砂のゾンホーフェンで開催されたCX W杯第12戦。ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)がコンディショニングに悩むマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)を置き去りにした。



名物の砂区間を突き進むトップ選手たち名物の砂区間を突き進むトップ選手たち photo:CorVos
シクロクロスの最高峰シリーズ戦、UCIシクロクロスワールドカップの第12戦が開催されたのはベルギーのリンブルグ州にあるゾンホーフェン。コクサイデと並び、あるいはそれをも上回るほどのサンドセクションが名物であり、“De Kuil”(直訳で"溝")と呼ばれ称されるすり鉢状の砂の傾斜地に張り巡らされるコースには数千人もの観客が詰めかける。

砂斜面の直滑降/直登が定番だったものの、今年はコース改修によって砂のオフキャンバー区間が増加。トップ選手すらも手を焼く難易度最高レベルのコースに仕上げられた。

女子エリート:ファンアンローイがコクサイデ続く砂レース連勝

砂区間で前転したフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)砂区間で前転したフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
女子エリートレースには現在勝利を分け合っている三強(ファンエンペル、ピーテルス、ファンアンローイ)のほか、アルカンシエルを着るマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)も含め、トップ選手がずらりと集結。膝故障を抱え、さらにスタート前に体調不良を訴えていたフェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)がホールショットを奪ったものの、先頭で突入した砂のダウンヒルで激しく前転。さらに別の下り区間でも轍を外して前転し、完全にレースリズムを失ってしまった。

最多勝ランキング首位を突き進むファンエンペルの脱落によって、この日の優勝争いはパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)の2人に。しかし、コクサイデで勝利したファンアンローイがスムーズに走るその背後で、やはり同じ砂下りでピーテルスが前転。「タフだったけど、いい流れに乗れて正しいラインを選ぶことができた。大きな自信を持ってレースを走れた」と振り返るファンアンローイが、そのままフィニッシュまで続く独走に持ち込んだ。

堅実な走りでリードを積み重ねるシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)堅実な走りでリードを積み重ねるシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
砂レース連勝を果たしたシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)砂レース連勝を果たしたシリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第12戦 女子エリート表彰台UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第12戦 女子エリート表彰台 photo:CorVos
「もちろん苦しんだけれど、他のレースよりも追い込まずに走れた」と、優勝インタビューで語るファンアンローイ。2002年生まれの20歳は未だ世界選手権の出場カテゴリーを決めていないが、この日3位以降であればU23を選ぶはずだった。ライバル2人を抑えたことでエリートカテゴリー出場を再検討する、とも。

この日ピーテルスが2位に入り、4位グループから抜け出したファンエンペルが3位。「最初の落車であちこちを痛めたけれど、アドレナリンと素晴らしい観客の応援で3位に戻ることができた。少し身体を休めて、膝がどうなるか注視していきたい」と話している。



男子エリート:ファンアールトが再びファンデルプールを下す

先頭グループを組むマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)先頭グループを組むマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)とワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)不在のこの日、やはり注目はワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)とマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)の直接対決。

今季、ここまで2人が戦った8レースのうちファンアールトは5勝。過去このコースで3勝しているファンデルプールが(ファンアールトは1勝)一矢報いることができるかどうかが焦点だったものの、従来ファンデルプールの独壇場だったテクニカルコースでもファンアールトの優勢は変わらなかった。

砂を得意とするローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・フリスタッズ)らも振り落とされ、2人が先頭グループを形成したものの、60分のうち20分が経過した砂区間でファンデルプールが前転してしまう。背後のファンアールトも足止めを食らったものの、すぐにラインを切り替えてペースを戻す。「自分のあるべきレベルに達していない」と言うファンデルプールは独走体制に入ったファンアールトに再び追いつくことはできなかった。

観客が詰めかけた砂の下りを独走するワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)観客が詰めかけた砂の下りを独走するワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
砂区間で圧倒的な安定感を披露したファンアールトが、実に1分半ものリードを築いて勝利した。「正直結果には驚いているけれど、誰にとっても(過密レース期間は)大変だ。僕自身何度かタフレースを走ったから本来のアタックはできなかった。休息を入れて回復に専念しないといけない」とベルギー王者は言う。

そして、ファンアールトはベルギー選手権に100%出場しないことも明言。「国内選手権には出ないけれど、トレーニングを積んで別のジャージ(アルカンシエル)を狙いたい」と話している。

連勝街道を突き進むワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)連勝街道を突き進むワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第12戦 男子エリート表彰台UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第12戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos
一方のファンデルプールは落胆の2位。「普段の僕のパフォーマンスではないことは誰の目にも明らかだ。ワウトはもちろん強いけれど、もう少し長く彼とレースしないといけない。高強度のインターバルが僕の背中に負担をかけている。翌日にはスペインに渡ってトレーニングを行うんだ。世界選手権に向けて100%の準備ができるように全力を尽くしたい」と話している。

UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第12戦 女子エリート結果
1位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 51:44
2位 パック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:37
3位 フェム・ファンエンペル(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) +0:54
4位 ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +1:46
5位 セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +2:10
6位 インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、777) +2:27
7位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) +2:41
8位 カータ・ヴァス(ハンガリー、SDワークス) +2:59
9位 リヌ・ブルキエ(フランス、キャニオン・コレクティブ) +3:35
10位 ラウラ・フェルドンショット(ベルギー) +3:41
UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第12戦 男子エリート結果
1位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ) 58:49
2位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +1:23
3位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・フリスタッズ) +1:31
4位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) +2:02
5位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +2:08
6位 ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +2:17
7位 ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +2:37
8位 イェンス・アダムス(ベルギー) +2:49
9位 ケヴィン・クーン(スイス、トルマンスCXチーム) +3:01
10位 コルネ・ファンケッセル(オランダ、デスハフト・ヘンス・マース) +3:14
text:So Isobe
photo:CorVos

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