ナイロ・キンタナ(コロンビア)の検体からトラマドールが検出され、UCI(国際自転車競技連合)が処分を下した件に関し、CAS(スポーツ仲裁裁判所)は11月3日、成績剥奪処分が正当であるとして同選手の異議申し立てを棄却した。



2022年ツール・ド・フランスの総合6位を含む成績が剥奪されたナイロ・キンタナ(コロンビア)2022年ツール・ド・フランスの総合6位を含む成績が剥奪されたナイロ・キンタナ(コロンビア) photo:Makoto AYANO
ツール・ド・フランスにおけるナイロ・キンタナ(コロンビア)の検体から2度に渡り、オピオイド系の鎮痛剤の1つであるトラマドール、及びその2つの主要代謝物が検出されたこの問題。UCI(国際自転車競技連合)はキンタナの総合6位を含む2022年ツール・ド・フランスにおける全成績を剥奪し、それに対し同選手がCAS(スポーツ仲裁裁判所)に異議申し立てをしていた。

しかしCASは11月3日、この申し立てを棄却。CASは「ナイロ・キンタナの検体にはトラマドール、及びその2つの主要代謝物が含まれている科学的な証拠が十分であると判断した」として、その理由を「UCIによるトラマドールの使用禁止は、ドーピング(能力の向上)ではなく医学的な理由によるものであり、(本件は)UCIの権限と管轄の範囲内になる」と説明した。

今年のツール期間中である7月8日(第7ステージ)と13日(第11ステージ)にキンタナの検体から検出されたトラマドールは、WADA(世界アンチドーピング機構)が定める禁止薬物には該当しないものの、その副作用からUCIが2019年より使用を禁止している物質だ。

今年のツールでは山岳賞を着用したナイロ・キンタナ(コロンビア)今年のツールでは山岳賞を着用したナイロ・キンタナ(コロンビア) photo:Makoto AYANO
この判断を受け、キンタナは同日の11月3日に動画を公開。「残念ながら望む結果とはならなかった」と伝え、「選手キャリアを通して僕はこれまで300を超えるドーピング検査を受けてきた。それは月に約3回ほどに及び、これまでドーピングの問題などなかった。僕はこの物質を摂取していない」と、改めてトラマドールの使用を否定した。

またキンタナは今回の顛末を「後日明らかにする」としながら「僕にやましいことは何もない。この問題は終わっておらず、今後も自分の身を守るために手を挙げ(訴え)続けていく。ペダルは踏み続けるつもりだ。僕には禁止薬物を摂取しない理由がたくさんあるのだから」というコメントで動画を締めくくった。

この問題を受け、予定していた今年のブエルタ・ア・エスパーニャをキャンセルしたキンタナは、10月1日に3年の契約延長を発表していたアルケア・サムシックからの退団を発表。現時点で次なる所属は明らかになっていない。

text:Sotaro.Arakawa