ジャイアントのグラベルバイク"REVOLT(リボルト)"のサスペンションフォーク搭載モデルをインプレッション。ドロッパーポストや50mmタイヤ搭載で走破性を高めたアドベンチャーバイクは新しいライドを切り拓くポテンシャルを持っている。


ジャイアントREVOLT X ADVANCED PRO 0 photo:Makoto AYANO

フロントにサスペンションフォーク、そしてMTBで普及したドロッパーポストを搭載することを前提として設計されたグラベルバイクがジャイアントREVOLT Xだ。本記事では同シリーズ最高峰モデルとなったREVOLT X ADVANCED PRO 0をグラベルフィールドで長期実走インプレッションした。

コンパクトかつ十分な強度を確保したヘッド部
グラベル専用 FOX 32 FLOATのストロークは40mm



未舗装路を含むラフロードを走るオールロード的な遊び方からグラベルレース、あるいは荷物を積載して旅を楽しむアドベンチャーツーリングまで、様々なライドへと広がるグラベルカテゴリー。リジッドフレームをスタンダードとしながらも、サスペンション装備のグラベルバイクが登場している。

40mmストロークのFOX 32 FLOAT AX PERFORMANCE ELITE
GIANTのロゴはダウンチューブ裏に控えめに大胆にあしらわれる
シートステイは薄い板状で縦方向の振動を効果的に吸収する



ロードバイクでグラベルへと入ることを楽しむライドから、本格的にグラベルを求めて分け入って行くほどにバイクの走破性は求められることになり、オールロードバイクからグラベルロードといった車種へと興味は移っていく。極めればドロップハンドルのバイクでトレイルを楽しむというマウンテンバイクと交わるようなエンスージアスティックな遊び方も。

長目のトップチューブ&ショートステムによる最新グラベルジオメトリー photo:Makoto AYANO

サスペンションメーカーからはグラベル専用サスペンションも登場し、より走破性を高めたバイクへと進化していくのは自然な流れだ。グラベルモデルの登場から10年以上を数えるジャイアントのREVOLTシリーズもエンデュランスからレースモデルまで幅広く展開してきたが、同モデル最高の走破性をもつオフロードモデルとして登場したのがREVOLT Xだ。

REVOLT Xはサスペンションフォークとサス機能つきドロッパーシートポストを搭載すること前提でフレームを設計、荒れたグラベルからシングルトラックまでカバーし、グラベルバイクの可能性を押し広げる一台だ。

フロント40T×10〜52Tの超ワイドレンジギアを備える photo:Makoto AYANO

REVOLT X ADVANCED PRO 0にはストローク量40mmのグラベル用途に特化したFOX 32FLOAT サスペンションフォークが搭載され、同時に25mmストロークをもつサス機能付きドロッパーポストが採用される。メインフレームはFサス&ドロッパー装備を前提に設計・最適化された。つまり単に現行REVOLTにサスペンションフォークを後付け搭載するだけのバイクではなく、Fサスのトラベル量40mmを考慮したジオメトリー設計が行われ、リジッドフォークモデルとは違う設計が採用されている。

美しいフェード塗装のトップチューブに入るREVOLT Xロゴ photo:Makoto AYANO
16°フレアをもつジャイアントCONTACT SL XR D-FUSEハンドルバー photo:Makoto AYANO



最新グラベルジオメトリーの流れを汲むREVOLT X(XSサイズ)のリーチはREVOLT(リジッド)の381mmに対して386mmと長めの設定で、スタックも低く抑えられた。長めのトップチューブ長により走行時の安定性を確保しつつ、強度と剛性を確保した強固なフロント周りによりFサスの性能を最大限に引き出す。BBドロップは小さく抑えられ、サスフォークの発揮する走破性の高さに加えて俊敏性とコントロール性の両立を実現しており、グラベルレーサーとして様々なメリットが期待できる設計になっている。

XSサイズフレームには50mmのショートステムがセットされる photo:Makoto AYANO
内幅25mmのワイドリムを採用したジャイアントCXR X1 Hookless Carbon ホイール photo:Makoto AYANO



リアエンドのパーツでホイールベースを調整できるFLIP CHIP(フリップチップ)も搭載。この偏芯パーツを組み替えることでリアセンターを10mm変更可能で、クイックな反応性を求めたい時はショート、安定性が必要なときはロングと、シーンに応じて使い分けることができる。

