スイスをMTB大国に押し上げた功労者の一人、トーマス・フリシュクネヒトへのインタビューを紹介。かつての世界王者であり、現在もMTBトップチームを率いる彼に、スイスでの取り組みや、選手育成について聞いた。



東京オリンピックのMTB女子レースでスイスが表彰台を独占。銀メダルのフライ、金メダルのネフ、銅メダルのインダーガンド東京オリンピックのMTB女子レースでスイスが表彰台を独占。銀メダルのフライ、金メダルのネフ、銅メダルのインダーガンド photo:CorVos
トーマス・フリシュクネヒトトーマス・フリシュクネヒト photo:SCOTT SRAM MTB Racing Team東京オリンピックから1年。MTBクロスカントリー競技にてスイスは、女子競技の表彰台を独占という歴史的快挙を成し遂げ、男子でも金メダルこそトーマス・ピッドコック(イギリス)が獲得したが、マティアス・フルッキガーが銀メダル、ニノ・シューターが4位獲得と、国として圧倒的な存在感を示した。

スイス国旗が表彰台に並ぶ様子をTV解説席で涙を流しながら見ていた1人の男がいた。

トーマス・フリシュクネヒト。「SCOTT-SRAM MTB Racing Team(以下、SCOTT-SRAM)」のチームマネージャーの彼は、90年代からのMTBの歴史の一部であるレジェンドである。最強の現役選手であるニノの指導者であり、自身もアトランタ五輪銀メダリストのMTBクロスカントリーの元世界チャンピオン。MTB王国スイスの歴史に強い影響を与え、それを作り上げた1人である。

その彼に自身のキャリアを振り返ってもらい、スイスのナショナルレベルでの取り組み、ジュニアライダーの育て方についてインタビューした。

寿司と日本が大好きと言う「フリッシー」の、日本の若いライダーやその周囲のサポーターに向けた、MTBへの愛に満ちたメッセージをお伝えする。



ー フリッシー、この度はニノケイト・コートニーのインタビューの機会と併せて、このような貴重な機会を与えてくれてありがとう。日本のMTBライダーのみんなへのメッセージとして届けたいと思います。

「とんでもない。僕の仕事はチームマネージャーでもあり、MTBの魅力を世界中に伝える事だからね。あと、実は日本の皆さんには借りがあってね…90年代後半の頃の話だけど、長野のレースに参戦した際に日本の皆さんにお世話をしてもらったんだ。

僕が初日に『寿司が最高だ! 毎日でも構わない!』と伝えたら、連日お寿司に連れて行ってもらえる事になって日本滞在を満喫したんだけど、当時はお寿司が高級な食べ物だって全然知らなくてさ…。当時、ツアーをアレンジしてくれた『トクさん』(徳永貴和さん、当時トーマスのスポンサーだったリッチーの日本担当)とその仲間の皆さんには本当に申し訳なくて…。こういう取組を通して、日本の皆さんに恩返しが出来るのなら大変光栄だよ。今日はなんでも聞いてほしい。

あ、そうだ、日本のキッズからの質問をもらってたと聞いてたから、そのキッズ達にお土産を持ってきたんだ。後でプレゼントしてもらえると嬉しい。」

ー ありがとうございます! 良い質問を投げかけてくれた子供達に渡したいと思います。トクさんにも連絡しておきます。 さて、そのあなたが来日された時代に私はMTBキッズで、雑誌であなたの特集などを食い入る様に見て、ビデオでレースを見て、あなたの走りに憧れていました。あなたが現役時代に使っていたオークリーのアイウェアを、僕は未だに使ってライドを楽しんでいます。間違いなくあなたの影響です。

「あれから20年近く経っちゃったね。まだABSAケープエピックやスイスのマラソンレースには出てるんだけど、体型はちょっと変わったかな(笑)」

東京オリンピックで来日したトーマス・フリシュクネヒト東京オリンピックで来日したトーマス・フリシュクネヒト ー当時の雑誌があなたを「スイスの精密機械」というフレーズで紹介していて、アスリートの見本のような自分に厳しい方なのかなという印象だったので、ちゃんと楽しく話せるのか心配していました。

「そんな事ないよ!僕はもともとは裏山でシクロクロスバイクをぶっ飛ばして走るのが大好きなちょっと変わったファンキーな人間なんだよ。

若い頃に欧州の閉鎖的な自転車競技の世界に少し飽きを感じた頃に、MTBと出会ったことから、自由な雰囲気でMTBを楽しめるアメリカに渡ってリッチーの一員として活動していたくらいなんだ。なので、そんなに怖がらないでほしい(笑)

ただ、MTBがオリンピック競技に採用された頃からは、MTB競技の地位を高めるために少しアスリートっぽい雰囲気を前面に出していたかもしれないね」

ー強豪国スイスでもMTB競技の地位は低かったと言う事ですか?

