セッレイタリアの定番モデル、FLITEシリーズに新たに加わったショートノーズモデル"FLITE BOOST"をインプレッション。歴史的な名作を最新のトレンドで再解釈したニューモデルの座り心地を確かめた。



セッレイタリア FLITE BOOST レール素材や幅、穴の有無で様々なモデルがそろうセッレイタリア FLITE BOOST レール素材や幅、穴の有無で様々なモデルがそろう
120年以上の歴史を持つ老舗サドルブランド、セッレイタリア。多くの名作を生み出してきた同社だが、その中でも有名なもの一つがFLITEだろう。軽量サドルのパイオニアとして高い支持を獲得してきた定番サドルだ。1990年の登場から30年となる節目の年に用意されたのが、ショートノーズモデル"FLITE BOOST"だ。

UCI規定に違反することなくサドルを前に出すためのショートノーズモデルらしく、通常モデルより27mmほど切りつめられた全長248mmという設計で、しっかり前へとサドルを出すことが出来るようになっている。

上からマンガネーゼ、Ti316、カーボンケラミックレールとなる。下へ行くにつれて軽量になる上からマンガネーゼ、Ti316、カーボンケラミックレールとなる。下へ行くにつれて軽量になる
穴の有無によって裏面の処理も少し異なる穴の有無によって裏面の処理も少し異なる 金属レールモデルはショックアブソーバーが仕込まれている金属レールモデルはショックアブソーバーが仕込まれている


通常モデルの設計を受け継ぎつつ、BOOSTモデルは座面形状をブラッシュアップし、よりモダンなシルエットになっている。ベースの上にクッションを接着することで、表皮をベース裏まで引っ張る必要がなくなり、クッション性能を維持できるSoft-Tekを採用しているのも大きなポイントだ。

FLITE BOOSTにはカーボンケラミック、Ti316、マンガネーゼという3種類のレール素材および、穴の有無、横幅の種類などによって豊富なラインアップが揃えられている。骨盤の幅や柔軟性などに応じて、最適なモデルを選択できるだろう。

シリーズ最軽量のFLITE BOOST KIT CARBONIO SUPERFLOWシリーズ最軽量のFLITE BOOST KIT CARBONIO SUPERFLOW
FLITE BOOST SUPERFLOW スタンダードなTi316レールの穴開きモデルFLITE BOOST SUPERFLOW スタンダードなTi316レールの穴開きモデル FLITE BOOST TM マンガネーゼレールの穴無しモデルFLITE BOOST TM マンガネーゼレールの穴無しモデル




-編集部インプレッション

FLITEと言えば、海賊の刺繍を施していたマルコ・パンターニをはじめ多くのプロレーサーが愛用してきた名作だ。かくいう私も初代Flite Genuine Gelをウィリエールのパンターニレプリカモデルに装着していた時期があった。1990年デビューのサドルとは思えない軽さと快適性が心地よく、なるほど、名作と呼ばれるには理由があるのだと納得した記憶がある。

トップモデルとなるKIT CARBONIO SUPERFLOWをテストトップモデルとなるKIT CARBONIO SUPERFLOWをテスト
そんなFLITEシリーズの最新作となるのがFLITE BOOSTだ。ここ数年、SP-01やSLRなど主要なシリーズでBOOSTモデル、つまりショートノーズモデルを用意してきたセッレイタリアだが、既存モデルのBOOST化として最後となり、また集大成と言えるのがこのサドルである。

セッレイタリアのショートノーズモデルに共通する美点として、ルックスのスマートさが挙げられる。全長が短く、幅が広いショートノーズサドルは、通常のサドルと比べるとずんぐりむっくりした印象となりがちだが、セッレイタリアのBOOSTシリーズは通常モデルと比べても遜色のない端正さで、ルックスにこだわるサイクリストにも受け容れやすいはず。FLITE BOOSTもその例に漏れず、ショートノーズでありながらスマートなシルエットに仕上がっている。

ノーズ部分やウイング部の造形もFLITEらしさを感じるデザインノーズ部分やウイング部の造形もFLITEらしさを感じるデザイン
リアエンドの形状は初代FLITEをオマージュしたデザインだリアエンドの形状は初代FLITEをオマージュしたデザインだ 先端部もフラットに作られている先端部もフラットに作られている


さて、今回インプレッションする私のサドル遍歴を申し上げておこう。セッレSMPのストライクコンポジットやファブリックのSCOOP RADIUS、フィジークであればALIANTEやANTARESといったような座面がカーブしているサドルがしっくりくることが多く、セッレイタリアでは現在SLR BOOSTを愛用中。逆にフラットな座面のサドルはあまり得意ではない。

