近年注目のトップ女性サイクリストを紹介していく連載の第六弾は、次代のオランダを担うデミ・フォレリングについて。強豪国にあっていま最も注目されるエースが狙うのは、初のツール・ド・フランスチャンピオンの座だ。



デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos
デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)
タイプ:オールラウンダー
主な戦績:リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2021、ラ・クルス・バイ・ツール・ド・フランス2021、ジロ・ドンネ2021総合3位
Instagram : @demivollering
Twitter : @demivollering

絶対エースから受け取ったバトン

ジュニア時代から自転車競技に打ち込むが、その才能が開花したのは2019年。オランダの名門女子若手育成チーム「パークホテル・ファルケンブルク」に移籍を果たしてから。この年、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで3位に入ったことで注目を集めた。とりわけ、メイン集団のスプリントでルシンダ・ブラント(オランダ、現トレック・セガフレード)やリジー・ダイグナン(イギリス、同)といったパワーのある選手を打ち破り先頭を獲ったその走りはインパクトが大きかった。

ルクセンブルクのステージレース、フェスティバル・エルシー・ジェイコブスではプロローグを制しリーダージャージを着用。最終的に総合2位に入った。秋には激坂フィニッシュとなるクラシックレース、ジロ・デレミリアでエリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)との一騎打ちを制して優勝。クライマー、そしてパンチャーとしての資質を大いにアピールした。翌2020年はラ・クルス・バイ・ツール・ド・フランスとフレーシュ・ワロンヌで3位、丘陵系のレースでの強さを見せながらも、ロンドファンフラーンデレン、ヘントウェベルヘムで揃って7位に入った。

2019年、オランダの名門女子若手育成チーム「パークホテル・ファルケンブルク」に移籍2019年、オランダの名門女子若手育成チーム「パークホテル・ファルケンブルク」に移籍 photo:CorVos
2021年のウィメンズ・ツアーでは区間1勝と総合優勝を果たしたデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)2021年のウィメンズ・ツアーでは区間1勝と総合優勝を果たしたデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:CorVos
SDワークスに加入し、アンナ・ファンデルブレッヘンとチームメイトになったデミ・フォレリング(共にオランダ)SDワークスに加入し、アンナ・ファンデルブレッヘンとチームメイトになったデミ・フォレリング(共にオランダ) photo:CorVos
北のクラシックにも適正を見せるオールラウンダーとは、オランダの女子ロードレース界が待望する存在であった。女子プロトンの2人のボス、アネミエク・ファンフルーテン(現モビスター)はベテランであり、アンナ・ファンデルブレッヘンは若くして2021年シーズン限りでの引退を公言していたからだ。

ファンデルブレッヘンを絶対エースとするブールス・ドルマンスチームが、SDワークスとしてワールドツアーチームになるのに伴い、最も注目を集めたリクルートが、フォレリングだろう。それはすなわち、ファンデルブレッヘンの後継者としてのリクルートでもある。

2021年リエージュのゴール勝負を制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)2021年リエージュのゴール勝負を制したデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:A.S.O.
涙を流すデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)涙を流すデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:A.S.O.
その意味で最も象徴的なレースは、2021年のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュだ。最終盤に抜け出した5名の選手のグループには、ファンフルーテン、ロンゴボルギーニ、カシア・ニエヴィアドマ(ポーランド、キャニオンスラム)といった各チームのエースと、フォレリングそしてファンデルブレッヘンがいた。アルカンシェルを着るファンデルブレッヘンが完全に若手フォレリングのアシストとして走る姿も印象的だったが、それに応えたフォレリングのスプリントは見事だった。ファンフルーテンを破りキャリア最大の勝利を手に入れた。

オランダのエースからのバトンを受け取ったフォレリングは、その後充実のシーズンを過ごすことになる。ラ・クルスではセシリー・ウトラプ・ルドヴィグ(デンマーク、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)、マリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)を打ち破り、ここでもスター選手に勝ってみせた。シーズン終盤にはイギリスのウィメンズ・ツアーで総合優勝を果たしている。

フォレリングの2022年シーズンここまで

2022年はキャリアハイの活躍を見せているデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)2022年はキャリアハイの活躍を見せているデミ・フォレリング(オランダ、SDワークス) photo:Team SD Worx
チームの顔であったファンデルブレッヘンが引退し、DS(スポーツディレクター)に就任。よりチームエースとしての重責を担うことになった2022年シーズン。移籍してきたロッタ・コペッキー(ベルギー)は北のクラシックを、フォレリングはアルデンヌクラシックとステージレースを狙う。

しかしシーズンの出鼻をくじくことになってしまった。初戦のオンループ・ヘットニュースブラッドでは、最終局面でファンフルーテンとの一騎打ちに。しかし全く前を引かず、ツキイチで臨んだ最後のスプリントで敗れるという大失態を演じた。ファンフルーテンがあまりに強かったというしかない案件ではあるが、その消極的なレース運びと結果に、ファンデルブレッヘンDSともども批判を浴びることになった。

2022年初戦のオンループ・ヘットニュースブラッドでは、ファンフルーテンとの一騎打ちに敗れ、2位でゴール2022年初戦のオンループ・ヘットニュースブラッドでは、ファンフルーテンとの一騎打ちに敗れ、2位でゴール (c)Omloop Het Nieuwsblad
イツリア・ウィメンでは全ステージで勝利し、完全優勝を達成イツリア・ウィメンでは全ステージで勝利し、完全優勝を達成 photo:CorVos
アムステルゴールドレースでも、最後は有力勢のお見合いとなり、イタリアのマルタ・カヴァッリ(FDJ)を行かせてしまい、後続集団の先頭を獲る形で2位。消極的な走りが優勝につながらない。それを踏まえての続くブラバンツペイルでは独走優勝。ようやく今シーズン初優勝を遂げた。なお、このレースは前年にフォレリングが早いガッツポーズのため優勝をさらわれた苦い経験のあるもの。

過去の呪縛を断ち切り、続くアルデンヌクラシックではフレーシュ、リエージュともに3位。圧巻だったのは5月のイツリア・ウィメン。3日間のステージレースで、全3日で勝利するという完全優勝を達成。いずれも厳しい展開に持ち込む積極的な走りが光っての勝利だった。

強豪選手揃いのオランダ代表として東京五輪に出場したデミ・フォレリング(SDワークス)強豪選手揃いのオランダ代表として東京五輪に出場したデミ・フォレリング(SDワークス) photo:CorVos
東京五輪ロードレースでは、熾烈なオランダの4枠を勝ち取った。そのほかの3人がファンフルーテン、ファンデルブレッヘン、フォスだったことを考えると、フォレリングが次代のオランダを担う一人であることは疑いようがない。そして、まもなく初開催されるツール・ド・フランス・ファムでマイヨジョーヌを獲得することがあれば、真に最強国オランダを代表する選手になる。
デミ・フォレリング(オランダ、SDワークス)
タイプ 主な戦績
オールラウンダー リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ2021
ラ・クルス・バイ・ツール・ド・フランス2021
ジロ・ドンネ2021総合3位
text:Yufta Omata
photo:CorVos
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