「90年代はロード競技と比べると地位は低かったね。その頃はナショナルレベルでの連携した取り組みなどはなく、僕も国内では個人的にやっているような状態だった。

 MTBの中心地がアメリカだったこともあり、欧州ではロードレースより数段格式を低く見られていたので、予算面なども限られていた。伝統あるロードの人達からすれば、MTBライダーはカラフルでファンキーな雰囲気で、チャラいスポーツと受け止められていた様に思うね。

僕自身、スポーツとしてのMTBは、愛好者レベルでは様々な年齢と脚力のライダーが自然や景色を共有できる素晴らしいものだと思っている。一方で競技レベルでは、ロードレースと変わらないくらい肉体的に過酷で、アスリートとして求められる能力はかなり高い。またTVに映るアクションも派手だし、五輪に相応しい競技だと思ってる。

そういった思いから、MTB競技の魅力を色々な人に感じて欲しくてね。初めて公式競技として採用されたアトランタ五輪には、『これは世界中の人達にこのスポーツの魅力を伝える絶好の機会だ』と大会に臨んで、ハッピーなことに銀メダルを獲得できた。そこから競技としてのMTBのポジションを高められていったという感じかな」

ーなるほど、仰る通りですね、あなたはまさにMTBスポーツのアイコンの役割を果たしてこられたのでしょう。

「ありがとう。今のMTB人気を作ってきた人は、恩師のトムリッチーを含めて先輩後輩に沢山いると思うから、アイコンはちょっと言い過ぎかもしれないけど、スイス国内ではMTBの歴史の一部として貢献出来たんじゃないかな」

ースイス国内での取組について、少し詳しく教えてください。あなたは2008年までエリートレーサーとして最前線でレースを走る一方で、自身のチームを立ち上げ、ニノを始め多くの選手達を育てて来たと思います。今日はその辺りのお話を伺わせてください。

2004年のSwiss-Powerチーム。アルカンシエルを着るのがフリッシーだ2004年のSwiss-Powerチーム。アルカンシエルを着るのがフリッシーだ
「そうだね。1990年から2001年まではチームリッチーの一員として活動していたのはみんな知ってると思う。そして2002年に、今のSCOTT-SRAMの前身となるSwiss-Powerというチームを立ち上げたんだ。

2000年頃のスイスはまだ、世界のトップレースをナショナルチームレベルで戦える環境になく、オリンピック、世界選手権、欧州選手権等の主要大会の少し前に短期の合宿や練習会を実施して大会に向けた準備は行うけど、年間を通じたプランやトレーニングメソッドはなく、個人単位の努力でそれらの大会に臨んでいたんだ。

だけれども、スイスには環境面では絶対に他国を凌駕するだけのポテンシャルがあると強く感じていた。だからスイス国内から才能を集め、ナショナルチームと連動する形でワールドカップへの参戦体制を整えたり、トレーニングノウハウを集結させられれば、選手たちをより高みへ押し上げられると考えていた。

それを実現する為に、当時所属していたリッチーとの契約を発展的に解消させて、新チームを立ち上げたんだ。チームが創立した初期に、ニノやフロリアン・フォーゲル、ラルフ・ネフ等の強豪選手の成長を後押しできたのは、初期のSwiss-Powerの大きな功績だったね」

ー自分が走る為にチームを立ち上げた部分もあったかと思いますが、後輩の選手等を指導することと自分がレーサーとして結果を求めることの間に摩擦はありませんでしたか?

「チームを立ち上げた経緯が、スイスの次世代の選手達を強くしたいという一心だったので、葛藤や摩擦は全くなかった。彼らが自分より速く走り、良いリザルトやタイトルを獲ることを心から喜んでいたよ。

どんなスポーツでも世代交代があるのは当然の話。自分の足跡を辿って、自分より若い選手が自分より速く走れる様になったのをとても誇りに思うし、彼等の活躍やメダル獲得をいつも心から祝っていたよ」

ーあなたがSwiss-Powerチームのコーチ兼マネージャーに就任して以降の2010年頃から、スイスナショナルチームが世界選手権等で表彰台を独占するなど、スイスの選手達の活躍が目立ちました。その要因はどのようなところにあるのでしょうか?

