昨年の中止を経て2年ぶりの開催となる「ツアー・オブ・ジャパン」が、5月28日から3日間3ステージのレースとして開催される。各ステージと出場チームをプレビューし、27日夕方に行われたオンライン会見に臨んだ増田成幸、ホセ・ビセンテ・トリビオ、トマ・ルバ、石上優大のコメントをまとめる。



今年のツアー・オブ・ジャパンは富士山ステージでスタートする(写真は2019年大会)今年のツアー・オブ・ジャパンは富士山ステージでスタートする(写真は2019年大会) ©️TOJ2019
今年のツアー・オブ・ジャパンは、世界的な新型コロナウィルス感染拡大が収束していないことを受け、従来はUCI2.1クラスとして開催されるところを2.2クラスに変更し、国内チームのみが出場して3日間3ステージのレースで開催される。国内で開催されるUCIレースとしては、2019年11月の「ツール・ド・おきなわ」以来の開催となる。

また、国内レースとしては初めて、「レースバブル」が運用される。選手、チームスタッフ、レース運営関係者は、事前にPCR検査を受けた上で、レース期間中は外界と隔離した状態に置かれる。その上で、当初は有観客での開催として予定されていたが、地域によっては緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が継続していることを踏まえ、大会事務局は現地観戦を控え、ライブストリーミング中継での観戦を呼びかけている。一方で、全ステージで公道を使用する以上、コースの近隣住民の行動を制限することが出来ないため、完全無観客とはしない。



各ステージを紹介していこう。

5月28日 富士山ステージ(78.8km) 午前10時30分スタート

富士山ステージのスタート地点となる富士スピードウェイ西ゲート富士山ステージのスタート地点となる富士スピードウェイ西ゲート photo:Satoru Kato
富士山ステージ 周回コース途中にあるロータリー富士山ステージ 周回コース途中にあるロータリー photo:Satoru Kato富士山ステージ 周回コースにある急勾配の登り箇所富士山ステージ 周回コースにある急勾配の登り箇所 photo:Satoru Kato

富士山ステージ 富士山五合目に向かうあざみライン富士山ステージ 富士山五合目に向かうあざみライン photo:Satoru Kato初日からいきなりクイーンステージを迎える。スタートは富士スピードウェイの西ゲート。ここから東京五輪のタイムトライアル周回コースを4周半して、あざみラインに向かう。

最終的な勝負はあざみラインで着くことになるだろうが、タイムトライアル周回コースもアップダウンに富むハードな設定。ある程度集団の人数が絞られた状態であざみラインに向かうことになるか。また、富士山のフィニッシュが変更され、ラスト120mを20%越えの激坂を登ることになった。これにより更なるタイム差が付くことは確実だ。

5月29日 相模原ステージ(108.5km) 午前8時50分スタート

相模原ステージの周回コースが設定される宮ヶ瀬湖相模原ステージの周回コースが設定される宮ヶ瀬湖 photo:Satoru Kato
相模原ステージ スタート地点となる橋本公園相模原ステージ スタート地点となる橋本公園 photo:Satoru Kato相模原ステージ フィニッシュとKOMが設定される鳥居原ふれあいの館相模原ステージ フィニッシュとKOMが設定される鳥居原ふれあいの館 photo:Satoru Kato

2日目の相模原は、中止となった昨年大会から新たに組み込まれたステージで、今年初開催。JR橋本駅近くの橋本公園をパレードスタートし、東京五輪のロードレースコースに使用される市街地道路を通り、宮ヶ瀬ダム方面へ。山間部に設定された13.8kmの周回コースを7周してフィニッシュする108.5kmのレースだ。

コース前半は集落の中を抜けていく道幅狭めの下り基調に対し、後半は宮ヶ瀬湖に沿ってカーブとトンネルが連続する登り基調の構成。宮ヶ瀬ダム入口にスプリントポイント、フィニッシュが設定される鳥居原ふれあいの館前に山岳ポイントが設定される。直線区間が短く、集団は常に長く伸びた状態で進行しそう。中切れの犠牲になって思わぬ遅れをとる選手が出るかもしれない。

5月30日 東京ステージ(112km) 午前11時00分スタート

最終日は大井埠頭(写真は2019年大会)desc最終日は大井埠頭(写真は2019年大会)desc
最終日は大井埠頭の周回コースで行われる東京ステージ。2019年同様に日比谷のパレードスタートは無いが、周回コースは例年通りの設定だ。最後は集団スプリントが定番だが、稀に少人数が逃げ切ることも。今年はどのようになるか?




