日本のヘルメットブランド、カブトのエアロヘルメット「AERO-R2」。前作に比べ優れた空力性能に加え、新しいアジャスターを搭載しフィット感が向上している。UCIコンチネンタルチームのブリヂストンサイクリングとマトリックスパワータグが使用するレーシングエアロヘルメットをインプレッション。



カブト AERO-R2(マットホワイト)カブト AERO-R2(マットホワイト) photo:Michinari TAKAGI
レースとサイクリングシーン問わず非常に数多くのサイクリストが着用したカブトのエアロヘルメット、AERO-R1。エアロダイナミクスに優れるパフォーマンス面や、メガネを着用しまま使用できるバイザーなど使い勝手の面からも絶大な支持を集めた名作だ。

そんなAERO-R1がモデルチェンジを果たし、AERO-R2へと進化を遂げている。開発にあたってはCFD解析と風洞実験を繰り返し、徹底的に空力性能を追い求めた結果、前作よりも後端部が絞り込まれた形状に。前方からの風だけではなく、角度ついた風からの影響も低減するヘルメットを実現し、よりオールラウンドにエアロを発揮するヘルメットとなった。

同じS/Mサイズだが、ヘルメットの高さが長くなっている同じS/Mサイズだが、ヘルメットの高さが長くなっている photo:Michinari TAKAGI
さらにヘルメット中央部を貫くエアトンネル構造「PAT.P」と、その溝に装着するエアパスプレートによっても空力性能向上を図っている。これはヘルメットに当たる風を内側に通し、かつプレートによって空気の乱れを発生させないことで抵抗発生を抑えるというもの。プレートは着脱可能なため、プレートを外した状態でエアトンネルをクーリング用として活用することも可能だ。

オートバイ競技用デバイスとしてカブトが開発し、R1にも採用された空力機能「ウェイクスタビライザー(PAT.)」も搭載。ショートテールのヘルメットながらロングテール同等のエアロ性能を備え、オートバイも手掛けるカブトならではの空力性能を実現している。

ベンチホールの配置が変更されているが優れた通気性を確保ベンチホールの配置が変更されているが優れた通気性を確保 photo:Michinari TAKAGI前作”AERO-R1”に比べ、丸み帯びたフォルムに前作”AERO-R1”に比べ、丸み帯びたフォルムに photo:Michinari TAKAGI

カブトが独自開発した画期的な空力デバイス「ウェイクスタビライザー」は継続カブトが独自開発した画期的な空力デバイス「ウェイクスタビライザー」は継続 photo:Michinari TAKAGI後頭部には大き目な4つのダクトを配置後頭部には大き目な4つのダクトを配置 photo:Michinari TAKAGI

R2ではクロージャーもR1からアップデートが施され、BOAフィットシステムを使用した「KBF-2」アジャスターを搭載。シューズでお馴染みのワイヤー式クロージャーは、1mmごとに締め付け具合を調整できることが魅力であり、フィット感向上に大きく貢献してくれる。また、ダイヤル側面は凹凸のある形状とされており、ロングフィンガーグローブを着用していても操作感が良好だ。

KBF-2の魅力はBOAだけではなく、ヘッドレスト自体の配置も細かく変更できることにある。基本的な上下位置は8段階から選べ、さらにヘッドレストの幅を2段階で調節できるため、個人差がある後頭部の形に応じたカスタマイズで多くのユーザーにフィットしやすいヘルメットを実現している。

空力性能を高めるという「AERO-R2用エアパスプレート」を搭載空力性能を高めるという「AERO-R2用エアパスプレート」を搭載 photo:Michinari TAKAGI
インナーパッドが頭部から帽体を浮かすことで空気の通りを良くしているインナーパッドが頭部から帽体を浮かすことで空気の通りを良くしている photo:Michinari TAKAGI
顎紐をまとめるバックルはYKKと共同開発の「アンチスリップバックル」が新しく採用されている。従来のバックルに比べてあご紐が緩みにくい、ロック機構をもつため、アクシデント時に顎紐が伸びることもなく、ヘルメットが適切な位置に維持されるため安全性も向上している。