「僕自身はトップチームを立ち上げて強化の部分を担ったわけだけど、それ以外のところで取り組んでいたMTBの強化に向けての普及、育成などの色々な施策がそれぞれの現場で成熟して、連携が取れたり、噛み合ってきたりしたんだと思う。

子供たちの育成に力を入れる「スイスパワーカップ」子供たちの育成に力を入れる「スイスパワーカップ」
キッズ〜ジュニアカテゴリーは障害物を多く設定し、テクニックに磨きをかけるキッズ〜ジュニアカテゴリーは障害物を多く設定し、テクニックに磨きをかける 縞板を貼ったパンプトラックを走る縞板を貼ったパンプトラックを走る


その中でも一番大きな影響を与えたのは、国内のシリーズ戦を継続的に行ってきた事だと思う。スイスでは90年代後半から国内シリーズである『Swiss-Powerカップ』を開催していて、このシリーズ戦は欧州各国からエリート選手が集まるレベルの高いレースになっている。それだけでなく、子供達の育成にとても力を注いでいる。事実、ニノも6歳からこのシリーズ戦からMTBライダーとしてのキャリアを始めたんだ。

特にキッズ〜ジュニアカテゴリについては、短い距離のXCコースの中に様々な障害物を設置して、あえてとてもテクニカルなコースにしている。端的に言えば『MTBに上手く乗れる奴しか勝てない』、そういう意図でレースコースを設定している。

選手にとって、フィジカルを鍛えるのはもちろん大事だけど、若い選手が将来エリートレーサーとして活躍する為には、とにかくテクニック面を集中的に強化する事が必要だとの考えから、テクニック重視でレースを運営しているんだ。

ニノに限らず、過去のスイスチャンピオンであるクリストフ・サウザー、ラルフ・ネフ、フルッキガー兄弟、ヨランダ・ネフといったスイス代表の選手は全員、圧倒的なテクニックとスキルを持っているのは見ての通りだ。彼ら含めスイスの多くの選手は幼少期から家族と一緒にテクニカルでレベルの高いレースに参戦してきた。スイスは比較的国土が小さいから参戦しやすかったんだ。その環境だと自ずとライディングのレベルは高くなっていくよね。『若い選手にはフィジカルより先に、テクニック』これを徹底させた国内レース環境を整えたのが一番大きなポイントだね。

ー障害物とは、どのようなものですか?

「木の根が多かったり、少し意地悪なスラロームだったりというのは他のコースでもあると思うけど、廃車の上を走らせたり、丸太で組んだセクションをバニーホップしたり人工的な障害物も設置したりしているかな。真剣に走ると、結構難しいんだ(笑)」

ーそういったアイディアは、貴方自身がコンセプトを打ち出して具現化してきたのですか?

「いや、ファンドレ・アンディセッリと言う、スイスでのMTBのゴッドファザーとも言うべき存在の人物が中心だった。彼はナショナルコーチとしてナショナルチーム体制を整え、国内のレース環境を作ったり、僕と一緒にSwiss-Powerチームの立ち上げを行ったんだけど、彼こそ今日のスイスチームの活躍を生み出したと言えるだろう。

そこまでに普及、育成、エリートの強化、国内競技運営が噛み合ってきたと伝えたけど、彼が全体を指揮する役割を担ってくれた。司令塔ともいう存在なのかな、全体をコーディネイトする立場の人間がいない事には、タレント発掘から強化まで連続的に対応出来ない」

ー育成面では、 どうやってタレントを発掘出来るものなのでしょうか?

