2022/04/23(土) - 09:45
冷雨のアルプス最終日にティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)が前日涙のリベンジ達成。激しい登坂勝負の末に精鋭グループを抜け出したロマン・バルデ(フランス、チームDSM)が逆転総合優勝に輝いた。
キャリア初の総合優勝まであと一歩に迫ったペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:Tour of the Alps
総合で2秒差の2位につけるロマン・バルデ(フランス、チームDSM) photo:Tour of the Alps
冷雨に濡れたツアー・オブ・ジ・アルプス最終日 photo:Tour of the Alps
イタリアアルプスを5日間に渡り駆け巡るツアー・オブ・ジ・アルプス(UCI2.Pro)もいよいよ最終第5ステージ。渓谷の平坦路と、その脇に聳える山岳地帯を組み合わせたコースは山頂フィニッシュでこそないものの、終盤に急勾配の2級山岳が登場するなど難易度は高い。気温7度、そして雨。厳しい条件の中、レインウェアに身を包んだ選手たちがスタートを切った。
この日、最も勝ちにこだわっていたのは前日第4ステージで逃げるも、残り900mで捉えられ涙を流したティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)だった。ダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)らと共に一目散に逃げを決めると、一気にメイン集団から10分以上もの大リードを築き上げた。
ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)とダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)が逃げグループから抜け出す photo:Tour of the Alps
先頭を逃げるティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)とダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン) photo:Tour of the Alps
逃げメンバーは全員総合成績で既に大きく遅れているため、総合首位ペリョ・ビルバオ(スペイン)を擁するバーレーン・ヴィクトリアスに引き戻す意図はなかった。フィニッシュまで60km以上を残した山岳区間で先頭グループはピノとデラクルスの2人だけとなり、雨霧むせぶダウンヒルでピノが遅れつつも平坦区間で無事に合流。12分リードを得て距離3.1kmで平均12.4%勾配を刻む2級山岳「ストロナッハ」に突入した。
ストロナッハの序盤区間でまず仕掛けたのはデラクルス。一時的にピノは遅れをとったものの、落ち着いて挽回し、カウンターアタックを繰り出した。デラクルスもピノの攻撃を防いだものの、更なるアタックでついに距離を空けてしまう。歯を食いしばりながら踏み込むピノは15秒リードでダウンヒルに入ったが、不得意の下りでペースは思うように上がらない。マイペース走法で追いかけたデラクルスが平坦区間に入ったところで再合流を果たした。
急勾配の2級山岳で抜け出すティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Tour of the Alps
メイン集団から抜け出したロマン・バルデ(フランス)とテイメン・アレンスマン(オランダ、共にチームDSM)とマイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) photo:CorVos
熾烈なステージ優勝争いの一方で、12分後ろを走るメイン集団でも最後の総合争いが勃発した。総合9位リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)が積極的にペースを上げ、ビルバオからわずか2秒差で逆転を目論むロマン・バルデ(フランス)とテイメン・アレンスマン(オランダ)のチームDSMコンビが同調。ジロ・デ・イタリアを目指すトップクライマーが火花を散らす中、防戦一方となった総合首位ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)はついに遅れてしまった。
残り4kmで再合流した先頭ピノとデラクルスは、ゴールスプリントの順位を整えて最後の緩斜面へ。これまで1007日勝利から遠ざかっているピノと、それ以上実に1500日も勝利から遠ざかっているデラクルス。互いに1ミリも譲らない加速勝負を繰り広げた末、この日はピノの執念がライバルを打破した。
一騎討ちでデラクルスを下し、1007日ぶりの勝利を挙げたティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) photo:Tour of the Alps
アレンスマンと共にフィニッシュしたロマン・バルデ(フランス、チームDSM) photo:Tour of the Alps
最後まで踏み切ったピノが、右手を突き上げてフィニッシュ。落車による怪我や病気、そしてプレッシャーに悩まされ続けてきたフランスチームのエースが、ついに復活勝利をアルプス最終日に挙げてみせた。
「昨日の負けにうんざりして、ものすごいフラストレーションを溜めていたんだ。昨日の夜から今日どうやったら勝てるかだけを考えていた。僕の大好きなレースで手を挙げることができてホッとしたよ。昨日の失敗が僕に力を与えてくれたんだ。今日は雨が降って寒かったけれど、僕自身は何も感じなかった。集中しきっていた」。悲願の復活勝利をピノはそのように喜んでいる。
また、登坂勝負でライバルを置き去りにしたバルデは、アレンスマンのアシストを得て、総合10位マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ)を引き連れてフィニッシュ。この結果バルデが狙い通りの逆転総合優勝を掴み、ストーラーが総合2位、アレンスマンが総合3位。遅れたビルバオは総合4位と表彰台圏外に終わった。
ツアー・オブ・ジ・アルプス2022総合表彰台:2位ストーラー、1位バルデ、3位アレンスマン photo:Tour of the Alps
また、このアルプスにはグルパマFDJのスタッフとして中野喜文マッサーが帯同(キャリアで初のフランスチームだという)。この日2度補給地点で仕事を担った中野マッサーは、今後開催されるツール・ド・ロマンディへと連戦組の選手と共に移動しているという。



