次世代ロードレーサー輩出プロジェクト「ロード・トゥ・ラヴニール」が本格始動する4月1日を前に、シクリスムジャポン代表の浅田顕氏がメディア向けの経過報告会をオンラインで行った。



ロード・トゥ・ラヴニールのロゴの前で撮影に応じる浅田顕氏(写真は12月の発表会) photo:Yuichiro Hosoda

「ロード・トゥ・ラヴニール(以下RTA)」は、昨年12月に発表された次世代ロードレーサー輩出プロジェクト。ツール・ド・フランスを筆頭とする世界のサイクルロードレースで活躍できる次世代のプロロードレーサーを輩出することを目的とし、シクリスムジャポンの浅田顕氏が立ち上げたプロジェクトだ。

フランス(左)と日本のトップカテゴリーへ至るまでの構造的な違い 残念ながら日本のレースは世界のトップには繋がっていない ©︎シクリスムジャポン

世界標準のパスウェイ(上)と、プロチームと契約するための目安となる成績(下) ©︎シクリスムジャポン



詳細については記者発表会の記事をご参照頂きたいが、要約するとプロチームと契約するためのパスウェイ(道筋)を示し、タレント発掘から欧州レース参戦、さらにはプロ契約のサポートまでを行うものだ。

今回はプロジェクトが本格始動する4月1日を前に、メディア向けの経過報告会がオンラインで行われた。

スパークルおおいた、チームユーラシアIRCタイヤ、宇都宮ブリッツェンがプロジェクトパートナーとなる ©︎シクリスムジャポン
エンネ・スポーツマッサージ治療院、ツアー・オブ・ジャパン、気象サービスのMiCATAがプロジェクトパートナーに就く ©︎シクリスムジャポン


プロジェクトパートナーとして、スパークルおおいた、チームユーラシアIRCタイヤ、宇都宮ブリッツェンの3チームと提携することが発表された。いずれのチームも若手選手の育成チームを持っており、5月初旬にはスパークルおおいたと合同での「RTAユースキャンプin豊後大野」が予定されている。

また、先日発表になったツアー・オブ・ジャパンのほか、エンネ・スポーツマッサージ治療院、アスリート向け気象情報サービスの「MiCATA」もプロジェクトパートナーとなる。またキーとなるタイムトライアルのパフォーマンス分析にはBlue Wych合同会社が技術支援に入る。

ロード・トゥ・ラヴニール2023年の予定 ©︎シクリスムジャポン

年間スケジュールも明らかになった。7月から9月にかけて欧州レースへの遠征が予定されており、チームを編成してのフランスU19レースやエリートアマチュアレースへの参戦が予定されてる。

RTAでは個人タイムトライアル能力を世界との「ものさし」とする(写真は2022年大学選手権個人TTで優勝した留目夕陽) photo:Satoru Kato
また、トップ選手との明確な比較材料となる個人タイムトライアルに力を入れるため、日本学生自転車競技連盟、埼玉県自転車競技連盟、東京都自転車競技連盟と協力して大会を開催する。

4月30日に開催される「加須こいのぼり杯・埼玉県タイムトライアル大会」や、6月に予定されている「全日本学生個人ロードTT自転車競技大会」、11月に予定されている「東京都自転車競技連盟 伊豆大島個人タイムトライアル」など、6回のタイムトライアルテストが行われる。個人タイムトライアルは日本人が一番劣る部分であり、各所に個人タイムトライアルの開催をお願いしていると言う。

浅田氏は「このプロジェクトで成長した選手やスタッフがプロに相応しいレベルになること。そのメンバーでプロチームを結成できるようになるのがゴール地点。その前段階となるのがこのプロジェクト」と説明する。



発表会後半では浅田氏がメディアからの質問に答えた。

ータレント発掘で他の競技から自転車競技への誘導は考えているか?

ロード・トウ・ラヴニールについて説明する浅田顕氏 ©︎シクリスムジャポン
タレント発掘は既に自転車競技をやってる人を対象とせず、小学校高学年などを対象に各都道府県が行っているスポーツのタレント発掘事業などを利用していく。ただ、自転車競技をやりたいと言っても、一般のご家庭で高価な自転車を買わないと出来ないのではハードルが高すぎるので、ブリヂストンさんのご協力を得て20台くらい入門に使えるロードバイクを用意している。

他のスポーツから転向させるのは難しいが、五輪種目の多くで自転車をこぐトレーニングは取り入れられているので、まずトレーニングとして捉えてもらい、何かのきっかけや動機づけで自転車競技に入ってもらうのはあると思う。ログリッチもスキーのジャンプ競技から入ってきているように、欧州では他種目からの転向例が多いので、日本でも進めていく必要はあると思う。

ーJCLチーム右京がツール・ド・フランス出場を目標としているが、どのように考えているか?

プロチームを作るのが先か、選手を育てるのが先かという問題もあるが、今はタレント発掘が先。子供の数も少ないし、景気が良く無い中高価な自転車が必要な競技なので、もっと入りやすくして魅力を感じてもらうことが必要と考えている。

その昔、2010年ツール・ド・フランス出場を目標に活動していて途中で止まってしまったが、成長する日本人をそこに到達させることがこのプロジェクトの役割。チームとして出場することは価値あると思うが、選手が主役であり、選手がそこに到達出来なければいけない。

2023年ツール・ド・フランス出場権を得たウノエックス・プロサイクリング チーム photo:CorVos

今年のツール・ド・フランス出場を決めたウノエックスはノルウェーのチームで、バイキングのように各地のレースで暴れまくるほど強かったが、それでもトップには到達できず、近年はデンマークの協力を得て強化してきたことで夢を達成した。これこそが自分自身がやりたいことだと感じている。

(片山)右京さんは世界的にも有名だし自転車競技への情熱も持っている。プロジェクトの3つのルール(世界標準のパスウェイ、7つの活動の専門化と連鎖化、正しい評価でステップアップ)を守ってもらう大前提で、このプロジェクトで育った選手が右京さんのチームや、NIPPOの大門さんの活動に挑戦してもらうのもアリだと思っている。

ー継続しての活動には資金が必要になるが、現状でどの程度集まっていると言えるか?

集まった資金は目標の1/6くらい。クラウドファウンディングも始めて、イベントごとに募るようにしている。初年度は集まった額でやっていくことになるが、スポンサー様にお願いして最低限できるだけは確保していけるようにしたい。4月1日から公式サイトがオープンするので、そこでも情報発信していく。

ー本来であればナショナルフェデレーション(=JCF)が主体となって進めるべきプロジェクトだと思うが、今後どうなると考えるか?

まだ実績が無いので、まずはこのプロジェクトをしっかり進めて、共通のパスウェイと位置付けられればJCF(日本自転車競技連盟)が受け入れるようになると思っている。このプロジェクトをスタートさせるのに1年待ってしまったので、まずは形を作って価値を高め、何より子供達が自転車カッコいいな、やってみたいなと思ってもらえるようにしないといけない。ロードレースは自転車競技の入口としては間口が広いので、その役割も果たせるようになればと思う。欧州の拠点はすでに無くなってしまったが、必ず必要になるのでなんとか復活させたいと思っている。



シクリスムジャポンでは、5月に大分で開催される「RTAユースキャンプin豊後大野」への参加者を募集している。あわせて、キャンプ開催に向けたクラウドファウンディングも募っている。詳しくは下記リンクをご参照頂きたい。


text:Satoru Kato

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