風がプロトンを翻弄し、逃げ切り勝利で開幕したツアー・オブ・ジ・アルプス。イタリア北部を走る5日間のレース初日で、ジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)が30歳にして遂にプロ初勝利を挙げた。



今季2レース目として出場したクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)今季2レース目として出場したクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック) photo:Tour of the Alps
有力スプリンターとして唯一出場したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)有力スプリンターとして唯一出場したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック) photo:CorVos
ツアー・オブ・アルプス2022第1ステージツアー・オブ・アルプス2022第1ステージ photo:Tour of the Alps

4月18日から22日までの5日間で開催されるツアー・オブ・ジ・アルプス(2.Pro)は、その名の通りイタリア北東部に位置するトレンティーノ=アルト・アディジェ州のイタリアアルプスを駆け巡る山岳ステージレース。2016年までジロ・デル・トレンティーノと呼ばれ、1ヶ月後に控えるジロ・デ・イタリアを目指すクライマーたちの調整の場として歴史を重ねてきた。

「アルプス」の名前を冠してるだけにそのコースは山岳の比率が極めて高い。山頂フィニッシュは第4ステージしかないものの、長く険しい2級や1級山岳が全ステージに渡り詰め込まれている。

たった一人のスプリンター、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、イスラエル・プレミアテック)を除き、例年通りジロを見据えるクライマーたちが集結した第45回大会。ここ6年で4度の総合優勝と相性の良いイネオス・グレナディアーズは2015年覇者リッチー・ポート(オーストラリア)と2019年大会を制したパヴェル・シヴァコフ(フランスを揃え、バーレーン・ヴィクトリアスはペリョ・ビルバオ(スペイン)とミケル・ランダ(スペイン)が出場。またツール・ド・フランスでの復活を目指し、丁寧な調整を続けるクリストファー・フルーム(イギリス、イスラエル・プレミアテック)もスタートに並んだ。

ジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)やベン・ツィーホフ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)を含む5名の逃げ集団ジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)やベン・ツィーホフ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)を含む5名の逃げ集団 photo:CorVos
序盤からプロトンの牽引を担当したバーレーン・ヴィクトリアス序盤からプロトンの牽引を担当したバーレーン・ヴィクトリアス photo:CorVos
クレスから標高1618mの2級山岳パッソ・ブロコン(距離15km/平均4.6%)を越え、オーストリアとの国境に程近いプリミエーロを目指す大会初日。共に26歳でプロデビューを果たした遅咲きのジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)とベン・ツィーホフ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)たち2人を含む5名が逃げ集団を形成した。

獲得標高差3,693mのコースで序盤からプロトンをコントロールしたのはバーレーン・ヴィクトリアス。3分先を行く逃げグループではブシャールが2級山岳パッソ・ブロコンを先頭に通過すると、続く3級山岳パッソ・ゴッベラで2019年ブエルタ・ア・エスパーニャ山岳賞を獲得したフレンチクライマーがそのまま1人スピードを上げた。

残り25km地点でアタックしたジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)残り25km地点でアタックしたジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン) photo:Tour of the Alps
パッソ・ゴッベラもトップ通過して山岳賞ジャージを確定させたブシャールは、細かいアップダウンを越えた先にあるフィニッシュを目指し突き進む。それを1分40秒差で追うプロトンでは、イネオス・グレナディアーズに牽引が代わりスピードアップ。しかし度重なるアタックや絶えず向きを変える風が選手たちを翻弄したため、ブシャールとの差は思うように縮まらなかった。

残り2kmで30秒差まで迫ったプロトンからポートが単独アタックを仕掛けるものの、これをビルバオとランダが協力して潰した。そんな散発的なアタックが行われた前方で、淡々とペダルを踏み続けたブシャールが12秒差でフラムルージュ(残り1km地点)を通過。猛追する後続に一瞥したブシャールが、そのまま30歳にしてプロ初勝利を掴んだ。

プロ初勝利を独走で決めたジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)プロ初勝利を独走で決めたジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン) photo:CorVos
区間優勝と共にリーダージャージと山岳賞ジャージを獲得したジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)区間優勝と共にリーダージャージと山岳賞ジャージを獲得したジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン) photo:CorVos
アマチュアフランス選手権での優勝を経て、26歳でようやくプロデビューを果たしたブシャール。「素晴らしい勝利だ。昨年のジロでステージ優勝をあと一歩のところで逃していたんだ。既にグランツールでの山岳賞は獲得していたものの、とにかく勝利が欲しかった。差を確認することなく一心不乱にペダルを踏み込んだ。 少ないチャンスをいかにして掴むかが大事だということ。ようやくプロ初勝利を挙げることができて、本当に嬉しいよ」と、山岳賞だけではなくリーダージャージにも袖を通したブシャールは喜んだ。

翌第2ステージももちろん山岳ステージ。スタートと直後に2級山岳を登り、レース後半から1級山岳パッソ・デラ・メンドラとカテゴリーなき山岳を越え、ラスト約20kmの下りから平坦フィニッシュする。
ツアー・オブ・ジ・アルプス2022第1ステージ結果
1位 ジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン) 4:12:22
2位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) 0:05
3位 ロマン・バルデ(フランス、チームDSM)
4位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ)
5位 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン)
6位 ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)
8位 パヴェル・シヴァコフ(ロシア、イネオス・グレナディアーズ)
9位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマ・エフデジ)
10位 ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)
個人総合成績
1位 ジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン) 4:12:12
2位 ペリョ・ビルバオ(スペイン、バーレーン・ヴィクトリアス) 0:09
3位 ロマン・バルデ(フランス、チームDSM) 0:11
4位 ヴィンチェンツォ・アルバネーゼ(イタリア、エオーロ・コメタ) 0:15
5位 フェリックス・ガル(オーストリア、AG2Rシトロエン)
6位 ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
7位 リッチー・ポート(オーストラリア、イネオス・グレナディアーズ)
8位 パヴェル・シヴァコフ(フランス、イネオス・グレナディアーズ)
9位 マイケル・ストーラー(オーストラリア、グルパマ・エフデジ)
10位 ヨナタン・カイセド(エクアドル、EFエデュケーション・イージーポスト)
その他の特別賞
山岳賞 ジョフレ・ブシャール(フランス、AG2Rシトロエン)
ヤングライダー賞 ナトナエル・テスファツィオン(エリトリア、ドローンホッパー・アンドローニジョカトリ)
text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos