名峰ラルプデュエズを制したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)は「悪くない結果だろう?」と、ツール初出場初優勝をはにかみ喜んだ。「あくまでも通過点」と語るフルームなど、ツール第12ステージを終えた選手たちのコメントを紹介します。



区間優勝&総合8位 トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

史上最年少でラルプデュエズを制したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)史上最年少でラルプデュエズを制したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
そんなに悪くない結果だろう?登りでもし捉えられていたとしても僕に失うものは何もなかった。初めてのツールでステージ優勝だ。悪くないね。

今日の目標は逃げに乗ることだった。昨日のステージで総合タイムを失っていたので、僕が飛び出しても集団は容認してくれると思っていた。それにガリビエ峠の登りではなく、下りならばユンボ・ヴィスマも僕を追走するリスクは取らないだろうと踏んだんだ。また逃げ集団との差も僅かだったので飛び出した。その思惑が完璧にハマってよかったよ。

間違いなく競技人生で最高の瞬間だ。(ラルプデュエズは)現実とは思えない光景だった。はためく旗や突き上げられる拳。その間を縫うように突き進む。あんな体験、他では絶対に味わうことはできない。ツール・ド・フランスのラルプデュエズでなければね。

クリス・フルームと一緒に走ることができて嬉しかった。もちろん彼は以前のようなスピードはないのかもしれないが、フルームであることには変わりわない。レジェンドと一緒にラルプデュエズを登ることができて光栄だったよ。

区間2位 ルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)

ピドコックから遅れたルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ)ピドコックから遅れたルイス・メインチェス(南アフリカ、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) photo:Makoto AYANO
2位という結果に満足感と同時に悔しさを感じている。悔しさは勝てなかったから。ツールで1位と2位の差は大きいからね。だが同じぐらい満足している理由は世界中に僕の走り示すことができたからだ。

ピドコックが飛び出した後、すぐに追いかけることをしなかった。追いついてもペースダウンしてまたアタックされてしまうからね。だけど彼はそのまま勝利を掴み、最も強いことを証明した。この後も今日の反省を活かして挑み続ける。

区間3位 クリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)

ガリビエ峠で逃げグループに向けて飛び出すクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)ガリビエ峠で逃げグループに向けて飛び出すクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos
勝利を目指して全力で走ったので何の後悔もない。僕自身の進歩を見せることができたし、また今日は家族が来ていたんだ。妻と6歳の息子、そして3歳の娘がね。だから特別な日だったし、逃げに乗ることができてよかった。僕を信じてこのチャンスを与えてくれたチームに感謝したい。

とにかく自分の力を出し尽くすことができた。ただピドコックとメインチェスが僕よりも強かっただけ。彼らを祝福したい。落車してからこの3年は本当に長い道のりだった。しかし今日は以前のトップフォームに戻る通過点でしかない。

区間5位&総合2位&マイヨブラン タデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)

山頂手前のヘアピンコーナーでアタックするタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)山頂手前のヘアピンコーナーでアタックするタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ) photo:Makoto AYANO
実は昨日遅れた理由が判明したんだ。だからこのツールで2度と遅れることはないだろう。だからこそこの後のステージも自信を持って走ることができる。

ーその原因とは?

秘密だよ(笑)。嘘うそ。アタックをし過ぎたせいだ。馬鹿だよね。ガリビエ峠でもう少し冷静な走りをするべきだった。ガリビエ峠であまりにも調子が良かったせいで、グラノン峠でその代償を払わなければならなかった。でも今日は脚が戻ってきたよ。

今日はヨナスを引き離そうと試みたのだが、昨日の結果もあり100%の自信はなかった。でも第3週目に向けて気持ちは前向きだよ。ファンの皆は総合トップ10の争いを楽しめていることだろう。特にトップ5は僅差だからね。更に面白い戦いがピレネーで見ることができるだろうね。

区間6位&マイヨジョーヌ ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)

マイヨジョーヌを堅守したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)マイヨジョーヌを堅守したヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ) photo:CorVos
厳しいステージだった。気温が高く、特にクロワ・ド・フェール峠の麓はとても暑かった。またラルプデュエズの登り口も35度を超えていたんじゃないかな。予想していた通り、最後はタデイがアタックを何度か繰り返した。だが幸運にも全てのアタックに追従することができた。

昨日の影響もあり今日の脚はそこまで良くなかった。また皆この暑さにやられていたんじゃないかな。とてもハードなレースだったのでタイム差を奪いにいくのではなく、タデイから離されないような走りをした。

観客は多く、素晴らしい雰囲気だった。正直言うと思っていたよりも彼らは行儀よかったね(笑)。ラルプデュエズは映像で観ていたが、それよりも大分マシだったように感じる。

区間7位&総合3位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)

総合3位まで順位を上げたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)総合3位まで順位を上げたゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos
トムがこの場所で英国人として2人目となる勝利を挙げた。とても栄誉なことに感じる。彼は才能のある選手で、ここまでとても良い走りをしていた。昨日の調子は良くなかったものの、今日はチャンスを掴み逃げに乗った。逃げ集団にいるメンバーから見ても、僕たちは彼が良い結果を掴むという自信があった。

僕自身の調子はよい。彼ら(ポガチャルとヴィンゲゴー)がアタックを繰り広げるなか、スピードを上げすぎないよう自分のペースで登坂した。感触は良く、彼らのスプリントに絡むことができると思ったのだが、もう少しだけ積極的に動くべきだったね。

区間11位&総合4位 ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)

ラルプデュエズの途中から暑さにやられてしまった。そのため脚が完全に無くならないよう自分のリズムに切り替えた。残念だがこれがツール・ド・フランスだ。良くない日も歯を食いしばって乗り越えなければいけない。

区間14位&総合6位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、アルケア・サムシック)

フィニッシュラインまで戦い続けた。総合順位を守るため自分のペースで登った。このまま戦い続け、目標に向かって着実に歩んでいくだけだ。

text:Sotaro.Arakawa