前日のブルターニュ・クラシックと同じホームストレートで繰り広げられた集団スプリント。マチュー・ファンデルプール(オランダ)が行き場を失う中、パスカル・アッカーマン(ドイツ)とアルノー・デマール(フランス)との接戦を制したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)が新ヨーロッパ王者に輝いた。



スタート最前列に並ぶベルギーチームスタート最前列に並ぶベルギーチーム (c)CorVos注目のマチュー・ファンデルプール(オランダ)注目のマチュー・ファンデルプール(オランダ) (c)CorVos

プルエーのスタート/フィニッシュに揃った選手たちプルエーのスタート/フィニッシュに揃った選手たち (c)CorVos
1995年に初開催を迎え、2016年にエリートカテゴリーが追加されたことで脚光を浴びるようになった欧州選手権の2020年大会会場は、フランス北西部のブルターニュ地域にある街プルエー。今年は当初イタリアのトレンティーノで開催予定だったものの、新型コロナウイルスの感染拡大によって2021年へと延期され、代替地にブルターニュ・クラシック主催者が手を挙げたことで開催にこぎつけた。

男子エリートロードレースはプルエーを発着の周回コース(1周13.65km)を13周する177.4km。コースには前々日の欧州選手権タイムトライアル、そして前日のブルターニュ・クラシックにも使われたコル・ド・レソ(距離900m/平均勾配4.7%)が3日連続で登場し、フィニッシュ前2km地点で頂上を超えるポン=ヌフ(距離1000m/平均勾配5.1%)が勝負の鍵を握る。1周回における獲得標高は195m、コース全体での獲得標高は2535mだ。

その名の通りヨーロッパ諸国のみで争われるレースであるため、前日のブルターニュ・クラシックで優勝したマイケル・マシューズ(オーストラリア、サンウェブ)は未出走。直後にツール・ド・フランスが控えているため選手層は若干薄めであり、感染拡大に対して慎重策を採るコフィディス・ソルシオンクレディのチーム方針によってディフェンディングチャンピオンのエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア)と、近親者に陽性反応が出た発射台役のジャコポ・グアルニエーリ(イタリア)も不出場となった。

それでも来期AG2Rラモンディアールでコンビを組むグレッグ・ファンアーヴェルマート&オリバー・ナーセン(共にべルギー)や、新イタリア王者のジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)、2017年大会を制したアレクサンドル・クリストフ(ノルウェー)などツール連戦組や、圧倒的な力でオランダ選手権を制した注目のマチュー・ファンデルプール(オランダ)など強豪選手たちがスタートラインに顔を揃えた。

ブルターニュのアップダウンコースを駆け抜けていくブルターニュのアップダウンコースを駆け抜けていく (c)CorVos
メイン集団を長時間牽引したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア)メイン集団を長時間牽引したマヌエーレ・ボアーロ(イタリア) (c)CorVosコル・ド・レソをクリアするパスカル・アッカーマン(ドイツ)コル・ド・レソをクリアするパスカル・アッカーマン(ドイツ) (c)CorVos


気温20度ほど。秋の気配が迫るプルエーを出発すると、普段NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスに所属するドゥシャン・ラヨヴィッチ(セルビア)やパウェル・ベルナス(ポーランド)を含む4名がエスケープ。メイン集団では"マリア・アッズーラ"を着るイタリアナショナルチームがコントロールし、マヌエーレ・ボアーロとジョヴァンニ・ヴィスコンティが長時間牽引を行なった。

レースを支配するイタリアに対し、積極的に仕掛けたのはオランダだった。各選手が散発的にペースアップを仕掛け、残り53kmで逃げグループを捉えるや否やマチューの兄デーヴィッド・ファンデルプールを含む4名がアタック。続いてセップ・ファンマルク(ベルギー)のペースアップからジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)が飛び立ち、前を行く4名に合流を果たした。

攻撃するマチュー・ファンデルプール(オランダ)と、チェックに回るマッテオ・トレンティン(イタリア)攻撃するマチュー・ファンデルプール(オランダ)と、チェックに回るマッテオ・トレンティン(イタリア) (c)CorVos
イタリアに代わりフランスが牽引を行う中、残り30kmを切るといよいよ優勝候補たちが動き出す。再三に渡るファンデルプールのアタックはニッツォーロのスプリントを狙うイタリア勢が封じ込め、過酷なペースアップで集団人数が見る間に縮小していく。ロードレース大国によるアタックの応酬が繰り返される中、最終周回のコル・ド・レソでマルクス・フールゴー(ノルウェー)が単独先行した。

フィニッシュ前2km地点で頂上を超えるポン=ヌフに向けてフールゴーを吸収すると、先の欧州選手権U23タイムトライアルで4位になったトーマス・ピッドコック(イギリス)がアタック。ルイ・コスタ(ポルトガル)を引き連れて逃げ切りを目指したものの、集団を率いるイタリア勢によって引き戻される。マッテオ・トレンティンがイタリア列車を牽引する形で残り1km地点のフラムルージュをくぐった。

ハンドルを投げ込むパスカル・アッカーマン(ドイツ)、アルノー・デマール(フランス)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)ハンドルを投げ込むパスカル・アッカーマン(ドイツ)、アルノー・デマール(フランス)、ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア) (c)CorVos
リム差で先着したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)が勝利リム差で先着したジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)が勝利 (c)CorVos
トレンティン、ダヴィデ・チモライ、ダヴィデ・バッレリーニとイタリア勢が次々とリードアウトを行い、残り150mでニッツォーロを解き放つ。緩い下りから登りに変化するホームストレートで、ニッツォーロが迫るアルノー・デマール(フランス)とパスカル・アッカーマン(ドイツ)、そして行き場を失ったファンデルプールをリム差で振り切った。

「今日は信じられないほど素晴らしいレースだった。イタリアチームは集団前方を固め、0km地点からレースをコントロールし続けた。僕自身レースを通して調子が良く、最後も素晴らしいスプリントができた。本当に嬉しいよ。チームメイトたちと一緒に今晩祝う瞬間が待ち通しい」と、レースイタリア選手権に続く接戦のスプリントを制したニッツォーロは言う。イタリアにとっては2018年(トレンティン)、2019年(ヴィヴィアーニ)に続く3年連続のタイトルキープだ。

3年連続の欧州選手権制覇を果たしたイタリアチーム3年連続の欧州選手権制覇を果たしたイタリアチーム (c)CorVos
初のヨーロッパコンチネンタルジャージを射止めたジャコモ・ニッツォーロ(イタリア)初のヨーロッパコンチネンタルジャージを射止めたジャコモ・ニッツォーロ(イタリア) (c)CorVos
ハンドルを投げ込む僅差のスプリントで敗れたデマールが2位に入り、3位銅メダルはアッカーマン。終盤にアタックを打ち続けたファンデルプールは表彰台まであと一つ届かず4位に終わった。
ヨーロッパ選手権2020男子ロードレース結果
1位 ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア) 4:12:23
2位 アルノー・デマール(フランス)
3位 パスカル・アッカーマン(ドイツ)
4位 マチュー・ファンデルプール(オランダ)
5位 ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー)
6位 ダヴィデ・バッレリーニ(イタリア)
7位 マチェイ・パテルスキ(ポーランド)
8位 イバン・ガルシア(スペイン)
9位 アダム・トゥパリック(チェコ)
10位 ブノワ・コズヌフロワ(フランス)
text:So.Isobe
photo:CorVos

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