フルモデルチェンジを果たしたキャノンデールのエンデュランスロード、Synapse。総刷新されたフレームワークに、ライトやレーダーが統合されたSmartSence搭載されたバイクの実力に迫る。



キャノンデール Synapse Carbon 3 Lキャノンデール Synapse Carbon 3 L photo:Makoto AYANO/cyclowired.jp
EFエデュケーション・イージーポストをサポートするアメリカのキャノンデール。ユニークな発想のアイデアを具現化することに定評があり、片持ち式サスペンションのレフティやリアエンドをオフセットしたAiデザインなど他のブランドとは一線を画した独創性こそがキャノンデールらしさである。

そんなキャノンデールが快適性を高めるために開発したテクノロジーが"SAVE"だ。フレームやパーツの造形で衝撃吸収性を確保することを狙い、剛性が必要な部分は硬く作り、衝撃吸収性に貢献できる部分は扁平形状や細身のチューブを用いることで、路面からの衝撃を和らげようとする技術だ。

リアのフレックスゾーンには快適性を高めるカーボンレイアップや形状を採用するリアのフレックスゾーンには快適性を高めるカーボンレイアップや形状を採用する 直線的なフレームワークとなった新型Synapse直線的なフレームワークとなった新型Synapse カムテールのエアロシェイプを採用したフォークブレードカムテールのエアロシェイプを採用したフォークブレード


この技術が採用されたバイクの中でも象徴的な存在となるエンデュランスロードのSynapse(シナプス)がモデルチェンジを遂げた。今作ではSAVEらしい、アグレッシブにしなることで衝撃吸収を狙った有機的なフォルムは身を潜め、ほぼすべてのチューブにカムテール形状を採用した直線的なフレームワークとなった。

フレーム形状だけで前作と比較すると縦方向への柔軟性は確保しにくくなっているが、キャノンデールはリアバックのフレックスゾーンを最適化すると同時に、カーボン積層技術や研究の進化によって前作と同等もしくはそれ以上の快適性を実現したと説明する。

ラメ入り塗装のフレームにSynapseロゴが映えるラメ入り塗装のフレームにSynapseロゴが映える トップチューブにはバッグ用のボルト台座が設けられるトップチューブにはバッグ用のボルト台座が設けられる

チューブを曲線状に形作ることで快適性確保を狙ったチューブを曲線状に形作ることで快適性確保を狙った 完成車にはスピードセンサーが備えられている完成車にはスピードセンサーが備えられている


また、レースバイクのようなエアロチュービングを採用すると同時に、ジオメトリーも前作よりレーシーな設定とされ、新型Synapseはコンフォート性、ロードバイクに求める俊敏な走行性能をバランス良く獲得した1台となったと言えそうだ。

しかしSynapseが目指すのはレースではなく、一般的なロードサイクリング。近年隆盛するグラベルライディングはTopstoneがカバーし、純粋に速度を追い求めるロードレースではSuperSix、SystemSixが勝利を狙う。軽快な走行感を味わいながらスポーツサイクリングを楽しむことがSynapseの領分だ。

JIS規格のねじ切り式のボトムブラケットが備えられているJIS規格のねじ切り式のボトムブラケットが備えられている シマノ105の油圧ディスクブレーキが搭載されるシマノ105の油圧ディスクブレーキが搭載される


コンマ1秒、1ワットでもタイムや抵抗を低減するために、ありとあらゆるものを追求しているのがレーシングバイクだ。例えば、近年主流となりつつあるケーブル類のフル内装システム。ケーブルをヘッドチューブ付近から全て収納することで、ケーブル由来の空気抵抗削減に貢献する。

対して新型Synapseはフロントブレーキホースはフォーククラウン、リア方向へ伸びるケーブルはダウンチューブから挿入される。これによってフル内装式のバイクが苦手とするポジションの変更、メンテナンスを容易にしている。加えて、シートポストクランプは汎用性の高い真円形状で、ボトムブラケットはねじ切り式のJIS規格が採用されるなど、互換性の高いスペックも特徴だ。

