EFエデュケーション・イージーポストの中根英登のファンイベントが愛知県新城市で開催。ファンと共に喫茶店モーニングを楽しみ、鳳来寺山のヒルクライムで心拍数を上げ、シーズン報告を行なった「あったかい」一日の模様をレポート。



ジャパンカップで2022シーズンを走り終えた中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)ジャパンカップで2022シーズンを走り終えた中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)
その舞台は、WRCラリージャパン開催を来週末に控える愛知県新城市。文化の日の祝日、11月3日(木)に「愛知県民の森」を拠点に、EFエデュケーション・イージーポストに所属する中根英登を迎えたファンクラブイベントが開催された。

「可愛くて小さくても強い」。自身になぞらえたハリネズミのキャラクターを披露した"NAKA"(ヨーロッパでの中根のニックネーム)にとって、このファンと一緒にライドとおしゃべりを楽しみ、トークショーを行うイベントは今年で6年目となる。

ブリーフィングを行う中根英登。今日は25kmほどゆったり走りますブリーフィングを行う中根英登。今日は25kmほどゆったり走ります 寒いのに半袖で登場した高校生に上着をレンタル(そのままプレゼントに)寒いのに半袖で登場した高校生に上着をレンタル(そのままプレゼントに)

飯田線と宇連川に挟まれた、全くクルマが来ないルートをのんびりサイクリング飯田線と宇連川に挟まれた、全くクルマが来ないルートをのんびりサイクリング
高校までのサッカー一筋から一転、大学入学を機に本格的に自転車競技に転向して周囲に広がる山道でトレーニングを重ねてきた中根。これまでも絶好のサイクリング環境が整う新城市でファンイベントを開催してきたが、今年は前日に新城市立八名中学校で特別講師として招いた授業(世界で戦う中根の言葉を全生徒が熱心に聞き入っていたという)からのハシゴ。2026年のアジア大会ロードレース有力候補地となっている新城市、そしてこれからを担う世代にとって、愛知県から世界に羽ばたいた中根は非常に大きな存在なのだ。

日本にいくつものプロロードチームがあり、そこに所属する選手は数いれど、中根のように個人でファンクラブを持ち、普段から交流イベントを開催している選手は非常に稀。イベント参加者は常連さんがほとんどで、2日間用意されたイベントは両日とも満員御礼ということで、ファンを大切にする中根自身の人柄が現れているというもの。ファンはもちろん、中にはかつて中根が所属していた愛三工業レーシングチームGMを務める澤田さんの姿も。

鄙びた景色が楽しめる湯谷温泉鄙びた景色が楽しめる湯谷温泉 「前にシマノ鈴鹿で「前にシマノ鈴鹿で"あなたの自転車見せてください"に載せてもらったんですよ〜!」その節はありがとうございました!

明治時代の銀行を改装した喫茶店「鳳来館」でモーニングサービス。お腹いっぱいです明治時代の銀行を改装した喫茶店「鳳来館」でモーニングサービス。お腹いっぱいです 名物のサイフォン式コーヒー。美味でした名物のサイフォン式コーヒー。美味でした

ファンとおしゃべりを楽しんでご満悦のご様子ファンとおしゃべりを楽しんでご満悦のご様子
ファンライドは愛知県民の森を出発し、明治時代の銀行を改装した喫茶店「鳳来館」でモーニングを楽しみ、5,6kmの鳳来寺山までのヒルクライムで心拍数を上げてスタート地点に戻る25km。登り以外は会話を楽しみながらゆったりペースで走り、秘境のローカル線として人気ある飯田線沿いの景色を楽しんだ。中根自身もヒルクライムでは来年4月から中京大の後輩となる高校生ライダーと3往復(!)してエンジョイしていた。

あれ?愛三工業レーシングの澤田GMじゃないですか(登りで苦しんでいらっしゃいました)。あれ?愛三工業レーシングの澤田GMじゃないですか(登りで苦しんでいらっしゃいました)。 鳳来寺山を登るヒルクライム。この後アタック合戦が勃発しました鳳来寺山を登るヒルクライム。この後アタック合戦が勃発しました

ファンと一緒にヒルクライムを楽しむ(追いかけ回してる?)ファンと一緒にヒルクライムを楽しむ(追いかけ回してる?)
EFエデュケーション・イージーポスト所属2年目となる2022シーズンは、中根にとって病気と戦う苦しいシーズンだった。

