ジロ・デ・イタリアが後半戦に突入。アドリア海に沿って北上する平坦基調の第11ステージは大集団スプリントに持ち込まれ、アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が圧巻のステージ4勝をマークした。デマールはマリアチクラミーノのリードを再び広げることに成功している。


アドリア海に沿って182kmを北上する第11ステージアドリア海に沿って182kmを北上する第11ステージ photo:LaPresse
前日続いてアドリア海沿いを北上するステージだが、前日と比べるとずっと難易度は低い(難易度は1つ星)。後半にかけて標高150m前後の登りが連続して登場するものの、ステージの獲得標高差は1,100mしかない。残り70km地点の4級山岳モンテ・サンバルトロも、スプリンターチームの勢いを止めることはできなかった。

全長182kmのいわゆる「移動ステージ」は、序盤からUCIプロチームを中心とした逃げグループが形成され、UCIワールドチームがメイン集団を率いて追いかける平坦ステージらしい展開に。気温20度前後、追い風基調、青い空が広がるアドリア海岸を選手たちは順調に北上していった。

10月14日(水)第11ステージ ポルトサンテルピディオ〜リミニ 182km ☆10月14日(水)第11ステージ ポルトサンテルピディオ〜リミニ 182km ☆ photo:RCS Sport10月14日(水)第11ステージ ポルトサンテルピディオ〜リミニ 182km ☆10月14日(水)第11ステージ ポルトサンテルピディオ〜リミニ 182km ☆ photo:RCS Sport

逃げグループとメイン集団のタイム差は2分と3分を行ったり来たり。2分遅れで第1スプリント(105.9km地点)に到着したメイン集団では、マチェイ・ボドナル(ポーランド)のリードアウトを受けたペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)が最大ポイント獲得を狙ったものの、先着したアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)がマリアチクラミーノのリードを1ポイント上乗せしている。

逃げグループを形成した5名
サンデル・アルメ(ベルギー、ロット・スーダル)総合46位/45分44秒遅れ
フランチェスコ・ロマーノ(イタリア、バルディアーニCSF)
ファビオ・マズッコ(イタリア、バルディアーニCSF)
マルコ・フラッポルティ(イタリア、ヴィーニザブKTM)
マッティア・バイス(イタリア、アンドローニジョカトリ・シデルメク)

ドゥクーニンク・クイックステップ、UAEチームエミレーツ、コフィディス、グルパマFDJが先頭に陣取るメイン集団は、「トロフェオ・センツァ・フィーネ」をポルトサンテルピディオ駅からリミニ駅まで運ぶ特別列車に並走されながら逃げグループとのタイム差を詰めていく。ステージ優勝候補の一角エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)は大会関係モトと接触して落車するトラブルに見舞われたが、すぐさまチームメイトのサポートを受けて集団に復帰している。落車の原因となったモトドライバーには500スイスフランの罰金が科せられている。

トロフェオ・センツァ・フィーネを運ぶトレニタリアの特別列車トロフェオ・センツァ・フィーネを運ぶトレニタリアの特別列車 photo:LaPresse
逃げるサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・スーダル)ら逃げるサンデル・アルメ(ベルギー、ロット・スーダル)ら photo:CorVos
ステージ中盤のアップダウンをこなすメイン集団ステージ中盤のアップダウンをこなすメイン集団 photo:LaPresse
逃げグループは残り35km地点でアルメとバイスの2人に絞られ、10kmにわたるタンデム走行の末にやがて先頭はアルメの単独走行に。アルメはフィニッシュ地点リミニの街中を独走で駆け抜けたものの、スプリンターチーム率いる大集団によって残り6km地点で吸収された。

イスラエル・スタートアップネイションやUAEチームエミレーツを先頭にリミニ市内の複雑な連続コーナーをクリアする。残り1kmを切ってからの連続直角コーナーを前に先頭に立ったのはグルパマFDJ。マイルズ・スコットソン(オーストラリア、グルパマFDJ)を先頭に最終コーナーを抜け、そこから最終リードアウト役のジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、グルパマFDJ)が発進する。

最速トレインを組んだグルパマFDJに残り200mで発射されたマリアチクラミーノのスピードはこの日も冴えていた。フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)はデマールの番手につけながらも出遅れ、素早くデマールのスリップストリームに入ったペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)も並ぶことはできない。アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)もシモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)も届かずに、誰も寄せ付けないスピードでデマールが勝利した。

スプリントを繰り広げるアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)スプリントを繰り広げるアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)とペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ) photo:LaPresse
リミニでステージ4勝目を飾ったアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)リミニでステージ4勝目を飾ったアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:LaPresse
サガンを1m以上離してフィニッシュするアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)サガンを1m以上離してフィニッシュするアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:CorVos
「今回のジロの中で最も完璧に近いスプリントだった。フィニッシュの街中に差し掛かった時点で少しポジションを下げてしまっていたものの、監督やコーチの事前準備のおかげで次にどんなコーナーが待っているのかを把握しながら走っていた。最後はとてもハイスピードなスプリントになった」。デマールのSTRAVAログによると、選手たちは65km/h近いスピードでポジション争いを繰り広げ、残り500mの連続コーナーを43km/h前後でクリア。そこから踏み直し、デマールはフィニッシュラインまでを平均スピード64.9km/h、最高スピード70.2km/hでスプリントした。

デマールはこれがステージ4勝目。1大会でステージ4勝を飾ったフランス人選手は1982年のベルナール・イノーに続く2人目(イノーは4勝のうち2勝がタイムトライアル)。過去10年間の大会を見ると、2013年にカヴェンディッシュ、2017年にガビリア、2018年にヴィヴィアーニがステージ4勝以上の成績を収めている。

第10ステージでポイント賞2位のサガンとのポイント差が57ポイントから20ポイントまで縮まったが、この日の勝利でポイント差は36ポイントまで拡大した。マリアチクラミーノを着続けるデマールは「ステージ2勝を飾った時点で、その後の活躍はボーナスのようなものだと思っていた。チームワークのおかげでこうして勝ち続けていることは本当に素晴らしい」とコメント。ピュアスプリンターのチャンスは残すところ第13ステージと第19ステージの2つ。山岳ステージでも逃げてポイント獲得を狙うサガンと終盤までマリアチクラミーノ争いを繰り広げることになりそうだ。

「明日は再び厳しい戦いが待っている。自分からアタックを仕掛けることはないけど、攻撃を仕掛けてくるライバルたちの動きに警戒しないといけない」と語るのは、翌日にマリアローザ着用9日目を迎えるアルメイダ。翌日の第12ステージには「グランフォンド・ノヴェコッリ」と同じ難易度4つ星の丘陵コースが設定されている。「チームメイトのファウスト・マスナダとジェームス・ノックスも総合で良いポジション(総合9位と総合17位)につけているので、危険な逃げが生まれそうな状況では彼らが逃げに乗る作戦も有りかもしれない。チームとしてマリアローザを守るための準備はできているよ」。

ステージ4勝目をアピールするアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)ステージ4勝目をアピールするアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) photo:LaPresse
フランスチャンピオンのアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が4勝目フランスチャンピオンのアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)が4勝目 photo:LaPresse9日間マリアローザを着るホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ)9日間マリアローザを着るホアン・アルメイダ(ポルトガル、ドゥクーニンク・クイックステップ) photo:LaPresse

ジロ・デ・イタリア2020第11ステージ結果
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 4:03:52
2位 ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
4位 シモーネ・コンソンニ(イタリア、コフィディス)
5位 リック・ツァベル(ドイツ、イスラエル・スタートアップネイション)
6位 ニコ・デンツ(ドイツ、サンウェブ)
7位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
8位 ステファノ・オルダーニ(イタリア、ロット・スーダル)
9位 ジャコポ・モスカ(イタリア、トレック・セガフレード)。
10位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、コフィディス)
50位 新城幸也(日本、バーレーン・マクラーレン)
マリアローザ 個人総合成績
マリアチクラミーノ ポイント賞
マリアアッズーラ 山岳賞
マリアビアンカ ヤングライダー賞
チーム総合成績
text:Kei Tsuji