向かい風の集団スプリントでティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)のスピードが炸裂。ガビリアやアッカーマンを打ち負かしたベルギー王者がワールドツアー初勝利を掴んだ。



31歳の誕生日を迎えたラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)がサプライズに苦笑い31歳の誕生日を迎えたラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)がサプライズに苦笑い photo:CorVos
総合成績を大きく左右する重要な山岳ステージを終え、ティレーノ〜アドリアティコ(UCIワールドツアー)第6ステージの主役は4日ぶりにスプリンターたちに切り替わる。アドリア海に到達した「コルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)」は、これまでティレーノやジロ・デ・イタリアを幾度も招致してきたカステルフィダルドを出発し、最後は海の街セニガッリアの海沿い周回コースを突き進む。

スタートフラッグが振られると同時に飛び出し、2日連続ステージ優勝と、サイモン・イェーツ(イギリス)のマリアアッズーラ獲得に成功したミッチェルトン・スコットや、パスカル・アッカーマン(ドイツ)のスプリント勝利を狙うボーラ・ハンスグローエがリードするメイン集団から逃げたのは、アクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル)やシモン・ペロー(スイス、アンドローニジョカトリ・シデルメク)といった5名。白い砂浜が続く海岸線沿いの平坦コースで、タイム差は3分ほどを推移した。

アドリア海に到達したコルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース)アドリア海に到達したコルサ・デイ・ドゥエ・マーリ(二つの海のレース) photo:RCS Sport
ビーチリゾートが広がるセニガッリアの周回コースを突き進むビーチリゾートが広がるセニガッリアの周回コースを突き進む photo:CorVos
セニガッリアの周回コースを逃げるアクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル)セニガッリアの周回コースを逃げるアクセル・ドモン(フランス、アージェードゥーゼル) photo:CorVos
合計4周回するセニガッリア周回コースに入るとタイム差の縮小は加速した。ポイント賞ジャージを着用するアッカーマンは2度のメカトラブルに見舞われたものの問題なく復帰し、ハイペースで進行するレースからは先頭グループのペローがまず脚を使い切って離脱する。

残った4人もラスト1周回の鐘を聞いた後に吸収され、スプリンターチームと危険回避を目論む総合チームが入り乱れながらフィニッシュまでの距離を減らしていく。総合3位ゲラント・トーマス(イギリス)を従えたイネオス・グレナディアーズも集団先頭に立ち、クリストファー・フルーム(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)が50km/hオーバーで牽引するシーンも。

落車救済措置が適用される残り3kmを切るとイネオスは後方に下がり、ここからスプリンターチームによる激しい主導権争いがスタート。フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)やダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)がリードアウトを揃えた一方、アッカーマンは単独での位置取りを強いられる。あわや落車という光景が連続する忙しない展開の中、イスラエル・スタートアップネイション主導でラスト1kmのアーチをくぐった。

バカンスに訪れた家族がレースを応援バカンスに訪れた家族がレースを応援 photo:CorVos
フィニッシュライン通過直後のアンダーパスを通過するフィニッシュライン通過直後のアンダーパスを通過する photo:CorVos
向かい風の集団スプリントを制したティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)向かい風の集団スプリントを制したティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
最終局面に入るとバッレリーニを連れたフロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)と、ガビリアを連れたマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、UAEチームエミレーツ)が横一線でリードアウトを開始する。早駆けしたガビリアに対してバッレリーニはスピードに乗せきれず失速し、位置取りに失敗したアッカーマンも後方に沈んでしまう。ガビリアが勝ちパターンに持ち込んだかと思われたが、その右側から追い抜いたのがティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)だった。

ガビリアの様子を何度も確認しながら、縦に踏みつけるようなスプリントでベルギー王者がフル加速。負けを察したガビリアがペダルを緩め、「スプリント開始位置が悪すぎた」と言うアッカーマンが急激に追い込むもメルリエには届かない。向かい風のスプリントで、プロチームに所属する27歳がワールドツアー初勝利を掴んだ。

「チームが完璧な形でスプリント勝負まで連れていってくれたんだ。吹きさらしの左側を選んだけれど、結果的に正しい選択だった。ここ数日は厳しい登りばかりで苦労したけどようやく自分自身を祝うことができる。最高の気分だ」と語るメルリエにとっては、バッレリーニとナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)を下したブリュッセル・サイクリングクラシックに続く今期3勝目。チームメイトのマチュー・ファンデルプール(オランダ、アルペシン・フェニックス)と共に、冬季はトップシクロクロス選手として活躍する27歳が大きな勝利を手に入れた。

ワールドツアー初勝利を挙げたティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)ワールドツアー初勝利を挙げたティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) photo:CorVos
総合成績で16秒リードのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)総合成績で16秒リードのサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) photo:CorVos
「向かい風が強くて決定的な主導権を握るチームがなく、かなり混乱したスプリントだった。幸運にもうまく走ることができた」と言うのは、ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ)16秒差で、ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)に39秒差で翌日のアップダウンステージに向かうSイェーツ。最終日は距離10kmのド平坦個人タイムトライアルが控えているため、TTを不得意とするイェーツは少しでもリードを上乗せしたいことろだ。

ティレーノ〜アドリアティコ2020第6ステージ結果
1位 ティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス) 3:59:30
2位 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
3位 マグナス・コルトニールセン(デンマーク、EFプロサイクリング)
4位 フェルナンド・ガビリア(コロンビア、UAEチームエミレーツ)
5位 マイク・テウニッセン(オランダ、ユンボ・ヴィズマ)
6位 ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ)
7位 ロレンツォ・マンザン(フランス、トタル・ディレクトエネルジー)
8位 ピート・アレハールト(ベルギー、コフィディス・ソルシオンクレディ)
9位 イバン・ガルシア(スペイン、バーレーン・マクラーレン)
10位 アレックス・アランブル(スペイン、アスタナ)
個人総合成績
1位 サイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット) 27:36:29
2位 ラファル・マイカ(ポーランド、ボーラ・ハンスグローエ) 0:16
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、イネオス・グレナディアーズ) 0:39
4位 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ) 0:49
5位 ファウスト・マスナダ(イタリア、ドゥクーニンク・クイックステップ) 0:54
6位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、サンウェブ) 1:00
7位 ジェームズ・ノックス(イギリス、ドゥクーニンク・クイックステップ) 1:21
8位 マイケル・ウッズ(カナダ、EFプロサイクリング) 1:22
9位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、トレック・セガフレード) 2:28
10位 ジャック・ヘイグ(オーストラリア、ミッチェルトン・スコット) 2:44
その他の特別賞
ポイント賞 パスカル・アッカーマン(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)
山岳賞 エクトル・カレテロ(スペイン、モビスター)
ヤングライダー賞 アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、アスタナ)
チーム総合成績 アスタナ
text:So.Isobe
photo:CorVos

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