2021/07/23(金) - 16:41
4,865m(男子)という獲得標高差に加え、日本特有の湿気を含んだ暑さが展開予想を困難にする東京五輪ロードレース。男女レースの簡略なコース紹介と金メダルを争う有力選手たちを紹介しよう。
7月24日午前11時にスタートする男子レースは4865mの獲得標高差が示す通りクライマー向き。ただし、最終山岳の籠坂峠頂上からフィニッシュ地点の富士スピードウェイまで21km(うち下り15km)もあることから、単純な登坂力だけではなく、登坂力に優れるパンチャー系の選手にも勝機が残されている。
東京・武蔵野の森公園から道志みちまでの40km以外は登るか下るしかない過酷なレイアウト。そのため、いかに200km地点から始まる三国峠まで力を使わずにいられるか、それを嫌うチームはいかにその登坂までにレース展開を作れるかが勝負の鍵となってくる。
優勝候補として最初に挙げるべきはベルギーのワウト・ファンアールトだろう。直近のツール・ド・フランスにて個人タイムトライアル、山岳ステージ、集団スプリントで勝利した脚質とその力はプロトンの中でも突出している。またベルギーは出場国の中でも最も厚いチーム力を誇っており、大怪我から復活した「スーパースター」レムコ・エヴェネプールも常に予想を上回る”いつもの走り”で勝利を狙う。リオ五輪ロードの金メダリストのグレッグ・ファンアーフェルマートやティシュ・ベノートが脇を固める。
その対抗となるのがツール・ド・フランスで2連覇したタデイ・ポガチャルとプリモシュ・ログリッチを揃えるスロベニアだ。チーム最大人数から1人少ない4名で出走に加え、ポガチャルがツールの疲労が抜けきれていないこと、またログリッチはツールで負った怪我からの回復に不安が残るが、2人のコンビネーションは脅威となるのは間違いない。
イタリアのエースを担うのはジュリオ・チッコーネ。リオ五輪での落車を悔やむベテランのヴィンチェンツォ・ニバリと、登りもこなすクラシックレーサーのジャンニ・モスコンがアシスト役となる。コース特性で言えば41歳のアレハンドロ・バルベルデも見逃せない。かつてのような勝率は残せていないものの、ここ一番の勝負強さとピーキング力は健在で、展開次第ではオマル・フライレも面白い。
出場選手のネームバリューならばイギリスも負けていない。3カ月振りのレースとなるアダム・イェーツを中心に、双子の兄弟で2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のサイモン、2018年ツールを制したゲラント・トーマス、そして2020年ジロ・デ・イタリア王者テイオ・ゲイガンハートが揃う。
コロンビアはリゴベルト・ウランとナイロ・キンタナという国を代表する2人のエースに、エステバン・チャベスとセルヒオ・イギータというピュアクライマーチームで挑む。また、アラフィリップ、バルデ、ピノ不在のフランスチームは、若手注目株のダヴィド・ゴデュをエースに据え、ギヨーム・マルタンとともにツールで果たせなかった栄冠を狙う。
起伏の激しいレイアウトだけを見ればマルク・ヒルシ(スイス)を優勝候補に挙げたくなるが、春先の故障に続きツールで肩を脱臼と不運の連続。完走は果たしたものの昨季見せた快走からは遠い状態か。オランダは日本のレースと相性の良いバウケ・モレマが個人タイムトライアルに注力するトム・デュムランのアシストを受け、デンマークはリオ五輪銀メダルのヤコブ・フルサンがコンディション次第で三国峠で先頭にいても不思議はない。
チーム人数が2名と不利なツール総合3位のリチャル・カラパス(エクアドル)もその登坂力は世界トップクラスであり、ポルトガルのジョアン・アルメイダを優勝候補に挙げる声も少なくない。そのほかにもカザフスタンのアレクセイ・ルツェンコやマイケル・ウッズ(カナダ)、ダニエル・マーティン(アイルランド)、リオ五輪銅メダルのラファウ・マイカとクフィアトコフスキのポーランド、近年急激に力を伸ばすロシアの大型クライマー、アレクサンドル・ウラソフにも注目だ。
