ドイツのアルプシュタットを舞台に山本幸平、北林力、北林仁参戦のUCI MTBワールドカップ初戦が開催。男子エリートでヴィクトール・コレツキー(フランス、KMCオルベア)が、女子エリートでU23世界王者のロアナ・ルコント(フランス、マッシバイクス)が勝利した。



37カ国、総勢154名がスタートした男子エリートレース37カ国、総勢154名がスタートした男子エリートレース (c)UCI
ドイツ、バーデンヴュルテンベルク州にある街アルプシュタットでUCI MTBワールドカップが開幕した。オリンピックイヤーとなる今年、クロスカントリーとダウンヒルは共に6戦が開催され、その幕開けとなるアルプシュタットには日本ナショナルチームとしてドリームシーカーMTBレーシングチームの山本幸平(エリート)、北林力・北林仁(U23)が参戦を果たした。

有観客にて開催するべく、チームと関係者は毎日PCR検査を行い、チーム、関係者、観客と分別された「バブル」形式を採った今大会。37カ国から総勢154名がスタートした男子エリートレースでスタートダッシュを決め、レース序盤戦をリードしたのは金曜日のショートトラックを制したマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とブラジルチャンピオンのヘンリケ・アヴァンチーニ(キャノンデールファクトリーレーシング)だった。

スタートダッシュを決めたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)スタートダッシュを決めたマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) (c)UCI
11列目スタートからすぐさま先頭争いに加わったトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)11列目スタートからすぐさま先頭争いに加わったトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) (c)UCI
2年ぶりの欧州レースに挑んだ山本幸平	(日本ナショナルチーム)2年ぶりの欧州レースに挑んだ山本幸平 (日本ナショナルチーム) (c)UCI
スタートループを飛ばした2人はやがて前世界チャンピオン&現欧州チャンピオンのニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシング)率いる後続グループに捕らえられ、その中には11列目スタートから怒涛の追い上げを見せたトーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)の姿もあった。

中盤にかけてシューターやオンドレイ・シンク(チェコ、クロス・オーレンサイクリング)、スイスナショナルチームのメンバーとしてツール・ド・ロマンディを走ったマティアス・フルッキガー(スイス、トムスRNスイスバイクチーム)といった面々がハイペースを刻むと、ファンデルプールやアヴァンチーニ、世界チャンピオンのヨルダン・サルー(フランス、スペシャライズドファクトリーレーシング)たちは脱落。シューター、フルッキガー、ヴィクトール・コレツキー(フランス、KMCオルベア)が逃げ、ここにシンクが追いついた状態で最終周回に突入した。

登りでリードしたフルッキガーはドロッパーシートポストのワイヤー切れというメカトラブルに見舞われて脱落。ジュリアン・アブサロンの持つワールドカップ最多勝記録タイ(33勝)が懸かったシューターとコレツキーが抜け出し、下りでシューターが猛烈なアタックに打って出た。

ダウンヒルを攻めるヴィクトール・コレツキー(フランス、KMCオルベア)ダウンヒルを攻めるヴィクトール・コレツキー(フランス、KMCオルベア) (c)UCI
シューターを下し、W杯初勝利を挙げたヴィクトール・コレツキー(フランス、KMCオルベア)シューターを下し、W杯初勝利を挙げたヴィクトール・コレツキー(フランス、KMCオルベア) (c)UCI
リスクを背負って飛ばし、僅かなリードを稼いだシューターだったが、コレツキーは下り後のペダリング区間で辛くも合流。そのまま先頭に立って最終コーナーを抜け、真っ先に加速したコレツキーがシューターを打破した。

ワールドカップ初優勝を遂げたコレツキーは、2019年10月に修善寺で開催されたテストイベントで2位に入った27歳。ショートトラック覇者ファンデルプールは7位と遅れたことで、ワールドカップランキングでも首位に。メカトラを抱えたフルッキガーはシンクを退け3位、レース前に「次戦のショートトラック参加権(16位以内)に入る必要がある」と話していたピドコックは5位という好成績でレースを終えている。

