2021/05/22(土) - 06:21
翌日にゾンコラン決戦を控えたジロ・デ・イタリア第13ステージはヴェローナを舞台にした大集団スプリントで決着。これまでステージ2位を11回経験しているジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)が悲願のステージ初優勝を飾った。
5月21日(金)第13ステージ
ラヴェンナ〜ヴェローナ 198km ★
ジロ第12ステージの獲得標高差はわずか300m。久々の難易度1つ星。久々のスプリント対決。ラヴェンナからヴェローナまで、広大なポー平原を貫く198kmの「移動ステージ」に起伏は存在しない。まだ平坦基調のステージが2つ残されているものの、いずれも終盤にかけて山岳が組み込まれているため、純粋なフラットステージはこの日が最後となる。
死後700年を迎えた詩人ダンテ・アリギエーリの墓地があるラヴェンナの街を離れると、まずはウンベルト・マレンゴ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)とサムエーレ・リーヴィ(イタリア、エオーロ・コメタ)の2人が平坦コースに飛び出した。ここに飛びついたのはシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)。今大会ここまで合計504kmを逃げてフーガ賞(逃げ賞)1位のペローは、合計474kmで同賞2位のマレンゴの抜け駆けを許さなかった。
ど平坦コースでタイム差は8分近くまで広がったものの、翌日からジロのプロトンは山岳地帯に入っていくため、この好機を逃してはなるまいとスプリンターチームが余裕を持って逃げトリオとのタイム差を管理した。先頭3人は2つのスプリントポイントでばらけるシーンも見られたが、協調してヴェローナに向けて北上を続ける。
エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がレース後に「今日は平穏な展開だったのでリカバリーできたよ」と語るほど、晴天で、暖かく、緩く追い風が吹くコンディションと穏やかな展開。STRAVAでデータを公開している選手たちのこの日の平均平均出力は190W。山岳ステージでは全選手の平均平均出力が300Wを超えるだけに、どれだけ平穏な展開だったかが分かる。ちなみに逃げていたペローの平均出力は249Wで、プロトン内で体力を温存して終盤にリードアウト役を担ったシモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)は平均出力155Wだった。
フィニッシュまで50kmを残してレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がペースアップを試みたものの、集団分裂が起こることもなく、メイン集団は落ち着いて逃げトリオを1分差で泳がせながら進行した。残り7km地点で逃げが吸収されると、クベカ・アソスが先頭でトレインを運行する。チームDSMやUAEチームエミレーツ、アルペシン・フェニックス、そしてマリアローザを安全にエスコートしたいイネオス・グレナディアーズもこのポジション争いに加わり、いよいよプロトンはヴェローナの街に差し掛かった。
残り3kmを切って長い直線に入るとボーラ・ハンスグローエとユンボ・ヴィスマ、コフィディスが集団先頭へ。道幅たっぷりの最終ストレートに大集団のまま突入すると、残り600mでエドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ)がロングスパートを開始した。
付き位置のダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)が千切れたためアッフィニが単独で飛び出した状態となり、リードアウト役を失ったスプリンターたちが自らの力で追撃する展開。初日の個人タイムトライアルで2位に入った身長192cmの大柄なアッフィニが70km/hオーバーで独走を続けたが、後方からヨーロッパチャンピオンジャージが勢いよく迫った。
「他の選手にブロックされるぐらいなら、早めに仕掛けて長い時間風を受けながらスプリントしようと思っていた」と語るジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)が、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)の後ろから加速してアッフィニを捉え、そのスリップストリームから抜け出して先頭へ。ライバルたちに並ばせることのないスピードでニッツォーロが勝利した。
ニッツォーロがアッフィニを追撃した17秒間の平均出力は1200Wで平均スピードは76.0km/h。最大出力は1480Wで最高スピードは78.3km/hだった。
これまでジロでステージ2位を11回、ステージ3位を5回経験しながらもまだ勝てていなかったニッツォーロ。今大会でも第2ステージと第5ステージで2位を経験済み。2016年大会最終ステージではマリアロッサ(当時のポイント賞ジャージ)を着てスプリントで先着したものの、進路妨害により降格処分が与えられている。
