スペシャライズドのロードタイヤが、新型コンパウンドを投入したフラッグシップモデルS-WORKS Turboシリーズを主軸に刷新。チューブレスモデルがラインナップの主軸へと昇華し、先んじて登場したホイールと足並みを揃える。ファーストインプレッションと共に紹介する。



フラッグシップモデルのS-WORKS TURBOシリーズ。フルモデルチェンジによって性能向上を遂げたフラッグシップモデルのS-WORKS TURBOシリーズ。フルモデルチェンジによって性能向上を遂げた
1976年の創業時、スペシャライズドがALLEZやSTUMPJUMPERといった名車に先駆けてタイヤをリリースし、それ以降40年以上にも渡り「バイクはもちろん、タイヤこそが走りを左右する重要な要素」というモットーの下、オリジナルタイヤの性能向上に務めてきた。

そんな同社のロード用フラッグシップタイヤシリーズ「S-WORKS Turbo」が刷新。今春からクイックステップ・アルファヴィニルやボーラ・ハンスグローエ、そしてトタルエネルジーというスペシャライズド契約3チームが実戦投入し、レムコ・エヴェネプール(ベルギー)のブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝を支えたタイヤが遂に正式デビューを飾る。

圧倒的な力でブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝を遂げたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)。その走りを支えたのが新型Turboタイヤだった圧倒的な力でブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝を遂げたレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)。その走りを支えたのが新型Turboタイヤだった phoro:CAuldPhoto/Specialized
パリ〜ルーベでも新型Turboチューブレスタイヤが投入されたパリ〜ルーベでも新型Turboチューブレスタイヤが投入された photo:CorVosコンパウンドの挙動を確認するヒステリシス(エネルギーロス)テストコンパウンドの挙動を確認するヒステリシス(エネルギーロス)テスト (c)スペシャライズド・ジャパン


新型S-WORKS Turboシリーズのキモは、センタートレッド部分に改良型のT2コンパウンドを採用したことにある。S-WORKS Turboには従来からタイヤのセンターとショルダー部分で異なるGripton(グリプトン)コンパウンドが使われていたが、開発陣は素材を工夫することでウェットグリップと耐久性を向上させつつ、素材圧縮で生まれる発熱を抑え、結果的に運動エネルギーロスを抑える2Tコンパウンドを生み出し、使用目的別に3種類用意されるタイヤに落とし込んでいる。

ラインナップはフラッグシップのS-WORKS Turbo RapidAir 2BRを筆頭に、耐久性を考慮したS-WORKS Turbo 2BR、チューブド版のS-WORKS Turboという3種類。加えてセカンドグレードのTurbo PROも大幅に軽量化させて刷新するあたりに、開発陣の意気込みが感じ取れるというもの。なおチューブレスモデルの「2BR」とは「2Bliss Ready」、つまりスペシャライズドのチューブレスレディを指す言葉だ。

チューブレス化を推し進めるスペシャライズド。クリンチャーよりも速く快適であることがその理由だチューブレス化を推し進めるスペシャライズド。クリンチャーよりも速く快適であることがその理由だ
従来のラインナップにもS-Works Turbo RapidAir(チューブレス)が存在していたが、デビュー3モデルのうち2モデルがチューブレス。先んじて今年5月にデビューしたロヴァールの新型RAPIDE/ALPINIST(チューブレス対応)と合わせ、スペシャライズドの新時代到来を顕すものとなる。

スペシャライズドがチューブレス化を推し進める理由は、クリンチャーやチューブラーに対して使用素材量が最も少なく、ヒステリシス(熱変換におけるエネルギーロス)が少なく、結果的にクリンチャーよりも速く快適だから。発表会のプレゼンターを務めたスペシャライズド・ジャパンの下松氏は「新しいT2コンパウンドの採用で耐摩耗性が1000km分伸び、転がり抵抗は1ワット削減している」と胸を張る。

