「22kmの道のりを10秒で駆け抜けたと錯覚するぐらい集中できた」と話すのは、レース後に変速の不具合を明かした金メダルのアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)。2位のローセルや3位のファンデルブレッヘンなど、東京五輪女子個人TTでトップ3に入った選手たちのコメントを紹介します。



第1位 アネミエク・ファンフルーテン(オランダ)

2位に56秒差をつける走りで優勝したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)2位に56秒差をつける走りで優勝したアネミエク・ファンフルーテン(オランダ) photo:CorVos
信じられないほど嬉しい。今日の目標は自分史上最高の走りをすることだった。今日のレースの準備は合宿地イタリアから始まり、モビスターに移籍したのも自分に合う速いバイクに乗るためだった。また、メカニックのエドウィン・ファン・ヴュットのおかげで何の心配もなくスタートすることができた。

ロードレースで自分の調子が良いことが分かり、ネガティブな感情を忘れ、今日という次なる目標に向け集中したかった。結果的に最高のタイムトライアルができたが、そこには小さな物語があった。DHバーの変速が動かなかった。そのためギヤを変えるためにブラケットを握らなければならなかった。スタート前はもちろん、フィニッシュ後にもそんな不具合はなかったのでメカニックを責められないし、誰かを責めるなんてストレスは無駄でしかない。

最初は全く変速ができないかと思い焦ったが、幸いブレーキハンドルの変速は問題なく動いた。この大事なタイムトライアルで思い通りの変速ができず、走りを変えなければいけない難しさがあったが、「やってやろう」と心に決め、自分のやるべきことに集中した。いまタイムトライアルしている自分の姿を思い出してみると、完全な”フロー”の状態にあったと分かる。なぜなら22kmの道のりをたった10秒で駆け抜けたように感じたのだから。

満面の笑みで金メダルに口づけをするアネミエク・ファンフルーテン(オランダ)満面の笑みで金メダルに口づけをするアネミエク・ファンフルーテン(オランダ) photo:CorVos
中間計測のタイムを聞いていなかったものの、フィニッシュラインを越えたタイムが最速であることは分かっていた。だが同時に、私の後にタイムトライアルの強い選手たちがいることも知っていた。フィニッシュした後は身体に何の力も残っていなかった。

モビスターとキャニオンを選び、ジロドンネを回避して高地トレーニングをするなど、この結果を得るためには多くの決断をしなければならなかった。でもその道のりは楽しく、喜びも伴っていた。またロードレース後、チームに対し批判的な意見があったこともあり、SNSから離れなくてはならなかった。しかし、これでオランダチームに対する風向きが少し変わってくれると嬉しい。

今晩になってようやく勝利の実感が湧いてくると思う。私の五輪の物語はリオで始まり、これで完結こそしたが、私の競技人生がここ東京で終わることはなく、これからもまだまだ走り続けていく。

第2位 マーレン・ローセル(スイス)

銀メダルを獲得したマーレン・ローセル(スイス)銀メダルを獲得したマーレン・ローセル(スイス) photo:CorVos
とても奇妙な感覚だった。表彰式では頭上にあった時計が、日本の時間か、はたまたスイスの時間を指しているのか分からないほど混乱していた。でも、いままでこの自分勝手な計画を支えてくれた人たちや応援メッセージをくれた人々のことを考えたら、涙がこぼれ落ちそうになった。ちゃんと我慢できたけどね。

メダルを意識し始めたのは、五輪の1年延期が決まった昨年頃から。だけど、日本に来て自分の目でコースを見た瞬間「もうダメだ!」と思った。その理由は登り坂ではなく、鋭角コーナーがある下りにあった。私はいつもブレーキを強く握りすぎてしまう癖があり、そこでいつも数秒失ってしまう。でも今日は自分に「落ち着いて行け」と言い聞かせ、ブレーキを早めにかけるようにした。それが上手くいったみたい。

ヘルメットに問題があり、サングラスが目に入ってしまったからコースの途中で投げ捨てた。また、風でスキンスーツがパラシュートのようにパタつくトラブルもあったが、この不利な状況を補うぐらいの気持ちで頑張った。

銀メダルを喜ぶマーレン・ローセル(スイス)銀メダルを喜ぶマーレン・ローセル(スイス) photo:CorVos
テクニカルな区間でなるべくタイムを失わないよう走ったことが表彰台に繋がったのだと思う。そして富士スピードウェイに入った瞬間、3位から6秒遅れだと聞かされ、そんな僅かの差でメダルを逃したくないと思い更に脚に力を込めた。

このメダルはスイス自転車連盟による素晴らしい働きの賜物で、特に(ロードとMTBの)コーチであるエディ・テルセールの力があってこその結果だと思っている。才能ある選手だけでは不十分で、彼はその力を引き出すことができる。このメダルは(医学部の卒業証書の隣に飾るのではなく)彼に捧げたい。それぐらい彼は偉大な存在。

第3位 アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)

最終走者アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)は1分02秒及ばず銅メダル最終走者アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)は1分02秒及ばず銅メダル photo:CorVos
五輪で獲得した3個目のメダルとなった。もちろん金メダルを目指していたものの、この結果に十分満足している。走り出した序盤から、調子が良くないことが分かった。目標としていたワット数が出ず、先日(優勝したジロドンネ)のタイムトライアルのような感覚がなかった。だけど最後まで踏み続け、力を尽くした結果、メダルを獲得することができた。決して悪くはないと思う。

時には最大限の力を出せない日もある。単純にあれ以上踏むことができなかっただけ。馬鹿みたいに聞こえるかもしれないが、力の出せる日を待つことしかできない。残念ながら、その願っていた日が今日じゃなかっただけ。

アネミエク・ファンフルーテン(オランダ)と拳を合わせるアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ)アネミエク・ファンフルーテン(オランダ)と拳を合わせるアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ) photo:CorVos
良い準備ができ、調子も悪くはなかった。十分なサポートもあり、すべてがスムーズに進んでいたのでそれらが原因ではない。もっと脚を速く回せれば良かったのだが、今日はそれができなかった。正直、そんな状態でも銅メダルを獲得することができて驚いている。

この後どのレースに出場するかは未定だけど、ベルギーで開催される世界選手権には出たいと思っている。でもそれは自分の勝利のためではなく、私を長年アシストしてくれた仲間のために走りたい。

text:Sotaro.Arakawa
photo:CorVos
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