またR2でもシールドを装着できる仕様に変わりはない。眼鏡をかけている状況でも難なく装着できるシールドは、アイウェアではなくても日除けの機能を求めるサイクリストの強い味方になってくれる。また、アイウェアをホールドしやすくしてくれるグリッパーも同梱されているのもレーサーフレンドリーでありがたい。

BOAダイヤルを使用したフィッテイングシステム「KBF-2」アジャスターとYKKと共同開発した「アンチスリップバックル」を搭載BOAダイヤルを使用したフィッテイングシステム「KBF-2」アジャスターとYKKと共同開発した「アンチスリップバックル」を搭載 photo:Michinari TAKAGIYKKと共同開発した「アンチスリップバックル」YKKと共同開発した「アンチスリップバックル」 photo:Michinari TAKAGI

Boaフィットシステムのワイヤーは掛ける前後位置を2箇所から選択でき締め付け感を調整できるBoaフィットシステムのワイヤーは掛ける前後位置を2箇所から選択でき締め付け感を調整できる photo:Michinari TAKAGI
ヘッドレスト部の幅を広くヘッドレスト部の幅を広く photo:Michinari TAKAGIヘッドレスト部の幅を狭く調整できるヘッドレスト部の幅を狭く調整できる photo:Michinari TAKAGI

カラーはマットホワイトとマットブラック、クリムゾンレッド、ネイビーブルー、オリーブイエロー、マットトランスグリーンの6色展開でチームジャージに合わせたカラー選びが可能となっている。サイズはXS/SとS/M、L/XLの3サイズが用意されている。価格は23,100円(税込)だ。

AERO-R2の実測重量 233g(S/Mサイズ)AERO-R2の実測重量 233g(S/Mサイズ) photo:Michinari TAKAGIAR-5シールドの実測重量 42gAR-5シールドの実測重量 42g photo:Michinari TAKAGI



―編集部インプレッション

よりアジア人向けの丸型の帽体形状にアップデートされていると感じるよりアジア人向けの丸型の帽体形状にアップデートされていると感じる photo:Makoto AYANO
カブトのフラッグシップヘルメット"IZANAGI"、エアロヘルメット"AERO-R1"などのヘルメットをテストしてきていた筆者・CW編集部の高木が、今回借り受けた"AERO-R2"のサイズはS/M。普段カスクのMサイズを被っている筆者でジャストフィットだ。

着用してみると前作"AERO-R1"とシェルの形状が変更されていることに気がつく。元々アジア人の丸型頭にフィットするワイドな形状だったが、横幅がさらに広くなった印象があり被り心地が異なる。このアップデートによって、R2がマッチする人は多くなっていそう。一方で人によってはワンサイズ落としてXS/Sサイズの方が合う方もいると考えられるので、今作は一度試着をしてもらいたい。

BOAダイヤルの側面には細かく凹凸があるためライド中でも操作しやすいBOAダイヤルの側面には細かく凹凸があるためライド中でも操作しやすい photo:Makoto AYANO
フィット面で横幅以外にR1から変わった点は、帽体が若干浅めに作られているように感じた。IZANAGIでも若干の浅さを感じたため、頭頂部が浮くフローティング構造によるフィット感によるものなのだろう。R2に関してはR1と比較したら浅い気もするというだけであり、十分深い被り心地で頭部が守られている安心感は強い。

またフィットに関して素晴らしいと感じるのはKBF-2の幅広い調整幅だ。先述したように調節可能範囲が広いため、あるポジションではマッチしなくても、あるポジションではいいフィット感を得られることがある。店頭やイベントで試着する際はKBF-2の調節を行ってもらいたい。私は後頭部が支えられている感覚が欲しいため、BOAダイヤルが最も下に来る配置、ヘッドレストも幅広の設定で好みのフィット感にカスタマイズした。

