2010年7月16日、ツール・ド・フランス第12ステージが起伏に富んだ210kmのロングコースで行なわれ、ゴール手前の「ローラン・ジャラベール山」で飛び出したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)がアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)を下して初優勝。アンディはマイヨジョーヌを守った。

緩やかな丘陵地帯を進む緩やかな丘陵地帯を進む photo:Cor Vosアルプス山脈からピレネー山脈までの道すがら、ツールは中央山塊に立ち寄る。カテゴリー超級や1級の難関山岳は存在しないが、標高1000mクラスの2級山岳や3級山岳が連続して登場。終盤には「ローラン・ジャラベール山」こと2級山岳クロワ・ヌーヴ峠が設定されており、起伏に富んだコースはワンデークラシックのようだ。

フランスの中でも暑さの厳しい地域として知られる一帯だけに、この日も選手たちは盛夏の暑さに苦しむことになる。

逃げグループを形成するアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)やヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)ら18名逃げグループを形成するアレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)やヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)ら18名 photo:Cor Vos前日に失格処分を受けたマーク・レンショー(オーストラリア、チームHTC・コロンビア)と、疲労が蓄積していたというサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)の2人がスタートせず。レースは開始直後からアタックが繰り返される展開で、最初の1時間の平均スピードは何と49.3km/hをマークした。

延々と1時間以上続いたアタック合戦に55km地点で終止符を打ったのは18名。

いくつもの山岳を越えてゴールに向かういくつもの山岳を越えてゴールに向かう photo:Cor Vos2つ目のカテゴリー山岳、3級山岳ノニエール峠の上りで総合12位のライダー・ヘジダル(カナダ、ガーミン・トランジションズ)や総合14位アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)、総合20位アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)ら18名が飛び出した。

この逃げグループの中には山岳賞2位アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)、ポイント賞2位トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)の姿も。

マイヨジョーヌのアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)にアスタナの選手たちが続くマイヨジョーヌのアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)にアスタナの選手たちが続く photo:Cor Vosヘジダルはマイヨジョーヌから5分42秒遅れの総合12位。総合争いにおける危険な選手たちが逃げに入っているとして、マイヨジョーヌ擁するサクソバンクはメイン集団を慎重にコントロール。タイム差が3分を超えることは無かった。

逃げグループの中で最も積極的に山岳ポイントを稼いだのは、第9ステージでマイヨアポワを獲得しながらも僅か1日でジャージを失ってしまったシャルトー。この日だけで17ポイントを稼ぎ出したシャルトーは一躍山岳賞トップに返り咲いた。ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)はレース序盤の落車で逃げるチャンスを失ってしまい、両者の差は15ポイントに。

2級山岳クロワ・ヌーヴでアタックを仕掛けたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)2級山岳クロワ・ヌーヴでアタックを仕掛けたホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vos同様にマイヨヴェールを前日に失ってしまったフースホフトは、中間スプリントポイントで合計10ポイントを獲得してポイント賞トップに返り咲き。マイヨヴェール奪回を決めたフースホフトはメイン集団に戻った。

ゴールまで50kmを切ると先頭グループ内のバトルが勃発。クレーデンのアタックにヴィノクロフ、ヘジダル、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、ケースデパーニュ)の3名が合流し、後続を振り切って最後の2級山岳クロワ・ヌーヴ峠に突入した。

2級山岳クロワ・ヌーヴで先頭ヴィノに追いつくアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)2級山岳クロワ・ヌーヴで先頭ヴィノに追いつくアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosレース後半にかけてランプレやオメガファーマ・ロット、リクイガスが積極的にコントロールしたメイン集団は、先頭4名から僅か1分遅れでクロワ・ヌーヴに突入。ステージ狙いのダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ)のために、マイヨヴェールを着るアレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)が集団を牽引する姿も見られた。

ラスト5kmから始まるこのクロワ・ヌーヴ峠は、登坂距離3.1kmで標高差314mを駆け上がる急勾配の上り。平均勾配は10.1%。1995年の革命記念日にマイヨヴェールを着てステージ優勝を飾ったローラン・ジャラベールにちなんで「ローラン・ジャラベール山」と命名されている。今年のパリ〜ニース第4ステージには頂上ゴールとして登場しており、当時はアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)がステージ優勝を飾ってリーダージャージを獲得した。

2級山岳クロワ・ヌーヴでヴィノに追いついたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)2級山岳クロワ・ヌーヴでヴィノに追いついたアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)とホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosこの急勾配の上りでヴィノクロフが力を見せた。先頭グループから飛び出したヴィノクロフは粘りの走りで激坂を駆け上がる。しかしそのすぐ後ろには、活発化したメイン集団が迫った。