今季W杯初戦ブラジル。歴代最多勝利タイに並んだニノ・シューター(スイス)と今季W杯初戦ブラジル。歴代最多勝利タイに並んだニノ・シューター(スイス)と photo:SCOTT SRAM MTB Racing Team
「ニノについては、彼の走りを見てすぐに彼は『Next Level』の走りをしていると感じたよ。元々彼はキッズ・ユースカテゴリ時代から同年代で敵無しなことは聞いていたけど、最初の出会いは彼が17歳の時にチームの合宿にやってきた時だった。

僕のホームトレイルでニノと一緒に走った際に、道も知らない筈のニノはダウンヒルセクションで僕の後ろをピッタリと付いて離れなかったんだよ。僕も少し意地になって、スピードを上げたり、ギリギリまで突っ込んだりしたんだけど結局最後まで付いてきた。『これはとんでもない逸材がやってきたぞ』となってね。初めて会った時に既に僕のテクニックを超えていた。

そこから一緒にトレーニングに取組んで、ジュニアのタイトルを獲得して、現在に至る。ニノは特別かもしれないけど、強豪チームから声が掛かる選手に共通する特徴はテクニックの水準がとても高いことだ。スカウトする側としては、過去のリザルトと同じくらいテクニックの水準を重要視するね。

少し話が逸れるけど、最近ではMTBで良い結果を残す選手達をプロロードチームのスカウトが見に来て、ロードのプロチームが選手を獲得していくと言うことがMTBレースの現場では行われている。

シクロクロス、MTB、ロードをトップレベルでこなすファンデルプールシクロクロス、MTB、ロードをトップレベルでこなすファンデルプール photo:CorVos
実際ニノも若い頃にプロロードチームからの誘いを受けていた。ピドコック(トーマス・ピドコック)やマチュー(・ファンデルプール)に限らず近年では多くのオフロード種目の経験を有する選手が、ロードレースの世界で活躍しているのは知っての通りだ。これは若い頃から高いテクニック水準や総合的な身体機能を持っている選手の方が、プロチームに所属して本格的なトレーニングを始めると伸び代が大きいのを、プロのスカウトは見抜いていているからなんだ。

そういった背景もあるし、MTBのプロチームはロードチームより予算が限られているから、有能な選手をMTBレースの現場に引き留めるのに苦労している面もあるね。何はともあれ、若い頃にテクニック水準が高い選手は将来性が非常に高い。そんな選手を僕達はいつも探しているよ」

ー強化の面で見ると、スイス代表の選手はMTB・ロード・シクロクロスと複数の競技にナショナルチームレベルで参加しています。これはどういった意図なのでしょうか。もちろんあなた自身がシクロクロスで活躍したり、シクロクロスバイクでロード五輪を完走した(アトランタ1996五輪)といった実績は承知の上での質問ですが…

「クロスオーバーという観点だと、ピドコックとマチューが代表的な事例だけど、彼らは桁違いすぎてちょっと参考にならないね(笑)。あそこまで全てを高いレベルでこなせる選手はスーパーマンか突然変異だよ。

ただ、彼らのようにオフロードレースの経験を持つ選手がツールなどで活躍することは素晴らしいことだと思うし、時代が変わったことを象徴していると思う。

一般論として、MTBライダーが有酸素能力の強化やMTBトレーニングの事前準備段階としてロードレースに参戦したり、冬季のトレーニング期間中に刺激を与える目的でシクロクロスに参戦することは、選手の全般的な身体能力を鍛える意味でとても有用だと考えているし、僕としては推奨している。

またスイスでは、MTBライダーをロードのナショナルチームの一員として、UCIレースに参加させるなどの体制を整えている。ニノ、マティアス、ヨランダ、シーナ・フライといった今回の五輪メンバーもロードレースに参加しているし、合宿を一緒に行うこともある。

2014年、オリカ・グリーンエッジの一員としてツール・ド・スイスを走ったニノ・シューター2014年、オリカ・グリーンエッジの一員としてツール・ド・スイスを走ったニノ・シューター photo:Tim de Waele
僕の経験から言ってもトレーニングの目的に応じて、様々な種目をクロスオーバーするのはとても良いことだと思うし、連盟が選手の強化の為に種目の枠組みを越えたチャレンジを支援する体制を作ることはとても大事だ。

また選手やスタッフを交流することで、遠征のノウハウを共有して効率化が図れたり、選手の新たな課題やチャンスを発見するきっかけになる。スイスは人口が日本の10分の1以下で、選手やスタッフのリソースも少ないから、工夫を重ねることがとても大事なんだ。

そういった観点で、日本の伊豆サイクルスポーツセンターはノウハウを集約させる環境として素晴らしいね。ロードワークの拠点になって、トラック競技場も世界最高難度のコースも一箇所にまとまっている。若い選手にはこういった施設を活用して色々な競技にクロスオーバーして挑戦してもらえればいいと思うし、エリートレベルでも色々な種目の選手が一緒に合宿するなどすれば、良いシナジーが生まれるはず。世界中探しても、こんな恵まれた施設は珍しいので、ぜひ上手く活用して欲しいね」

ートレーニングの面では、今でこそ体幹トレーニングやバランストレーニングは多くのライダーが取り組んでいますが、それらを早い段階で積極的に取り入れて、その重要さを発信してきたのはSCOTT-SRAMだと感じています。これは貴方のアイディアなのですか?