また、2年ぶりの欧州レース復帰を果たした山本幸平は100位で完走。「自分の求める場所はここだと噛み締めながら走りました。苦しいけれどこれが世界のサーキット。今回、そして来週(チェコ)しかワールドカップを走る機会はありませんので、気持ちをしっかりと持って走れたと思います」と振り返っている。山本や北林兄弟は来週の第2戦を走ってから帰国し、集大成である東京五輪に向けて調整を行う予定だ。

序盤から独走に持ち込むロアナ・ルコント(フランス、マッシバイクス)序盤から独走に持ち込むロアナ・ルコント(フランス、マッシバイクス) (c)UCI
ルコントを追いかけるポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、アブソリュートアブサロン)ルコントを追いかけるポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、アブソリュートアブサロン) (c)UCI
スター選手揃いの女子エリートレースではU23世界チャンピオンのロアナ・ルコント(フランス、マッシバイクス)が圧倒的な力を披露した。

昨シーズン自身初のワールドカップ制覇を遂げ、勢いそのままにU23世界チャンピオンに輝き、今季既に欧州レースで勝ち星を重ねてきた21歳の速さは他を圧倒。キャニオン・スラムから移籍した世界チャンピオンのポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、アブソリュートアブサロン)やケイト・コートニー(アメリカ、スコット・スラムMTBレーシング)たちが続いたものの、その差は1分にまで広がった。

圧倒的な走りでW杯2勝目を飾ったロアナ・ルコント(フランス、マッシバイクス)圧倒的な走りでW杯2勝目を飾ったロアナ・ルコント(フランス、マッシバイクス) (c)UCI
女子エリートレース表彰台女子エリートレース表彰台 (c)UCI
エリートトップ選手の追撃を寄せ付けず、ルコントが約1分リードで圧勝。2位にはフェランプレヴォが入り、波に乗るフランスがワンツー、男女エリートレースで共に優勝とワールドカップ第1戦を席巻した。
男子エリート結果
1位 ヴィクトール・コレツキー(フランス、KMCオルベア) 1:20:23
2位 ニノ・シューター(スイス、スコット・スラムMTBレーシング) 0:02
3位 マティアス・フルッキガー(スイス、トムスRNスイスバイクチーム) 0:23
4位 オンドレイ・シンク(チェコ、クロス・オーレンサイクリング) 0:25
5位 トーマス・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:29
6位 アントン・クーパー(ニュージーランド、トレックファクトリーレーシングXC) 0:30
7位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) 1:13
8位 アラン・ハースリー(南アフリカ、キャノンデールファクトリーレーシング) 1:19
9位 トマ・グリオ(フランス、マッシバイクス) 1:33
10位 ヘンリケ・アヴァンチーニ(キャノンデールファクトリーレーシング) 2:05
100位 山本幸平(日本ナショナルチーム)
女子エリート結果
1位 ロアナ・ルコント(フランス、マッシバイクス) 1:21:38
2位 ポリーヌ・フェランプレヴォ(フランス、アブソリュートアブサロン) 0:53
3位 ハイリー・バッテン(アメリカ、トリニティレーシング) 1:15
4位 ケイト・コートニー(アメリカ、スコット・スラムMTBレーシング) 1:20
5位 ヤナ・ベロモイナ(ウクライナ、チームCSTポストNLバーファンMTB) 1:30
6位 アン・テルプストラ(オランダ、ゴーストファクトリーレーシング) 1:47
7位 リンダ・インダーガンド(スイス、リブファクトリー) 1:57
8位 ラウラ・スティッガー(オーストラ、スペシャライズドファクトリーレーシング) 2:11
9位 ジェニー・リスヴェッツ(スウェーデン、チーム31:アウトライド) 2:54
10位 シーナ・フライ(スイス、スペシャライズドファクトリーレーシング) 3:03
男子U23結果
1位 カーター・ウッズ(カナダ)
2位 デーヴィッド・リスト(ドイツ)
3位 シモーネ・アヴォンデット(イタリア)
47位 北林力(日本ナショナルチーム)
123位 北林仁(日本ナショナルチーム)