フェンダーマウントが備えられているため、ツーリング車としても活躍しそうだフェンダーマウントが備えられているため、ツーリング車としても活躍しそうだ バテッドするシートチューブにはフェンダーマウントが備えられているバテッドするシートチューブにはフェンダーマウントが備えられている バッテリーが標準で装備できるように設計されているバッテリーが標準で装備できるように設計されている


様々なサイクリングに挑戦できるよう、ボトルケージ規格の台座がトップチューブとダウンチューブのBB前方に設けられている。フェンダーマウントも備えられており、ツーリング車としても活躍してくれそうだ。また、タイヤクリアランスは35mmまでと、ちょっとしたグラベルも楽しめる仕様となっている。

新型Synapseに採用されたライト、レーダー統合システム"Smart Sence"

レザインと共同開発を行ったSmart Senceのフロントライトレザインと共同開発を行ったSmart Senceのフロントライト
レザインと共同開発したリアライトレザインと共同開発したリアライト
ここまでの説明では、キャノンデールらしからぬオーソドックスでシンプルなロードバイクだという印象を受けたかもしれない。しかし、そこに留まらないのがキャノンデールの魅力だ。新型Synapseをキャノンデールバイクたらしめる独創が専用に開発されたライト/レーダー統合システム"Smart Sence"。充電式小型バッテリー、フロントライト、リアライト、後方から接近する車両を検知するレーダーといったライド中の安全性に関わるアイテムを車体に備え、それぞれをスマートフォンで操作できる画期的なシステムだ。

Smart Senceでは各アイテムがボトムブラケットシェル付近に搭載するバッテリーから給電されるため、別々に充電する手間と、ケーブルを何本も持つ煩わしさから解放される。もちろんひとつのバッテリーで幾つものデバイスの電源を融通するため、ランタイムの計算は煩雑になるが、デイリーユースにおいては大きなメリットとなるはずだ。

バッテリーは取り外すことができるため充電を行いやすいバッテリーは取り外すことができるため充電を行いやすい
この統合システムの中心となるのは、キャノンデールのスマートフォンアプリ。ライトのモードや光量の調整、レーダーのアラームや表示方法など細かい設定を行うことはもちろん、ライドログを記録することができたり、メンテナンスの内容を記録できたりと汎用性の高いアプリに仕上げられている。キャノンデールのアプリは新しく搭載されたデバイスとの接続性だけではなく、サイクルライフ全体をサポートしてくれそうだ。

ライドログの記録中は速度などを画面に表示できるため、サイクルコンピューターのように使うことも可能。別売のSPコネクトのアダプターやスマートフォン・アダプターケースを活用しても良いだろう。

スマホから簡単にライトのモードを変更することができるスマホから簡単にライトのモードを変更することができる
キャノンデールのスマホアプリはサイコンのように使うことができるキャノンデールのスマホアプリはサイコンのように使うことができる
また新型Synapseには幾つかの完成車が用意されているが、どれもフレームとフォークは共通し、異なるのはコンポーネントとSmart Senceの内容だ。モデル名にRLEと記載されるものが「レーダー+ライト+電動変速」、RLは「レーダー+ライト」、Lは「ライト」という構成とされている。

今回インプレッションを行ったのはSynapse Carbon 3 Lというライトのみのシンプルなモデル。初代Synapseも所有したバイクファクトリー北浦和スズキの鈴木卓史さんに新型の実力を伺った。



-インプレッション

「日本のサイクリングシーンにマッチした一台」鈴木卓史(バイクファクトリー北浦和スズキ)

「」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)「」鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
初代Synapseは気に入って乗っていたんですよね。レースバイクのように鋭い反応性はなかったものの、非常に扱いやすくてお気に入りでした。今回の新型も初代を思い起こさせるような、Synapseらしい安心感がある自転車だと感じました。

キャノンデールはロードのSUPERSIX、SYSTEMSIX、グラベルのTOPSTONEをラインアップしていて、新型Synapseがどのような位置付けになるのかは気になっていました。実際には舗装路を走行する中で安心して操ることができ、長距離で疲れにくいというSynapseの走行性能はそのまま受け継がれていました。

高弾性カーボンのHi-MODを使ったモデルは硬さを顕著に感じられますが、Synapseのフレームはゆったりとした剛性感で、いい意味で硬さを感じにくくなっています。コーナリングもクイックではなく、ゆったりとして操れる印象です。

