャを出発した選手たちはすぐさまスペインに入り、地中海に面した港町タラゴナを目指し南下。184.6kmコースの後半には2つの3級山岳が登場するものの、アルト・デ・ベルタル(距離9.3km/平均3.7%)とコル・デ・リッラ(距離5.2km/平均4.9%)の難易度は低い。

そのためスプリンターたちが集団内で丘を越えることができれば、大会最初の集団スプリントが濃厚のステージ。しかしフィニッシュラインの引かれたタラゴナ市街地のコースは狭く、残り2kmからラウンドアバウトが6つ登場。それ以外にもコーナーが連続するため各チームがトレインを組むことは容易ではない。

アンドラに住む新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)が愛犬と共にスタート地点に現れ、チームメイトであるワウト・プールス(オランダ)らと交流するシーンのあったこの日。前日に続き晴天に恵まれた。午後1時20分にスタートが切られ、昨年大会で何度も逃げに乗ったアンデル・オカミカ(スペイン、ブルゴスBH)らプロチームの3名がエスケープ。そこにはレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)の繰り下げでマイヨモンターニャ(山岳賞ジャージ)を着るエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー)の姿もあった。

逃げグループを形成した3名
エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー)
アンデル・オカミカ(スペイン、ブルゴスBH)
ダビ・ゴンザレス(スペイン、カハルラル・セグロスRGA)

マイヨモンターニャを着るエドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー)ら3名が逃げを打つ photo:CorVos

この日は序盤からDSM・フィルメニッヒとアルペシン・ドゥクーニンクがペースを作った photo:CorVos

それを追うメイン集団はスピードに長けたアルベルト・ダイネーゼ(イタリア)を擁するDSM・フィルメニッヒやアルペシン・ドゥクーニンクが先導する。逃げに有利とは言えないレイアウトだったものの、プロトンは2分半以上のリードを許さず、スプリンターチームがレースを手中に収める定型的な平坦ステージの展開となった。

前日ステージに落車したエヴェネプールもマイヨロホ姿で笑顔を見せながらプロトンを走行。なおレース主催者であるハビエル・ギレン氏はこの日の朝、「昨日のフィニッシュラインで起こったことについて残念と思うと共に謝罪する。調査を進め、安全対策に尽力する」とコメントしている。

3級山岳アルト・デ・ベルタルをセプルベダが先頭で通過し、続くコル・デ・リッラでも最大3ポイントを獲得。この結果セプルベダはマイヨモンターニャを正式に手に入れ、その頃にタイム差は30秒を切り、残り19km地点でプロトンに吸収された。一日を通してDSMとアルペシンが担当した牽引にそれぞれ総合エースの安全確保がしたいイネオス・グレナディアーズとスーダル・クイックステップが加わり、終盤に向けて緊張感が一気に高まっていった。

大会4日目にして早くもマイヨロホを着用したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

アンドラを離れ、スペインの港町タラゴナを目指す選手たち photo:CorVos

時速44.9kmでフィニッシュラインの引かれたタラゴナを目指した集団では、コースが2車線から4車線に拡がった残り4.6km地点で落車が発生する。その中にはこの日の優勝候補であるブライアン・コカール(フランス、コフィディス)が含まれ、総合8位につけるサンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス)の姿も。落車した選手たちは皆フィニッシュしたものの、救済措置が適応される残り3km地点の手前だったためブイトラゴはタイムを失い、チームの公式発表が待たれるコカールは肩甲骨の骨折が疑われている。

大会初日から落車の連鎖が続いたレースはオランダ王者ジャージを着るディラン・ファンバーレ(ユンボ・ヴィスマ)が牽引し、その後UAEチームエミレーツのトレインがエーススプリンターであるフアン・モラノ(コロンビア)を集団前方に引き上げる。そしてスプリンターが位置取り争いを繰り広げる集団は連続するラウンドアバウトをクリアしながらフラムルージュ(残り1km)を通過。直線路のないコースに各チームがトレイン形成に苦戦するなか、先頭で残り350mのS字コーナーに突入したマライン・ファンデンベルフ(オランダ、EFエデュケーション・イージーポスト)が曲がり切れず落車した。

