Jプロツアー第12戦となる「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ・南魚沼ロードレース」が開催され、完走率20%未満のサバイバルレースを入部正太朗が制して優勝。団体戦も弱虫ペダルサイクリングチームが優勝し、経済産業大臣旗を獲得した。女子チャンピオンシップは植竹海貴(Y's Road)が優勝した。



深紅の輪翔旗が前年優勝のチームブリヂストンサイクリング徳田優から今中大介JBCF副理事長に返還される深紅の輪翔旗が前年優勝のチームブリヂストンサイクリング徳田優から今中大介JBCF副理事長に返還される photo:Satoru Katoマトリックスパワータグに復帰した佐野淳哉(写真中央)がこのレースから出場マトリックスパワータグに復帰した佐野淳哉(写真中央)がこのレースから出場 photo:Satoru Kato

9月中旬とは思えない暑さの中スタート9月中旬とは思えない暑さの中スタート photo:Satoru Kato
Jプロツアーの中で最もステータスの高いレースが「経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ」。レースレイティングは最高位の「プラチナ」に指定され、同「ブロンズ」の大会に比べ10位までのポイントが3倍となる。シーズン終盤を迎え、個人・チーム共に年間ランキングを争う上で重要な大会となる。

また、Jプロツアーで唯一チーム対抗の団体戦が設定されるのも特徴のひとつ。各チームの上位3名の順位を合計し、最上位のチームには経済産業大臣旗、通称「輪翔旗」が授与される。

三国川ダムのつづら折れの下りを1列で進む集団三国川ダムのつづら折れの下りを1列で進む集団 photo:Satoru Kato
今年のチャンピオンシップは、前年に続き「南魚沼ロードレース」が指定された。新潟県南魚沼市の三国川ダム周辺に設定された1周12kmのコースは、およそ100mの高低差を登り、細かなアップダウンが連続するダム湖沿岸の道路を走り、100mの高低差を一気に下るレイアウト。特にコース後半のダム湖沿岸道路は道幅が狭くカーブが連続するため、集団が長く引き伸ばされる。集団後方ほど消耗するため、サバイバルレースとなることが多いハードなコースだ。

台風の影響もあってか、9月半ばでも30℃越えの真夏日の中でのレースとなった南魚沼ロードレース台風の影響もあってか、9月半ばでも30℃越えの真夏日の中でのレースとなった南魚沼ロードレース photo:Satoru Kato
台風の接近により各地で大雨となる中、南魚沼市周辺は朝から晴れて暑い1日。前日の南魚沼クリテリウムでは雨が降ったものの、この日は雨の心配よりも熱中症の心配が必要なほどの天候となった。

2周目に形成された5名の先頭集団2周目に形成された5名の先頭集団 photo:Satoru Kato
13周156kmのレースが動いたのは2周目。入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)、横山航太(シマノレーシング)、伊藤雅和(CIEL BLEU KANOYA)、アリア・キアニ(チームイルミネイト・オープン参加)の5名が先行。後続に1分50秒の差をつける。

レース中盤からは愛三工業レーシングチームが集団コントロール。先頭の鈴木譲に続いて前年優勝の草場啓吾がつけるレース中盤からは愛三工業レーシングチームが集団コントロール。先頭の鈴木譲に続いて前年優勝の草場啓吾がつける photo:Satoru Kato
メイン集団は、序盤は各チームが協力する形で追っていたものの、レース中盤に差し掛かると前年覇者の草場啓吾を擁する愛三工業レーシングチームがコントロールを開始。伊藤、横山が遅れて3名となった先頭集団との差を徐々に縮めていく。

先頭集団を吸収した集団はアタックが繰り返される状態に先頭集団を吸収した集団はアタックが繰り返される状態に photo:Satoru Kato
レース終盤、アタックが繰り返されるたびに集団が細かくなっていくレース終盤、アタックが繰り返されるたびに集団が細かくなっていく photo:Satoru Kato
5周目、先頭集団からキアニが遅れて入部とマンセボの2名が先行を続ける。しかし7周目に入るとマンセボがメカトラブルで後退。入部も集団に戻ることを選択し、集団はひとつにまとまる。この時点で集団の人数は30名弱ほどまで絞られていたが、その後のアタック合戦によりさらに人数が絞られていく。

