9月29日、シーズン後半戦のスタートを告げる第16回ビンクバンクツアーがベルギーで開幕。初日の集団スプリントでジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)が勝利した。オランダを走る予定だった翌日の第2ステージ個人タイムトライアルはキャンセルが決まっている。


オランダチャンピオンのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)らが先頭に並ぶオランダチャンピオンのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)らが先頭に並ぶ photo:CorVos
ビンクバンクツアーは、1948年に初開催され、2005年から2016年までエネコ・ツアーとして開催されてきた伝統のステージレース。2017年からオランダ・アムステルダムに拠点を置くオンライン手数料割引証券業者のビンクバンクがタイトルスポンサーについてビンクバンクツアーとして開催されている。ベルギーとオランダの二国をまたぐステージレースであり、「北のクラシック」と「アルデンヌクラシック」をミックスしたようなレイアウトが特徴だ。

これまで7日間の日程で開催されてきたが、2020年の過密スケジュールを考慮して大会期間は5日間に短縮された。なお、このビンクバンクツアー第1ステージを皮切りに、11月8日のブエルタ・ア・エスパーニャ最終日までの6週間弱にわたって1日も欠かさずヨーロッパのどこかでUCIワールドツアーレースが開催される慌ただしいシーズン後半が始まる。週末にかけてレースが重複するため、7名のフルメンバーを揃えることができないチームも続出した。

このビンクバンクツアーも新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を例外なく受けており、チーム関係者の隔離はもちろん、スタートとフィニッシュへの観客立ち入りを禁止するなどの対策を講じて開催されている。大会初日の第1ステージは北海沿いのブランケンベルヘからアルドーイェ周回コースを目指す132kmで、スプリンターたちにリーダージャージ着用のチャンスが回ってきた。

ビンクバンクツアー2020第1ステージビンクバンクツアー2020第1ステージ photo:BinckBank Tour
フランドル地方の平野部をルドヴィク・ロベート(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)とティモ・ヴィレムス(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)の2人が逃げたものの、スプリンターチームのガードを崩すことができないままレースは後半へ。やがて先頭通過者に3秒のボーナスタイムが与えられるビンクバンクツアー名物の「ゴールデンキロメーター」が近づくと集団は活性化。残り21kmを切ったところで集団を飛び出したセップ・ファンマルク(ベルギー、EFプロサイクリング)が先頭2人に追いついたが、ボーナスタイム狙いのライバルチームによって引き戻された。

「ゴールデンキロメーター」の3連続ゲートをそれぞれ先頭で通過したのは、最終的な総合成績を狙うマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)とマイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ)、イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)の3人。雨に濡れたアルドーイェ周回コースではショーン・ドゥビー(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)らが抜け出しを図るも、ボーラ・ハンスグローエやドゥクーニンク・クイックステップ、EFプロサイクリングがこれを許さない。

集団スプリントに向けて各チームがトレインの隊列を整える中、残り4km地点で集団先頭を走るギヨーム・ボワヴァン(カナダ、イスラエル・スタートアップネイション)が前を走る選手とハスってスリップダウンしてしまう。ここに後続の選手が次々に突っ込む形で合計40名ほどが道いっぱいに重なり合うように落車した(残り4km地点なので救済措置無し)。

序盤から逃げたルドヴィク・ロベート(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)とティモ・ヴィレムス(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)序盤から逃げたルドヴィク・ロベート(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)とティモ・ヴィレムス(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) photo:CorVos
残り4.4km地点で発生した大落車残り4.4km地点で発生した大落車 photo:CorVos
2019年大会総合2位のオリバー・ナーセン(ベルギー、アージェードゥーゼール)やステイン・ステールス(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)が負傷したこの大落車をすり抜けて、先頭に残ったのは約50名。ボーラ・ハンスグローエがリードアウトトレインを組んでラスト1kmアーチを通過し、残り250mの最終コーナーに差し掛かったところでパスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)が先頭でスプリントに持ち込んだ。

アルカンシェルからノーマルチームジャージに衣替えしたマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)やダニー・ファンポッペル(オランダ、サーカス・ワンティゴベール)がアッカーマンに対抗し、その後ろからジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)がハイケイデンスで追い上げる。ハンドル投げでピーダスンとアッカーマンに先着したフィリプセンが接戦を制した。

トム・ボーネンと同じフランドル地方のモル出身で、次世代クラシックレーサーとして期待を集めるフィリプセンがステージ優勝。同じアルドーイェにフィニッシュした1年前のビンクバンクツアー第2ステージでサム・ベネット(アイルランド、当時ボーラ・ハンスグローエ)に次いで2位だったフィリプセンは「正直言って今日は勝てると思わなかった。でも今日は運が味方してくれたんだ。僅差だったけど、自分の思った通りにスプリントできた」と語る。

接戦スプリントを制したジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)接戦スプリントを制したジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
来季アルペシン・フェニックス入りが決まっている22歳は総合リーダージャージも獲得。ツール・ド・フランスを制したUAEチームエミレーツは、シーズン35勝のドゥクーニンク・クイックステップに次いで2番目となるシーズン30勝目を飾った。

翌日はオランダ国内での個人タイムトライアルが予定されていたが、開催地がレースの通過を認めない措置を取ったためレースのキャンセルが決まっている。オランダをスタートしてベルギーにフィニッシュする予定が組まれていた第3ステージは、ベルギー国内にスタートの代替地が見つかれば開催するとしている。

リーダージャージを手にしたジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ)リーダージャージを手にしたジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) photo:CorVos
ビンクバンクツアー2020第1ステージ結果
1位 ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) 2:59:26
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)
3位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
4位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、サーカス・ワンティゴベール)
5位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFプロサイクリング)
6位 アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、サンウェブ)
7位 ニルス・エークホフ(オランダ、サンウェブ)
8位 ロレンゾ・マンザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
9位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)
10位 ティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)
個人総合成績
1位 ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、UAEチームエミレーツ) 2:59:16
2位 マッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード) 0:00:04
3位 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィスマ) 0:00:05
4位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ) 0:00:06
5位 マチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス) 0:00:07
6位 イヴ・ランパールト(ベルギー、ドゥクーニンク・クイックステップ)
7位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン) 0:00:09
8位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、サーカス・ワンティゴベール) 0:00:10
9位 シュテファン・ビッセガー(スイス、EFプロサイクリング)
10位 アルベルト・ダイネーゼ(イタリア、サンウェブ)