名物の砂コースで繰り広げられたUCIシクロクロスワールドカップ第4戦。デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)が安定した走りで独走し、トーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)は手に汗握る接戦の末勝利を掴んでいる。



長い砂の直登・直滑降が特徴のゾンホーフェンのコース長い砂の直登・直滑降が特徴のゾンホーフェンのコース photo:CorVos2年ぶりの開催となるスーパープレスティージュ「ゾンホーフェン」。オランダ国境に近い北部の街郊外の丘陵地を使った1周2.6kmコースの特徴は、何と言っても砂に覆われたダイナミックな登りと下り。長いキャンバーを何度も直登・直滑降するダイナミックさが特徴で、砂を攻略するテクニックとパワーのどちらもが問われる名物レースだ。

シーズン序盤戦らしく、半袖スキンスーツに身を包んだ選手たちが、気温15度という気温の中スタート。血液数値の乱れによってシーズンインが遅れていた前世界チャンピオン、セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)が戻った女子エリートレースは、若手選手のスタートダッシュで幕開けた。

共に19歳のフェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)とパック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス)が最初の砂下りをこなし、「砂が好きなのでレースが楽しみ」と話していたデニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)がピーテルスと共に抜け出していく。

世界王者ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が追いかけたが、軽やかに砂上を飛ばすベッツィマとたちとの距離は1秒、また1秒と開いていく。全7周回中の3周目にはピーテルスを引き離し、フィニッシュまで続く独走に持ち込んだ。

今季UCIワールドカップで初勝利を射止めたデニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール)今季UCIワールドカップで初勝利を射止めたデニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) photo:CorVos
シーズンインを果たしたセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)は3位にシーズンインを果たしたセイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス)は3位に photo:CorVos
「昨日(スーパープレスティージュ第2戦ルッデルフォールデ)の疲れがまだ残っていて、さらに休みどころのないコースなのでレース自体はとてもキツかった」と振り返るベッツィマの後ろでは、ピーテルスをパスしたブラントが追撃を試みたものの「途中彼女に近づいたけれど、もう一度引き離されてしまった。1ラップあたり(ベッツィマは)5〜10秒速かった」と後退。最後までハイペースを維持したベッツィマが、3-2-2位と惜しいレースが続いた今季UCIワールドカップで初勝利を射止めた。

UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第4戦 女子エリート表彰台UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第4戦 女子エリート表彰台 photo:CorVos
「ゾンホーフェンは大好きなコースなので目標にしていた。(2週間後に迫った)ヨーロッパ選手権に向けて良い弾みになった」と笑顔のベッツィマは、シーズン後半戦に見据えてロードから続く長いシーズンを一旦終えたマリアンヌ・フォス(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)に代わってランキングリーダーに浮上している。



アタックの応酬 ラン区間で抜け出したアールツが待望のW杯勝利

横一列になって砂のハイスピードダウンヒルを駆け抜ける横一列になって砂のハイスピードダウンヒルを駆け抜ける photo:CorVos
テクニカルながら決まり手に欠くコースで、男子エリートレースは砂を得意とするローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)やランキングリーダーのエリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール)、好調ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)、そして徐々に調子を上げるトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)が1周目終了時点で先頭グループを形成。2周目に入るとクィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム)たち追走グループが追いついたことで、有力勢が数珠繋ぎに砂を上り下りする光景が展開された。

テクニックとパワーを求められる2周目の砂登りでスウェークが先行したものの、ファンデルハールとアールツのペーシングによって追走グループがまるまる2周回を使ってキャッチ。誰にもチャンスがある「オープンな」レースでイゼルビットとファンデルハールが抜け出し、やがてイゼルビットが独走するも全10周回中の7周目に引き戻される。ファンデルハールやヘルマンスを含めた6名のまま、レースは終盤戦へ。

好調ぶりを発揮したラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ)好調ぶりを発揮したラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
3年ぶりのW杯優勝を果たしたトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ)3年ぶりのW杯優勝を果たしたトーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) photo:CorVos
9周目のバイクを担ぎ上げる砂登りで仕掛けたのは、それまで息を潜めていたアールツだった。「(先頭グループ内で)僕に主導権が無いことは明らかだったけれど、どこで差を埋め、どこで差をつけられるかは分かっていた」と言う元欧州王者は、追走イゼルビッドのミスにも助けられて22秒差で最終周回へ。そのまま1周回を逃げ切ったアールツが今季2勝目、ならびにワールドカップでは実に3年ぶりとなる嬉しい勝利を挙げた。

「近年最もエキサイティングなレースで勝つことができた。最終盤までたくさんの選手が勝負権を持っていて、たくさんのファン、良い天気など、良い条件が揃ったレースだったし楽しむことができた。レース中盤戦ではこんな結果になるなんて夢にも思わなかった」とアールツは笑顔を見せる。「トーンの勝利が嬉しいけれど、そうでなければ自分が勝ちたかった」と悔やみながらも好調ぶりを発揮したファンデルハールが2位。「テクニック面で優れている訳ではないのでこれが精一杯だった」と言うイゼルビットが3位に入った。

UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第4戦 男子エリート表彰台UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第4戦 男子エリート表彰台 photo:CorVos
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第4戦 男子エリート結果
1位 トーン・アールツ(ベルギー、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 58:58
2位 ラース・ファンデルハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 0:10
3位 エリ・イゼルビット(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 0:14
4位 ローレンス・スウェーク(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 0:19
5位 クィンティン・ヘルマンス(ベルギー、トルマンス・サーカスCXチーム) 0:26
6位 マイケル・ファントーレンハウト(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 0:37
7位 ダーン・ソエテ(ベルギー、CXチームデスハフト・グループヘンス・マースコンテナーズ) 1:12
8位 コルネ・ファンケッセル(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 1:22
9位 トーン・ファンデボッシュ(ベルギー、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 1:33
10位 ピム・ロンハール(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 1:52
UCIシクロクロスワールドカップ2021-2022第4戦 女子エリート結果
1位 デニセ・ベッツェマ(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 47:44
2位 ルシンダ・ブラント(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 0:46
3位 セイリン・アルバラード(オランダ、アルペシン・フェニックス) 1:08
4位 パック・ピーテルス(オランダ、アルペシン・フェニックス) 1:20
5位 フェム・ファンエンペル(オランダ、パウェルスサウゼン・ビンゴール) 1:35
6位 シリン・ファンアンローイ(オランダ、バロワーズ・トレック・ライオンズ) 1:36
7位 インゲ・ファンデルヘイデン(オランダ、777) 2:14
8位 リヌ・ブルキエ(フランス、A.S.バイククロスチーム) 2:20
9位 ヤラ・カステリン(オランダ、IKOクレラン) 2:46
10位 アリーチェマリア・アルツィッフィ(イタリア) 2:57
text:So Isobe

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