リアエンド部のフリップチップは差し替えることでホイールベースを可変できる photo:Makoto AYANO
タイヤはMAXXIS Rambler 700x50Cがデフォルトでセット photo:Makoto AYANO



タイヤクリアランスはFLIP CHIPによって変わるホイールベースによって変化し、ショートの時は42mm幅タイヤまで、ロングの時は53mm幅タイヤにまで対応する。なおデフォルトでは太さ50mmのグラベルタイヤが装着されている。

ドロッパーポストはMTBライドではすでに必需品といえるパーツとなっているが、グラベルライドでは必要に応じて使い分けたいもの。そこでシートポスト挿入部はシムを装着(あるいは不装着)することでジャイアントのD-FUSEポスト、一般的な丸断面シートポスト、ドロッパーシートポストの3種類に対応。ユーザーのニーズにフィットさせやすくなっている。なお完成車キットにはシートポストを利用するラック取り付け用パーツ等も付属している。

上下に25mmストロークのサス機構つきドロッパーポストを装備する photo:Makoto AYANO
ジャイアントオリジナルのAPPROACH SLサドル photo:Makoto AYANO



走破性と同時に効率性とコントロール性、そして高い拡張性を兼ね備えたREVOLT X。荒れた路面での走破性をさらに高めた冒険バイクは、ガレた林道やトレイルが登場しがちな日本のグラベルライドに適した一台となるだろう。

インプレッション by 綾野 真(CW編集部)
REVOLT Xを購入、日本のグラベルライドとアンバウンドグラベル出場を目標に乗り込む

ジャイアントREVOLT Xを駆って御荷鉾スーパー林道グラベルを走る photo:Yasuo Yamashita

ここ4年ほどで頻繁にグラベルライドに行くようになり、徐々に必要とするバイクが変わってきた。最初はシクロクロスバイクに太めのタイヤをセットしたバイクで代用していたが、グラベルバイクを入手して、グラベルレースの「グラインデューロ」、「JEROBOAMジャパン」や「野辺山グラベルチャレンジ」、そしてアメリカのUnbound Gravelにも出場した。レースだけでなくオールロードバイク的なセットアップでバッグを積載してのツーリングにも使うようになった。

今季のバイクをどうしよう?と考えていたとき、欲しかったイメージそのままのバイクが登場した。それがこのREVOLT Xだった。グラベルツーリングは楽しく、荒れた林道や道が道で無くなりそうなマイナールート(いわゆる酷道や廃道)を好むようになってしまい、そうしたアドベンチャー的なライドをこなせるバイクのイメージにこのREVOLT Xがピッタリだったのだ。

ドロッパーポストでサドルを下げれば重心が下がり安全・確実に下ることができる photo:Yasuo Yamashita

まずそれまで乗っていたグラベルバイクで不満を感じていたのが下りのキャパシティ。山がちでガレた状況が多い日本の林道では42C以上の太いタイヤを着けていても下り性能に限界があり、ダウンヒル中に腕が上がってしまい、途中で休むために停まることもしばしば。限界が低いバイクではせっかくの下りが危険で楽しめないという状況が良く発生した。

未知なる道のグラベルルートを引くうえでポイントにするのは、標高を稼ぐのはなるべく舗装や路面の良い道で、グラベルは下り区間に入れるとライドを楽しめるということ。下るために登るというのはオフロードルート設定の基本だと思っている。その下りを楽しむためには、やはりサスペンションが欲しいと思っていた。そしてMTBライド同様にドロッパーポストがあれば下りをさらに余裕を持って楽しめることを知っている。REVOLT XはFサスフォークとドロッパーポストを装備することを前提として設計されたグラベルバイクだけに、そのニーズにぴったり。

MTB&ロードコンポのマレット構成による40T×10-52Tギアがどこでも登れる走破性を発揮する photo:Yasuo Yamashita

そして他にも、ギア比の要望としてもっとローギアが欲しいというのもあった。荒れたグラベルの登りではローギアで31×34T(シマノGRX系ダブルの場合)、38×44T(スラムXPLR系シングルの場合)のレシオでも足りないと感じることがしばしばあった。ボトル複数本、あるいは補給食や山の中で必要な装備を積んでいる場合は重量がかさむし、バイクを押すよりも軽いギアでクルクル回して乗って進めることが重要。その点、REVOLT XはスラムのMTBとロードのミックスコンポ(FORCE×EAGLE)によって40T×52Tのスーパーローギアを備えている。

