ピナレロが11年ぶりとなるMTBをリリース。トム・ピドコックやポーリーヌ・フェランプレヴォら、イネオスのMTB選手らのために開発されたトップレベルのXCフルサスレーサー、DOMGA XCがチェコのノヴェメストにて行われるワールドカップの開幕戦にて正式デビューを果たす。



ピナレロ DOGMA XC (c)ピナレロジャパン

ロードレースの世界において、その存在を抜きに語れないイタリアのレーシングバイクブランドがピナレロだ。この数十年間、常にロードレースの歴史と共にあり、華々しい活躍をした選手らの走りを支えてきた名車の数々を生み出してきた。

近年ではイネオス・グレナディアーズと緊密な関係を構築。DOGMAシリーズはイネオスの選手らと共にツール・ド・フランスの総合優勝を筆頭に、数多くの栄冠をつかみ取ってきた。

グラベル、そしてXC系3種目という4枚のアルカンシェルを有するポーリーヌ・フェランプレヴォ (c)ピナレロジャパン

一方、イネオスに所属する選手の中にはオンロードだけでなくMTBレースにおいても際立った成績を残す選手もいる。その筆頭となるのが、東京五輪のXC種目において金メダルを獲得したトム・ピドコック。そして、今シーズンより4種目(グラベル、XCC、XCO、XCM)の女子世界チャンピオンであるポーリーヌ・フェランプレヴォも加入し、その勢いを増している。

XCレースシーンのトップライダー2名を擁するイネオス・グレナディアーズだが、昨シーズンまではバイクサプライヤーであるピナレロはMTBをラインアップしておらず、ピドコックはBMCと思われるバイクのロゴを隠して使用してきた。しかし、今年のフランスカップにおいてフェランプレヴォが迷彩の施されたバイクで優勝、続くスイスカップにおいて、同型バイクでピドコックが勝利を掴み、ピナレロのXCレーサーの登場が予測されていた。

東京五輪金メダリストのトム・ピドコック (c)ピナレロジャパン

そして今回、正式に発表されたのがピナレロの11年ぶりとなるXCバイク、DOGMA XC。チェコのノヴェメストにて行われるUCI MTB XCOワールドカップの開幕戦において、正式デビューとなることがアナウンスされた。

ピナレロ独自のテクノロジーを採用 XCレーシングの最前線へ

ロードレーサーの開発にはロードレーサーへの深い知見が必要であるように、MTBの開発にもノウハウが必要となる。ピナレロは、11年ぶりとなるDOGMA XCの開発にあたり、XCバイクとサスペンションキネマティクスに精通した専任の研究開発チームを採用。このDOMGA XCは今後MTBへ注力する第一歩であると、ピナレロは表明している。

ピナレロに対し、ピドコックは4つ要件を求めたという (c)ピナレロジャパン

年々その難度を増すXCレースシーンに対応する最先端のXCバイクとして、ピドコックやフェランプレヴォらが満足する最高水準の一台を造り上げるため、開発陣は多くの歳月を費やした。特に中心的な役割を担ったピドコックが、DOGMA XCに求めたのは次の4つの要件だったという。

・最大の反応性を実現するためのリアトライアングルとBBの高い剛性
・トラベルとリバウンドを最適化するシンプルでプログレッシブなサスキネマティクス
・レースコースに合わせてサスペンショントラベルを変更できる構造
・軽さと優れた駆動力、そしてテクニカルなダウンヒルを可能とするハンドリング

これらを実現するため、ピナレロは様々なアプローチをDOGMA XCに詰め込んだ。最もユニークなのが、リアトライアングルの設計だ。

シングルピボットかつフレックスステー、そしてトップチューブマウントのリアショックと、近年のXCレーシングバイクのトレンドに忠実な設計だ (c)ピナレロジャパン

余計なリンクを省くことで軽量かつ剛性に優れつつ、4バーリンケージのようなアクスル軌道を実現するという触れ込みで、近年のXCフルサスバイクの主流の構造となっているシングルピボットとフレックスステーの組み合わせ。DOGMA XCも同様の設計を採用しているが、実は一歩進んだ設計が与えられている。

それが、完全に分割された左右非対称のステーをメインピボットで結合するというこれまでになかった独自の特許出願中の構造。カンパニョーロのウルトラトルククランクのように中央部分で結合するアクスルシャフトを採用することで、左右のステーを繋ぐブリッジを排除することに成功している。

左右分割構造により、リアトライアングルのブリッジを排除した独自の設計を採用 (c)ピナレロジャパン

これにより、チェーンステー長を詰めることが可能となり、より高い旋回性と優れた反応性を実現。さらに、マッドコンディションにおいて抵抗となり、トラブルの原因にもなる泥詰まりのリスクを抑えつつ、よりワイドなタイヤに対応するクリアランスを実現した。

もちろん、ピナレロのアイデンティティでもある左右非対称デザインも駆動効率の向上に寄与している。より直線的なデザインとなる左側が強化され、ドライブトレインの反対側に掛かる大きな力を相殺することで、バランスの良いエネルギー伝達を実現しスピードとトラクションを向上させるという。

特徴的なBB部のデザイン。高い剛性と大きなメインピボットアクスルの採用を実現する (c)ピナレロジャパン

さらに、ブレーキング時のサスペンショントラベルとバイクの姿勢に影響を与えるアンチライズの値も徹底的に研究され、XCレーサーとして理想的な数値に設計されているとのことだ。

各ピボットにはその箇所の特性に応じて、ベアリングとブッシングが使い分けられており、システム全体の耐久性を高めつつ、エネルギーロスを低減。効率的なライドと優れたメンテナンス性を両立している。

XCレーサーとして重要なペダリング効率を確保するため、ボトムブラケット部はガゼット状の造形が加えられたユニークな形状に。ペダリングロスを最小化するため、必要十分なアンチスクワットも確保された。

ショックマウントは前後に可動する。90mmと100mmのリアトラベルを選択可能となる (c)ピナレロジャパン

もう一つ、DOMGA XCのユニークなポイントが、バイクのトラベル量を調整できる点だろう。トップチューブ下のショックマウントが可動式となっており、異なるトラベルのリアショックを装着可能。フロント100mm/リア90mmと、フロント120mm/リア100mmの2つのセッティングから、コースに合わせて選べるようになっている。

また、モストのステム一体型ハンドルも用意され、変速やブレーキ、ドロッパーポストなどのケーブル類をステム下からヘッドセットを経由して内装可能。落車時にハンドルからフレームを守るため、ヘッドセットには60度のストッパーも内蔵される。

モストのステム一体型ハンドルも用意される。ヘッドからケーブルを内装できクリーンなルックスに。 data-sub-caption= (c)ピナレロジャパン

なお、今回発表されたのは、バイクの概要のみ。販売パッケージやカラー、価格については、今後のアナウンスを待たれたい。
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