本日、7月24日に開幕する2022年ツール・ド・フランス ファム。女子で33年振りとなる黄色のマイヨジョーヌ着用者候補をプレビュー。圧倒的な登坂力を誇るファンフルーテンに対抗できるはカヴァッリ、ロンゴボルギーニ、それともニエウィアドマか?




男子ツールと同じく、4賞ジャージが授与される男子ツールと同じく、4賞ジャージが授与される photo:A.S.O.
イエロージャージを意味するマイヨジョーヌは総合リーダーの証。個人総合成績首位の選手だけが着用を許される栄光のジャージであり、総合優勝者は最終日のフィニッシュ地点であるラ・シュペール・プランシュ・デ・ベルフィーユの表彰台にて、33年振りのマイヨジョーヌを受け取ることになる。

ジャージスポンサーを務めるのは男子と同じくリヨンに拠点を置くLCL銀行。また同様にタイムボーナスも導入され、ステージ1位の選手は10秒、ステージ2位の選手は6秒、ステージ3位の選手は4秒のタイムが総合時間からボーナスとしてマイナスされる。

今大会には男子レースで2018〜2021年まで導入されていたボーナスポイントも登場する。これは従来の「スプリントポイント」とは別に設定されるもので、ポイント賞に関係するポイントは与えられず、上位3名にボーナスタイム(1位-3秒、2位-2秒、3位-1秒)が与えられる。

そのため総合優勝を目指すクライマーたちはもちろん、ステージ毎に決まるマイヨジョーヌ着用を目指す選手たちにとっても重要な要素となる。設定されているのは第3〜7ステージのフィニッシュから5〜10km手前のため、位置取り争いもレースに展開を加えそうだ。

マリアローザのファンフルーテンを止めるのは誰だ

今年のジロ・ドンネで総合優勝したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)今年のジロ・ドンネで総合優勝したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター) photo:CorVos
女子プロトンで圧倒的な登坂力を誇ったアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)が昨年末に引退。その前年度王者が不在のジロ・ドンネで総合優勝を挙げたのは、39歳ながら力衰えぬアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、モビスター)だった。大会4日目の丘陵ステージで独走勝利を決めて早々とマリアローザを手にすると、他を圧倒する登坂力でそのまま自身3度目となる総合優勝に輝いた。

「周りはツールの話ばかりしているが、私にとってはジロもツールも大差ない」とシニカルに語るファンフルーテン。しかし2023年限りでの引退を発表したファンフルーテンが、その輝かしい戦績にマイヨジョーヌを加えたくないわけがない。

そのファンフルーテンの登坂力に対抗できるのは、7月16日にFDJスエズ・フチュロスコープにチーム名を改めたエースのマルタ・カヴァッリ(イタリア)だけかもしれない。2021年に個人で未勝利だった24歳は、今年のアムステルゴールドレースでワールドツアー初勝利をきっかけに躍進を果たすと、続くラ・フレーシュ・ワロンヌでファンフルーテンを破って春のクラシック2勝目を挙げた。ファンフルーテンとの直接対決となったジロ・ドンネでは登坂で遅れるシーンも見られたものの、何とか食らいつき総合2位で表彰台に上がった。

またチームには共に総合優勝を狙うデンマーク王者セシリーウトラップ・ルドヴィグもいる。ジロ・ドンネの山岳ではルドヴィグが牽引をきっかけにファンフルーテンのチームメイトが脱落する場面も。その他にもグレース・ブラウン(オーストラリア)など登坂に長けた選手たちを揃えたチーム力でマイヨジョーヌを目指す。

今年のジロ・ドンネの登坂でファンフルーテンに対し何度もアタックを仕掛けるマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJスエズ・フチュロスコープ)今年のジロ・ドンネの登坂でファンフルーテンに対し何度もアタックを仕掛けるマルタ・カヴァッリ(イタリア、FDJスエズ・フチュロスコープ) photo:CorVos
ジロ・ドンネでは山岳アシストを担ったセシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJスエズ・フチュロスコープ)ジロ・ドンネでは山岳アシストを担ったセシリーウトラップ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJスエズ・フチュロスコープ) photo:CorVos総合表彰台を目指すカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム)総合表彰台を目指すカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド、キャニオン・スラム) photo:CorVos

チームスポンサーの1つであるズイフトが大会のタイトルスポンサーになったことにより、勝利が至上命題のキャニオン・スラムはカタジナ・ニエウィアドマ(ポーランド)をエースに据える。ワンデーレースでの活躍が目立つジニエウィアドマだが、2020年のジロ・(現ジロ・ドンネ)では総合2位に入るなど確かな登坂力を備えるオールラウンダー。今年はウィメンズツアーで総合3位に入るとジロ・ドンネを回避し、ツールに標準を絞ってきた。

そしてニエウィアドマと共にエースを担うのはパウリーナ・ローイヤッカース(オランダ、キャニオン・スラム)。プロデビューして10年が立つ29歳だが、30歳を越えてピークを迎えた同国出身のファンフルーテンという例もあるため、今後の成長が期待されているクライマーだ。

今年パリ〜ルーベ・ファムを制したエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)今年パリ〜ルーベ・ファムを制したエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード) photo:CorVos
38歳になった未だ成長中のマビ・ガルシア(スペイン、UAEチームADQ),38歳になった未だ成長中のマビ・ガルシア(スペイン、UAEチームADQ), photo:CorVosデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos

今年のパリ〜ルーベ・ファムを制し、イタリア選手権の個人タイムトライアルで3年連続6度目の制覇を成し遂げたエリーザ・ロンゴボルギーニ(イタリア、トレック・セガフレード)もマイヨジョーヌ候補の1人。ジロ・ドンネでは山岳で遅れ総合4位と表彰台を逃したものの、6月のウィメンズツアーでは山頂フィニッシュでニエウィアドマら振り切りステージ優勝と総合優勝に輝いた。

単純な登坂力ならばジロ・ドンネ総合3位のマビ・ガルシア(スペイン、UAEチームADQ)も有力候補に挙げられる。スペイン選手権のロードと個人TTでそれぞれで連覇中のガルシアは、38歳ながらも年々力をつけるクライマー。スタミナ面で不安を抱えるものの、前半戦を上手くこなすことができればマイヨジョーヌも見えてくるはずだ。

またファンデルブレッヘンとファンフルーテンに続く、強豪国オランダの次代を担うデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)にも注目したい。前半戦で総合タイム差を稼ぎ、山岳ステージでクライマーたちに食らいつくことができれば、総合優勝も絵空事とは思えない。

text:Sotaro.Arakawa

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