残り10km地点の登りでアタックしたゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)らは残り500mで捉えられ、中切れ発生のスプリントでサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)が今大会初勝利を飾った。



丘陵区間を走る大会後半戦。ミニ・リエージュ〜バストーニュ〜リエージュと呼べるレイアウトだ丘陵区間を走る大会後半戦。ミニ・リエージュ〜バストーニュ〜リエージュと呼べるレイアウトだ (c)CorVos
ここまで2日連続でスプリント勝負が繰り広げられてきたツール・ド・ワロニー(UCI2.Pro)だが、モンゼンからUの字を描いてヴィセを目指す第3ステージは合計6つの「コート(登り)」と無数のアップダウンを含むアルデンヌクラシックさながらのレイアウトだ。勝負を分けるのは終盤10km地点に設置された距離750mの1級山岳「コート・ド・シュラット」。平均12.5%の勾配がクラシックハンターのアタックを呼び寄せた。

前日の石畳区間で歩道を使いアタックしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、ロット・スーダル)とゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)に+20秒のペナルティが与えられた状態でレースがスタート。マルセル・シーベルグ(ドイツ、バーレーン・マクラーレン)、ミハウ・ゴワシュ(ポーランド、チームイネオス)といった5名が逃げ、メイン集団ではオリバー・ナーセン(ベルギー)率いるAG2Rラモンディアールがテンポを刻んだ。

序盤から逃げたマルセル・シーベルグ(ドイツ、バーレーン・マクラーレン)ら序盤から逃げたマルセル・シーベルグ(ドイツ、バーレーン・マクラーレン)ら (c)CorVos笑顔を見せるジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)笑顔を見せるジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル) (c)CorVos

アシストとして任務をこなす新城幸也(バーレーン・マクラーレン)アシストとして任務をこなす新城幸也(バーレーン・マクラーレン) (c)CorVos
新城幸也(バーレーン・マクラーレン)が「ミニ・リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ」と評するアップダウンコースでは、ミハウ・ゴワシュ(ポーランド、チームイネオス)がKOMを連取して山岳ジャージを獲得した一方、シーベルグは先頭グループから脱落してしまう。勇み足のメイン集団が70kmを残して逃げの25秒後ろに迫ると、集団からは「来年の新スポンサー獲得のために積極的な走りをしたい」と言うトップシクロクロス選手のトーン・アールツ(ベルギー、テレネット・バロワーズ・ライオンズ)らが次々とジャンプした。

再編成によって6名となったエスケープだったが、CCCチームやロット・スーダルが牽引するメイン集団はタイム差を20秒にガッチリとキープし、残り40km地点で吸収。残り36km地点で1度通過するコート・ド・シュラット(距離750m/平均勾配12.5%)ではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、バーレーン・マクラーレン)やナセル・ブアニ(フランス、アルケア・サムシック)、そしてスプリント力のあるベルギー王者ティム・メルリエ(ベルギー、アルペシン・フェニックス)らが遅れをとった。

アルノー・デマール(フランス)の2連勝を狙うグルパマFDJやロット・スーダルがアタックを許さないテンポを刻み、2度目のコート・ド・シュラットを目指すハイペースの中で総合2位クリース・デボント(ベルギー、アルペシン・フェニックス)が脱落。平均12.5%の勾配が始まると、力強いダンシングでクラシックスペシャリストのゼネク・スティバル(チェコ、ドゥクーニンク・クイックステップ)が飛び出した。

「コート・ド・シュラット」でアタックするグレッグ・ファンアーヴェルマート(べルギー、CCCチーム)「コート・ド・シュラット」でアタックするグレッグ・ファンアーヴェルマート(べルギー、CCCチーム) (c)CorVos
昨年大会で総合優勝を挙げたロイック・ヴリーヘン(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)が逃げを牽引昨年大会で総合優勝を挙げたロイック・ヴリーヘン(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)が逃げを牽引 (c)CorVos
前日ペナルティを食らったスティバルに続いたのはグレッグ・ファンアーヴェルマート(べルギー、CCCチーム)とジョナタン・ナルバエス(エクアドル、チームイネオス)で、昨年大会で総合優勝しているロイック・ヴリーヘン(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)が合流。デマールやサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)など複数名のスプリンターが残ったメイン集団に対して20秒差をつけ逃げた。