イタリアアルプスを5日間に渡り駆け巡るツアー・オブ・ジ・アルプス(UCI2.Pro)もいよいよ最終第5ステージ。渓谷の平坦路と、その脇に聳える山岳地帯を組み合わせたコースは山頂フィニッシュでこそないものの、終盤に急勾配の2級山岳が登場するなど難易度は高い。気温7度、そして雨。厳しい条件の中、レインウェアに身を包んだ選手たちがスタートを切った。
この日、最も勝ちにこだわっていたのは前日第4ステージで逃げるも、残り900mで捉えられ涙を流したティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ)だった。ダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン)らと共に一目散に逃げを決めると、一気にメイン集団から10分以上もの大リードを築き上げた。


逃げメンバーは全員総合成績で既に大きく遅れているため、総合首位ペリョ・ビルバオ(スペイン)を擁するバーレーン・ヴィクトリアスに引き戻す意図はなかった。フィニッシュまで60km以上を残した山岳区間で先頭グループはピノとデラクルスの2人だけとなり、雨霧むせぶダウンヒルでピノが遅れつつも平坦区間で無事に合流。12分リードを得て距離3.1kmで平均12.4%勾配を刻む2級山岳「ストロナッハ」に突入した。
ストロナッハの序盤区間でまず仕掛けたのはデラクルス。一時的にピノは遅れをとったものの、落ち着いて挽回し、カウンターアタックを繰り出した。デラクルスもピノの攻撃を防いだものの、更なるアタックでついに距離を空けてしまう。歯を食いしばりながら踏み込むピノは15秒リードでダウンヒルに入ったが、不得意の下りでペースは思うように上がらない。マイペース走法で追いかけたデラクルスが平坦区間に入ったところで再合流を果たした。


熾烈なステージ優勝争いの一方で、12分後ろを走るメイン集団でも最後の総合争いが勃発した。総合9位リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)が積極的にペースを上げ、ビルバオからわずか2秒差で逆転を目論むロマン・バルデ(フランス)とテイメン・アレンスマン(オランダ)のチームDSMコンビが同調。ジロ・デ・イタリアを目指すトップクライマーが火花を散らす中、防戦一方となった総合首位ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)はついに遅れてしまった。
残り4kmで再合流した先頭ピノとデラクルスは、ゴールスプリントの順位を整えて最後の緩斜面へ。これまで1007日勝利から遠ざかっているピノと、それ以上実に1500日も勝利から遠ざかっているデラクルス。互いに1ミリも譲らない加速勝負を繰り広げた末、この日はピノの執念がライバルを打破した。


最後まで踏み切ったピノが、右手を突き上げてフィニッシュ。落車による怪我や病気、そしてプレッシャーに悩まされ続けてきたフランスチームのエースが、ついに復活勝利をアルプス最終日に挙げてみせた。
「昨日の負けにうんざりして、ものすごいフラストレーションを溜めていたんだ。昨日の夜から今日どうやったら勝てるかだけを考えていた。僕の大好きなレースで手を挙げることができてホッとしたよ。昨日の失敗が僕に力を与えてくれたんだ。今日は雨が降って寒かったけれど、僕自身は何も感じなかった。集中しきっていた」。悲願の復活勝利をピノはそのように喜んでいる。
また、登坂勝負でライバルを置き去りにしたバルデは、アレンスマンのアシストを得て、総合10位マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ)を引き連れてフィニッシュ。この結果バルデが狙い通りの逆転総合優勝を掴み、ストーラーが総合2位、アレンスマンが総合3位。遅れたビルバオは総合4位と表彰台圏外に終わった。

また、このアルプスにはグルパマFDJのスタッフとして中野喜文マッサーが帯同(キャリアで初のフランスチームだという)。この日2度補給地点で仕事を担った中野マッサーは、今後開催されるツール・ド・ロマンディへと連戦組の選手と共に移動しているという。
ツアー・オブ・ジ・アルプス2022第5ステージ結果
1位 | ティボー・ピノ(フランス、グルパマFDJ) | 3:09:24 |
2位 | ダビ・デラクルス(スペイン、アスタナ・カザフスタン) | +0:07 |
3位 | レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) | +1:46 |
4位 | イゴール・アリエタ(スペイン、エキポ・ケルンファルマ) | +2:43 |
5位 | トースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング) | +3:26 |
6位 | アンドレイ・アマドール(コスタリカ、イネオス・グレナディアーズ) | +8:09 |
7位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | +8:36 |
8位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | |
9位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +8:38 |
10位 | アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) | +9;15 |
個人総合成績
1位 | ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) | 18:59:29 |
2位 | マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマFDJ) | +0:14 |
3位 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) | +0:16 |
4位 | ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) | +0:37 |
5位 | アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) | +0:49 |
6位 | フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) | +0:53 |
7位 | リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ) | +1:00 |
8位 | サンティアゴ・ブイトラゴ(コロンビア、バーレーン・ヴィクトリアス) | +1:57 |
9位 | ヒュー・カーシー(イギリス、EFエデュケーション・イージーポスト) | +2:08 |
10位 | パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ) | +2:13 |
その他の特別賞
山岳賞 | トースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング) |
ヤングライダー賞 | テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM) |
チーム総合成績 | グルパマFDJ |
text:So Isobe
photo:Tour of the Alps,CorVos
photo:Tour of the Alps,CorVos
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