残り2周、内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム)を先頭に4名の先頭集団残り2周、内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム)を先頭に4名の先頭集団 photo:Satoru Kato
残り2周となる12目、アタックが繰り返される中から入部、内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム)、白川幸希(シエルブルー鹿屋)、金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)の4名が抜け出し、組織的に追える集団が無くなった状態で後続との差は大きく広がっていく。

最終周回残り5km付近 3名の先頭集団がフィニッシュを目指す最終周回残り5km付近 3名の先頭集団がフィニッシュを目指す photo:Satoru Kato残り50m 入部正太朗、白川幸希、金子宗平のスプリント勝負残り50m 入部正太朗、白川幸希、金子宗平のスプリント勝負 photo:Satoru Kato

入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)が優勝入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)が優勝 photo:Satoru Kato
最終周回に入ると内田が遅れ、勝負は入部、白川、金子の3名に絞られる。残り50m、フィニッシュへ続く登りに3名が揃って姿を現しスプリント勝負へ。最終コーナー大外から伸びた入部が白川と金子の前に出ると、数mを残してガッツポーズを繰り出した。

入部の優勝は昨年10月のJプロツアー「かすみがうらロードレース」以来。弱虫ペダルサイクリングチームは4位に内田、9位に香山飛龍が入ったことで団体優勝も決め、クラブチームとしては快挙となる輪翔旗を獲得した。

出走72名中、完走は14名。団体戦の順位基準となる3名以上が完走したチームは、弱虫ペダルサイクリングチームの他にマトリックスパワータグのみというサバイバルレースとなった。

シマノレーシング時代の恩師・野寺監督が優勝した入部正太朗に声をかけるシマノレーシング時代の恩師・野寺監督が優勝した入部正太朗に声をかける photo:Satoru Kato表彰式表彰式 photo:Satoru Kato


入部正太朗コメント
「前半戦の悔しさを挽回したいと思って、夏に北海道合宿をやったり、体重も過去にないくらい絞って準備してきた。マンセボとの2人逃げが捕まった時、まだ残り6周あったのでキツいなと思ったけれど、集団に戻ったらみんな思ったよりキツそうだったから、諦めたらダメだなと。でも逃げが捕まった時はまさか勝てるとは思っていなかった。ウチの若い選手に、行って戻ってきたら終わりじゃないってことを伝えたかった。内田が4位に入ったし、今日はみんな頑張ったと思うし、クラブチームで経済産業大臣旗を取れたのは大きな成果だと思う」

初の団体優勝で深紅の輪翔旗を獲得した弱虫ペダルサイクリングチーム初の団体優勝で深紅の輪翔旗を獲得した弱虫ペダルサイクリングチーム photo:Satoru Kato
「佐藤GMからはチームの底上げをしてくれと言われていて、みんなが吸収してくれたらいいなと思っているけれど、それだけじゃなくて僕が若い選手から刺激をもらうこともあるし、僕が彼等からもらうことも多い。すごく良い関係になっていると思う」(以上コメント JBCF公式Twitterより)

ネクストリーダージャージは佐藤光(稲城FIETSクラスアクト)が獲得ネクストリーダージャージは佐藤光(稲城FIETSクラスアクト)が獲得 photo:Satoru Kato敢闘賞を獲得した内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム)敢闘賞を獲得した内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム) photo:Satoru Kato

レース終盤、金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)が積極的に飛び出すレース終盤、金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)が積極的に飛び出す photo:Satoru Kato
一方、積極的な走りで終盤まで残った金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム)が3位に入った。先週のツール・ド・北海道では東京大学から出場し、第1ステージと第3ステージでは強豪チームに混じって先頭集団に残って見せたが、その勢いを今大会でも見せた。