そういう意味では、フラットなデザインの現行FLITEはあまり合わなさそう。それではFLITE BOOSTはどうかというと、これが案外良かった。というのも、完全にフラットな通常モデルよりもFLITE BOOSTは座面にカーブが与えられており、座面形状としてはFLITEよりもSLRに近いような印象だ。これは乗った時の感覚も同様で、手持ちのSLRと比べても座骨への当たり方は近いものを感じる。

よく見ると少し座面はアールを描いているよく見ると少し座面はアールを描いている
SLR BOOSTもそうだが、セッレイタリアのBOOSTシリーズはベースとなったモデルよりも一段階アールの強い座面形状にデザインされているようだ。今回はまずワイドなLサイズのスーパーフロー(穴あきモデル)からテストしてみたが、座ってみると、2つの点で座骨とコンタクトし、厚めのパッドでしっかり体重を受け止めてくれる印象だ。一方、Sサイズの穴無しモデルではよりその傾向が顕著になる。

穴あきモデルのほうがベース自体の柔軟性が高いため快適性は高め。出来るだけダイレクトなペダリングフィールが欲しいのであれば穴無しモデルが良いだろう。骨盤を前に倒して乗ると、穴無しモデルでは少し痺れる感覚もあったので、そういった乗り方をするのであればスーパーフローモデルがオススメだ。

厚めのパッドによってクッション性を発揮する厚めのパッドによってクッション性を発揮する
さて、FLITE BOOST最大の特徴は脚の回しやすさにある。広めの座面が一気に絞られてノーズへと繋がるデザインによって、いわゆるウィング部と太もも裏側との干渉が非常に少なく、極めてストレスフリーなペダリングが可能。ケイデンスが高くなればなるほど、この恩恵は大きくなってくる。

とにかくペダリングに引っ掛かりが無いので、これはもしや?と思ってFTPを計測してみたところ2週間前から8Wほど更新することが出来た。もちろん、体調含めサドル以外にも様々な要因が影響しているのは事実だが、FLITE BOOSTの回しやすさが好記録に繋がったことも間違いない。

ウィングからノーズにかけての絞り込みが脚の回しやすさを生み出さすウィングからノーズにかけての絞り込みが脚の回しやすさを生み出さす
もしSLR BOOSTと選び分けるのであれば、長距離であったり峠を越えていくようなライドでは、バゲットシートのようにフィットしつつ軽量で振りが軽いSLR BOOSTを、より短距離で踏んでいく必要があるレースやハイテンポなライドであればダイレクトなペダリングフィールと脚の回しやすさでFLITE BOOSTを選択するだろう。

セッレイタリアのショートノーズラインアップを完成させたFLITE BOOST、より高いパフォーマンスを求める人にはぜひ一度試してもらいたい一品だ。



セッレイタリア FLITE BOOST KIT CARBONIO SUPERFLOW
レール素材:Carbon/Keramic(7×9mm)
トップ素材:FIBRA-TEK
idmatch:S3、L3
サイズ:S/幅:135mm 長さ:248mm
    L/幅:145mm 長さ:248mm
重 量:S/157g
    L/162g
価 格:35,500円(税別)

セッレイタリア FLITE BOOST TI316 SUPERFLOW
レール素材:Ti316(7mm)
トップ素材:FIBRA-TEK
idmatch:S3、L3
サイズ:S/幅:135mm 長さ:248mm
    L/幅:145mm 長さ:248mm
重 量:S/194g
    L/199g
価 格:26,000円(税別)

セッレイタリア FLITE BOOST TI316
レール素材:Ti316(7mm)
トップ素材:FIBRA-TEK
idmatch:S1、L1
サイズ:S/幅:135mm 長さ:248mm
    L/幅:145mm 長さ:248mm
重 量:S/210g
    L/218g
価格:26,000円(税別)

セッレイタリア FLITE BOOST TM SUPERFLOW
レール素材:中空マンガネーゼ(7mm)
トップ素材:SOFT-TEK
idmatch:S3、L3
サイズ:S/幅:135mm 長さ:248mm
    L/幅:145mm 長さ:248mm
重 量:S/230g
    L/233g
価格:15,000円(税別)

セッレイタリア FLITE BOOST TM
レール素材:中空マンガネーゼ(7mm)
トップ素材:SOFT-TEK
idmatch:S1、L1
サイズ:S/幅:135mm 長さ:248mm
    L/ 幅:145mm 長さ:248mm
重 量:S/240g
    L/243g
価格:15,000円(税別)

text:Naoki Yasuoka
photo:Gakuto Fujiwara
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