「もっとテクニカルなフィニッシュが得意なので、正直言うと今日の(直線的な)レイアウトは好きじゃなかった。エドアルド・アッフィニを自ら追いかけるのはリスキーだったけど、勝つためにはすべてを失う覚悟が必要だった。これは自分のキャリアにおいて大きな意味のある勝利。今でも(2016年最終ステージの)トリノでは自分が勝ったと思っているけど、コミッセールは違う判断を下した。それからというもの、何度もチャンスを得ながら、何かミスをして勝てていなかった。でも他のレースでは勝てる自分が、いつの日かジロでも勝てると確信していた」。ニッツォーロはマリアチクラミーノを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)に9ポイント差のポイント賞2位に浮上している。
シートクランプの破損によりサドルが取れた状態でスプリントしたガビリアがステージ5位、東京五輪でイタリア代表チームの旗手を務めることが決まっている地元ヴェローナ出身のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)はステージ9位。謹慎処分明けの初戦としてジロに挑み、ここまで第2ステージ4位、第5ステージ8位、第7ステージ7位、そして第13ステージ10位の成績を残していたディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)はここでレースを去ることを発表している。
翌日はモンテゾンコランの山頂フィニッシュ。ベルナルはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)に45秒、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)に1分12秒のリードを持って「魔の山」に初挑戦する。
5月21日(金)第13ステージ
ラヴェンナ〜ヴェローナ 198km ★
ジロ第12ステージの獲得標高差はわずか300m。久々の難易度1つ星。久々のスプリント対決。ラヴェンナからヴェローナまで、広大なポー平原を貫く198kmの「移動ステージ」に起伏は存在しない。まだ平坦基調のステージが2つ残されているものの、いずれも終盤にかけて山岳が組み込まれているため、純粋なフラットステージはこの日が最後となる。
死後700年を迎えた詩人ダンテ・アリギエーリの墓地があるラヴェンナの街を離れると、まずはウンベルト・マレンゴ(イタリア、バルディアーニ・CSF・ファイザネ)とサムエーレ・リーヴィ(イタリア、エオーロ・コメタ)の2人が平坦コースに飛び出した。ここに飛びついたのはシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)。今大会ここまで合計504kmを逃げてフーガ賞(逃げ賞)1位のペローは、合計474kmで同賞2位のマレンゴの抜け駆けを許さなかった。
ど平坦コースでタイム差は8分近くまで広がったものの、翌日からジロのプロトンは山岳地帯に入っていくため、この好機を逃してはなるまいとスプリンターチームが余裕を持って逃げトリオとのタイム差を管理した。先頭3人は2つのスプリントポイントでばらけるシーンも見られたが、協調してヴェローナに向けて北上を続ける。
エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ)がレース後に「今日は平穏な展開だったのでリカバリーできたよ」と語るほど、晴天で、暖かく、緩く追い風が吹くコンディションと穏やかな展開。STRAVAでデータを公開している選手たちのこの日の平均平均出力は190W。山岳ステージでは全選手の平均平均出力が300Wを超えるだけに、どれだけ平穏な展開だったかが分かる。ちなみに逃げていたペローの平均出力は249Wで、プロトン内で体力を温存して終盤にリードアウト役を担ったシモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)は平均出力155Wだった。
フィニッシュまで50kmを残してレミ・カヴァニャ(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)がペースアップを試みたものの、集団分裂が起こることもなく、メイン集団は落ち着いて逃げトリオを1分差で泳がせながら進行した。残り7km地点で逃げが吸収されると、クベカ・アソスが先頭でトレインを運行する。チームDSMやUAEチームエミレーツ、アルペシン・フェニックス、そしてマリアローザを安全にエスコートしたいイネオス・グレナディアーズもこのポジション争いに加わり、いよいよプロトンはヴェローナの街に差し掛かった。
残り3kmを切って長い直線に入るとボーラ・ハンスグローエとユンボ・ヴィスマ、コフィディスが集団先頭へ。道幅たっぷりの最終ストレートに大集団のまま突入すると、残り600mでエドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ)がロングスパートを開始した。
付き位置のダニエル・オス(イタリア、ボーラ・ハンスグローエ)が千切れたためアッフィニが単独で飛び出した状態となり、リードアウト役を失ったスプリンターたちが自らの力で追撃する展開。初日の個人タイムトライアルで2位に入った身長192cmの大柄なアッフィニが70km/hオーバーで独走を続けたが、後方からヨーロッパチャンピオンジャージが勢いよく迫った。
「他の選手にブロックされるぐらいなら、早めに仕掛けて長い時間風を受けながらスプリントしようと思っていた」と語るジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス)が、フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)の後ろから加速してアッフィニを捉え、そのスリップストリームから抜け出して先頭へ。ライバルたちに並ばせることのないスピードでニッツォーロが勝利した。