大学チームを含む全15チームが出走 シマノレーシングが出場辞退

出場チームは、日本ナショナルチームと大学2チームを含む計15チーム。3月に開催された西日本チャレンジ以来、Jプロツアーとジャパンサイクルリーグのチームが同じスタートラインに並ぶ。1チームの人数は5名。チームブリヂストンサイクリングは4名でのエントリーとなる。

また、シマノレーシングチームは、直前のPCR検査で陽性者が1名出たため、出場辞退を発表した。シマノレーシングチームは会場入りしておらず、大会関係者との接触はないという。
ツアー・オブ・ジャパン2021 出場チーム
宇都宮ブリッツェン 愛三工業レーシングチーム
キナンサイクリングチーム 那須ブラーゼン
チーム右京 相模原 マトリックスパワータグ
シマノレーシングチーム (出場辞退) チームブリヂストンサイクリング
日本ナショナルチーム 弱虫ペダルサイクリングチーム
リオモ・ベルマーレ・レーシングチーム レバンテフジ静岡
スパークルおおいた チームユーラシア・IRCタイヤ
日本大学 京都産業大学



大会前日の夕方、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)、ホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックス・パワータグ)、トマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)、石上優大(日本ナショナルチーム)がオンライン会見に臨んだ。明日からのレースについて、それぞれが思うこと考えることを話し、オンラインで観戦するファンへメッセージを贈った。

増田成幸「展開を決めず臨機応変に」

五輪に向けて好調が伝えられる増田成幸(宇都宮ブリッツェン)五輪に向けて好調が伝えられる増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Satoru Kato2年ぶりのツアー・オブ・ジャパンで、この場所に戻ってこれたことが嬉しい。

富士山に登るところがメインだけれど、五輪TTの周回部分も登りと下りしかないようなコースなので、力をもった選手が上位に食い込んでくるだろう。でも最初から展開を決めつけずに臨機応変に対応していきたい。

このご時世、この規模の大会が出来ることに感謝。しっかりコントロールされた中でレースが行われるが、いつかお客さんのみなさんと会えることを楽しみにしている。今回はオンラインを通じて応援してほしい。

ホセ・ビセンテ・トリビオ「これまでの好調をツアー・オブ・ジャパンに繋げたい」

Jプロツアーでは現在総合首位のプロリーダージャージを着るホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ)Jプロツアーでは現在総合首位のプロリーダージャージを着るホセ・ビセンテ・トリビオ(マトリックスパワータグ) photo:Satoru Kato2019年は3位で良い結果だった。今年はここまで良いコンディションで結果も出ている。このままツアー・オブ・ジャパンに繋げていきたい。何より大会を楽しみたい。チーム全体もコンディション良いので、パコ(フランシスコ・マンセボ)も、小林海も、チーム全員で協力していきたい。

例年より短期間だけれど、それでも富士山は重要。相模原も富士山翌日なのでハードなのは変わらない。明日スタートしてみないと勝負はわからない。出場選手全員にリスペクトを持っているが、ここにいる3名(増田、ルバ、石上)は特に注意したい。

今年は画面を通しての応援ですが、みなさんの声は届いています。

トマ・ルバ「ツアー・オブ・ジャパンは特別なレース」

2018年ツアー・オブ・ジャパンでリーダージャージを着て富士山を登ったトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム)2018年ツアー・オブ・ジャパンでリーダージャージを着て富士山を登ったトマ・ルバ(キナンサイクリングチーム) ツアー・オブ・ジャパンは、チームにとっても私にとっても特別なレース。(マルコス・ガルシアが優勝した)2018年のことはよく覚えている。日本のチームでこのレースを制するのは特別なこと。先日ガルシアとメッセージしたが、彼にとっても特別なレースだと言っていた。

富士山ステージは重要。今年は最初からかなり差がつくだろう。富士山を登る前に4周の周回コースがあるので、逃げを仕掛けてくるチームもあるだろうが、そのあとを考えるとチームでコントロールすることは難しいと思う。私自身はクライマーだが、富士山で良い結果が出ていない。勾配が急すぎるのかもしれない。でも明日はベストをつくして良い結果に結びつけたい。

いつも応援してくれてありがとう。みなさんの声が届かないことは選手にとっても悲しい。次の機会は選手とみなさんが一緒になれるように願っています。

石上優大「初めてのTOJ 型にハマれば良いレースが出来ると思う」

群馬CSCでのJプロツアーで昨年10月以来のレースを走った石上優大群馬CSCでのJプロツアーで昨年10月以来のレースを走った石上優大 photo:Satoru Katoツアー・オブ・ジャパンは初めてなので、正直未知数だし、レース展開がどうなるか読めない。今回の日本ナショナルチームは若手のみんなが強くて活気づいている。型にハマれば良いレースが出来ると思う。

富士山はがまん比べ。各個人の力が出るレース。あざみラインなのでどこまでがまんできるか。相模原も厳しいコースなので荒れるのでは無いかと予想している。

レースが動いていく結果マークする選手が決まってくると思うが、まずは自分達のやれることをやっていきたい。

先日の群馬CSCでのレースではレース勘が鈍っていてお荷物なレースをしてしまった。ツアー・オブ・ジャパンに向けて調整して、足だけでなく脳みそもリフレッシュできた。あとは走りながら調整していきたい。

レース開催できたことに対して主催者に敬意を表したい。皆さんはオンラインで画面に釘付けになって応援してほしい。


text:Satoru Kato

2021ツアー・オブ・ジャパン オンライン前日会見