日本からは3度目の五輪出場となる新城幸也と、接戦の末に代表を掴んだ増田成幸が出場を予定している。日本代表ジャージを着る二人の走りに期待したい。
オランダ勢をどう崩すか? 7月25日開催の女子ロードレース
男子レースの翌日、7月25日の女子レースは147km/獲得標高2692mのコースで行われる。男子レースほどの高低差がないためよりパンチャー向けではあるものの、それでも登坂力が問われることには間違いない。
最大出場数の4名体制で臨むのは、オランダ、イタリア、アメリカ、オーストラリア、ドイツの5カ国。そのうち最も厚い布陣を誇るのが現在女子プロトンを席巻しているオランダだ。
リオ五輪金メダリストにして現世界チャンピオン、そして直近のジロ・デ・イタリア・ドンネを圧倒的な力で制したアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、SDワークス)は最有力候補。前世界チャンピオンのアネミエク・ファンフルーテンはジロドンネに出場することなく高地合宿を続けてきたため、万全のコンディションで臨んでくると思われる。ジロドンネで圧巻のステージ30勝目を掴んだマリアンヌ・フォス、ジロドンネ総合3位に入った売り出し中のデミ・フォレリングと、その層の厚さは群を抜いている。
安定した強さを誇るイタリアチャンピオンのエリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)や、ジロドンネ総合2位アシュリー・モールマン(南アフリカ)、エリザベス・ダイグナン(イギリス)、マビ・ガルシア(スペイン)、セシリーウトラップ・ルドヴィグ(ノルウェー)など、登坂力とスプリントに長ける選手たちが優勝候補と目されている。
日本代表ジャージを着用するのは、普段チームティブコ・SVBで走る與那嶺恵理と、金子広美(イナーメ信濃山形)の二人だ。
text:Sotaro Arakawa
7月24日午前11時にスタートする男子レースは4865mの獲得標高差が示す通りクライマー向き。ただし、最終山岳の籠坂峠頂上からフィニッシュ地点の富士スピードウェイまで21km(うち下り15km)もあることから、単純な登坂力だけではなく、登坂力に優れるパンチャー系の選手にも勝機が残されている。
東京・武蔵野の森公園から道志みちまでの40km以外は登るか下るしかない過酷なレイアウト。そのため、いかに200km地点から始まる三国峠まで力を使わずにいられるか、それを嫌うチームはいかにその登坂までにレース展開を作れるかが勝負の鍵となってくる。
優勝候補として最初に挙げるべきはベルギーのワウト・ファンアールトだろう。直近のツール・ド・フランスにて個人タイムトライアル、山岳ステージ、集団スプリントで勝利した脚質とその力はプロトンの中でも突出している。またベルギーは出場国の中でも最も厚いチーム力を誇っており、大怪我から復活した「スーパースター」レムコ・エヴェネプールも常に予想を上回る”いつもの走り”で勝利を狙う。リオ五輪ロードの金メダリストのグレッグ・ファンアーフェルマートやティシュ・ベノートが脇を固める。
その対抗となるのがツール・ド・フランスで2連覇したタデイ・ポガチャルとプリモシュ・ログリッチを揃えるスロベニアだ。チーム最大人数から1人少ない4名で出走に加え、ポガチャルがツールの疲労が抜けきれていないこと、またログリッチはツールで負った怪我からの回復に不安が残るが、2人のコンビネーションは脅威となるのは間違いない。
イタリアのエースを担うのはジュリオ・チッコーネ。リオ五輪での落車を悔やむベテランのヴィンチェンツォ・ニバリと、登りもこなすクラシックレーサーのジャンニ・モスコンがアシスト役となる。コース特性で言えば41歳のアレハンドロ・バルベルデも見逃せない。かつてのような勝率は残せていないものの、ここ一番の勝負強さとピーキング力は健在で、展開次第ではオマル・フライレも面白い。