「いや、僕ではなくて、トレーニングプログラムとして体型的なものにしたのは、ニノのパーソナルコーチであるニコラスのアイディアだ。僕の現役時代は原始的なウェイトトレーニングに取り組むことが多かった。

僕はあらゆるスポーツの中でも、MTBクロスカントリーは身体的に要求されるものがかなり高く、複雑な処理が要求される難しいスポーツなんじゃないかなと感じている。

レース前の試走日は選手と共に自らも試走を欠かさないレース前の試走日は選手と共に自らも試走を欠かさない photo:SCOTT SRAM MTB Racing Team
レースの登坂区間を最高心拍数付近の全力でペダルを回しながらも、トラクションコントロールや緻密なライン選択とバイクハンドリングが求められる。下りでは同じ高い心拍数のまま高い集中力を保って高速でバイクを走らせ、ジャンプやドロップオフでは身体を柔軟に使ってコースを走破するといった一連の作業が求められる。身体への負荷が高い状態で、ここまで高度かつ複雑な技術が求められるスポーツは、他には思い付かない。

MTBを上手く操って速く走らせるには、身体の各部位をきちんと動かし、かつそれぞれを連動して動かすことが基本。これは「ボディコーディネーション」と言って、身体をイメージのままに動かして、体勢を維持したり、強い出力を行うなどの能力を高める事。これをニノとチームメンバーは大事にしている。

具体的には1セット8分のサーキットトレーニングの形式で行う。最大筋力強化、瞬発力、調整力(バランスボードなど)といったワークアウトを連続的にレースと同様の心拍ゾーンでするんだ。かなりハードだけど、MTBで全力で走るのも同じくらいキツいからね。ライドと同じくらい重要なトレーニングとして位置付けているよ」

ー育成の観点で、これからの成長していく若い選手やキッズレーサーに大事にして欲しいことはなんでしょうか?

「若い頃はとにかく楽しんで走ることが何よりも大事」「若い頃はとにかく楽しんで走ることが何よりも大事」 (c)SCOTT-SRAM MTB Racing Team「とにかく楽しんで走ろう。『Fun is Fast, Fast is Fun』。楽しんでテクニックとスキルを身につける事が大事だ。若い選手のみんなには自転車で遊びまわって、走行テクニックやバイク操作の技術を身につけることに集中して欲しい。

持久力や心肺機能は、30歳前後まで時間とトレーニングで少しづつ強化されるものだけれど、テクニックやスキルは年齢を重ねてから身につけるのはとても難しい。またテクニックやスキルを活かせば高い巡航スピードで走れるし、パワーも温存できる。

17歳ー18歳くらいになってジュニアカテゴリーのレースに参加する事になった段階で、計画的なトレーニングプランを組むなどして、本格的なトレーニングに少しづつ移行していく。それぐらいのイメージで構わないので、16歳くらいまではとにかくMTBに楽しく乗って、テクニックを身につけて欲しい。

先に話をしたSwiss-Powerカップでは、勝つためにはテクニックとフィジカルの要素が1対1となる様なイメージでコースが設定されているけど、周囲の大人等やコーチもその考え方を持って、選手と接したり環境を整備できればいいと思う。

もちろんタイトルが掛かっていることもあるだろうから、17歳前後から競技に向けて真剣に取り組むことは当然だし否定しない。また、ジュニアでタイトルを獲得できるほど才能のある選手に対して、僕からコメントすることはない。そのままがんばって欲しい。

ただ、ユース・ジュニアの時期にタイトルのために打ち込み過ぎて、U23前後で燃え尽きてしまったり、成長が止まったりしてしまうケースも多く見てきた。僕個人としてはエリートに向けて少しづつ成長していくステップが望ましいと考えている。U23でタイトルが取れなくても、選手生活が終わりなんてことはない。本当の競技人生はエリートカテゴリーから始まるんだ。

エリートに参加して、そこで打ちのめされて、トレーニングを積み重ねて、レースを走って…。そこからどれだけ成長できるかが本当の闘い。これから成長していく選手にはジュニア・U23で身体に負荷をかけ過ぎる事には注意して、どんな時もライディングを楽しむマインドは忘れないで欲しい」

ー選手の育成と言った観点で、Swiss-Powerチームが波に乗るまでどれくらいの期間を要しましたか?