スペシャライズドは空気圧設定幅が広いフックドリム(=新型RAPIDE/ALPINIST Ⅱ)でのチューブレス運用を推奨しているものの、選択肢を広げるべくザイロン素材でビードを強化してフックレスリムの最新規格にも対応させた。ISOが定める110%破裂圧力基準である5bar/72.5psiの2倍である10bar/145psiをクリアしており、ビード上げ時や、走行中の衝撃で空気圧が急激に上昇した際のホイールの破損を防いでいるという。

新型T2コンパウンドをセンターに、サイドには従来と同じT5コンパウンドを継続採用新型T2コンパウンドをセンターに、サイドには従来と同じT5コンパウンドを継続採用
新(手前)と旧(奥)モデルを並べてみた。サイド部分のトレッドパターンは形状が異なる新(手前)と旧(奥)モデルを並べてみた。サイド部分のトレッドパターンは形状が異なる こちらは装着前のS-WORKS TURBO(チューブド)。コンパウンドとケーシングはコシのある手触りこちらは装着前のS-WORKS TURBO(チューブド)。コンパウンドとケーシングはコシのある手触り


S-WORKS Turbo RapidAir 2BRは、通常は路面との接触面の下に3層の重なり合うケーシングを使うところを、独自の2層構造ケーシング採用によってチューブラー同様の乗り味を実現した「RapidAir(ラピッドエアー)」を継続するフラッグシップモデル。ブエルタ総合優勝タイヤという看板をひっさげるプロユースタイヤであり、それゆえ26mm幅モデルのみというストイックなラインナップ展開。重量230gと軽く、耐パンク性能も12%の向上を見た。

スタンダードモデルと呼べるS-WORKS Turbo 2BRは、プロユースであればパリ〜ルーベなど荒れたコースで選ばれ、そしてホビーユースを含めた普段使い用のチューブレスタイヤだ。26、28、30mmと3モデル/2カラー展開となり、新型コンパウンド採用によって26mm幅の新旧比較で6ワットを削減しつつ、耐パンク性能を8%引き上げているという。チューブド派の選択肢となるS-WORKS Turbo(24、26、28、30mm)は24mm幅で200gという軽さを実現しつつ、先代モデルよりも転がり抵抗を抑えつつ耐パンク性能を8%向上させたモデルだ。

新型のT2コンパウンドを投入し、モデルチェンジが図られたフラッグシップモデルS-WORKS Turboシリーズ新型のT2コンパウンドを投入し、モデルチェンジが図られたフラッグシップモデルS-WORKS Turboシリーズ
今回は神奈川県厚木市のスペシャライズド・ジャパン本社でのプレゼンテーション後、場所を移して旧モデルを含めて各種タイヤを乗り比べる機会に恵まれた。そのファーストインプレッションをお伝えしたい。



ファーストインプレッション

スペシャライズドのタイヤが広く一般ユーザーに浸透してどれくらいが経つだろうか。

おそらく一気に広まったのは、GRIPTONコンパウンドを引っ提げたTurboがデビューした2013年だ。TTスペシャリストのトニー・マルティン(ドイツ)がクリンチャーモデルを決戦ユースして「チューブラーより速いクリンチャータイヤ」を強く印象付けた。2014年にデビューしたアルカンシエル入りのTurboは一世を風靡し、スペシャライズドの初代VENGEや、初代ALLEZ SPRINTを乗り継いだ筆者も好んでTurboタイヤを組み合わせて運用してきた。

タイヤは3モデル共に「しっかり感」が強い。前作との転がりの違いも理解できたタイヤは3モデル共に「しっかり感」が強い。前作との転がりの違いも理解できた
Turboタイヤがその頃と現在で大きく異なるのがケーシング剛性だ。当時のTurboはしなやかなケーシングに柔らかいコンパウンドを組み合わせていたが、近年、特に今回試した新作S-WORKS Turboシリーズはどれもケーシング剛性が高く、タイヤ自体の「しっかり感」が強いという共通点がある。チューブレスだからといってソフトな乗り心地というわけではなく、あくまでバランスを重視したレーシングタイヤ然とした印象が強い。