春先は"過去最高"と呼べるコンディションでレースをこなしていたものの、ストラーデビアンケ前々日にインフルエンザウイルスが筋肉に入る3%しか確率のない病気「横紋筋融解症」に罹り、復活後の5月にはドイツツアーで春先と同じコンディションまで戻したものの、EBウイルスによる感染症が発症してしまう。マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)も長く苦しんだこの症状により、中根自身も「先が見えないトンネルの中にいる状態」を過ごしたと言う。

「今日トレーニングいけるかな?と思ってもすぐにダメになってしまう。100ワットも踏めなかったんですね。気持ちは元気なのに身体がついていけないのが本当に辛く、3ヶ月くらいこの状態が続きました。レースに出れない状況でしたが、チームドクターがこの症状を理解してくれて、なんとか今シーズン中にレース復帰できたことは大きかった」と中根。この時期には過去EBウイルスに苦しんだ萩原麻由子さんと何度も電話して勇気づけてもらったという。

「オフシーズンだからソフトクリームも大丈夫です(笑)」「オフシーズンだからソフトクリームも大丈夫です(笑)」 1日2往復しか走らない飯田線の特急「伊那路」を発見。ラッキーかも?1日2往復しか走らない飯田線の特急「伊那路」を発見。ラッキーかも?

愛知県民の森までゆったり戻ってフィニッシュ!良いライドでしたね愛知県民の森までゆったり戻ってフィニッシュ!良いライドでしたね
およそ半年に及ぶレース離脱。EBウイルス感染者としては驚異的なスピードで回復を遂げ(カヴェンディッシュは2年ほど要している)、シーズン最終盤のイタリアワンデーレースでコンディションを上げ、なんとか脚をジャパンカップに間に合わせて見せ場を作った。最初の3周回は症状再発のような状態で耐えるばかりだったというが、それでもワールドチーム所属選手たる走りを披露した。

そんな苦しいシーズンだったからこそ、中根にとってファンクラブの存在は大きかったという。「このファンイベントを何度も開催するに従って、"あの人たちのために頑張らなきゃいけない"という気持ちが年々強まっていたんです。何も成績を残せなかった今年は(何も報告することがないから)開催をちょっと戸惑っていましたが、それでも支えてくれる人たちのおかげで開催し、応援してくれる方々の笑顔を見ることができた。すごくホッとしました」と笑顔を見せる。

ライド後はシーズンの報告会。病気に悩まされた辛い時期と、異例とも言える早い復活を振り返ったライド後はシーズンの報告会。病気に悩まされた辛い時期と、異例とも言える早い復活を振り返った
4月から出身大学の後輩となる高校生ライダーにサイン4月から出身大学の後輩となる高校生ライダーにサイン はるばる四国から来たカヨさんご夫妻。一番遠いで賞(?)ですはるばる四国から来たカヨさんご夫妻。一番遠いで賞(?)です


今シーズン終盤には、EFエデュケーション・NIPPOデベロップメントチーム(下部育成チーム)の門田祐輔と岡篤志がジャパンカップを、留目夕陽がワールドチームメンバーとしてツール・ド・ランカウイに参戦。中根はライド後の報告会で、日本人選手が最高位チームのメンバーとして戦ったことを「すごく素晴らしいこと」だと評した。

「自分もそうでした。大学生のときにチームNIPPOのスタジエとして走らせてもらいましたが、彼らは超トップクラスのワールドチームの一員として走った。世界の誰もが夢見る舞台へ日本人選手が到達できる環境を実現してるNIPPOの存在は素晴らしい」。

32歳になった中根が、若手選手の中でも注目しているのが留目だ。「彼は世界選手権(U23)の、ロードレースではなく実力が如実に現れる個人タイムトライアルで21位になった。これは凄いことですし、来年はもっとトップチームに合流して活動することになるでしょう。彼には着目してほしいですね」。

今年で6年目となるファンイベントを開催した中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)今年で6年目となるファンイベントを開催した中根英登(EFエデュケーション・イージーポスト)
ジャパンカップを終え、オフシーズンに入った中根が今楽しみにしているのは、今回帰国せずスペインに残った妻と子どもたちと一緒に過ごすこと。「今年は家族が向こうに居てくれたから日々の生活が充実していました。娘のカタルーニャ語上達スピードは凄いし、久々に会って、また成長した姿を見るのが楽しみ」と顔をほころばせた。

text:So.Isobe