土曜日のオンループ・ヘットニュースブラッドと、日曜日のクールネ~ブリュッセル~クールネを境にベルギーは石畳クラシックシーズンに突入。ビッグネームが多数出場するセミクラシック2連戦をプレビューする。



2月26日(土):オンループ・ヘットニュースブラッド(UCIワールドツアー)

フランドルの石畳がレースの到着を待つフランドルの石畳がレースの到着を待つ photo:CorVos
オンループ・ヘットニュースブラッド(男子)コースオンループ・ヘットニュースブラッド(男子)コース 土曜日に開催されるフランドルクラシックの開幕戦、そしてヨーロッパのUCIワールドツアーの開幕戦がオンループ・ヘットニュースブラッドだ。

ベルギーのヘットニュースブラッド紙が1913年に創設したロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)に対抗して、ヘットフォルク紙が1945年に創設したセミクラシックレースであり、2009年にヘットフォルク紙がヘットニュースブラッド紙と合併したことから現在の名称に改められた。2017年にHC(超級)からUCIワールドツアーに格上げされている。

レースは2018年からロンド・ファン・フラーンデレンのフィニッシュを踏襲する伝統的なレイアウトが採用され、ヘントからニノーヴェを結ぶ204kmコースには13の登りと9の石畳"セクター"(昨年共通)が詰め込まれている。昨年まではコロナ禍によってコース発表が控えられてきたものの、今年は公式サイトから詳細情報がダウンロードできるようになった。

最も得意とする春のクラシックレースに挑むクイックステップ・アルファヴィニル最も得意とする春のクラシックレースに挑むクイックステップ・アルファヴィニル photo:CorVos
勝負どころの登坂区間と石畳は後半区間に凝縮されており、これら難関セクションがレース展開の鍵を握る。昨年はクイックステップ・アルファヴィニルがありとあらゆる場面で猛攻を仕掛けたものの、結局抜け出すには至らず12年ぶりの集団スプリントに持ち込まれた(勝者はダヴィデ・バッレリーニ)。2020年は一騎打ちのスプリント(ストゥイヴェン)で、2019年(スティバル)と2018年(ヴァルグレン)は独走で決しており、今年の勝負の行方に注目が集まっている。

出場メンバーも豪華中の豪華。昨年のヘント〜ウェヴェルヘムを制したワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)は優勝候補の筆頭で、昨年ブレイクしたパリ〜ルーベ覇者ソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)や、シクロクロス世界選手権を制したトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)、マッテオ・トレンティン(イタリアUAEチームエミレーツ)といった面々がずらり勢ぞろい。

オンループでシーズンインを迎えるソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)オンループでシーズンインを迎えるソンニ・コルブレッリ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス) photo:CorVos
昨年クールネ3位のトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)昨年クールネ3位のトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) photo:CorVos石畳を走るグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)石畳を走るグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン) photo:CorVos


昨年レースを作ったジュリアン・アラフィリップ(フランス、クイックステップ・アルファヴィニル)は不参加だが、「ウルフパック」は2021年ロンド覇者カスパー・アスグリーン(デンマーク)を筆頭にフロリアン・セネシャル(フランス)やイヴ・ランパールト(ベルギー)といった面々を揃える。アスタナに移籍したジャンニ・モスコン(イタリア)やグレッグ・ファンアーヴェルマート(ベルギー、AG2Rシトロエン)も積極的に展開に絡んでくるだろう。ペテル・サガン(スロバキア、トタルエネルジー)も出場するものの、直近のレースの走りを見るにコンディション上々とは言い難い。

また、女子レース(UCI1.Pro)もまた、ヘントからニノーヴェを目指す。短縮レイアウトを取りながらも男子レースと同じく終盤戦には9箇所の急勾配が詰め込まれる難コースだ。昨年はSDワークス勢がレースを牛耳り、アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)の独走勝利に繋げた。引退した女王の次の勝者となるのは誰だろうか?



2月27日(日):クールネ~ブリュッセル~クールネ(UCI1.Pro)

オンループが「ザ・クラシックハンター向け」ならば、翌日開催のクールネ~ブリュッセル~クールネ(UCI1.Pro)は比較的スプリンター向けと言える。こちらも手強い急勾配や石畳が詰め込まれているものの、後半50kmはオールフラットだ。

オンループよりも集団スプリントとなりやすいクールネ。昨年はマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が勝利したオンループよりも集団スプリントとなりやすいクールネ。昨年はマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が勝利した
今年は有名石畳登坂「オウデ・クワレモント」が取り除かれたものの、代わりに4箇所の新登坂が取り入れられた。レース公式サイトの紹介によれば、コース変更によって連続登坂序盤に早い動きが生まれる可能性もあるという。

過去の優勝者リストにはディラン・フルーネウェーヘン(オランダ)やマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)といった名前も並び、2019年と2020年はボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク)とカスパー・アスグリーン(デンマーク)が逃げ切りを決め、昨年はマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が勝利。アタッカーと集団スプリントに持ち込みたいスプリンターの駆け引きが見ものだ。

昨年はマチュー・ファンデルプールがメイン集団から抜け出した昨年はマチュー・ファンデルプールがメイン集団から抜け出した
それゆえスタートリストはオンループと比較してスプリンターやスピードマンの割合が高くなる。ピドコックやストゥイヴェン、ファンアーヴェルマート、コルブレッリなど連戦組も多いものの、クイックステップはファビオ・ヤコブセン(オランダ)を、ロット・スーダルは上り調子のカレブ・ユアン(オーストラリア)を、アンテルマルシェはアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)を、チームDSMはジョン・デゲンコルプ(ドイツ)をラインナップ。各チームは石畳に強いスプリンターをラインナップに加えている。常勝アルペシン・フェニックスはティム・メルリール(ベルギー)を軸としたメンバー構成だ。

text:So.Isobe