思いがけず掴んだ勝利にフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)は戸惑いながらも喜び、総合優勝を決めたエヴェネプールは「この3週間の走りを誇りに思う」と満面の笑みを浮かべた。ブエルタ最終第21ステージを終えた選手たちの言葉を紹介します。



区間優勝 フアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)

キャリア初のグランツールステージ優勝を挙げたフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ)キャリア初のグランツールステージ優勝を挙げたフアン・モラノ(コロンビア、UAEチームエミレーツ) photo:Unipublic
勝利という現実をいまだ飲み込めていないが、本当に嬉しいよ。今日の目標はアッカーマンでスプリントすることだった。だが僕の脚も今日は絶好調で、残り300mから先頭に出た。ピーダスンが迫ってきているのが見え、パスカル(アッカーマン)が横から飛び出せるようスピードを維持しなければならなかった。そのため僕はそのまま踏み続けなければならなかったんだ。

その結果チームに素晴らしいエンディングをもたらすことができた。この勝利を僕の母と家族に捧げたい。

区間2位&ポイント賞 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)

圧倒的な力でマイヨプントスを得たマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)圧倒的な力でマイヨプントスを得たマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) photo:CorVos
最終コーナーで絶好の位置につけることができた。集団がストップ&ゴーを繰り返せば多少後ろからでも勝てると思ってたのだが、UAEのリードアウトは完璧だったね。最終コーナーまでほぼ彼らはチームの全員が残っていたんじゃないかな。まるでPro Cycling Manager(TVゲーム)みたいな(理想的な)スプリントだったよ。だから彼らの勝利を祝福したい。

このブエルタは喜びしかなく、グリーンジャージ(マイヨプントス)と区間3勝という結果は僕を特別な気持ちにさせてくれる。チームの全員に感謝したい。僕たちは(スプリントに特化したチームではなく、クライマーなど)違ったタイプの選手がいるチームでも協力すればスプリントで勝てると示すことができた。チームにいるクライマーたちは僕のスプリントのため、本当に力を尽くしてくれた。

今日は勝ちたかったものの、既に喜びに満ち溢れたこの3週間となった。期待を遥かに超えたブエルタとなったよ。既にここまで長いシーズンになっているので、これで今シーズンという本を閉じようと思う。10月にもレースには出場するが、まずは家に帰って1週間ほど休みたいね。

マイヨロホ&ヤングライダー レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)

フィアンセに見守られながら、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)がチームメイトと合唱フィアンセに見守られながら、レムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)がチームメイトと合唱 photo:Unipublic
レース直後インタビュー

ようやく正式な総合優勝者になることができた。昨日既に感極まっていたが、今日は安全にレースを終えることができた。完璧なレースかつ最大限楽しむことができた。

今日はとてもテクニカルなコースだったので景色を楽しむ余裕はなかったよ。周回を重ねるごとに緊張感が高まっていったからね。だから最後はレースに集中して、安全にフィニッシュできて本当に嬉しいよ。

この総合優勝という結果はチームや国、僕自身にとっても歴史的な出来事だ。この3週間に渡って僕たちがやってきたことを心から誇りに思う。

レムコキャリア初のグランツール総合優勝を遂げたエヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)レムコキャリア初のグランツール総合優勝を遂げたエヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル) photo:Unipublic
表彰式スピーチ

まずはベルギーから声援を送ってくれた人たちに感謝を伝えたい。また、数ヶ月後に結婚するフィアンセに感謝したい。彼女が僕の一番の支援者と言っていい存在だし、もちろんそれは両親にも言えることだ。彼女たちがいなければこの結果はなかっただろう。

またチームメイトにも感謝したいし、この後一緒にこの表彰台に上がり喜びを分かち合いたい。彼らがこの3週間に渡り力を貸してくれた。本当に感謝している。そして横にいる2人のライバルを祝福したい。彼らは本当に強かった。そしてどうやらスペイン自転車界の未来は明るいようだね。