他にも50mmの極太タイヤ、ワイドリム採用のフルカーボン軽量ホイール、下りで安定して操作できる幅広のグラベルハンドルの採用と、細部まで「欲しい」と思っていたスペックで構成された新型REVOLT X登場のニュースに即、購入を決めてオーダーした(つまりこの記事は自腹インプレだ)。

40×52Tスーパーローギアなら軽いペダル回転で激坂を登っていける photo:Yasuo Yamashita

3月下旬に納車してから御荷鉾林道、野辺山のグラベルを走りに行った。御荷鉾林道では95kmで獲得標高1,800mほどのツーリングだったが、その8割が舗装路のロングツーリングだった。序盤から1,400m以上の標高を稼ぐ登坂が続き、40×52Tローギアを使いっぱなしのヒルクライムだった。車重がややあること、マキシスRambler 700x50Cはタイヤ単体では日本に輸入されていないグラベルタイヤ。走行抵抗は低めのパターンだが重量は650gとXCタイヤ並にあるので、それらの重さの影響で登り性能にはやや不満が残った。

最高標高地点からは下りメインのグラベルとなり、20km近いオフロードダウンヒル。御荷鉾林道は比較的荒れが少ないスムースグラベルという評価だが、それでも10kmを越えると身体への負担は大きい。REVOLT XのFサスペンションのストローク量は40mmと少なめだが、グラベルなら十分な作動量で下りはかなり楽だ。安定して下れるため安全度も高く、かつ速く、楽しめる余裕がある。余裕があればラインも上手く選べることになるのでパンクのリスクも少なくなる。そのうえ50mmタイヤのエアボリュームが輪をかけて快適。ダウンヒルの途中で腕があがったり、転がる石に恐怖を感じていた体験が過去のものとなった。

そしてドロッパーポストでサドル位置を低くして下る安定感・安心感は非常に大きい。重心が低いので前転する危険が少なくなり、体重移動もしやすく、路面への追従性が格段に高くなる。これは舗装路でも有効で、加えて空気抵抗が低くなるのでかなりスピードを上げても安心して下れる。舗装路で転がり抵抗の少ないグラベルタイヤなら、サスペンションも効くことで路面に吸い付くようにグリップさせることができる。幅広ハンドルの操り易さもあるためロードバイクよりも速く下れるほどだ。舗装路セクションを速く走るのはグラベルツーリングの醍醐味の一つだ。

ドロッパーポストとサスによる安定感でダウンヒルは確実に速い photo:Yasuo Yamashita

このドロッパーポストには25mmトラベルのサス機構が備わっており、路面のギャップからの突き上げるようなショックをいなしてくれる。これは意外にも効果があり、サドルに腰を落ち着けたまま凹凸箇所をペダリングしながらクリアしていける。リバウンド時に「パコッ」と金属音がする点は気になるが、簡易的ながらサスとしては十分機能しているので、木の根っ子や洗濯板状の路面が続くセクションも得意だ。ペダリング中に上下に動く違和感は無く、実動ストローク感でいえば1cmほど(体重は60kg)。

フレームはMTBのようなルックスで、とくにフロント周りの強度が高く、さすがサスペンションを前提とした設計になっていると感心する。ヘッド部が弱ければ後付けのサスではフレームが撓んだりして不満が出るだろうし、なによりサスのトレールや作動量などの面を考慮してフレーム設計されているという安心感は高い。

シートステイは薄型で縦方向にしなる形状とのことだが、サスが動くためそれを感じ取るには至らない。タイヤのクリアランスは大きく、この点もMTBに似た構造。ジオメトリー上はトップチューブ長が極端に長く、XSサイズならステムは50mmという極短のものが組み合わされる。それが今のグラベルジオメトリーのトレンドでもある。

幅広の16°フレアハンドルは安定感のある操縦性で、上ハンドル部は扁平されたD-FUSE形状となっており、アルミハンドルながら振動吸収性もある。舗装路を走る際は幅の広さが気になるが、ダウンヒル時にはその幅による安定感が高くて有効なので悩ましいところ。なおハンドル&Fサスで振動を吸収してしまうので、ぶ厚いクッションのバーテープは不要になる。

