集団でのスプリント勝負に持ち込まれたツアー・オブ・ジャパン最終ステージは、チーム右京のレイモンド・クレダーが優勝。ネイサン・アールの個人総合優勝に花を添えた。



最終日のスタートラインに揃った各賞ジャージ最終日のスタートラインに揃った各賞ジャージ photo:Satoru Kato
4日間に渡り開催されたツアー・オブ・ジャパン最終ステージは東京の品川区と大田区に跨がる大井埠頭。ほぼフラットな1周7kmの周回コースを16周する112kmのレースでフィナーレを迎える。

個人総合首位のネイサン・アール(チーム右京)、山岳賞の小林海(マトリックスパワータグ)、新人賞の宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン)は、完走さえすれば各賞が確定する。一方ポイント賞は僅差の争い。3回の中間スプリントポイントとフィニッシュのポイントを合わせれば、下位からの大逆転も可能な状態だ。

また、ここまでハードなステージを耐えてきたスプリンターにとっては、最初で最後のステージ優勝のチャンス。各チームはスプリンターを勝たせるための作戦を練って臨む。

表彰式プレゼンターとして登壇した小池百合子東京都知事表彰式プレゼンターとして登壇した小池百合子東京都知事 photo:Satoru Kato来賓の方々を交えてのパレードスタート来賓の方々を交えてのパレードスタート photo:Satoru Kato

今回は、東京都の小池百合子知事が2019年以来となる表彰式プレゼンターとして登壇した。小池知事は、レインボーブリッジを走る自転車イベントを今年11月の開催に向け準備していることと、来年以降に多摩地域での新たなイベントを企画していることを明らかにした。7月に特設サイトがオープンするそうで、期待がふくらむ。

品川のビル群を背に進む集団品川のビル群を背に進む集団 photo:Satoru Kato
前日の大雨から一転、夏を感じさせる青空が広がった東京都内。来賓を交えたパレード走行ののちリアルスタートが切られると、アタック合戦が始まる。序盤に8名の先頭集団が形成されたものの長くは続かず集団が吸収。ポイント賞争いに絡む動きもあって神経質な展開が続いていく。

7周目 ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックスパワータグ)、門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)、西尾憲人(那須ブラーゼン)の3名が先行7周目 ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックスパワータグ)、門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)、西尾憲人(那須ブラーゼン)の3名が先行 photo:Satoru Kato入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、山田拓海(日本ナショナルチーム)、新城雄大(キナンレーシングチーム)の3名が追走入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、山田拓海(日本ナショナルチーム)、新城雄大(キナンレーシングチーム)の3名が追走 photo:Satoru Kato

7周目、ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア(マトリックスパワータグ)、門田祐輔(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)、西尾憲人(那須ブラーゼン)の3名が先行。これを追って入部正太朗(弱虫ペダルサイクリングチーム)、山田拓海(日本ナショナルチーム)、新城雄大(キナンレーシングチーム)の3名が追走集団を形成し、9周目に合流。6名の先頭集団が形成される。

BBモトから先頭集団にタイム差が掲示されるBBモトから先頭集団にタイム差が掲示される photo:Satoru Katoメイン集団は各チームが協調して先頭集団を追うメイン集団は各チームが協調して先頭集団を追う photo:Satoru Kato

最終周回 先頭集団の後方にメイン集団が迫る最終周回 先頭集団の後方にメイン集団が迫る photo:Satoru Kato
1分20秒前後の差をつけられたメイン集団は、チーム右京、チームブリヂストンサイクリング、愛三工業レーシングチーム、宇都宮ブリッツェンなどが強調して牽引。終盤に向けて徐々に差を縮めていく。

残り2周となる15周目、先行する6名とメイン集団との差は20秒を切り、直線でお互いの姿を確認できる距離まで縮まる。そして最終周回に入ったところで集団が6名を吸収すると、スプリント勝負に向けて各チームの争いが始まっていく。

沢田桂太郎(スパークルおおいた)にレイモンド・クレダー(チーム右京)が並びかける沢田桂太郎(スパークルおおいた)にレイモンド・クレダー(チーム右京)が並びかける photo:Satoru Kato
レイモンド・クレダー(チーム右京)が大井埠頭のスプリントを制したレイモンド・クレダー(チーム右京)が大井埠頭のスプリントを制した photo:Satoru Kato
残り200mのホームストレート、陽炎の向こうでスプリントが始まり、沢田桂太郎(スパークルおおいた)が伸びてくる。しかし残り100m、集団の右サイドから伸びてきたレイモンド・クレダー(チーム右京)が一気にまくり、先頭でフィニッシュラインを超えた。