このブエルタで総合優勝することができて本当に嬉しい。来年またここに戻ってくるか分からないが、この大会には本当に感謝している。ありがとう。

総合2位 エンリク・マス(スペイン、モビスター)

豪快なシャンパンファイトで総合2位を喜ぶエンリク・マス(スペイン、モビスター)豪快なシャンパンファイトで総合2位を喜ぶエンリク・マス(スペイン、モビスター) photo:Unipublic
この数ヶ月という難しい時期を共に過ごしてくれた全ての人に感謝したい。特に僕のサポートをしてくれたプロフェッショナルな仲間たちや、妻、家族、チームやファンに感謝を伝えたい。僕らが45日前に置かれた状況を考えれば、表彰台という結果は成功と呼べるものだろう。

ここまで僕たちは一日一日を集中して、冷静に困難に立ち向かってきた。だが1つだけ心残りなのはグアダラマ山脈での(第20)ステージ。不運にもあのステージでは脚に力が入らなかった。だがそれがレースだし、それ以外では良い走りができていた。

今年出場したティレーノ~アドリアティコやイツリア・バスクカントリー、クリテリウム・デュ・ドーフィネ、ツール・ド・フランスなどでは落車や不運に見舞われていた。だからステージレースのシーズン最終戦をこのように終えることができて嬉しいし、この結果は未来への希望を与えてくれる。

総合3位 フアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)

グランツール初出場でいきなり総合3位を射止めたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ)グランツール初出場でいきなり総合3位を射止めたフアン・アユソ(スペイン、UAEチームエミレーツ) photo:Unipublic
初出場のブエルタ・ア・エスパーニャで表彰台に上がることができ、まるで夢のようだ。ここまでは一日一日、経験を積み重ねようという思いでやってきた。自分の限界がどこにあるか分からず、素晴らしいチームメイトと共にこの結果を掴むことができて興奮しているよ。3週間を通して僕たちは良い走りができた。そしてモラノによる勝利は、まるでケーキに最後の彩りを与えてくれたよう。完璧なエンディングとなったよ。

現役最後のグランツールを走り終えたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

最後のグランツールを走り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が胴上げをうける最後のグランツールを走り切ったアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が胴上げをうける photo:Unipublic
感動的なブエルタだった。勝利した時に味わうような一気に押し寄せる感動ではなく、日に日に少しずつ積み重なっていくような感動だ。そしてその心の動きを楽しむことができた。

マドリードでのレースは素晴らしかった。それを見る人たちも僕と同じぐらいの美しさを感じ取ってくれたら最高だ。3週間に渡るブエルタで僕に愛情を注いでくれたすべての人々に感謝したい。選手としてではないが、必ずここに戻ってくると約束するよ。

人々から受け取ったものと自分が成し遂げた成果を楽しみ、これからはできる限りチームをサポートしていくつもりだ。しかしその前に、キャリア最後のレースが待っている。1ヶ月後にイタリアで開催されるイル・ロンバルディアで現役生活を締めくくりたい。

近年の若手選手の活躍について語るクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)

見事完走を果たしたクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)見事完走を果たしたクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos
(カルロス)ロドリゲスやアユソなど若手選手の活躍には眼を見張るものがある。彼らは若くして成熟し、既に総合争いをしている。現代の自転車界で主流となりつつある動きだ。彼らはプロになって僅か1年か2年でもうハイレベルの争いに加わることができている。

その背景には高いレベルの栄養やコーチングなど、基本的にプロ選手が享受する全ての要素を15、16歳のときから手に入れているからだろう。そのため20歳でプロになる頃には、既に僕たちとレースを走る準備が整っている。興味深い動きかつ、興味深い変化だね。何よりスペイン自転車界の未来は、間違いなく明るいと言えるだろう。

text:Sotaro.Arakawa
photo:Unipublic, CorVos