UCIグランフォンドワールドシリーズの「ニセコクラシック」が、2019年以来3年ぶりに開催された。150kmロードレースでは、残り30km付近で飛び出した石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)が独走逃げ切りで初優勝を決めた。



ニセコパノラマラインを登る集団ニセコパノラマラインを登る集団 photo:Satoru Kato
「UCIグランフォンドシリーズ」の1戦として開催される「ニセコクラシック」。世界的なスキーリゾート地として注目される北海道のニセコ町や倶知安町周辺を舞台に、ダイナミックなコースを走ることができる人気の大会。ホビーレーサーにとっては「ツール・ド・おきなわ」の市民210kmと並び称されるレースでもある。

2019年以来3年ぶりの開催となる今年の大会は、まだ終息したとは言い切れないコロナ禍の情勢を受けてか、あるいは富士ヒルクライムなど他の大会と日程が重なった影響があってか、参加者数は例年の2/3ほどに減ったという。とは言え、アジアで唯一のグランフォンド世界選手権出場権を獲得できる貴重な大会であることに変わりはない(今年のグランフォンド世界選手権は9月にイタリアで開催)。

前回大会同様、6月11日(土)にUCIグランフォンドシリーズ公認のタイムトライアルが行われ、6月12日(日)にはロードレースが行われる2日間構成。全国的に蒸し暑さが増す時季ではあるが、6月の北海道は晴れても20℃前後の気温で湿度も低め。走り回るには絶好の季節だ。



15kmの個人タイムトライアル サンドゥ・ヨノツが全体トップに

タイムトライアルは30秒間隔でスタート 本来なら羊蹄山が奥に見えるはずだったが・・・タイムトライアルは30秒間隔でスタート 本来なら羊蹄山が奥に見えるはずだったが・・・ photo:Satoru Kato
短いアップダウンが繰り返されるタイムトライアルのコース短いアップダウンが繰り返されるタイムトライアルのコース photo:Satoru Kato周囲の山を見渡せる高台もコースの一部周囲の山を見渡せる高台もコースの一部 photo:Satoru Kato

ロードレース同様にグランフォンド世界選手権の出場権を獲得できる個人タイムトライアル。倶知安町の公道に設定されたコースは、長い直線とうねるようにアップダウンが繰り返される特徴はそのままに、距離は前回大会から2km延長されて15kmとなり、コースレイアウトも若干変更された。

前日まではよく晴れてコースのどこからでも羊蹄山が見えたものの、この日は朝から雲が垂れこめ、時折雨粒が落ちてくる天気。コースの一部では一時的に大雨になったという。

優勝者にはチャンピオンジャージとグランフォンド世界選手権への出場権が与えられる優勝者にはチャンピオンジャージとグランフォンド世界選手権への出場権が与えられる photo:Satoru Kato
5歳刻みの年代別カテゴリーに分けて行われたレースは、40-44歳クラスで優勝したサンドゥ・ヨノツ(TeamZENKO)が、18分20秒84で全体のトップタイムとなった。



石井祥平が終盤15kmを独走でニセコ初勝利

スタートを待つ自転車 羊蹄山は姿を見せないスタートを待つ自転車 羊蹄山は姿を見せない photo:Satoru Kato
前回まで140kmと70kmの2クラスで行われていたロードレースは、今大会では150kmと85kmに延長され、獲得標高は2609mとなった。150kmクラスでは平坦基調だったコース中盤に細かなアップダウンを含む10kmが加わった。2019年140kmクラス覇者の松木健治(VC VELOCE)は「ちょっと脚を使うポイントになったので、良いアクセントになった」と評する。

まだ肌寒さを感じる早朝6時過ぎ、前日の雲が羊蹄山を覆う中スタートした150kmクラスは、3つのグループに分けて順次パレードスタート。全てのグループの合流を確認してリアルスタートが切られると、アタック合戦が始まる。10kmを過ぎたところで、石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)と、高山恭彰(大阪)の2名が先行。ほどなく石井は集団に戻るものの、高山は30秒以上の差をつけて単独先行を続ける。

150kmスタートはパレード走行中に3つのグループを合流させた150kmスタートはパレード走行中に3つのグループを合流させた photo:Satoru Kato
ホットポイント(スプリント賞)を先頭通過する高山恭彰ホットポイント(スプリント賞)を先頭通過する高山恭彰 photo:Satoru KatoKOM(山岳賞ポイント)は石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)が先頭通過KOM(山岳賞ポイント)は石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)が先頭通過 photo:Satoru Kato

30km過ぎに設定されたホットポイント(スプリントポイント)を通過したあと、長い下りで集団が高山を吸収。ニセコパノラマラインへ入り、50km地点付近に設定されたKOM(山岳賞ポイント)は石井が先頭で通過する。ここまでで先頭集団の人数は20名から30名ほどまで絞られるのが通例だったが、今回は人数が絞られず、大きな集団のままコース後半に入っていく。

ニセコパノラマラインを下る集団ニセコパノラマラインを下る集団 photo:Satoru Kato
80kmを走って日本海側に出る頃には青空が広がった80kmを走って日本海側に出る頃には青空が広がった photo:Satoru Kato
90kmを過ぎ、新たに追加された10km部分に入ったところで動いたのは、アメリカから帰国したばかりの高岡亮寛(Roppong Express)。この動きに木村裕己(Roppongi Express)と、平口泰輔(札幌じてんしゃ本舗)が続いて3名が先行する。メイン集団との差は30秒ほどまで開くものの、それ以上は開かず、残り40kmを前に吸収される。

90km地点付近でアタックする高岡亮寛(Roppong Express)90km地点付近でアタックする高岡亮寛(Roppong Express) photo:Satoru Kato
レース終盤 はっきりと姿を見せた羊蹄山レース終盤 はっきりと姿を見せた羊蹄山 photo:Satoru Kato
その後の登りでペースが上がり、集団の人数は一気に20名ほどまで絞られて残り30km地点を通過。85kmクラスのKOM地点通過をきっかけに、石井とグレゴリー・ブラウン(アメリカ)の2名が先行する。残り20kmから始まる登り区間でブラウンが遅れると、石井は単独で先行を続ける。その後方では、高岡、北野普識(イナーメ信濃山形)ら10名ほどの集団が追走。石井を視界に捉える位置を維持するものの、20秒前後の差を詰めきれないまま残り5kmを過ぎる。

残り20kmを切り、石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)がグレゴリー・ブラウン(アメリカ)を切り離しにかかる残り20kmを切り、石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)がグレゴリー・ブラウン(アメリカ)を切り離しにかかる photo:Satoru Kato
独走する石井祥平(アーティファクトレーシングチーム)独走する石井祥平(アーティファクトレーシングチーム) photo:Satoru Kato
そして残り1kmからフィニッシュまで続く登り、後続との差が徐々に詰まるものの、石井は先頭のまま独走。85kmクラス参加者の列をたぐるように登ってきた石井が逃げ切ってフィニッシュ。直後に疲労から倒れ込んだが、すぐに起き上がって自らのバイクを高々と掲げてみせた。

選手コメントは後ほど掲載します。

※ローマ字表記の選手名を漢字表記に修正しました(6.13.22:00)

text&photo:Satoru Kato

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