昨秋に開催された野辺山グラベルのリピートライドも仲間たちと走る機会があった。イベント時とほぼ同様の100kmで獲得標高が2,700mを超えるビッグライドで、ガレた林道の下りで手が痛くなった記憶が新鮮なうちに走ったが、今回はどこを走っても下りがラクで楽しく、速く走れた。バイクの車重があるため登りは速くはないが、ダウンヒルでは誰も着いてこれないほどのスピードで安定して楽しく下れた。同じルートを違うバイクで走ると違いが顕著にわかって面白かった。

FLIP CHIPの効果を試す

REVOLT Xのリアのスルーアクスル受けには偏心パーツ「フリップチップ(FLIP CHIP)」が搭載されている。このアルミ製の軸受けパーツの前後を入れ替えることでホイールベースを可変させることができ、それによりショートホイールベースならクイック感を、ロングなら安定感のある乗り味に変えられる。50mmタイヤが装着された完成車のデフォルトはロング状態だが、40mmタイヤ装着のCADEX ARグラベルホイールセットをセットする際にショートも試してみた。

フリップチップの向きを入れ替え、キャリパー台座でブレーキ取り付け位置をずらすことでホイールベースが可変できる

フリップチップの差し替えは簡単で、それによりホイールベースが短くできる。この状態で42mm幅タイヤまでに対応するクリアランスになる。乗ってみると確かに旋回性能が良くなり、小回りが効くようになる。そのためテクニカルなシングルトラックなどでバイクが懐のなかで操れるようになり、コーナリングが楽しくなる。ペダリングの反応性も僅かだが上がるようだ。

CADEX AR32ホイール&40Cタイヤをセットし、ショートホイールベースでも乗り比べてみた photo:Makoto AYANO

対してロングホイールベースは直進安定性が高くなる傾向があり、林道的な道を走るのに適していそうだ。対してロングの状態で細身のタイヤを入れればクリアランスは大きくなるので、泥詰まりに強くすることもできるだろう。

約2ヶ月間REVOLT Xをグラベルライドの相棒として乗っての評価は、サスペンション含めて「機構全部盛り」バイクのためやや車体重量がかさみ、取り回しの軽快感が乏しい点はある。しかしそのデメリットを大きく上回る高い走破性を備えているため、よりアグレッシブなライドが可能になった。一見した人から「XC-MTBとどう違うの?」と言われることが多いが、ドロップハンドルであることで走る距離を大きく伸ばせたり、ロード並みの高速走行が可能だったり、ライディングが格段に軽快だったりする点はやはりグラベルロードであり、その良さを十分感じられるバイクだ。だからメインフィールドとしては山やシングルトラックではなく、あくまでアップダウンに富んだタフなグラベルが得意だ。なおイージーなシングルトラックならXC-MTBと遜色ない走りは可能だ。

REVOLT Xに乗るにつけ、「グラベルライドにハマるとこんなバイクが欲しくなる」という、最初に思った動機に立ち返る。それを十分に満たすパッケージ。Fサスは不要論もあるが、やはりオフロードではもっとも効果的な解決策であることはMTBがたどった歴史が証明している。これから似たモデルが各社からリリースされるようになるとは思うが、今はREVOLT Xがほとんど唯一の存在だ。

6月には2度めのアンバウンド・グラベル参戦が待っている。今の感想ではREVOLT Xの悪路走破性能は十分すぎて、逆に高速レース的な走りをするために「引き算」的な考えでカスタマイズしていくことが必要だろうと思う。昨年の経験をもとに、残り1ヶ月でセッティングを煮詰めていきたい。その際もまた改めてレポートするつもりだ。

ジャイアントREVOLT X ADVANCED PRO 0 photo:Makoto AYANO

ジャイアント REVOLT X ADVANCED PRO 0
フレーム:Advanced-Grade Composite OLD142mm
F.フォーク:FOX 32 FLOAT AX PERFORMANCE ELITE OverDrive Column 40mm Travel 12mm Axle
ギアクランク:SRAM FORCE 1
変速パーツ:SRAM X01 EAGLE AXS
ブレーキセット:SRAM FORCE 160mm Rotors
シートポスト:POSTMODERN 25mm Travel with dropper switch
ホイール:GIANT CXR X1 Hookless Carbon
タイヤ:MAXXIS Rambler 700x50C
サイズ:430 (XS)、450 (S)、470 (M) mm
重量:9.7kg (M)
カラー:エアグロウ
価格:1,100,000円(税込)

text&photo:Makoto.AYANO