アルプス3日目は逃げ切りで決着。3度目のアタックを成功させたレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が勝利を掴み、チームメイトに守られたペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)が総合首位キープに成功している。



レース中盤でようやく形成された11名による逃げ集団レース中盤でようやく形成された11名による逃げ集団 photo:Tour of the Alps
ツアー・オブ・アルプス2022第3ステージ ツアー・オブ・アルプス2022第3ステージ photo:Tour of the Alpsツアー・オブ・ジ・アルプス3日目は今大会で最高難易度の1級山岳パッソ・フルチャが登場する山岳ステージ。コースはラーナを出発地点に、徐々に標高を上げながら2級山岳トレント(距離6km/平均7.9%)と1級山岳パッソ・フルチャ(距離7.8km/平均7.2%)を越えヴィッラバッサにフィニッシュする。パッソ・フルチャ山頂から約10kmの下りと13kmの平坦区間が、勝負を分かつポイントとなった。

序盤からアタック合戦の末60km地点でようやく形成されたのは、アンドレイ・アマドール(コスタリカ、イネオス・グレナディアーズ)やレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)など実力確かなクライマーを含む11名の逃げ集団。リーダージャージのバーレーン・ヴィクトリアスが牽引するプロトンから、逃げグループは2分のリードで1級山岳パッソ・フルチャの登坂に突入した。

イネオス・グレナディアーズが先頭に人数を固めるメイン集団からは、総合で僅か16秒遅れのエディ・ダンバー(アイルランド)が加速。ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)やペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス)がマークするとプロトンのペースが一気に上がり、逃げ集団から遅れてきた選手を飲み込みながらパッソ・フルチャを登っていった。

メイン集団でペースを上げるエディ・ダンバー(アイルランド、イネオス・グレナディアーズ)メイン集団でペースを上げるエディ・ダンバー(アイルランド、イネオス・グレナディアーズ) photo:Tour of the Alps
逃げ集団ではワジム・プロンスキー(カザフスタン、アスタナカザフスタン)とトースタイン・トレーエン(ノルウェー、ウノエックス・プロサイクリング チーム)の2人が、喘ぐ選手を振り落としながら頂上を通過していく。プロトンとの差を50秒から徐々に拡大していった下りで、トレーエンがコーナーを曲がり切れず落車。単独先頭になったプロンスキーだったが、ペースが上がらず平坦区間で遅れた選手の再合流を許した。

メイン集団と1分差のまま残り5kmを切り、逃げ切りが確定した7名による先頭集団の中で、積極的にアタックを仕掛けたのはシーズン序盤に1勝を挙げながら、その後は体調不良に苦しんだケムナ。しかしその都度アマドールが執拗にマークしたため、決定的な動きには繋がらない。

全員がスプリント力に長ける22歳ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)を警戒する中、集団スプリントに備えてペースが緩んだ一瞬を突き、ケムナがフラムルージュ(残り1km)地点でアタックを敢行。3度目の攻撃を成功させたケムナが、猛追するアマドールを振り切り先頭でフィニッシュした。

3度目のアタックを成功させ、区間優勝を挙げたレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)3度目のアタックを成功させ、区間優勝を挙げたレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
レースを走れない期間を越え、掴んだ勝利を喜ぶレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)レースを走れない期間を越え、掴んだ勝利を喜ぶレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) photo:CorVos
「スプリントでは勝負にならないと思い、2度に渡ってアタックしたものの成功しなかった。だが皆の脚が限界だということが分かり、3度目のアタックに賭けたんだ。上手くいって本当に良かったし、(初出場となる)ジロ・デ・イタリアに向けて弾みがついたよ」とケムナは勝利を喜んだ。

チームメイトの牽引によりタイム差を最小限に留めたビルバオは57秒遅れでフィニッシュ。総合上位につけるロマン・バルデ(フランス、チームDSM)らも同タイムでレースを終えたため、ビルバオはリーダージャージのキープに成功している。
ツアー・オブ・ジ・アルプス2022第3ステージ結果
1位 レナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 4:02:56
2位 アンドレイ・アマドール(コスタリカ、イネオス・グレナディアーズ) 0:03
3位 ヨナタン・ラストラ(スペイン、カハルラル・セグロスRGA) 0:04
4位 ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
5位 ウィリアム・バルタ(アメリカ、モビスター)
6位 ジェームス・ピッコリ(カナダ、イスラエル・プレミアテック)
7位 ワジム・プロンスキー(カザフスタン、アスタナカザフスタン)
8位 ショーン・クイン(アメリカ、EFエデュケーション・イージーポスト) 0:57
9位 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン)
10位 パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ)
個人総合成績
1位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) 12:12:08
2位 ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) 0:06
3位 アッティラ・ヴァルテル(ハンガリー、グルパマFDJ) 0:12
4位 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン) 0:16
5位 パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ)
6位 エイネルアウグスト・ルビオ(コロンビア、モビスター)
7位 エディ・ダンバー(アイルランド、イネオス・グレナディアーズ)
8位 テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM)
9位 エステバン・チャベス(コロンビア、EFエデュケーション・イージーポスト)
10位 リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)
その他の特別賞
山岳賞 パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ)
ヤングライダー賞 テイメン・アレンスマン(オランダ、チームDSM)
チーム総合成績 イネオス・グレナディアーズ
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos