10月3日にイタリア南部シチリア島のモンレアーレで開幕する第103回ジロ・デ・イタリア。大会3日目に早くもエトナ火山の山頂フィニッシュが登場し、その後もジロらしい山岳ステージ&平坦ステージが続く前半戦のコースをプレビューします。



10月3日(土)第1ステージ → コースマップ
モンレアーレ〜パレルモ 15.1km(個人TT)☆☆☆


10月3日(土)第1ステージ モンレアーレ〜パレルモ 15.1km(個人TT)☆☆☆10月3日(土)第1ステージ モンレアーレ〜パレルモ 15.1km(個人TT)☆☆☆ photo:RCS Sport予定より5ヶ月遅れて、そして開幕地をハンガリーのブダペストからイタリアのシチリア島に移して、第103回ジロ・デ・イタリアが動き出す。初日はシチリア島北西部に位置するモンレアーレから州都パレルモを目指す15.1kmの個人タイムトライアル。山岳TTが1つだけだったツール・ド・フランスとは異なり、今大会には合計3つの個人タイムトライアルが設定されている(合計64.9km)。パレルモがジロを迎え入れるのは12年ぶり9回目。

標高250mのスタート地点を離れると、まずは1.1kmかけて4級山岳に設定された標高312mのモンレアーレ旧市街まで駆け上がり(登坂タイム最速選手がマリアアッズーラを獲得)、そこから標高19mのパレルモ市内に向かってダウンヒル。世にも珍しい下り基調の個人タイムトライアルであり、ステージ優勝者の平均スピードは53〜55km/hに達すると見られる。レース時間が17分を切る高速レースで最速タイムを叩き出せばマリアローザ獲得。1週間前のロード世界選手権個人タイムトライアルで勝利したばかりのフィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)がステージ優勝最有力候補だ。



10月4日(日)第2ステージ → コースマップ
アルカモ〜アグリジェント 149km ☆☆


10月4日(日)第2ステージ アルカモ〜アグリジェント 149km ☆☆10月4日(日)第2ステージ アルカモ〜アグリジェント 149km ☆☆ photo:RCS Sport当初はハンガリーで3ステージを消化後にシチリア島に移動して3ステージをこなす予定だったが、ハンガリー国内の新型コロナウイルス感染拡大に伴う非常事態宣言によって急遽シチリアに舞台を移して開幕を迎えたジロ。まずはシチリア島で4ステージをこなす。

難易度2つ星の第2ステージには、4級山岳アグリジェント(全長3.7km・5.3%平均)の登りフィニッシュが設定されている(
「山頂フィニッシュ」には分類されていない)。標高243mの丘上に位置するアグリジェントの街を目指す登りは、中盤にかけて6%強の勾配が続き、その最大勾配は9%。重量級のピュアスプリンターには厳しく、ピュアクライマーには物足りない。ペテル・サガン(スロバキア、ボーラ・ハンスグローエ)に代表される軽量スプリンターやパンチャー系選手がステージ優勝を狙ってくるだろう。10秒、6秒、4秒のボーナスタイムによってマリアローザの移動も起こるかもしれない。



10月5日(月)第3ステージ → コースマップ
エンナ〜エトナ/ピアーノプロヴェンツァーナ 150km(山頂)☆☆☆☆


10月5日(月)第3ステージ エンナ〜エトナ/ピアーノプロヴェンツァーナ 150km(山頂)☆☆☆☆10月5日(月)第3ステージ エンナ〜エトナ/ピアーノプロヴェンツァーナ 150km(山頂)☆☆☆☆ photo:RCS Sport本来第5ステージに登場予定だった1級山岳エトナ/ピアーノプロヴェンツァーナ(全長18.8km・平均6.6%)の山頂フィニッシュが、大会3日目という異例とも言える早いタイミングで姿を現す。内陸の街エンナをスタートするコースは前半からアップダウンの連続。そして残り19kmを切ると、そこから標高1,793mのフィニッシュ地点まで長い登りが始まる。

ヨーロッパ最大の活火山として知られるエトナ山はジロにたびたび登場しているが、北側のピアーノプロヴェンツァーナまで登り切ってフィニッシュを迎えるのは今回が初めて。残り3kmを切ってから勾配が増すのが特徴で、残り1.6km地点で最大勾配が13%をマーク。最終的な総合優勝を狙う選手はまだ手の内を見せないと思われるが、早くもマリアローザ戦線から脱落する選手が出てくるかもしれない。総合系チームが積極的にレースをコントロールしないと予想されるため、大逃げによるマリアローザ獲得を狙う選手がスタートから果敢に動いてくるだろう。



10月6日(火)第4ステージ → コースマップ
カターニア〜ヴィッラフランカティッレーナ 140km ☆☆


10月6日(火)第4ステージ カターニア〜ヴィッラフランカティッレーナ 140km ☆☆10月6日(火)第4ステージ カターニア〜ヴィッラフランカティッレーナ 140km ☆☆ photo:RCS Sportシチリア島最終日の第4ステージは、レース後の本土へのフェリー移動を見越してか、140kmの今大会最短コース(個人TTを除く)が設定された。シチリア島南東部のカターニアから観光地タオルミーナをかすめて内陸に舵を取り、標高1,125mの3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィ(全長14.4km・平均5.5%)を越えて北海岸に出る。残り40kmは概ねフラット。3級山岳を集団内で越えたピュアスプリンターたちがヴィッラフランカティッレーナでスプリントバトルを繰り広げることになりそうだ。

もちろん登りに自信のあるスプリンターチームが3級山岳で攻撃を仕掛けてくることも考えられる。参考までにSTRAVA上で3級山岳ポルテッラ・マンドラッツィのKOMを持っているのは地元メッシーナが近いヴィンチェンツォ・ニバリ(イタリア、トレック・セガフレード)。2015年のグランフォンド試走中にニバリは34分1秒、平均スピード25.3km/h、VAM1,404でこの登りを制覇している。



10月7日(水)第5ステージ → コースマップ
ミレート〜カミリアテッロシラノ 225km ☆☆☆☆


10月7日(水)第5ステージ ミレート〜カミリアテッロシラノ 225km ☆☆☆☆10月7日(水)第5ステージ ミレート〜カミリアテッロシラノ 225km ☆☆☆☆ photo:RCS Sportシチリア島で4日間を過ごしたジロは「長靴の爪先」に位置するカラブリア州を北上。前半から2つの3級山岳を含むアップダウンの連続で、荒れがちな路面に気を払いながらカミリアテッロシラノを目指す。この日の注目は何と言っても残り11.6km地点で頂上を迎える1級山岳ヴァリコ・ディ・モンテスクーロ(全長24.2km・平均5.6%)の登りだ。

中腹にかけて最大勾配18%の急坂ゾーンもある標高1,618mを越えると、テクニカルなダウンヒルを経て山間のカミリアテッロシラノにフィニッシュする。残り1kmを切ってからの3%ほどの緩斜面でステージ優勝を争うのは逃げグループか?それとも精鋭集団か?山頂フィニッシュではないが、難易度4つ星であることからも分かるように、総合争いが勃発するには十分な難易度。急勾配区間でライバルたちをふるい落としにかかるマリアローザ候補が出てくるかもしれない。



10月8日(木)第6ステージ → コースマップ
カストロヴィッラリ〜マテーラ 188km ☆☆


10月8日(木)第6ステージ カストロヴィッラリ〜マテーラ 188km ☆☆10月8日(木)第6ステージ カストロヴィッラリ〜マテーラ 188km ☆☆ photo:RCS Sportスプリンター向きではあるものの、単純な平坦ステージではなく、レースにアクセントを与える仕掛けが加えられた第6ステージ。前半の山岳地帯を抜けると平坦基調になるが、残り26km地点で3級山岳ガッレリア・ミロッタ(全長4.9km・平均6.3%)を越え、さらにフィニッシュまで登り基調とある。

フィニッシュ地点は、「サッシ」と呼ばれる石灰岩をくり抜いて作られた洞窟住居が世界遺産に登録されているマテーラ。残り3kmを切ってから平均6.3%・最大10%の登りが800mにわたって続くため、スプリンターチームのリードアウトトレインは機能不全に陥るだろう。さらに残り1kmから先も勾配3%弱の緩斜面。ここでもサガンをはじめとする軽量スプリンターもしくはパンチャーたちがステージ優勝を争うことになりそうだ。



10月9日(金)第7ステージ → コースマップ
マテーラ〜ブリンディジ 143km ☆


10月9日(金)第7ステージ マテーラ〜ブリンディジ 143km ☆10月9日(金)第7ステージ マテーラ〜ブリンディジ 143km ☆ photo:RCS Sport「長靴のかかと」を走る第7ステージはほぼまっ平。カテゴリー山岳は設定されず、プーリャ州のブリンディジまでひたすら平坦路が続いている。風に注意が必要ではあるものの、ほぼ確実に集団スプリントに持ち込まれるだろう。

残り2km手前から4つの直角コーナーをこなし、残り1200mから先はフィニッシュまで一直線。道幅7.5mの最終ストレートでピュアスプリンターたちが自慢のスピードを披露する。アドリア海に沿ってイタリア半島東岸を北上する翌日以降はアップダウンが続くため、スプリンターたちにとっては何としても取っておきたいステージだ。



10月10日(土)第8ステージ → コースマップ
ジョヴィナッツォ〜ヴィエステ 200km ☆☆☆


10月10日(土)第8ステージ ジョヴィナッツォ〜ヴィエステ 200km ☆☆☆10月10日(土)第8ステージ ジョヴィナッツォ〜ヴィエステ 200km ☆☆☆ photo:RCS Sport2級山岳と4級山岳が設定されただけのジャスト200kmのステージは一見スプリンター向き。しかし切り立った海岸線が続くガルガーノ半島の先端を走る終盤はアップダウンの連続で、集団スプリントに持ち込まれるかどうかは疑わしい。

残り26.4km地点でヴィエステの周回コースに入ると、目の前に全長1km・平均9.3%・最大17%というカテゴリーの付いていない急坂が登場する。残り14.5km地点でフィニッシュラインを一旦通過後、2回目の急坂を越えるとフィニッシュまで10km。この2回にわたる急坂で飛び出した選手が逃げ切る可能性も。パンチャー向きの難易度3つ星ステージだが、もちろん追い上げたスプリンターチームがスプリントに持ち込むことも考えられる。



10月11日(日)第9ステージ → コースマップ
サンサルヴォ〜ロッカラーゾ 208km(山頂)☆☆☆☆


10月11日(日)第9ステージ サンサルヴォ〜ロッカラーゾ 208km(山頂)☆☆☆☆10月11日(日)第9ステージ サンサルヴォ〜ロッカラーゾ 208km(山頂)☆☆☆☆ photo:RCS Sportシチリアから始まった長い大会1週目はアブルッツォ州のロッカラーゾで締めくくられる。イタリア半島の背骨を構成するアペニン山脈を走る208kmコースには1級山岳と2級山岳が2つずつ登場。その獲得標高差は4,000mを超える。

1級山岳ランチャーノ峠(全長12.7km・平均6.9%)に始まり、2級山岳サンレオナルド峠と2級山岳ボスコ・ディ・サンタントニオを越えて最後は1級山岳ロッカラーゾ(全長9.6km・平均5.7%)へ。下り区間を含むため平均勾配は小さいが、残り1kmから先の平均勾配は10.6%。しかもフィニッシュ手前で最大勾配が12%まで跳ね上がる。アルプスやドロミテの山岳と比べるとインパクトは小さいが、標高1,658mのロッカラーゾ/アレモニャスキー場でマリアローザ争いから脱落する選手も出てくるだろう。



10月12日(月)休息日



10月13日(火)第10ステージ → コースマップ
ランチャーノ〜トルトレート 177km ☆☆☆


10月13日(火)第10ステージ ランチャーノ〜トルトレート 177km ☆☆☆10月13日(火)第10ステージ ランチャーノ〜トルトレート 177km ☆☆☆ photo:RCS Sport1回目の休息日を経て、大会2週目はアブルッツォ州のランチャーノでスタート。途中内陸の丘を通過しながらアドリア海に沿って北上し、小刻みなアップダウンをこなしてトルトレートにフィニッシュする。いずれの登りも登坂距離3km前後、標高300m前後、カテゴリー3〜4級だが、平均勾配は大きく、しかも急勾配区間が含まれているのが特徴。最大勾配が24%に達する残り33km地点のコントログエッラの頂上には、山岳ポイントではなくスプリントポイントが設定されている。

合計2回登場する4級山岳トルトレートは最大勾配が20%に達する難所であり、この連続アップダウンをピュアスプリンターたちが集団内でクリアする姿は想像しにくい。ステージ序盤から逃げを打つ選手、もしくはステージ終盤に抜け出す選手が逃げ切ってしまう可能性が高い。



10月14日(水)第11ステージ → コースマップ
ポルトサンテルピディオ〜リミニ 182km ☆


10月14日(水)第11ステージ ポルトサンテルピディオ〜リミニ 182km ☆10月14日(水)第11ステージ ポルトサンテルピディオ〜リミニ 182km ☆ photo:RCS Sport引き続きアドリア海沿いを北上するステージだが、前日と比べるとずっと難易度は低い。残り70km地点の4級山岳モンテ・サンバルトロも、その後も細かいアップダウンも、スプリンターチームの勢いを止めることはできない。

大集団でリミニの海岸通りに突入することになるが、残り7kmから先にコーナーが連続。市街地を複雑に蛇行しながら進み、残り700mを切ってから直角右コーナーが連続して2つ登場。この最終コーナーを抜けるとフィニッシュ前で500mしかないため、熾烈なポジション争いが繰り広げられることになりそうだ。

text:Kei Tsuji

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