本日開催されるロンド・ファン・フラーンデレン。大会2連覇を目論むマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)を中心に、今季の石畳レースを圧倒するユンボ・ヴィスマなどモニュメント第2戦をプレビューします。



フランドルの丘陵地帯を越えていくロンド・ファン・フラーンデレン photo:CorVos

「モニュメント」と呼ばれる世界五大ワンデークラシックの中でも、ひと際大きな存在感を見せるのが「クラシックの王様」としても知られるロンド・ファン・フラーンデレン(UCIワールドツアー)だ。初開催は1913年まで遡り、長年ベルギー北部のフランドル地方で愛され続けてきた大会が、4月2日(日)に第107回目を迎える。

フランス語で「ツール・デ・フランドル」と呼ばれることもある本大会は、現地フラマン語(オランダ語)に準じると「ロンド・ファン・フラーンデレン」。自転車競技熱が高いフランドル地方で開催されるだけに沿道には熱狂的なファンが詰めかけ、頭上にはフランドルの象徴である(ベルギー全体の象徴ではない)フレミッシュライオンが描かれたイエローフラッグが翻る。

ロンド・ファン・フラーンデレン2023コースプロフィール image:Flanders Classics

コースは前哨戦の一つ「クラシック・ブルッヘ〜デパンヌ」のスタート地点でもあるブルッヘ(ブルージュ)を出発し、レース博物館のあるオウデナールデにフィニッシュする273.4km。テクニカルかつ細い農道の平坦路を抜け、後半は断続的に登場する石畳坂に挑む。

登場する急坂は昨年より1つ多い19箇所で、今年も激坂の名所「ミュール・カペルミュール」は登場しないものの、合計3度登坂するオウデ・クワレモントは健在。毎年、決定的な動きが生まれるのは2度目のオウデ・クワレモント(残り54.6km)からであり、特に直後のパーテルベルグや、車両ですら走行が困難ほど滑る最大勾配22%の激坂コッペンベルグに注目だ。



1番人気のファンデルプールや、随一のチーム力を誇るファンアールトに注目

昨年、2度目の制覇を達成したマチュー・ファンデルプール(オランダ) photo:CorVos

優勝候補筆頭は、2022年大会を含む過去2度優勝しているマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)。ミラノ〜サンレモで初優勝を飾り、E3サクソバンク・クラシックでは惜敗しながらも積極的なレース運びを見せコンディションの良さを披露した。直近の3年は2020年優勝、21年2位、22年優勝と抜群の相性の良さを誇る。シクロクロスシーズンで不安視された背中の具合を全く感じさせない攻めの走りで、3度目の栄冠は得られるか。

その対抗はもちろんE3でファンデルプールとのマッチスプリントを悠々と制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)だ。ファンデルプールに対してはスプリント力はもちろん、ヘント〜ウェヴェルヘムとドワーズ・ドール・フラーンデレンを制したクリストフ・ラポルト(フランス)やティシュ・ベノート (ベルギー)を擁するなど、チーム力では圧倒的に上回る。

意外にもファンアールトが制したモニュメントは2020年のミラノ〜サンレモただ一つ。ロンドでの最高位は2020年の準優勝で、昨年は新型コロナウイルスの感染で不出場だったためこれが2年ぶりの出場となる。激坂への耐性はストラーデビアンケや数多のレースで証明済みと、ロンド初戴冠に向けファンアールトに死角はない。

E3サクソバンク・クラシックでファンデルプールとポガチャルを下したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos

昨年、2度目のオウデ・クワレモントでアタックしたタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos

ミラノ〜サンレモで4位、E3の3位でようやく今シーズンの勝利率が5割を切った(15戦7勝)タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)。現ツール・ド・フランス覇者ヨナス・ヴィンゲゴー(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)にパリ〜ニースで完全勝利を果たしたものの、クラシックではファンデルプールとファンアールトという2人がその眼前に立ちはだかった。

初出場だった昨年、ポガチャルは2度目のオウデ・クワレモントで仕掛けたが、ライバルたちを引き離すには力及ばず。しかし、今年は新加入ながら既にチームの中心選手であるティム・ウェレンス(ベルギー)がいるため、戦略的な走りが可能になった。

そしてトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の出場によってロードレースだけでなく、シクロクロスのビッグスリー(ファンデルプールとファンアールト)もようやく出揃った。脳震盪により戦線離脱を余儀なくされていたストラーデビアンケ覇者ピドコックは、直近のドワーズ・ドールで実戦復帰。スプリントでは分が悪いが、登坂のキレと独走に持ち込んだときの強さはライバルたちの脅威となる。

ストラーデビアンケを制したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos

また春のクラシックで例年の活躍が鳴りを潜めているスーダル・クイックステップは、2021年覇者カスパー・アスグリーン(デンマーク)となかなか本調子に持ってくることができないジュリアン・アラフィリップ(フランス)を揃える。その他にもビニヤム・ギルマイ(エリトリア、アンテルマルシェ・サーカス・ワンティ)やマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)、マテイ・モホリッチ(スロベニア、バーレーン・ヴィクトリアス)がどう勝負に絡んでくるかにも注目だ。

text:Sotaro.Arakawa