ステージ優勝のレイモンド・クレダー(チーム右京)を、小池百合子都知事が祝福ステージ優勝のレイモンド・クレダー(チーム右京)を、小池百合子都知事が祝福 photo:Satoru Katoチーム総合優勝 チーム右京チーム総合優勝 チーム右京 photo:Satoru Kato

クレダーは、「昨日まではチームメイトの個人総合優勝のためにアシストしてきたが、今日は僕のスプリントのためにチームメイトが働いてくれた。プレッシャーはあったけれど、勝ててとても嬉しい」と、表彰式でステージ優勝の喜びを語った。

チーム右京はネイサンアールの個人総合優勝に加え、全4ステージ中3勝、チーム総合優勝と、他を圧倒。他チームのつけ入る隙を見せない強さを見せた。この勢いは次週の「ツール・ド・熊野」でも見られるか?

ツアー・オブ・ジャパン2022 各賞ジャージツアー・オブ・ジャパン2022 各賞ジャージ photo:Satoru Kato
チーム右京のワンサイドゲームの中、ポイント賞をキンテロ、山岳賞を小林海と、マトリックスパワータグの2人がもぎ取って見せた。小林は「自分達が目指していたものではない」という言葉をしきりに口にしていたが、富士山での小林の走りを見るにつけ、第1ステージでの遅れが無ければ状況は変わっていたかもしれない。

一方、第3ステージでの岡篤志(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム)の優勝や、新人賞を獲得した宮崎泰史(宇都宮ブリッツェン)の活躍も今大会のトピックと言えよう。特に宮崎の今後には大きく期待したい。

最終日の表彰台には多くの観客が集まった最終日の表彰台には多くの観客が集まった photo:Kensaku SAKAI
そして何よりも、2019年以来となった有観客での開催は、改めて観客の有無による大きな差を感じせた。次回は本来のツアー・オブ・ジャパンの姿である8日間の開催を期待したいところだが、合わせて各ステージでの観客の盛り上がりが見られる大会になって欲しいと願う。
ツアー・オブ・ジャパン 第4ステージ 東京 結果(112.0km)
1位 レイモンド・クレダー(チーム右京、オランダ) 2時間17分22秒
2位 沢田桂太郎(スパークルおおいた、日本) +0秒
3位 黑枝咲哉(スパークルおおいた、日本)
4位 レオネル・キンテロ・アルテアガ(マトリックスパワータグ、ベネズエラ)
5位 岡 篤志(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム、日本)
6位 今村駿介(チームブリヂストンサイクリング、日本)
7位 兒島直樹(チームブリヂストンサイクリング、日本)
8位 香山飛龍(弱虫ペダルサイクリングチーム、日本)
9位 織田 聖(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム、日本)
10位 小野寺 玲(宇都宮ブリッツェン、日本)
個人総合成績(第4ステージ終了時)
1位 ネイサン・アール (チーム右京、オーストラリア) 10時間31分40秒
2位 ベンジャミン・ダイボール (チーム右京、オーストラリア) +8秒
3位 トマ・ルバ (キナンレーシングチーム、フランス) +1分37秒
4位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン、日本) +2分42秒
5位 小林 海(マトリックスパワータグ、日本) 3分12秒
6位 フランシスコ・マンセボ・ペレス(マトリックスパワータグ、スペイン) +3分21秒
ポイント賞、山岳賞、チーム順位(第4ステージ終了時)
ポイント賞
1位 レオネル・キンテロ・アルテアガ(マトリックスパワータグ、ベネズエラ) 45p
2位 岡篤志(EFエデュケーション・NIPPOデヴェロップメントチーム) 40p
3位 レイモンド・クレダー(チーム右京、オランダ) 30p
山岳賞
1位 小林 海(マトリックスパワータグ、日本) 23p
2位 ベンジャミン・ダイボール (チーム右京、オーストラリア) 22p
3位 トマ・ルバ (キナンレーシングチーム、フランス) 15p
チーム順位
1位 チーム右京 31時間40分57秒
2位 キナンレーシングチーム +6分10秒
3位 マトリックスパワータグ +6分26秒

text:Satoru Kato
photo:Satoru Kato, Kensaku SAKAI