日中もライトを点灯することで、安全性を高められるはずだ日中もライトを点灯することで、安全性を高められるはずだ
Synapseはシートチューブ下部に穴が開けられていて個性的で好みだったけど、今作は非常にシンプルに作られている。それでも走行感にはSAVEテクノロジーらしさが残っています。衝撃吸収のために特別な機構を加えないSAVEだからこその軽さは感じられますし、アドバンテージになると思います。

バイク全体としての乗り心地の良さが伝わってくる。加速性能を求めるような走り方ではなくて、淡々と走るのであればバイクにマッチします。28Cや30Cといった太いタイヤのほうが似合いますし、走りにも余裕が出ると思いますが、日本のように路面が綺麗な状況であれば25Cに変えて、俊敏性や軽さを求めてもいいでしょう。

完成車のパッケージから軽快感を得るためにカスタマイズするなら、ホイールから変えたいですね。タイヤをチューブレスにすれば乗り心地はそのままに、低転がり抵抗のメリットを得られるんじゃないかと思います。どんどん高いスピード域が気持ち良いバイクになるんじゃないかな。

リアライトはサドルバッグの装着を考慮したデザインとなっているリアライトはサドルバッグの装着を考慮したデザインとなっている
ボトムブラケットがねじ切り式になったり、シートポストを丸型としたり、ケーブルはフル内装にしなかったり、ユーザーフレンドリーな自転車になったと思います。個性は薄くなったと思うけど、ライド中にトラブルが起きた時に対処しやすいのはありがたいですよね。

新型Synapseはある程度グラベルに寄ったけど、日本ではアスファルト比率が高いからいわゆるグラベルバイクよりもシナプスの方が実際の使い方にはフィットするでしょう。今作の目玉であるスマートセンスのレーダーは自動車も通る舗装路でこそ活躍する存在かなと思いますしね。

今回の試乗車にはレーダーはついていませんでしたが、安心・安全を考えるなら最初から搭載されているに越したことはありません。別々で買っても高いですしね。自転車に乗っていて後ろを振り返るのは、思っている以上に危ないです。自動車が近づいてきた時に心構えできるのはふらつきなどを予防できるので、安全になるはずですよ。

初代Synapseに乗っていたという鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)初代Synapseに乗っていたという鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)
とはいえ、キャノンデールがバッテリーまで専用品として作ってきたのは驚きましたね。元々チャレンジングな姿勢があるブランドだから、"らしさ"は出ていると思います。バッテリーを共通化すれば充電も楽だし、ケーブルも少なくて済むのは嬉しいですよね。キャノンデールらしい着眼点だと思います。

新型Synapseはロードバイクの気持ちよさを残しつつ、快適性を高め、スマートセンスで安全性を高められているから、日本のサイクリングシーンにはマッチしていると思います。実際にロードのツーリングを楽しみたいというお客さんは多いから、そういった方にはSynapseをお勧めしたい。このバイクでしまなみ海道に行ってみるなんて楽しそうですよね。安全にツーリングを楽しめる機材というのは、ロードレーサーではない、ロードバイクとして正しい進化だと思います。

キャノンデール Synapse Carbon 3 Lキャノンデール Synapse Carbon 3 L photo:Makoto AYANO/cyclowired.jp
キャノンデール Synapse Carbon 3 L
フレーム:Synapse Carbon, SmartSense enabled, BSA threaded BB
フォーク:Synapse Carbon, integrated crown race
コンポーネント:シマノ105
スマートセンス:ライト
サイズ:48、51、54
価格:374,000円(税込)



インプレッションライダーのプロフィール

鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ) 鈴木卓史(スポーツバイクファクトリースズキ)

埼玉県内に3店舗を構えるスポーツバイクファクトリースズキの代表を務める。週末はショップのお客さんとのライドやトライアスロンに力を入れている。「買ってもらった方に自転車を長く続けてもらう」ことをモットーに、ポジションやフィッティングを追求すると同時に、ツーリングなどのイベントを開催することで走る場を提供し、ユーザーに満足してもらうことを第一に考える。

スポーツバイクファクトリー北浦和スズキ
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text:Gakuto Fujiwara
photo:Makoto AYANO