ニッツォーロがアッフィニを追撃した17秒間の平均出力は1200Wで平均スピードは76.0km/h。最大出力は1480Wで最高スピードは78.3km/hだった。
これまでジロでステージ2位を11回、ステージ3位を5回経験しながらもまだ勝てていなかったニッツォーロ。今大会でも第2ステージと第5ステージで2位を経験済み。2016年大会最終ステージではマリアロッサ(当時のポイント賞ジャージ)を着てスプリントで先着したものの、進路妨害により降格処分が与えられている。
「もっとテクニカルなフィニッシュが得意なので、正直言うと今日の(直線的な)レイアウトは好きじゃなかった。エドアルド・アッフィニを自ら追いかけるのはリスキーだったけど、勝つためにはすべてを失う覚悟が必要だった。これは自分のキャリアにおいて大きな意味のある勝利。今でも(2016年最終ステージの)トリノでは自分が勝ったと思っているけど、コミッセールは違う判断を下した。それからというもの、何度もチャンスを得ながら、何かミスをして勝てていなかった。でも他のレースでは勝てる自分が、いつの日かジロでも勝てると確信していた」。ニッツォーロはマリアチクラミーノを着るペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)に9ポイント差のポイント賞2位に浮上している。
シートクランプの破損によりサドルが取れた状態でスプリントしたガビリアがステージ5位、東京五輪でイタリア代表チームの旗手を務めることが決まっている地元ヴェローナ出身のエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)はステージ9位。謹慎処分明けの初戦としてジロに挑み、ここまで第2ステージ4位、第5ステージ8位、第7ステージ7位、そして第13ステージ10位の成績を残していたディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)はここでレースを去ることを発表している。
翌日はモンテゾンコランの山頂フィニッシュ。ベルナルはアレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ・プレミアテック)に45秒、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、バーレーン・ヴィクトリアス)に1分12秒のリードを持って「魔の山」に初挑戦する。
ジロ・デ・イタリア2021第13ステージ結果
1位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス) | 4:42:19 |
2位 | エドアルド・アッフィニ(イタリア、ユンボ・ヴィスマ) | |
3位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | |
4位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | |
5位 | フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ) | |
6位 | ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル) | |
7位 | アンドレア・パスクアロン(イタリア、アンテルマルシェ・ワンティ・ゴベールマテリオ) | |
8位 | マックス・カンター(ドイツ、チームDSM) | |
9位 | エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス) | |
10位 | ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) | |
49位 | 新城幸也(日本、バーレーン・ヴィクトリアス) |
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
1位 | ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) | 135pts |
2位 | ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、クベカ・アソス) | 126pts |
3位 | ダヴィデ・チモライ(イタリア、イスラエル・スタートアップネイション) | 113pts |
マリアアッズーラ 山岳賞
1位 | ジョフリー・ブシャール(フランス、アージェードゥーゼール・シトロエン) | 96pts |
2位 | エガン・ベルナル(コロンビア、イネオス・グレナディアーズ) | 48pts |
3位 | ドリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス) | 24pts |
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
1位 | イネオス・グレナディアーズ | 159:42:15 |
2位 | トレック・セガフレード | 0:01:51 |
3位 | チームDSM | 0:08:58 |
text:Kei Tsuji
photo:CorVos
photo:CorVos
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