UCIシクロクロスワールドカップがアメリカ、ウィスコンシン州ウォータールーで開幕。フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が女子エリートレースを、エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が男子エリートレースを制した。



UCIシクロクロスワールドカップがアメリカ、ウォータールーで開幕したUCIシクロクロスワールドカップがアメリカ、ウォータールーで開幕した photo:CorVos
シクロクロス3大シリーズの中で最も格式高い「UCIシクロクロスワールドカップ」が例年通りアメリカで開幕した。ウィスコンシン州ウォータールーに位置するトレック本社裏手の丘で開催されたワールドカップ初戦で、既に本格シーズンインを果たしているヨーロッパ組と北米組が激突した。

2022-2023シーズンのUCIワールドカップは昨年から2戦減った全14戦。例年通りアメリカのウォータールーで開幕し、ファイエットビルの第2戦をこなしてからヨーロッパに戻り、ベルギーを中心にチェコやイタリア、新規開催地となるアイルランドとスペインを経てシーズン締めくくりの大一番となる世界選手権に向かう。


女子エリート:20歳ファンエンペルがアルバラードを下す

女子エリートレースは世界王者マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)こそ参加を見送ったものの、前世界王者ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)や、既にエグザクトクロス(旧エティアスクロス)で2勝しているフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)、2週間前に渡米して4レースを走っていたアンマリー・ワースト(オランダ、777)といったトップ選手が集結した。

一騎討ちのスプリントを制したフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)	一騎討ちのスプリントを制したフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
レースはスタート直後からオランダ勢が展開を掌握。名実ともにトップ選手の仲間入りを果たしたファンエンペルが積極的にペースを作り、完全ドライコンディションの高速レースを引っ張り続けた。

全6周回中の4周目にはセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク)のアタックによって先頭集団がバラけ、ブラントとファンエンペル、そしてアルバラードの3人がフィニッシュが近づくにつれてコーナーを抜けるたびに熾烈なスプリント勝負を繰り広げる。激化する勝負の中でブラントは千切れ、最後のテクニカルセクションをミスなくこなしたファンエンペルとアルバラードが最終ストレートでマッチスプリントを繰り広げた。

UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第1戦 女子エリート表彰台UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第1戦 女子エリート表彰台 photo:CorVos
最後の180度コーナーでインを突いたのはアルバラードだったが、余裕ある走りを続けていたファンエンペルのスプリントが伸びる。「最初から最後までタフなレースだった」と言う元世界女王を下した20歳が、ワールドカップ初戦を制した。

「全てが予定通りに進んだし、目標としているワールドカップを順調に滑り出せてとても満足。木曜日に到着したばかりで移動は大変だったけれど、結果が出たので嬉しい」と、引き続きオランダが席巻する女子CX界の中で、これまでにない結果を出しているファンエンペルが話している。



男子エリート:イゼルビットが独走勝利

男子エリートレースに出場したのは北米・ヨーロッパ勢合わせて46名。今年の大きな動きは、昨シーズン終盤に禁止物質レトロゾールが検出され、その後無実を証明するために奔走したものの結実しなかったトーン・アールツ(ベルギー)がバロワーズ・トレック・ライオンズを退団したことと、ローレンス・スウェーク(ベルギー)がパウェルスサウゼン・ビンゴールからクレラン・フリスタッズ(旧IKOクレラン)に移籍したこと。レースはスタート直後からエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)がハイペースを刻んでレースを引っ張った。

レース前半戦から独走したエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)レース前半戦から独走したエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
追走グループ内でバニーホップを披露するティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)追走グループ内でバニーホップを披露するティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
メインスポンサーのトレックが主催するW杯で勝利を挙げたかったバロワーズ・トレック・ライオンズ勢だったが、飛ぶように走るイゼルビットに歯止めをかけられず。ラース・ファンデルハール(オランダ)とティボー・ネイス(ベルギー)は第2グループ内の争いに切り替えざるをえなかった。

「最初からペースを上げたものの、スウェークがずっと追いかけてきていたので最後までプッシュし続ける必要があった」と振り返るイゼルビットは、レースの大部分を逃げ切って勝利。「独走という、110%の力がなければ不可能なプランAを実行できたので良かった」と、ワールドカップランキングリーダーに立ったイゼルビットは話している。

独走で開幕戦を制したエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)独走で開幕戦を制したエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第1戦 男子エリート表彰台UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第1戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos
好調ぶりを披露したスウェークが2位、ファンデルハールが3位。ワールドカップのエリートカテゴリーで自身初めて先頭争いに絡んだネイスは5位でフィニッシュしている。
UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第1戦 男子エリート結果
1位 エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 1:02:09
2位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、クレラン・フリスタッズ) +0:32
3位 ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +1:18
4位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) +1:21
5位 ティボー・ネイス(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +1:27
6位 ピム・ロンハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +1:33
7位 ダーン・ソエテ(ベルギー、デスハフト・ヘンス・マース) +1:39
8位 ニルス・ファンデプッテ(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク) +1:45
9位 ティモン・リュエッグ(スイス、クロスチームレジェンドル) +1:47
10位 ダヴィ・メヌ(フランス、ASバイクレーシング) +1:56
UCIシクロクロスワールドカップ2022-2023第1戦 女子エリート結果
1位 フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 47:39
2位 セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・ドゥクーニンク) +0:09
3位 ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) +0:11
4位 デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) +0:21
5位 アンマリー・ワースト(オランダ、777) +0:36
6位 インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、777) +0:43
7位 クララ・ホンシンガー(アメリカ、EFエデュケーション・ティブコSVB) +0:51
8位 エレーヌ・クラウツェル(フランス、ASバイクレーシング) +1:37
9位 マディガン・ムンロー(アメリカ、トレック・ファクトリーレーシングCX) +1:54
10位 カロリーヌ・マニ(フランス) +2:04
text:So Isobe