出場選手のネームバリューならばイギリスも負けていない。3カ月振りのレースとなるアダム・イェーツを中心に、双子の兄弟で2018年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者のサイモン、2018年ツールを制したゲラント・トーマス、そして2020年ジロ・デ・イタリア王者テイオ・ゲイガンハートが揃う。
コロンビアはリゴベルト・ウランとナイロ・キンタナという国を代表する2人のエースに、エステバン・チャベスとセルヒオ・イギータというピュアクライマーチームで挑む。また、アラフィリップ、バルデ、ピノ不在のフランスチームは、若手注目株のダヴィド・ゴデュをエースに据え、ギヨーム・マルタンとともにツールで果たせなかった栄冠を狙う。
起伏の激しいレイアウトだけを見ればマルク・ヒルシ(スイス)を優勝候補に挙げたくなるが、春先の故障に続きツールで肩を脱臼と不運の連続。完走は果たしたものの昨季見せた快走からは遠い状態か。オランダは日本のレースと相性の良いバウケ・モレマが個人タイムトライアルに注力するトム・デュムランのアシストを受け、デンマークはリオ五輪銀メダルのヤコブ・フルサンがコンディション次第で三国峠で先頭にいても不思議はない。
チーム人数が2名と不利なツール総合3位のリチャル・カラパス(エクアドル)もその登坂力は世界トップクラスであり、ポルトガルのジョアン・アルメイダを優勝候補に挙げる声も少なくない。そのほかにもカザフスタンのアレクセイ・ルツェンコやマイケル・ウッズ(カナダ)、ダニエル・マーティン(アイルランド)、リオ五輪銅メダルのラファウ・マイカとクフィアトコフスキのポーランド、近年急激に力を伸ばすロシアの大型クライマー、アレクサンドル・ウラソフにも注目だ。
日本からは3度目の五輪出場となる新城幸也と、接戦の末に代表を掴んだ増田成幸が出場を予定している。日本代表ジャージを着る二人の走りに期待したい。
オランダ勢をどう崩すか? 7月25日開催の女子ロードレース
男子レースの翌日、7月25日の女子レースは147km/獲得標高2692mのコースで行われる。男子レースほどの高低差がないためよりパンチャー向けではあるものの、それでも登坂力が問われることには間違いない。
最大出場数の4名体制で臨むのは、オランダ、イタリア、アメリカ、オーストラリア、ドイツの5カ国。そのうち最も厚い布陣を誇るのが現在女子プロトンを席巻しているオランダだ。
リオ五輪金メダリストにして現世界チャンピオン、そして直近のジロ・デ・イタリア・ドンネを圧倒的な力で制したアンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、SDワークス)は最有力候補。前世界チャンピオンのアネミエク・ファンフルーテンはジロドンネに出場することなく高地合宿を続けてきたため、万全のコンディションで臨んでくると思われる。ジロドンネで圧巻のステージ30勝目を掴んだマリアンヌ・フォス、ジロドンネ総合3位に入った売り出し中のデミ・フォレリングと、その層の厚さは群を抜いている。
安定した強さを誇るイタリアチャンピオンのエリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)や、ジロドンネ総合2位アシュリー・モールマン(南アフリカ)、エリザベス・ダイグナン(イギリス)、マビ・ガルシア(スペイン)、セシリーウトラップ・ルドヴィグ(ノルウェー)など、登坂力とスプリントに長ける選手たちが優勝候補と目されている。
日本代表ジャージを着用するのは、普段チームティブコ・SVBで走る與那嶺恵理と、金子広美(イナーメ信濃山形)の二人だ。
text:Sotaro Arakawa
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