5月6日(土)に開幕したジロ・デ・イタリア初日は19.6kmの個人タイムトライアル。レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)が2位ガンナに22秒差、ライバルのログリッチに43秒差をつける圧巻の走りを披露し、早くもマリアローザに袖を通した。



驚異的なタイムを叩き出したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

「全ての道はローマに通ずる」ように、第106回大会もまたイタリアを巡り終着地点のローマを目指す。その3週間におよぶ戦いの初日は、イタリア半島の中部、アブルッツォ州フォッサチェジーアで行われる19.6kmの個人タイムトライアルだ。

そのコースはスタートから約14kmの平坦路を経て、残り3km地点から距離2km/平均勾配5.4%(最大8%)の登りと7箇所のコーナーが登場する。ノーマルバイクに乗り換えるほどの登坂ではないものの、TTバイクでの登坂やコーナリング技術も求められるテクニカルなコースとなっている。

今大会3度設定された個人TTのファーストラウンド。気温24度の晴天に恵まれた好条件のなかローレンス・ハイス(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)が第1出走者としてスタートを切る。序盤に好タイムを叩き出したのはステファン・デボッド(南アフリカ、EFエデュケーション・イージーポスト)で、22分32秒をマークした南アフリカTT王者は、この後1時間近くホットシートに座ることとなった。

ヴィンチェンツォ・ニバリも見守るなか、第1出走者のローレンス・ハイス(ベルギー、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)がスタートを切る photo:RCS Sport

大観衆が詰めかけたスタート地点を出発するヤシャ・ズッタリン(ドイツ、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:RCS Sport

そのタイムを追い風の力を借りたマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が更新し、全体の95番目にスタートしたブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ)が22分6秒の暫定トップタイムをマーク。マクナルティはこの日初めて平均時速53kmを上回るハイペースを刻んだものの、すぐさまチームメイトのジェイ・ヴァイン(オーストラリア)が2秒上回るタイムでフィニッシュした。

今年1月のサントス・ツアー・ダウンアンダーで総合優勝に輝きながらも、膝の怪我で2月下旬より戦線を離脱したヴァイン。厳しいリハビリと高地トレーニングを乗り越え、最終的に区間7位に入る好成績を掴んでいる。

しかしそのタイムは同じ1995年生まれのテイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)によって更新される。登りの麓に設置された2つ目の中間計測地点をヴァインから7秒遅れで通過したゲイガンハートは、2020年大会を制した驚異の登坂スピードを披露。この21分58秒という好タイムを、この後3名しか上回ることができなかった。

トップから55秒遅れの9位と悪くない滑り出しとなったゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

全体の165番目でスタートを切ったレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

エヴェネプールの直後に出走するプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

その一人目となったのは全体の139番目に出走したジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ)。昨年は15日間に渡りマリアローザを着用しながらも、コロナ陽性で悔しい途中リタイアとなったアルメイダは21分47秒をマーク。続いてゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が最終的にステージ9位とまずまずなタイムを出し、急遽の出場となった新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス)も90位(トップから2分33秒遅れ)でジロ初日を終えている。

そしていよいよ、この日の優勝候補や総合争いに臨む選手たちがスタートを切る。フロントに60Tのビックギヤ(リア11-28T)をつけたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ)に続いて、フロント58T×リア10-30Tをセットしたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)が飛び出す。先を行くエヴェネプールは最初の3分27秒を平均430Wで踏み続け、9km地点の中間計測でトップタイムを20秒更新するハイスピードを披露。最後の登り区間も軽快なダンシングでこなしたエヴェネプールが、21分18秒という圧巻のタイムでフィニッシュした。

フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)は22秒遅れの2位 photo:CorVos

ステージ優勝を果たしたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

43秒遅れながらもタイムをまとめたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

その平均時速は55.211kmと、176名の中で唯一55kmを上回ったエヴェネプール。この異次元とも言えるタイムからログリッチは43秒遅れ、自身3度目のジロ初日勝利を狙ったフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)も22秒及ばず。13日前にリエージュ~バストーニュ~リエージュを制した23歳が、大会初日でジロ初優勝を挙げ、ピンク色のマリアローザに袖を通した。

ジロ初出場の2021年の初日個人TTは7位。その時の優勝者であるガンナを22秒も上回ってみせたエヴェネプールは「完璧な形でジロに戻ってくることができ、これ以上嬉しい結果はない。初日に掴むことができた最良の結果は、喜びと共にこの後の自信に繋がる。今日は”できる限り速く”を目標とし、自分の想像していた速さを上回ることができた」と振り返った。

ロード世界王者がジロで総合優勝を挙げることになれば、1983年のジュゼッペ・サローニ(イタリア)以来40年振りの快挙。また初日から最終日までマリアローザを着用すればジュゼッペ・サローニ(イタリア)が1990年に達成して以来33年振り。2つの偉業達成に向け、エヴェネプールにとって最良の滑り出しとなった。

大会初日で早くもマリアローザに袖を通したレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:CorVos

ジロ初優勝を喜ぶレムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) photo:RCS Sport

2位のガンナは「目標にしていた数字やスピードに達することができたので満足している。今日はレムコ(エヴェネプール)がバケモノだっただけ(笑)」と敗者の弁。またログリッチも「脚の調子は良く満足な結果だ。その差は3分遅れのように絶望的な数字ではなく、大事なのは21ステージを終えた時点で誰が首位に立っているかだ」と、前向きなコメントを残している。

選手たちの詳細なコメントは、別記事で紹介します。

ジロ・デ・イタリア2023第1ステージ結果
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 21:18
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:22
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:29
4位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:40
5位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) +0:43
6位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
7位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) +0:46
8位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) +0:48
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:55
10位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)
90位 新城幸也(バーレーン・ヴィクトリアス) +2:33
マリアローザ 個人総合成績
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 21:18
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) +0:22
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:29
4位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:40
5位 シュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ) +0:43
6位 プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)
7位 ジェイ・ヴァイン(オーストラリア、UAEチームエミレーツ) +0:46
8位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) +0:48
9位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) +0:55
10位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、ボーラ・ハンスグローエ)
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 15pts
2位 フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ) 12pts
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 9pts
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) 3pts
2位 テイオ・ゲイガンハート(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 2pts
3位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) 1pts
マリアビアンカ ヤングライダー賞
1位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、スーダル・クイックステップ) 21:18
2位 ジョアン・アルメイダ(ポルトガル、UAEチームエミレーツ) +0:29
3位 ブランドン・マクナルティ(アメリカ、UAEチームエミレーツ) +0:48
チーム総合成績
1位 イネオス・グレナディアーズ 1:05:51
2位 UAEチームエミレーツ +0:06
3位 スーダル・クイックステップ +0:38
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos

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