オランダと北スペインでの戦いを終え、同国東部からアンダルシア地方の山岳地帯に向かうブエルタ・ア・エスパーニャ第2週目。個人TTを皮切りに、大会唯一の超級山岳シエラ・ネバダへと至る第10〜15ステージを詳しく紹介します。



8月30日(火)第10ステージ → コースマップ
エルチェ〜アリカンテ 30.9km(個人タイムトライアル)


8月30日(火)第10ステージ エルチェ〜アリカンテ 30.9km8月30日(火)第10ステージ エルチェ〜アリカンテ 30.9km photo:Unipublic第1休息日を終えた選手たちが約900kmの移動を経て降り立つのは、スペイン東部の街エルチェ。マイヨロホを着るレムコ・エヴェネプール(ベルギー、クイックステップ・アルファヴィニル)やタイムを挽回したいプリモシュ・ログリッチ(スロベニア、ユンボ・ヴィスマ)などタイムトライアルの得意な選手、またタイムロスを最小限に留めたい選手にとって重要なステージとなる。

コースはエルチェから東の地中海に向けて一直線を進み、沿岸線を北に向かってフィニッシュする30.9km。タイトコーナーが連続した初日のチームTTと違い、コースはほぼ直線基調のため総合上位を狙うクライマーにとっては誤魔化しのきかないステージとなる。更に後半10kmは地中海から吹き付ける浜風にも注意したい。

昨年大会で個人TT2戦2勝とライバルたちを圧倒したログリッチ。それどころかログリッチは初めて総合優勝を挙げた2019年から個人TTで負け知らず(4戦4勝)。その絶対王者に挑むのはベルギーTT王者として初戦となるエヴェネプール。ステージ優勝争いで言えば過去にTT世界選手権を2連覇しているローハン・デニス(オーストラリア、ユンボ・ヴィスマ)やイーサン・ヘイター(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)にも注目だ。

フィニッシュ予定時刻:午前0時30分頃(日本時間)



8月31日(水)第11ステージ → コースマップ
エルポソ・アリメンタシオン〜カボ・デ・ガタ 191.2km(平坦)


8月31日(水)第11ステージ エルポソ・アリメンタシオン〜カボ・デ・ガタ 191.2km8月31日(水)第11ステージ エルポソ・アリメンタシオン〜カボ・デ・ガタ 191.2km photo:Unipublicこの日の出発地点は、これが現役最後のグランツールとなるアレハンドロ・バルベルデ(モビスター)の生まれ故郷ムルシア。そこから南下して、美しいビーチゆえ年々観光客を増やしているカボ・デ・ガタを目指す191.2kmを駆け抜ける。コースレイアウトはこれが大会3日目以来の集団スプリントとなるかもしれない平坦路。逃げ切りには起伏が足りないこのコースは、中盤から地中海沿岸を走るため横風分断の危険性もはらむ。

オランダでのスプリントステージではサム・ベネット(アイルランド、ボーラ・ハンスグローエ)がダニー・ファンポッペル(オランダ)による好リードアウトを受けて2戦2勝し、昨年、今年と怪我や不調で波に乗り切れなかった2020年ツールのマイヨヴェールが復活をアピールした。その対抗となるのはティム・メルリール(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)や、2日連続で2位に甘んじたマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)などだ。

フィニッシュ予定時刻:午前0時30分頃(日本時間)



9月1日(木)第12ステージ → コースマップ
サロブレーニャ〜ペニャス・ブランカス 192.7km(平坦/頂上フィニッシュ)


9月1日(木)第12ステージ サロブレーニャ〜ペニャス・ブランカス 192.7km9月1日(木)第12ステージ サロブレーニャ〜ペニャス・ブランカス 192.7km photo:Unipublic今大会2ステージ用意された平坦/頂上フィニッシュという聞き慣れない分類だが、その正体は総合順位がシャッフルされるであろう山岳ステージだ。コースレイアウトはその名の通り、スタートからカテゴリー山岳のない平坦路を進み、残り19km地点から1級山岳ペニャス・ブランカスを登り詰める。

前回この山岳が登場したのはチェコ人クライマーのレオポルド・ケーニッヒが優勝した2013年大会。しかもその時よりも登坂距離が4km延長された距離19km/平均勾配6.7%で争われる。15%前後の急勾配区間が登り口とラスト3kmに登場し、この2日前の個人TTでタイムを失ったクライマーたちがマイヨロホに襲いかかる。

フィニッシュ予定時刻:午前0時30分頃(日本時間)



9月2日(金)第13ステージ → コースマップ
ロンダ〜モンティリャ 168.4km(平坦)