AERO-R2の頭頂部にはエアダクトがないが、蒸れることはなかったAERO-R2の頭頂部にはエアダクトがないが、蒸れることはなかった photo:Makoto AYANO
ベンチレーションの設計が新しくなったR2は、しっかりと風を取り込んでくれるため額やこめかみに風が強く当たる印象。頭部にヒットする風が、フローティング構造によって生み出された帽体とパットの隙間を通り抜け、後頭部のエアダクトから排出される感覚は確かにある。頭部全体で空気がこもることがなく快適で、夏場も使用することができそうだ。

AERO-R1の頭頂部にはエアダクトが搭載されていたが、AERO-R2の頭頂部にはエアダクトがない。ただ、AERO-R2の頭頂部には空力性能を高めるという「AERO-R2用エアパスプレート」が搭載されているため、頭頂部には直接的に風が当たらないが、取り外すことで更なる通気性が確保できる。

走り出すと前面のエアインテークから額やこめかみに風が強く当たる印象走り出すと前面のエアインテークから額やこめかみに風が強く当たる印象 photo:Makoto AYANO
平地を40~50km/hで巡航するとヘルメットに風が当たる感覚を受け始めるのだが、R2は風がヘルメットを撫でるように流れ、ヘルメットが押されたり、後ろに引っ張られたりする感覚はあまりない。また、後方確認や周囲の状況を把握するために横や後方を確認するタイミングでも頭の向きを変えたときにも引っ張られるような感覚がなく、全方位の空力性能に優れている印象だった。

また、ヒルクライムや休憩時にアイウェアをヘルメットに掛けることが多い筆者にとって、同梱されているノンスリップラバーはありがたい存在。様々なアイウェアをセットしてみて気がついたのは、テンプルはストレートなものとの相性が良さそうということだ。

平地を40~50km/hで巡航してみると風がヘルメットを撫でるように駆け抜けているように感じる平地を40~50km/hで巡航してみると風がヘルメットを撫でるように駆け抜けているように感じる photo:Makoto AYANO
R2でユーザーフレンドリーな点と言えばシールドが使える点だ。シールド内には適度に空気が入り込んでくるため、シールド内に眼鏡を着用していたとしてもレンズが曇ることなく快適なサイクリングが楽しめそう。今回のテストで使用したライトスモークのシールドは、日中は眩しさを程よく調整してくれ、夜間でも暗すぎることなく周囲の状況を鮮明に見ることができ、1日通して使える便利なカラーだった。日差しが強い夏などに適したミラーレンズもオプションとして用意されているため、枚数を揃えるのもあり。

私がAERO-R2を使用するなら、平均時速が速いロードレースとクリテリウム、シクロクロスや短めのタイムトライアル、サーキットエンデューロなど、エアロ性能の恩恵を受けられるレースシーンで使用したい。また、冬のサイクリングシーンでは爆風の向かい風に立ち向かうことがあるが、エアロ性能のおかげで体力を少しでもセーブしながら走ることができるだろう。

同梱されているノンスリップラバーを取り付ければアイウェアをしっかりホールドできる同梱されているノンスリップラバーを取り付ければアイウェアをしっかりホールドできる photo:Makoto AYANO
眼鏡を使用しているサイクリストにとって強い味方なってくれる眼鏡を使用しているサイクリストにとって強い味方なってくれる
カブト AERO-R2は本格的なレーサーから週末サイクリストまで、少しでも速く走れるようになりたい方におすすめしたい。そして、眼鏡を使用しているサイクリストにとって強い味方になってくれる高性能なエアロヘルメットだった。



カブト AERO-R2
カラー:マットホワイト、マットブラック、クリムゾンレッド、ネイビーブルー、オリーブイエロー、マットトランスグリーン
サイズ;XS/S、S/M、L/XL
価格:23,100円(税込)

impression:Michinari TAKAGI
photo:Makoto AYANO、Michinari TAKAGI
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