「幸いな事に、僕のチームはニノ、フォーゲル、ラルフ、ネフといった才能に恵まれたこともあり、チームを発足して間もなく、ジュニア、U23カテゴリでタイトルを獲得できたし、僕自身もMTBマラソンで2度世界チャンピオンになれた。設立してすぐのタイミングで、それぞれのカテゴリのスイスチャンピオンが集まって、情報を共有してチームとして活動した事が、それぞれの選手の実力を押し上げたんだと思う。

特に17歳だったニノを、あのタイミングでピックアップしたのは本当にラッキーだったと思うし、スイスとMTB業界にとって最善の選択ができたと思う。チーム加入以来、ニノは20年近くに渡って僕のチームで活躍してくれているし、彼のチームへの忠誠心とチームメートへの貢献を惜しまない姿勢には心から尊敬しているよ。僕はニノに巡り会えて本当によかったけど、彼もそう思ってくれてたらいいんだけどな(笑)」

ー間違いなく彼もそう思っているでしょう。ではチーム運営について伺います、チームはどういった人員構成なのですか?

少数精鋭で活動するSCOTT-SRAM。「第二の家族」を目指して構成されているという少数精鋭で活動するSCOTT-SRAM。「第二の家族」を目指して構成されているという photo:SCOTT SRAM MTB Racing Team
「SCOTT-SRAMは4人のライダーに対して、3人のメカニック、理学療法士が1人、僕ら夫婦がマネージャー兼シェフというメンバーで活動している。地域によってサポートメンバーに手伝ってもらうけれども、基本的にこのメンバーで世界中を転戦している。

僕は、チームはあまり大きくせずに第二の家族だと感じられるくらいの構成がベストだと考えているんだ。1人はみんなのために、みんなは1人のために、という思いやりの気持ちを持つのが、永くお互いが気持ちよく活動していくのに大事だと思う。イタリアのタスカニーにある僕の別荘で行った東京五輪に向けての最終合宿では、ニノが皿洗い係だったしね。

僕の仕事はチームマネージャーなので、みんなの心を一つに繋いで、スピリットを共有する事だと思っている。様々な課題を一緒に乗り越えて、嬉しい時も辛い時も感情を共有できる環境を整えるのを心掛けているし、長くそれを実現できているとも感じているよ」

元世界女王ケイト・コートニー(アメリカ)を出迎える元世界女王ケイト・コートニー(アメリカ)を出迎える photo:SCOTT SRAM MTB Racing Team
ーキッズレーサーを指導する親御さんやコーチへのアドバイスは?

「キッズと一緒にトレーニングに付き合ったり、レースへの運転の時間だったり、沢山の時間を過ごす中で色々あると思う。でも、高過ぎる目標を設定したりするなど、親が子供の夢について考えすぎないことかな。目標や課題設定はできるだけ低くして、それを一つずつ達成できるよう彼らをサポートする意識を大事にして欲しい。

よく見る悪い例は、親やコーチが選手自身より熱くなってしまって、選手が余計なプレッシャーを抱え込んでしまうこと。若い選手にとってはトレーニングもレースも楽しむ事が速くなるための1番の近道。選手が楽しめる環境や雰囲気を作る努力をすれば、選手は自分で課題を発見して伸びていくと思う。

インタビューを担当した中村浩一郎氏(左)と筆者(右)インタビューを担当した中村浩一郎氏(左)と筆者(右) 40年近くレースの現場で過ごして、選手、コーチ、父親と言う立場を経験してきた僕の立場から言えるのは『いつでも子供たちの状況を冷静に見つめ、熱くなりすぎないこと。そして暖かく見守ること』。これが僕からのアドバイスかな」

インタビュー後半では、フリッシーのレーサーとしてのキャリアについて振り返る。

Interview&Text:Koichiro Nakamura, Yoshinori Suzuki
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