逃げグループは残り4kmで20秒と逃げ切りに向けて青信号を灯したものの、グルパマFDJがスプリントトレイン要員を切り崩しながら決死の追走を行なったため急速にタイム差は下降した。残り1kmを切って牽制状態に陥った先頭4名は残り500mで飲み込まれ、そのままの勢いでスプリント勝負に持ち込まれる。追走に力を使った5番手のナーセンが中切れを起こし、フロリアン・セネシャル(フランス、ドゥクーニンク・クイックステップ)とデマール、ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)、そしてベネットの4名が飛び出す形となった。

圧倒的なスプリントで勝利したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ)圧倒的なスプリントで勝利したサム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) (c)CorVos
デマールとデゲンコルプが同時にスプリントを開始したものの、1テンポ置いてベネットが発進。「昨日(登坂区間で)遅れ、勝負に絡めなかったのが残念でならなかった」というアイルランド王者がいとも簡単に二人を抜き去り勝利した。

「この勝利はエヴェネプールやヤコブセン、ランパールトに捧げたい。彼らがなるべく早くウルフパックに戻ってくることを願ってやまない。このところ悪運続きだったけれど、今回の勝利をきっかけに良い流れを呼び寄せられれば嬉しい」と、今一度屈指のスプリント力を見せつけたベネットは言う。

「先月はかなりトレーニングを重ねてきたにも関わらず昨日勝負を逃してしまったので少し落ち込んだ。今日はまさか逃げグループを捕まえられると思わなかった。素晴らしい走りを見せてくれたチームに感謝し、誇りに思いたい。終盤は昨日よりもずっとキツかったけれど何とか耐え凌ぎスプリントに持ち込めた。ツール・ド・フランスまで10日というタイミングでの勝利は心底欲していたものだ」と話している。

リーダージャージを手に入れたアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)リーダージャージを手に入れたアルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) (c)CorVos
この日は終盤のコート・ド・シュラットでカレブ・ユアン(オーストラリア、ロット・スーダル)が遅れたため、リーダージャージはデマールの手に渡った。翌最終日もアルデンヌクラシックさながらのアップダウンコースが登場し、ツール・ド・ワロニー総合優勝者が決まる。
ツール・ド・ワロニー2020 第3ステージ結果
1位 サム・ベネット(アイルランド、ドゥクーニンク・クイックステップ) 4:42:25
2位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)
3位 ジョン・デゲンコルプ(ドイツ、ロット・スーダル)
4位 マッテオ・トレンティン(イタリア、CCCチーム) 0:01
5位 アモリ・カピオ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ)
6位 アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
7位 マルコ・ハラー(オーストリア、バーレーン・マクラーレン)
8位 アレクサンダー・クリーガー(ドイツ、アルペシン・フェニックス)
9位 バティスト・プランカールト(ベルギー、ビンゴール・ワロニーブリュッセル)
10位 クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、AG2Rラモンディアール)
個人総合成績
1位 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ) 12:57:28
2位 アモリ・カピオ(ベルギー、スポートフラーンデレン・バロワーズ) 0:16
3位 ジェームス・フォシュ(ニュージーランド、ハーゲンスバーマン・アクセオン)
4位 クレマン・ヴァントゥリーニ(フランス、AG2Rラモンディアール) 0:17
5位 オリバー・ナーセン(ベルギー、AG2Rラモンディアール)
6位 グレッグ・ファンアーヴェルマート(べルギー、CCCチーム)
7位 イエンセ・ビエルマンス(ベルギー、イスラエル・スタートアップネイション)
8位 ローレンス・ナーセン(ベルギー、AG2Rラモンディアール)
9位 ロイック・ヴリーヘン(ベルギー、サーカス・ワンティゴベール)
10位 ニック・ファンデルレイケ(オランダ、リワル・レディーネス サイクリングチーム)
その他の特別賞
山岳賞 ミハウ・ゴワシュ(ポーランド、チームイネオス)
ポイント賞 アルノー・デマール(フランス、グルパマFDJ)
ヤングライダー賞 ジェームス・フォシュ(ニュージーランド、ハーゲンスバーマン・アクセオン)
チーム総合成績 ドゥクーニンク・クイックステップ
text:So.Isobe
photo:CorVos

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