金子宗平コメント
「登りで人数を減らし、独走力を活かして先頭グループだけで先行してしまうという理想的な展開に出来た。最後に3人になった時は、下りが速い白川さんが1人で行ってしまうと厳しいと思っていたけれど、最終周回の下りで踏まなかったので先頭に出てゆっくりと下った。短いスプリントは苦手なのでラスト500mあたりから仕掛けた。行けるかなと思ったけれど、思ったより平らでスリップストリームに入られてしまい、一度やめて150mあたりで踏み直したけれど、あと一歩届かなかった。少しずつ成績を残せるようになっているので、次は1位を取ってもっと驚かせたい。」
Jプロツアー第12戦経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ・南魚沼ロードレース 結果(156km)
1位 入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム) 4時間6分29秒
2位 白川幸希(CIEL BLEU KANOYA) +0秒
3位 金子宗平(群馬グリフィンレーシングチーム) +1秒
4位 内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム) +43秒
5位 岡本 隼(愛三工業レーシングチーム) +3分6秒
6位 渡邊翔太郎(愛三工業レーシングチーム) +3分7秒
中間スプリント賞
1回目 フランシスコ・マンセボ(マトリックスパワータグ)
2回目 内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム)

敢闘賞 内田宇海(弱虫ペダルサイクリングチーム)

Jプロツアーリーダー 小林海(マトリックスパワータグ)
U23リーダー 佐藤光(稲城FIETS クラスアクト)



女子 植竹海貴が女子チャンピオンシップ制覇

女子 パレード走行を経てリアルスタートが切られる女子 パレード走行を経てリアルスタートが切られる photo:Satoru Kato
女子 序盤は下りで遅れた植竹海貴(Y's Road)が追走する場面が見られた女子 序盤は下りで遅れた植竹海貴(Y's Road)が追走する場面が見られた photo:Satoru Kato
女子チャンピオンシップとして行われたJフェミニンツアーのレースは6周72kmで行われた。

スタート直後から植竹海貴(Y's Road)と大堀博美(MOPS)が登り区間でペースを上げて人数を絞る一方、「6月の修善寺で落車して恐怖心があった」と言う植竹が序盤の数周は下りで大きく遅れて追いかけることを繰り返す。それでも終盤までに立て直し、大堀、唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム)の3名の勝負に持ち込む。最後はプリントで大堀を下して優勝。昨年に続き南魚沼ロードレース連覇を達成した。

女子 植竹海貴(Y's Road)が南魚沼ロードレース連覇女子 植竹海貴(Y's Road)が南魚沼ロードレース連覇 photo:Satoru Kato
植竹海貴コメント
「7月の石川・古殿で調子を落としてしまっていたので、なんとか戻してこられた。南魚沼のコースは楽しいけれど風が強く、下り始めで横風が強くて、最初はちょっと怖くて何度か遅れてしまった。余裕があればアタックしたかったけれど、ついて行くのに精一杯で余裕が無かったのでスプリント勝負にかけた。

10月に全日本選手権が開催されることになったが、11月のツール・ド・おきなわに向けて調整していたので、少し前倒しして全日本に向けて頑張りたい」
女子チャンピオンシップ 結果(72km)
1位 植竹海貴(Y's Road) 2時間15分14秒
2位 大堀博美(MOPS) +2秒
3位 唐見実世子(弱虫ペダルサイクリングチーム) +30秒
中間スプリント賞植竹海貴(Y's Road)

Jフェミニンリーダー 植竹海貴(Y's Road)



E1優勝 石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)E1優勝 石井祥平(アーティファクトレーシングチーム) photo:Satoru KatoY1優勝 風間大和(淑徳巣鴨高等学校)Y1優勝 風間大和(淑徳巣鴨高等学校) photo:Satoru Kato



text&photo Satoru Kato