9月2日(金)第13ステージ ロンダ〜モンティリャ 168.4km9月2日(金)第13ステージ ロンダ〜モンティリャ 168.4km photo:Unipublic第2週目最後のスプリントステージは、峡谷の上に掛けられた石橋「ヌエボ橋」で知られるアンダルシア州ロンダを出発地点とする。2014年大会では今大会も出場中のジョン・デゲンコルプ(ドイツ、チームDSM)が区間優勝した場所であり、デゲンコルプはその年に区間4勝を挙げ、マイヨプントス(ポイント賞ジャージ)を獲得した。

目指す終着地点は168.4km北上した先にある、ワイン畑に囲まれた街モンティリャ。残り14.6kmの中間スプリントでマイヨプントスを争う前哨戦を経て、ブエルタ初登場となるこの街のフィニッシュは残り1kmから若干の登り基調。リードアウトを組むチームは苦労を強いられるだろう。サム・ベネットが力でねじ伏せれば勝利を重ねる可能性が高いものの、傾斜次第ではピーダスンに分があるか。

フィニッシュ予定時刻:午前0時30分頃(日本時間)



9月3日(土)第14ステージ → コースマップ
モントロ〜シエラ・デ・ラ・パンデラ 160.3km(山岳)


9月3日(土)第14ステージ モントロ〜シエラ・デ・ラ・パンデラ 160.3km9月3日(土)第14ステージ モントロ〜シエラ・デ・ラ・パンデラ 160.3km photo:Unipublic総合優勝の争いが左右される山岳2連戦はアルボラン海にほど近いスペイン南部を舞台に行われる。その初日はモントロを出発地点とする160.3kmだ。コース中盤から始まる3級と2級山岳を越え、選手たちはブエルタ2度目の登場となる1級山岳シエラ・デ・ラ・パンデラ(距離8.4km/平均7.8%)に臨む。

15%の勾配で始まるこの山岳は、4.8%の緩斜面を挟んで以降は15%が連続する激坂だ。そしてラスト1km地点の手前から一度下り、再びフィニッシュラインまで500mを駆け上がる。前回このシエラ・デ・ラ・パンデラが登場したのは20年前の2002年。その時に区間優勝したロベルト・エラス(スペイン)は翌年から3年連続総合優勝を決めるなど大会と結びつきが強い山岳だ。

大会唯一の個人タイムトライアルが終わり、残すは山岳勝負となった総合争い。マイヨロホを狙うクライマーと個人TTでのリードを守りたいオールラウンダーが火花を散らすことだろう。

フィニッシュ予定時刻:午前0時30分頃(日本時間)



9月4日(日)第15ステージ → コースマップ
マルトス〜シエラ・ネバダ 149.6km(山岳)


9月4日(日)第15ステージ マルトス〜シエラ・ネバダ 149.6km9月4日(日)第15ステージ マルトス〜シエラ・ネバダ 149.6km photo:Unipublic今大会唯一の超級山岳が登場する第15ステージは149.6kmという比較的短い距離に、獲得標高差が4,000mを超える過酷極まりないレイアウト。その舞台なるのは出場中のサイモン・イェーツ(イギリス、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)や、ツール・ド・フランスを制したユンボ・ヴィスマが高地合宿の地として使うシエラ・ネバダ山脈だ。

本格的な登坂が始まるのはマルトスを出発して100kmを越えてから。まずは1級山岳アルト・デル・プルシェ(距離9.1km/平均7.6%/標高1,490m)で戦いの幕が上がると、標高770mまで下ってからフィニッシュを目指し約30kmに及ぶ登坂に突入する。そしてオヤ・デ・ラ・モラ峠とも表記される超級山岳シエラ・ネバダ(距離19.3km/平均勾配7.9%)に引かれたフィニッシュラインは、2,512m地点にあるピコ・ヴェレタ気象観測場だ。

標高の高い山岳が登場するステージで毎回話題になるのは、出場選手が生まれた故郷の標高。今大会で最も高いのはリチャル・カラパス(エクアドル、イネオス・グレナディアーズ)の2,980mで、次いで2,858mのミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナカザフスタン)と2,842mのヨナタン・カイセド(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)など南米選手の名前が並ぶ。

そして山頂にフィニッシュした選手たちは、翌日に約350kmほど西にあるヘレス・デ・ラ・フロンテーラで今大会最後の休息日を迎える。

フィニッシュ予定時刻:午前0時30分頃(日本時間)



9月5日(月):休息日



text:Sotaro.Arakawa

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