急勾配区間でメイン集団からアタックを仕掛けたのは、これまで激坂コースで何度も勝利を手にしているロドリゲス。すぐにアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)がチェックに入り、2人で先頭のヴィノクロフに合流。そして置き去りにした。

マンド飛行場の滑走路でスプリントするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)マンド飛行場の滑走路でスプリントするホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)とアルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ) photo:Cor Vosマイヨジョーヌのアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)はコンタドールのアタックに反応出来ず、15秒遅れでクロワ・ヌーヴの頂上を通過。最後はロドリゲスとコンタドールの一騎打ちに持ち込まれ、先頭を牽き続けたコンタドールを悠々とかわしたロドリゲスが勝利した。

最後の上りでステージ優勝のチャンスを失ったヴィノクロフは4秒遅れでゴール。敢闘賞に輝いている。10秒遅れでゴールしたアンディは、マイヨジョーヌをキープ。しかしコンタドールに総合31秒差にまで詰め寄られた。アンディとコンタドールは31秒のタイム差でピレネー山岳ステージに挑むことになる。

マンド飛行場のゴールに飛び込むホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)マンド飛行場のゴールに飛び込むホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Cor Vosマンド飛行場の滑走路に先頭で飛び込んだロドリゲスは、初出場のツールでステージ初優勝。ブエルタ・ア・エスパーニャでは2003年にステージ2勝、2005年山岳賞、2008年総合6位、2009年総合7位という成績を残している生粋のクライマーが、フランスの地で輝いた。上りの厳しいワンデークラシックを得意としており、アルデンヌ・クラシック上位の常連だ(2009年リエージュ2位、2010年フレーシュ・ワロンヌ2位)。

「このツールにはステージ優勝という明確な目標をもって出場していた。総合上位というもう一つの目標も達成出来て本当に嬉しい。アルベルト(コンタドール)にトップスピードで勝るという自信があったよ。でも僕の見解としてはアルベルトが総合優勝候補の筆頭だ(レース公式サイトより)」

10秒遅れでゴールするユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)10秒遅れでゴールするユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)やアンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク) photo:Cor Vosロドリゲスは初日のプロローグで115位と大きく出遅れたが、レースの進行とともに着実に順位を上げ、現在総合8位につけている。スペインに近いピレネー山岳ステージでも更に挽回してくるだろう。

最後の上りで失速したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)、カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)、イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)、カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)はコンタドールから31秒遅れ、マイヨジョーヌから21秒遅れでゴール。バッソはチームメイトのロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)に抜かれ、総合トップ10圏外に落ちてしまった。

前日の第11ステージで6位に入った新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)は5分25秒遅れの集団内でゴールした。また、この日、手首の骨折を押してレースを続けていたタイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・トランジションズ)が、レース中盤にバイクを降りている。

翌第13ステージはピレネー突入前最後の平坦コースで行なわれる。当然スプリンターのモチヴェーションは高いが、ゴール8km手前の3級山岳が集団スプリントを阻止する要因に成り得る。アタッカーにもチャンス有りだ。


ツール・ド・フランス2010第12ステージ結果
1位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)4h58'26"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)
3位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+04"
4位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+10"
5位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)
7位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、レディオシャック)
8位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+15"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)
105位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+5'25"

第12ステージ敢闘賞
アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)58h42'01"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+31"
3位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)+2'45"
4位 デニス・メンショフ(ロシア、ラボバンク)+2'58"
5位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、オメガファーマ・ロット)+3'31"
6位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、レディオシャック)+4'06"
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+4'27"
8位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)+4'58"
9位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、ケースデパーニュ)+5'02"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+5'16"
11位 イヴァン・バッソ(イタリア、リクイガス)+5'30"
12位 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン、アスタナ)+6'25"
15位 カルロス・サストレ(スペイン、サーヴェロ・テストチーム)+7'34"
16位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)+7'39"
18位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシングチーム)+8'08"
101位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h22'06"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ・テストチーム)167pts
2位 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア、ランプレ)161pts
3位 ロビー・マキュアン(オーストラリア、カチューシャ)138pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 アントニー・シャルトー(フランス、Bboxブイグテレコム)107pts
2位 ジェローム・ピノー(フランス、クイックステップ)92pts
3位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)64pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)58h42'01"
2位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ラボバンク)+4'27"
3位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、リクイガス)+5'16"

チーム総合成績
1位 レディオシャック 176h11'16"
2位 ケースデパーニュ +21"
3位 アスタナ +15'43"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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