試乗会では先代モデルのS-Works Turbo RapidAirと乗り比べることができた(ホイールは共通)が、改良されたというT2コンパウンドが活躍する場面、つまり直進時のスピード維持が楽なことが僅かながら体感することができた。ケース剛性が高く、空気圧を下げても(体重67kgの筆者は推奨よりも低い前後5.0Barほど)タイヤ自体が潰れにくく、ダンシングもシャキッとするし、ダウンヒルでも狙ったラインをスパッとトレースできる。モチモチとした柔らかな乗り味を求めるユーザーには別の選択肢があると思うのだが、ロードバイク然とした硬質な乗り味は気持ち良さを感じるものだった。そしてもちろん、定評を得ているグリップ力は言わずもがな。

ロヴァールのALPINISTⅡホイールと組み合わせてテストを行ったロヴァールのALPINISTⅡホイールと組み合わせてテストを行った
走りの軽さならRapidAirを選びたい。耐久性重視であればパリ〜ルーベでも使われたS-WORKS TURBO(非RAPIDAIR)だろう走りの軽さならRapidAirを選びたい。耐久性重視であればパリ〜ルーベでも使われたS-WORKS TURBO(非RAPIDAIR)だろう
ロゴが違うだけで非常に見分けにくいが、3モデル間のフィーリングは、やはり「決戦用」のラベルが付くS-Works Turbo RapidAirの軽さが頭一つ抜けていた。RapidAir構造がもたらす乗り心地の良さは他2モデルと開きがあって、ケーシングの薄さも加わることで、いい意味でタイヤの存在感が薄い。短期間のテストに留まったが、摩耗やひび割れが目立った2014年頃と違い、モデルチェンジのたびに信頼性を増しているTurboタイヤだけにパンクやサイドカットへの耐久力も期待できる。

PR文句には記されていないことだが、今回の新型タイヤはタイヤサイドのロゴ(印刷ではなく凹凸で表現されているもの)を可能な限り省略・小型化し、製品精度のバラつきを抑えているという。金型の製造方法やゴム素材の流し方など製造方法にもこだわり、いわゆる「ヒゲ」量を抑えていることもそれに通じる部分だそうだ。

今春から実戦投入され、既に戦績十分な新型Turboタイヤ。市場を賑わせるタイヤになりそうだ今春から実戦投入され、既に戦績十分な新型Turboタイヤ。市場を賑わせるタイヤになりそうだ
今やスペシャライズドユーザーのみならず、広く人気を得ているS-Works Turboタイヤのモデルチェンジ/チューブレス化は大きなニュース。ブエルタ制覇を筆頭に、既に実績と戦績は十二分。カチッとした、グリップ力に優れるロードタイヤを求めるユーザーに薦めたくなるタイヤがデビューした。



スペシャライズド S-WORKS TURBO RAPIDAIR 2BR T2/T5
ケーシング:120 TPI
ビード:2Bliss Ready、 Zylon、 折り畳み可能
コンパウンド:GRIPTON(R) T2/T5
パンクプロテクション:BlackBelt
700x26 PSI 70-110 重量230g
価格:¥12,100 (税込)

スペシャライズド S-WORKS TURBO 2BR T2/T5
ケーシング:120 TPI
ビード:2Bliss Ready、 Zylon、 折り畳み可能
コンパウンド:GRIPTON(R) T2/T5
パンクプロテクション:BlackBelt
700x26 PSI 70-110 重量260g
700x28 PSI 70-95 重量280g
700x30 PSI 65-90 重量300g
700x28 TAN PSI 70-95 重量280g
価格:¥10,450 (税込)

スペシャライズド S-WORKS TURBO T2/T5
ケーシング:120 TPI
ビード:折り畳み可能
コンパウンド:GRIPTON(R) T2/T5
パンクプロテクション:BlackBelt
700x26 PSI 70-110 重量230g
価格:¥9,350 (税込)

スペシャライズド TURBO PRO T5
ケーシング:60 TPI
ビード:アラミド、 折りたたみ可能
コンパウンド:GRIPTON(R) T5
パンクプロテクション:BlackBelt
700 x 24mm、 100-115 PSI、 重量 約230g
700 x 26mm、 95-115 PSI、 重量 約250g
700 x 28mm、 75-95 PSI、 重量 約270g
700 x 30mm、 65-90 PSI、 重量 約290g
価格:¥7,150 (税込)

text:So Isobe

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