残り4.6km地点で集団落車が発生 photo:CorVos
優勝候補であったブライアン・コカール(フランス、コフィディス)も巻き込まれた photo:CorVos

先にスプリントを開始したモラノをフィニッシュ手前でグローブスが捉える photo:CorVos

それにカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク)のリードアウト役であるロベ・ヘイス(ベルギー)も巻き込まれ、意図せず集団先頭に立ったフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)がスプリントを開始。この早駆けにグローブスが食らいつき、エドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)は離される。

グローブスが後方を確認し、その一瞬でリードを拡げたモラノが残り100mの最終ストレートに突入する。しかし踏み直したグローブスがフィニッシュ手前25mでモラノに並び、両手を横に拡げて自らの勝利を喜んだ。

2年連続の区間優勝を飾ったカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

勝利を喜ぶカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

今年のジロ・デ・イタリアで区間1勝を挙げ、昨年大会に続き2年連続の勝利を飾ったグローブス。「僕らとDSMしか逃げを追うチームのいない厳しいレースだった。最終盤ではとてもタイトなコーナーが連続し、チームメイトのロベ(ヘイス)が落車してしまった。残り350mから踏み始めたセバス(モラノ)に遅れを取ってしまったが、冷静に差を詰めて勝利することができた。今大会は早い段階で勝利を得たが、これが最後にならないよう祈っている」と、24歳のグローブスはレースを振り返った。

3位には昨年のジャパンカップ・クリテリウムを制したエドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)が入り、2019年にマトリックスパワータグに所属したオールイス・アウラール(ベネゼエラ、カハルラル・セグロスRGA)は6位と強さを見せた。

総合上位勢は皆トップと同タイムでフィニッシュしたため、エヴェネプールが総合首位をキープ。リタイア者はいなかったものの、落車したコカールやブイトラゴの状態が心配される。

今季5勝と好調を見せつけたカーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) photo:CorVos

ブエルタ・ア・エスパーニャ2023第4ステージ結果
1位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 4:05:41
2位 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
3位 エドワルト・トゥーンス(ベルギー、リドル・トレック)
4位 ミラン・メンテン(ベルギー、ロット・デスティニー)
5位 ドリス・ファンヘステル(ベルギー、トタルエネルジー)
6位 オールイス・アウラール(ベネゼエラ、カハルラル・セグロスRGA)
7位 ユーゴ・パージュ(フランス、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)
8位 ルイス・アスキー(イギリス、グルパマFDJ)
9位 ショーン・フリン(イギリス、DSM・フィルメニッヒ)
10位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、AG2Rシトロエン)
12位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)
マイヨロホ(個人総合成績)
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 12:48:52
2位 エンリク・マス(スペイン、モビスター) +0:05
3位 レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ) +0:11
4位 ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) +0:31
5位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ) +0:33
6位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ)
7位 ロマン・バルデ(フランス、DSM・フィルメニッヒ) +0:35
8位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) +0:37
9位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:38
10位 マルク・ソレル(スペイン、UAEチームエミレーツ) +0:42
マイヨプントス(ポイント賞)
1位 カーデン・グローブス(オーストラリア、アルペシン・ドゥクーニンク) 75pts
2位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、AG2Rシトロエン) 62pts
3位 アンドレアス・クロン(デンマーク、ロット・デスティニー) 30pts
マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 エドゥアルド・セプルベダ(アルゼンチン、ロット・デスティニー) 21pts
2位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 10pts
3位 マッテオ・ソブレロ(イタリア、ジェイコ・アルウラー) 6pts
マイヨブランコ(ヤングライダー賞)
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 12:48:52
2位 レニー・マルティネス(フランス、グルパマFDJ) +0:11
3位 キアン・アイデブルックス(ベルギー、ボーラ・ハンスグローエ) +0:33
チーム総合成績
1位 ユンボ・ヴィスマ 37:52:23
2位 UAEチームエミレーツ +0:05
3位 ボーラ・ハンスグローエ +0:32
text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos